身近な人の大切さを再確認。家族をテーマにしたオススメ小説
「そして、バトンは渡された」|瀬尾まいこ
「水を縫う」|寺地はるな
手芸好きな清澄は、「男なのに」と趣味をからかわれ周囲からいつも少し浮いていた高校一年生。ある日姉のウェディングドレスを作る宣言をしますが、可愛いものを否定して生きてきた姉の希望に応えるのに一苦労。離婚して別々に暮らしている父が元デザイナー志望だったため、相談を持ちかけますが、「今さら父親面でけへん」と言われてしまいます。
男なのに刺繍が大好きな清澄、女なのに可愛いものが苦手な姉の水青、子どもに悪目立ちしてほしくない母のさつ子、夢を追いきれずに結婚・離婚を経験した父の全、女だからと本当にやりたいことをしてこられなかった祖母の文枝。世の中の「普通」という価値観を問い直す家族の物語です。2021年高等学校の部の課題図書にもなっていて、全ての世代にオススメできる一冊です。
「にじいろガーデン」|小川糸
夫との関係に悩んでいた泉と、両親との意見の違いに苦しんでいた女子高生の千代子。ある日駅で自殺を図ろうとしていた千代子を、泉が救ったことから二人の新しい人生が動き始めます。すぐにお互いを特別な存在だと認識した二人は、泉の一人息子・草介を連れ、三人で”駆け落ち”することに…。辿り着いたのは、星が綺麗な山里。未知の環境で、同性愛者として周囲とどう付き合っていくのかを模索する中、千代子のお腹にも新しい命が宿っていたことが判明します。
母二人、息子一人、娘一人の4人家族となり、ゲストハウスの開業、ハワイでの結婚式など、一家は力をあわせて前へ進んでいきます。4人それぞれの目線で章分けがされており、家族の16年間の軌跡が描かれています。大切な家族の幸せを守る、真摯な姿に胸を打たれる作品です。
「東京バンドワゴン」|小路幸也
8人の大家族・堀田家が営む古本屋「東亰バンドワゴン」。お店に次々と舞い込む”謎”を、個性派の家族が一致団結して解決していきます。下町情緒あふれる舞台で繰り広げられる物語は、古き良き時代のホームドラマのよう。読み終わった後はほのぼのとした気分になれる、大人気シリーズの第一弾です。
「星やどりの声」|朝井リョウ
海沿いの街で”星やどり”という喫茶店を営む早坂家は、三男三女の6人兄弟姉妹と母一人の大家族。建築家だった父が残したこの喫茶店は、家族にとって何より大切な場所。しかし、常連客の一人が店に来なくなってから徐々に変化が起き始めます。
「平成大家族」|中島京子
三十路のひきこもり息子・克郎と、90歳過ぎの姑・タケと共に暮らしていた龍太郎と妻の春子。彼ら緋田夫婦の元に、事業に失敗した夫と中学生の息子を連れた長女・逸子、さらに、次女・友恵までもが離婚と妊娠をし戻ってくることになりました。いきなり4世代8人の大所帯になった緋田家。それぞれが抱える事情を、章ごとに語り手の視点を変えてユーモアたっぷりに描きます。
「海の見える理髪店」|荻原浩
海辺の町にある評判の理髪店を訪れた「僕」。床屋の主人は饒舌で、接客の間今までの人生を語り出します。祖父の代からの床屋で、三代目だという主人。その人生は事業に失敗したり離婚をしたりと決して順風満帆ではなかったようでした。次々と起きた悲劇の末に、この土地で理髪店を営むことにした主人は一体何者なのか、そしてその話を聞いていた「僕」は何を思うのでしょうか…?
母と娘、父と息子、娘に先立たれた夫婦など、様々な家族の形が詰まった全6編の短編集になっています。止まってしまっていた時が静かに動き出すような、切なくも愛おしい家族小説です。
「ビタミンF」|重松清
人生の”中途半端”な時期に差し掛かった主人公たちを描く短編集。子どもの非行、いじめ、夫婦関係の変化など、様々な悩みを抱えた家庭が登場します。目を背けたくなるような胸の痛みに向き合う中で、それぞれが小さな希望を見つけていきます。
「月の砂漠をさばさばと」|北村薫
小学三年生のさきちゃんとお母さん、二人の日常を優しいタッチで描いた作品。さきちゃんのお母さんはお話を作る仕事をしているので、二人の間にはいつも楽しいお話や想像が溢れています。タイトルの「月の砂漠をさばさばと」というのは、お母さんがある日「月の砂漠をさばさばと さばのみそ煮がゆきました」とでたらめに歌った歌。さきちゃんはその歌を「かわいい!」と気に入ります。その夜、お母さんは「さきが大きくなって、台所で、さばの味噌煮を作る時、今日のことを思い出すのかな」と考えます。
さりげない日々のやりとりに、さきちゃんの成長と、それを見守るお母さんの愛情が詰まっています。おーなり由子さんのイラストも美しく、眺めているだけで温かく幸せな気持ちに◎手元に置いておきたくなる、素敵な一冊です。
「アンマーとぼくら」|有川浩
主人公のリョウは現在32歳。おかあさんの休暇に付き合うため、3日間沖縄に里帰り中。今はもう亡くなった父と、幼い頃に家族3人で過ごした思い出の地を巡る2人。しかし、リョウは観光を続けるうちに奇妙な感覚にとらわれます。これは沖縄が見せる奇跡なのか?奇跡なら何のため…?かりゆし58の代表曲「アンマー」を題材とした感動作品!
「雨上がりの川」|森沢明夫
編集者として働く川合淳は、妻・杏子と、中学生の娘・春香との3人家族。平穏に暮らしていた一家ですが、春香が学校でイジメを受け引きこもりになってしまってから徐々に雰囲気が変化していきます。知的だったはずの杏子は、紫音という霊能者に心酔し、怪しげなグッズを家に持ち込んだりとその行動は次第にエスカレート…。なす術のない淳は、いつも家の近くの川で釣りをしている心理学者の千太郎に相談することにします。
杏子と春香が霊能者の紫音に心を奪われていく様子にハラハラドキドキ!登場人物それぞれの視点から描き出される構成はミステリー要素もあり、続きが気になって一気に読んでしまいます。読み終わった後は、雨上がりのような清々しい気持ちになれるはずです*
「お父さんはユーチューバー」|浜口倫太郎
宮古島でゲストハウス『ゆいまーる』を営む父・勇吾と、絵を描くことが大好きな小学五年生の娘・海香の物語。ある日、人気ユーチューバーになれば莫大な収入が得られると知った勇吾は、周りを巻き込んでユーチューバーになることを宣言します。自信満々に動画配信を始めますが、その再生回数はいかに…?
17歳の主人公・優子はこれまでに4回も名字が変わり、父親が3人、母親が2人いて、家族の形態が7回も変わる中で生きてきました。しかし、どの親にも目一杯の愛情を受け、優子はまっすぐ成長し幸せに暮らしてきました。