人から受けた恩はバトン。「恩返し」ではなく「恩送り」という考え方

人から受けた恩はバトン。「恩返し」ではなく「恩送り」という考え方

多くの人の優しさや助けによって、今日まで生きてきた私たち。かつてお世話になったその人たちに、「いつか“恩返し”できたら・・・」と、誰もが心の片隅に何らかの感謝を抱き続けているのではないでしょうか。 でも、実は受け取った恩を「返す」以外に、バトンのように受け渡していく「恩送り」という方法があるのをご存じですか? 今日は、幸せのすそ野を広げることができる「恩送り」についてご紹介していきます。2021年06月10日作成

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あなたが、世界を優しさで包む「スタート地点」になれるかも。

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出典:unsplash.com
「恩送り」という言葉を聞いたことはありますか?

助けや優しさをくれた相手に何らかの形でお返しする「恩返し」ではなく、自分が受け取った思いやりある行為を全く関係のない第三者に受け渡していく、それが「恩送り」。いわば「恩のバトンリレー」です。

英語では「ペイフォワード(Pay it Forward)」とも呼ばれ、組織や社会の一員である個々の人間が、お互いのボランティア精神で行為や物品を受け渡していくようなイメージで受け止めると理解しやすいでしょうか。
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国によっては、コーヒースタンドで一杯分余計にお金を払って「これで、おいしい一杯を次のお客さんに」と、スマートにペイフォワードする仕組みもあるようですが…日本ではそうもいかないのが現実。

では「仕組みがないと恩送りできないのか?」と言うと、決してそんなことはありません。

今回は、「恩送り」でどれだけ心や日々が豊かに過ごせるか。そして具体的にどんなふうに恩送りしたらいいのかのヒントをご紹介していきます。

どんな風に景色が変わる?「恩送り」だから広げられる可能性

「恩送り」には、「恩返し」とはまた違う魅力や影響があるものです。
見える景色がどう変わるのか・・・まずはそれについて考えてみましょう。

1.「恩返し」の一対一とは違う、無限の連鎖が待っている

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「恩返し」は基本的に恩をくださった方にお返しする「一対一」のやり取り。

対して、恩送りは一つの優しさや助けを受けたとしても、その喜びや感謝を渡す人数に上限はありません。

あなたからの恩送りを受け取った相手が、同じように何人もの人々に恩送りをしたら・・・そのあたたかな恩のバトンは次々と無限の広がりを見せていきます。
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あなたの一つの優しさが波紋のように広がって、もしかしたら世界を小さく変える一歩になるかも―― そう考えると、なんだかワクワクしませんか?

2.見返りを求めることなく、すがすがしくいられる

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誰かに対して時間や手間を割いたことに対して、大なり小なり相手からの見返りも期待してしまいがちなのが、私たち人間。

ところが恩送りは、あくまでも「はい、どうぞ」と恩を渡す行為であり、そのベクトルは自分から相手への一方通行。最初からそのベクトルの方向性が自分でもはっきり認識したうえで行動に移せれば、心のどこを見渡しても、見返りを求める気持ちがない自分に気づくはず。

自己犠牲の精神や、恩着せがましさもなく、あなた自身がとてもすがすがしくいられます。

3.相手が借りを感じにくくなり、あなたも相手も居心地がよくなる

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人間関係において、下心というのは滲み出てしまうもの。「私がここまでやってあげたのだから」という気持ちがどこかにあって施された行為は、相手に借りを感じさせかねません。

けれど先ほどお話したとおり、恩送りは「あなた自身がすがすがしい気持ち」になれるもの。そもそも下心を抱くことがなければ、相手も素直にその優しさを受け取りやすくなり、双方に無用な気遣いがなくなるのです。
それでももしもお相手が恐縮してしまうようなことがあれば、「私もこんな風に助けてもらったことがあったので、もしよかったら、私へのお返しではなくて、同じように悩まれている方にこの経験を渡してあげてくださいね」とお伝えしてみてはいかがでしょう?

「やってあげた」「やってもらった」という居心地の悪さから解放されるのが、恩送りの魅力の一つとも言えるでしょう。

4.時を待つことなく、今の自分が恩のバトンを渡すことができる

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改めて振り返ってみると、あなたに恩を与えてくれる(与えてくれた)のは、“目上の人”、“自分より経験豊富の人”であることが少なくないのではないでしょうか?

こういった方々に「恩返し」をしようと思うと、 「自分が成長したら」「もっと対等な人間になれたら」と実際にお返しできるまでに、時間がかかることも珍しくはありません。

お互いの環境が変わり疎遠になってしまったり、遠くに離れてしまったり…。お相手によっては、残念ながら時を待つうちにこの世を去ってしまうということだってあります。
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それに対して恩送りは、「私が○○になったら」という時を待たずに、今すぐできるやさしさの受け渡し。

遠い未来に120%の恩返しをするのも、もちろん素敵なこと。

けれど、そこに至るまでに今の自分のままでできることを、より多くの人に恩送りしていくという、時間の過ごし方もあるはずです。

今から自分も始めたいあなたに。例えばこれも「恩送り」。

恩送りの素晴らしさはわかっても「一体何から始めよう?」と思っているあなたに。続いては、身の回りの恩送りのヒントをご紹介します。

「こんな小さなことでいいの!?」―はい、もちろんいいんです!何か大きな立派なことをしなくても、それは十分恩送りになりますよ。

困った人に、率先して手を差し伸べる

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仕事のやり方を教える、街で戸惑っている人に「お困りですか?」「お手伝いしましょうか?」と一声かける…。

少し勇気はいりますが、相手とのコミュニケーションがなければ恩を渡すこともできません。

もし断られてもあなたが拒絶されたのではなく、あなたのお手伝いが今は不要だっただけのこと。「相手が恩を受け取ってくれてホッとしてもらえたらラッキー!」くらいのゆったりした気持ちで、手を差し伸べてみてはいかがですか?

道で、行列で・・・相手に順番を譲る

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交通量の多い道を運転しているとき。なかなか道を曲がれなくてタイミングをうかがっていると、ふと間に入れてくれるドライバーさんが現れ、思わず「優しい~!」なんて口にしてしまうこと、ありませんか? これも一つの「恩」を受け取った瞬間。

あなたも同じように、自分の心の余裕を「恩送り」という形に変えて、道や順番を譲ってみる。それだけで立派な恩送りになります。
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他にも、スーパーのレジ待ちでお菓子1つだけの会計のために並んでいる小さなお子さん連れの方に、「お先にどうぞ」と譲ってみることもできますね。

何人かで乗り合わせたエレベーターから降りるとき、「開」ボタンを押して、自分は最後に降りるというのも、急いでいる人にはとても助かる恩送りになるはずです。

玄関で、自分以外の人の靴も揃える 

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自宅はもちろん、我が子が習い事で靴を脱ぐ時や、歯医者さんの玄関などで、自分の靴を揃えるついでに、他の方の靴も揃えてみてはいかがでしょう?

見た目の美しさはもちろん、履きやすくもあり、ちょっとしたたしなみと同時に恩送りの一つにもなります。

コロナ禍で、互いのモノに触るのはデリケートな部分もあるので、相手と場所を選びながら実践してみるとよさそうです。

集まりの場で居心地が悪そうな人に、一声かけてみる

仕事や行事、家族の付き合いなどで、必ずしも気心知れたメンバーばかりではない人々が集まると、なんとなく居心地悪そうに一人で過ごしている方を見かけませんか?

もちろん自ら一人になることを選択しているケースもあり得ますが・・・もし自分がその立場だったら、と想像してみるとアウェイ感を抱いていることも多いもの。そういう時にかけてもらう一声って、とても嬉しいものですよね。
いきなり馴れ馴れしく世間話までする必要はありません。

まずはにこやかに挨拶して簡単に自己紹介してみると、お相手に、想像以上に心ほぐれる感覚を抱いてもらえるかもしれません。

かつて先輩にしてもらったように、後輩の話を聞く

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ちょっと仕事で落ち込んだときや、逆に喜ばしい出来事があった時。上司や先輩が食事や飲みに誘ってくれて、話を聞いてもらったり、さりげなくアドバイスをもらったりしたことはありませんか?

じっくり話を聞いたり、元気づけたりしてくれたのに加え、最後にお会計でいつも多めに出してくれた先輩の姿。きっと「あなたに後輩ができたら同じようにしてあげてね」と、未来への想いを込めてくれていたのではないでしょうか。
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先輩が恩送りをしてくれたように、あなたも後に続く人のために、時間やお金を使い、話を聞く――。かつてそれで自分が救われたように、自分の後輩にも、その気持ちをさりげなく受け継いでいく。

その行為は、同時に、かつての先輩への「恩返し」にもなるはずです。

クラウドファンディングに協力する

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“世の中のためになる”とあなた自身が賛同できる試みに「寄付」や「援助」という形で投資するのも、あなたが誰かから手にした「お金」という恩を、世の中へと送る行為。

そう考えると、クラウドファンディングも恩送りの一つの形と言えるでしょう。

ただ“今の自分の身の回りを豊かにするためだけではない”お金の使い方を意識すると、様々な場面で恩送りすることができるでしょう。

+αのご提案|本をバトンに。これも一つの恩送りの仕組みかも。

東京・蔵前にある「自由丁」のサービス 繋がる本棚

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筆者が「恩送りができる素敵な場所はないかな…」とイメージしたとき、思い浮かんだのが、東京・蔵前にある「自由丁」です。

一年後の自分に向けて手紙を書けるサービス「TOMOSHIBI LETTER」と共に、読書や考え事をするための空間自体を提供する、自分とじっくり素直に向き合うことのできる場所です。
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そんな自由丁の中には、「繋がる本棚」と呼ばれる大きな本棚が。中に並べられた本の多くは、過去に誰かが置いていったもの。前の持ち主からは、次にその本を手にする方へのお手紙が挟まっています。
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「繋がる本棚」は、果たしてどのようにして利用できるのでしょう?

気になる本を⾒つけたら、⾃分が持参した本と交換する仕組み(※)。あるいは持参できないときも、あなたのおすすめの本と交換することができますよ。その場合、タイトルを伝え書籍代をお渡しすることで、自由丁が代わりに購入。後日この本棚に追加されます。

本と交換する際にあなたが書いた次の読み手へのお手紙を添える決まりになっているので、どんな言葉を綴ろうか考えるのも、楽しみのひとつ。
(※)補足:
持参した本と交換する時は、550円(税込)を頂戴しております。
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お店では、開店時からの本の交換の記録を残しているそうで、ゆくゆくは自分の本の軌跡をたどることもできるそう・・・。

誰かが心打たれた本とお手紙を受け取り、あなたは素敵なメッセージが詰まった本を思いと共に本棚に託す――。これも本をバトンにした、一つの「恩送り」と言えそうです。
▶「繋がる本棚」利用料金:
550円(税込)+お手持ちの本 or おすすめの本の代金/冊
東京・蔵前、未来の自分へ手紙が送れるお店『自由丁』– JIYUCHO
公式サイト
▽ 「TOMOSHIBI LETTER」については、こちらの記事でもご紹介しています。あわせてご参照ください。
(第4章めです)
この秋を特別にする、わたし的短期プロジェクト。「自分に気づく秋」という過ごし方
この秋を特別にする、わたし的短期プロジェクト。「自分に気づく秋」という過ごし方

芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋・・・。「○○な秋」とよく言われますが、今年は特に自分の内側に目を向けて、「秋」を過ごしてみてはいかがでしょう?いつもだったら「暑い夏」と「寒い冬」のつなぎ目のように過ぎ去ってしまう季節が、しっかりテーマを決めることで実り多き貴重な数週間になるはず。さぁ、自分の奥底に眠った気持ちや興味を掘り起こし、それに応える秋を始めてみませんか?

優しさは、「返す」ためのものではなく、「与える」ためのもの。

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あなたを心から大切に思ってくれている相手は、その優しさがあなたから自分へと返ってくることを期待しているでしょうか?その答えは、きっと「No」。

感謝と優しさに溢れたあなたが、その恩を送ることで多くの人に小さな幸せを渡しているのであれば、それはきっと何倍にも嬉しい姿として、かつての恩人たちの目に映ることでしょう。
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日本では「親孝行」や「恩返し」が美徳とされがち。もちろんそれも素敵なことですが――改めて考えてみると、優しさは「返す」ためのものではなく、「渡し、与える」ものであるはず。

さぁ、小さな「恩送り」を、今すぐ始めてみましょう。

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