「備える」だけが防災じゃない!「できる」「使える」が大事
とはいえ「ちゃんと準備をしたから、もう安心」という考え方は―― ちょっと危険。
準備したものが実際に「役に立つもの」であるか。そして、それらが自分にとって実際に「使いこなせるもの」になっているかが重要。
考えるのではなく、試しにやってみることが大切。“お休みの日”に防災ツールやグッズ、行動を集中的に確認し、使える・実践できる術を身につけることで、より確かな安心を確保できます。
今回はこの“お休みの日”の防災リハーサルを、「防災ホリデー」としてご紹介。隙間時間でできることから、たっぷりと時間を使って休日に取り組みたいことまでを洗い出してみました。
はじめに|災害リスクは確実にUPしている
災害レベルの雨はどんどん増えている
そもそも天気予報で「1時間に●mmの降水量」と説明される意味を、正しく理解していますか?これは、1時間にどれくらいの深さ水がたまるか、という意味。
こう聞くと、例えば「1時間に50mm=5cm」ということで、たいしたことないように思えるかもしれませんが…実際は「滝のように」降り、水しぶきで視界が白っぽくなるレベル。車の運転も危険なほどです。
ちなみに、全国の1時間降水量50mm以上の年間発生回数は10年あたり28.9回のペースで増加しているんだそう。そしてなんと、最近10年間(2010~2019年)の平均年間発生回数は約327回にものぼるのだとか!
データ的に見ても、雨による災害に遭遇するリスクは高まりつつあると言えます。
高いところに住んでいるから安全???
だからこそ、「使える現実的な選択肢」を数多く準備しておこう
このように現実を知ると、有事の際は、自分の想像を超えた事態に陥ることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
そして、これをただ怯えて待つのではなく、「現実」を踏まえながら前向きに、どうせなら楽しく実践的な方法で備えておこう!というのが、今回ご提案する「防災ホリデー」です*
- もしもの為のリハーサル「防災ホリデー」の過ごし方 -
外に出かけたいときの【お出かけ編】、のんびりお家で過ごしたいときやstay homeでも取り組める【おうち編】にわけてご紹介します。
《おでかけ編》
1.ハザードマップを見て、避難所までお散歩!【難易度:★☆☆】
まずは、「ハザードマップ」をチェック!
そもそも、避難所にもいくつか種類があるのをご存じですか?
「基本は避難所だが洪水の時はNG」「小さい子連れや要介護者などを優先的に受け入れる」など…。まずは自分の家族構成やどんな有事を想定するかをイメージして今回の目的地となる避難場所を決定します。
そこで役に立つのが、「洪水」「土砂災害」「液状化」など、様々な災害を想定し、避難所などを案内する「ハザードマップ」です。
皆さんが暮らす地域の自治体ごとに準備されているので、それも踏まえつつ避難所までの経路を考えてみましょう。
また、人口が多い場所の場合、想定していた避難所が満員という場合も…。「ホテル」や「親せき」「友人宅」など、自治体で指定された以外の避難先もいくつかリストアップしてみてもいいですね。
玄関~到着までも発見の連続。
玄関を出たら、エレベーターなどは使わず出発。もし既に用意された非常用リュックなどがあれば、それを背負ってでかけましょう。
先ほど決めた経路を歩く中で、周囲を見回すと危険な箇所はありませんか?実際の災害時は、悪天候や落下物などをケアしながらの移動となる、という視点もお忘れなく。
往路は周辺の観察をしながらじっくり時間をかけて。自宅までの復路は、玄関ドアに到着するまでの所要時間を計ってみましょう。
□ 子供の抱っこ移動は非現実的(傘や荷物があるとなおさら)
□ 並木道は木の枝が飛んでくる可能性がある
□ マンホールはどこ?(道路一面が雨水に覆われると落下の可能性)
□ 倒れやすい塀はどこ?
□ 避難所が意外と狭い
2.晴れた日は非常食で、お試しランチ!【難易度:★★☆】
行先は、できれば実際に避難する可能性がある近所の公園などが◎。より現実的な気づきを得られます。
□ 水で炊けるご飯は、所要時間60分もかかる
□ パサパサしていて水分がほしくなるものばかり
□ ベンチや日影が少ない
□ 水道が一か所しかない
□ カップラーメンの汁が捨てられない!
□ カトラリーやお皿があった方が便利
□ 赤ちゃん用に用意していた離乳食が月齢とずれている
□ できれば温かいものがあったら嬉しい!
3.防災リュックで1日お出かけ!【難易度:★★★】
□ ホイッスルを鳴らしてみる
□ 避難所になりうる施設のトイレに実際に入ってみる
□ 公衆電話の使い方をおさらい
□ スマホの充電が限られている状況を想定して、スマホ断ちして過ごす
□ ラジオをBGMに過ごす
□ リュックの中から中身が出しにくい
□ ホイッスルの音が意外に小さい!子供がうまく鳴らせない!
□ 大きなレジャーシートより、小さいもの数枚の方が融通が利く(場所に合わせて敷いたり、目隠しにも使える)
□ トイレに荷物用のフックがない!ペーパーがない!子供が和式が使えない!
□ 貴重品を身に着けておく小さなバッグが必要!
□ 天候や年齢、時間を問わず遊びやすいおもちゃがもっと必要
□ 公衆電話を使うのに必要なコインが足りない!そもそも電話番号がわからない!
□ ラジオの音は周囲に迷惑になる可能性があるのでイヤホンが必要!
□ 雨対策は万全だけれど、日よけ対策が皆無
《おうち編》
4.避難までのToDoリスト作り【難易度:★☆☆】
もしものときに持ち出すものについ気をとられがちですが…そもそも家を出るまでに気を付けることややるべきこともあるのです。非常時は動揺してついつい忘れがちなそれらのアクションや注意点を、整理しリスト化しておきましょう。
作成したリストは、しまい込まず、靴箱の扉裏など、もしもの時にワンアクションで見える定位置に掲示しておくことがオススメです。
□ ガスや水道の元栓を閉める
□ 不在家族に向けて、玄関扉内に「避難済み&場所」のメモを残す
□ 靴下&サンダル以外の靴を履く(裸足やサンダルの場合、砂利などが足裏に入ると歩きにくい)
□ 抱っこする子供がいる場合、その子に靴を履かせる
□ 戸締りの確認
□ 持ち出すものリスト(必要最小限に)
□(雨天時などの場合)傘ではなくレインコートを使用する
□(立体駐車場の地下部など利用している場合)早めにコインパーキングに車を移動する
5.防災メニューを調理実習!【難易度:★★☆】
ライフラインが止まった状況を想定して、実際に卓上コンロやポリ袋(高密度ポリエチレン袋)を使用して食事を作ってみてはいかがでしょう?
一度トライしておくのと、もしものときに手探りでやってみるのとでは、安心感は桁違い!実際に食べてみた結果、おいしいレシピが見つかったら、プリントアウトしてストック食材などと一緒にしまっておけばより安心ですね。
6.思い切って停電を疑似体験!【難易度:★★★】
「キャンドルナイト」のような形で、灯りをとりながら取り組んでもいいですね!(地震の時には危険なので、他の光源が必要となることが前提です)
夜の取り組みは難易度がより上がるため、まずは昼間にトライするだけでも価値はありますよ。
(停電時、保冷効果を発揮してくれます。どれくらいの効果があるのか検証するのも◎)
□ 浴槽に水をためて一度お風呂を沸かしておく
(マンションなどの場合、各戸に水をくみ上げる装置が停電で停止し断水の可能性があるため)
□ 非常用トイレをいくつか用意しておく
□ 備えていたはずの防災グッズが探せない!
□ 料理がしにくい!
□(保冷効果が損なわれるのに)冷蔵庫を思いのほか何度もあけてしまう!
□ お風呂に使いやすい防水ライトがない
□ 非常用トイレの使い方がわからない!
□ ラジオが数台あると大人も子どもも嬉しい
□ スマホのモバイルバッテリーが劣化している
□ 床にある○○が危険!
□ 冷暖房が使えず不快!
(悪天候の場合や防犯の面から、窓も開けられない場合が多い)
もちろん、実際の停電時は、エレベーターも電動式駐車場も使用できなくなるのでもっと不便ですし、周囲の灯りも消え、より孤独や不安を感じることでしょう。また、マンション棟ではオートロックが機能しなくなり、防犯面でもよりリスクの高い状態になるかもしれません。
そんな状況にも想像を巡らせながらよりリアルな環境を疑似的に体験してみるのは、もしものときの大きな備えになるはずです。
もしもの場面で頼れる自分になるために「想像」より「体験」を。
「百聞は一見にしかず」、「案ずるより産むが易し」とはまさにその通りで、防災も頭で考えたり想像してばかりいるより、自分で体験してみることが一番です。
頭で「防災対策は大事!」と思っていても、「我が家に限って…」「私だけは大丈夫」と、テレビの中で起こっている他人事として捉える気持ちがどこか拭いきれず、いまいち備えに本腰が入らない…という方もいるかもしれません。
「低層階ではなく免振構造なので、地震も洪水もリスクが低いから、避難所への移動は想定していません」という意見もあるかもしれませんね。
では、例えばここ最近毎年の方に報告される大雨による洪水被害について考えてみましょう。