感情を揺さぶる場面で、心を消耗させないように
心乱されれば、だれだってなかなか冷静になりにくいもの。それなのに、思考を巡らせて最善の策をその場で模索するなんて難易度が高いのは当然です。
そこで今回ご提案したいのは、平常心を失いがちな場面に対して、予め『心のルール』を決めておくこと。
必要以上に感情に踊らされることなく、より早くネガティブな気持ちから抜け出す足掛かりになります。
《始めに》知ってほしい、本質的な話
自分が落ち込むかどうかは、「あなた自身の心」が決めている
60分という制限時間内で悪戦苦闘する中、30分経過した段階で「“もう”半分過ぎてしまった」と捉えるか、「“まだ”半分残っている」と捉えるかは、人によりますよね?
つまり、人間がある局面を乗り越得られるかどうかは、その出来事の良し悪しは関係なく、あくまで人が「どう受け止めるか」によるところが大きいのです。
それゆえ、あなたという人間が、別の日、同じシーンにおいて「落ち込まない」「傷つかない」「怒らない」感情でいることも選択可能なのです。
相手は、あなたの期待を満たすために生きているわけではない
ですが、あなたという人間以外の、他人の気持ちや行動をコントロールするのは、そもそも不可能であることを今一度心に留めておきましょう。家族や恋人に「私の気持ちを分かってくれないと嫌」と思ってしまうのは、あなたの都合なのです。
あなたがコントロールできるのは他人の言動ではなく、「あなたの心や行動」のみ。
「あなたが誰かの期待に応えるために生きているのではない」のと同様、「相手もあなたの期待を満たすために生きているわけではない」ことを覚えておきましょう。
決めておくと楽になる、4つの「心のルール」
1.人の悪意を感じる事があっても、証拠が無いなら…「傷つかない」と決めておく
「事実」以外は、自分の推測に過ぎない
でも、客観的に捉えた場合、事実は「AさんとBさんが2人でお茶に行った」ということのみ。
Aさんが「あなたを嫌っているから、誘わなかった」と感じても、それはあなたの推測(=私見)に過ぎませんよね* そういった、事実と言い切れない“推測の域を出ない事柄”なら、真に受ける必要がないということなのです。
あなたがお茶に誘われなかったことで、どんなに自分の心をかき乱しても、答えはAさんのみぞ知ること。あなたはコントロールできません。
相手に悪意がなく、あなたが勝手に傷ついているだけかもしれません。だからこそ、反射的に心がざわついたとしても「私は傷つかない」と決めておくことで、無駄に落ち込む状況を避けることができます。
このケースの場合、よくよく考えてみると、仲のいいAさんがわざわざあなたに「隠すことなくその出来事を話している」んですよね。この時点で、おそらく悪意はなく、単なる「報告」やその後の話題のための「きっかけ」として話したに過ぎない、と考えるのが自然かもしれませんね。
2.自分の心を守る為に。悪意ある投げかけや態度には…「反論しない」と決めておく
1とは異なり、嫌味や無視など、明らかにネガティブな意図を込めた言動に遭ってしまった場合。
ここは、割り切って「反論しない」と決めておくとよいでしょう。
「反論」すれば、もっと自分が傷つく無限ループになることも・・・
「あなたと関わりたくない」「あなたを不快にさせたい」「あなたを傷つけたい」――。相手が、そのためにその行動を起こしていると分かるならば、あなたが反論しても、状況が改善しない可能性が高いです。
反論しても、相手からまた違った方法で、あなたの心が傷つけられてしまうということも考えられます。
自分の健やかな心を守るために、一歩下がる勇気も必要なのです。
もちろん、あなたが相手の心を乱すような心当たりがあれば謝罪や改善をすべき。でも、そうでない以上は「《はじめに》」でお話した通り、相手の頭の中はわかりませんし、「相手に好かれたい」と思ってもそれは相手次第であり、あなたがコントロールできるものではありません。
一生懸命言葉を重ねて誤解を解こうとするのではなく、「受け流す」「何も言わない」など、「反論しない」と決めておきましょう。
3.人とかかわるときは…「相手に勝手に期待しない」と決めておく
あなたが相手に対してがっかりしたり、腹を立てたりするのは、相手が「あなたが思っていた反応が返ってこない」ことによるもの。期待通りのリアクションがあればいいですが・・・《はじめに》でお伝えした通り、相手はあなたの期待に応えるためにいきて生きているわけではありません。
ですから、そもそも「相手に期待しない」ということを、最初から決めてしまいましょう。
「期待しない」ことは、加点方式で相手を見ること
相手に期待しない・・・というと、諦めや冷淡といった印象を抱きがちですが、むしろ「相手の存在をそのままに受け入れる」ということ。
相手がそこにいる、それ自体を事実として受け入れ、期待を手放して存在自体を大切にすれば、相手がしてくれたことに感謝することはあっても、がっかりすることはありません。
そう、むしろ「相手に期待しない」ことは、いわば相手を“加点方式”で見るような、失う物のない優しい考え方。あなたの勝手な思い込みによって心を必要以上に波立たせない前向きな方法なのです。
4.落ち込みそうなときは…「まず取り掛かるアクション」を決めておく
どんなに「心のルール」を決めておいても、やっぱり負の方向へ心が引っ張られそうな瞬間は誰にでもあるもの。
気づけばそのことにばかり捉われて、心沈む期間が長引いたり、必要以上に悪い方へと考えていって勝手に深みにハマっていったり・・・そんな時に大切なのは、「次の一歩」を踏み出すこと。
例えば、「掃除」や「読書」。すぐに踏み出せる「次の一歩」を。
「掃除」や「読書」、「靴磨き」など・・・自分が無心で没頭できるものに取り掛かることで気分転換を図ることができ、沼から足を抜くように、生活や気持ちを前へと押しやることができます。
もちろん、その都度「今回は何で気持ちを変えようか?」と決めてもいいのですが、いざネガティブな気持ちに直面してしまうとそれすら考えるのを忘れがち。それに対して、「悩んだら○○!」とルール化してしまえば、反射的に次のアクションへと踏み出しやすくなりますよね。
ただただ落ち込んでいれば「今日はモヤモヤしかない日」で終わってしまう一日も、決まった一歩を用意してあげることで「ヤカンをピカピカに磨けた」「素敵な一言に出会えた」というちょっと嬉しい出来事に、驚くほど救われる自分に気づくでしょう。
深く考えるのは、落ち着いてからで大丈夫。
今回ご紹介した「心のルール」は、つい深い沼へとあなたを導きがちな「ネガティブな感情」からあなたを守るためのもの。でもそれは、あなたの気持ちに目をつぶったり、誤魔化したりすることは意味していません。
まじめな人ほど、「今すぐこの原因を解決したい!」と思いがちですが、動揺しているときは冷静さを欠いているもの。まずは良からぬ方向に引きずり込まれる予感に対して「心のルール」を発動させながら、ゆっくり自分の気持ちを受け入れて、落ち着いてから必要に応じて気持ちの分析や対処法を考えてきましょう。
深く考えるのは、あとからで大丈夫。「心のルール」で、あなたらしさをキープしながら、もっと楽に過ごせますように。
例えば、自分と仲のいいAさんが、「(あなたと共通の友人である)Bさんとこの前お茶に行ったんだ!」と連絡してきたことを想像してみましょう。
あなたはどんな感情になりますか?
もしかしたら、Aさんが意図的に自分を仲間外れにしたと感じるかもしれません。「私のこと嫌いなのかな」「どうして誘ってくれなかったの?」と、寂しさのあまり自分を孤独へと追いやり、落ち込むこともあるかもしれません。