母の愛情はやっぱり偉大
母の愛に溢れた映画<邦画>
湯を沸かすほどの熱い愛(2016年公開)
双葉の大きな母の愛を描きつつも、テーマは母からもらえなかった愛。家族の物語でもあり、1人の美しい女の生き様を描いた物語でもあります。ラストのゾクゾクする展開からは、本作が伝えたい想いの強さがまざまざと感じとれますよ。
わが母の記(2012年公開)
ある日作家の井上浩作にきた連絡は、伊豆に住む父親の危篤の知らせでした。父親を見舞い一度帰宅したものの、まもなく父親の訃報が入り再び伊豆へ。意味不明な発言や物忘れなど認知症の症状が出始めた母と、相対します。浩作はかつて母に捨てられた記憶があり、うまく母と向き合えずにいました。時間が経ちますます症状が進む母は、やがて徘徊を繰り返すようになり・・・。
文豪、井上靖が自らの体験をまとめた実話を基にした映画。親子とはいえ、いや親子だからこそ、どれほど時が流れても「なんであの時・・・」と思うことは大なり小なりあるでしょう。認知症で息子を忘れながらも、息子への愛は決して忘れなかった母。純粋に母を慕う思いを取り戻すには十分すぎる愛です。解いておかなければいけないわだかまり、あなたはないですか?
きみはいい子(2015年公開)
新米教師で責任転嫁グセのある岡本は、子供から信頼されず学級崩壊寸前。旦那が単身赴任のため娘と2人で暮らす雅美は、時折娘に手をあげてしまいます。雅美と同じマンションの陽子は、子供たちを溺愛しながらも悲しい過去を抱えていました。一人暮らしの老婆、あきこは家の前で自閉症の女の子を保護します。同じ街で暮らす大人たちが、子供を導く人として悩み葛藤し、乗り越えていく物語です。
誰だって子供との間に強い絆を育みたいですし、良い母親、良い教育者になろうという思いはあるでしょう。でも、人間。怒りもしますしイライラもしますし、疲れたり投げ出したかったり諦めたかったり。それでも子供はその感情を投げつけていい対象ではありません。わかっているからこそ、苦しい。そんな心をぎゅっと抱きしめてくれる映画です。
はなちゃんのみそ汁(2014年公開)
25歳で乳がんと診断された千恵。手術と治療のかいあって乗り越え、望めないと思っていた子供を授かります。娘のはなちゃんはすくすくと育ちますが、がんが再発。4歳になったはなちゃんに千恵が始めたのは、みそ汁の作り方を教えることでした。
お母さんの安武千恵さんは実在の人物です。はなちゃんにみそ汁の作り方を教えたのも実話。千恵さんははなちゃんが5歳の時に33歳の若さでこの世を去りましたが、はなちゃんは今もキッチンに立ちその後の料理生活を描いたエッセイも発売されています。映画の中で、踏み台を持ってきてみそ汁を作る姿には涙が止まりません。一緒に生きることもですが、何を遺していくかを考え抜くのも母だからこその愛ですね。
星になった少年(2005年公開)
動物プロダクションの家業の息子、テツ。学校でいじめられ心に陰りを秘めつつ、両親を手伝い動物たちの世話をしながらく暮らしています。そんなある日、母が長年の夢だった象を迎え入れることに。1頭目のミッキーに続き2頭目のランディもやってきて、世話をする中でテツは象使いになりたいと思うようになります。
こちらも実話を基にした映画。テツのモデルである哲夢さんは象使いになるためタイへの留学を母に懇願し、反対されても頼み込んで期限付きでタイへ行きました。日本初の象使いであり、タイの学校でも初めての外国人生徒だったそうです。子供が夢に向かって歩き出した時どう背中を押すかを考えさせらます。
母の愛に溢れた映画<洋画>
ルーム(2015年公開)
入り口が一つ、窓は天井に小さくあるのみの小屋。その狭い部屋で監禁される母親のジョイと息子のジャック。監禁犯であるオールドニックに囚われ7年、ジャックは犯人との間にできた子です。ある時犯人が無職となり生活が困窮し始め、ジョイは脱出を試みます。やっと出られた外の世界、しかしそこに待っていたのは・・・。
脱出前、小さな部屋で息子を懸命に育てる姿が印象的ですが、実は脱出後の方が重要なテーマである本作。大人は自分よりも小さくか弱い子供を守ろうとしますが、子供は純真無垢だからこそ何事にも適応でき、大人はそうはいかないこともあります。ジョイと彼女を取り巻く人々の葛藤と、母を救うジャックの愛に家族を考えさせられます。
愛する人(2009年公開)
年老いた母と暮らすカレンは、かつて14歳の時娘を出産しました。その娘、エリザベスは養父母に育てられ現在37歳。弁護士として働いていますが、同僚の不倫相手との間に子供ができキャリアを捨てる道を選びます。母になる前に母親を探す決意をしたエリザベスは、赤ん坊の頃預けられた乳児院を訪れ母への手紙をシスターに託します。
本作にはたくさんの“母”が登場します。若くして出産し娘を手放す母。娘を信じてやれずずっと責任を感じる母。子供が産めず養子縁組に希望を託す母。見終わった後には温かさとほろ苦さの両方が残り、だからこそリアルなのかもしれません。共感というよりは、今子供といられる、母といられる幸せを噛みしめる、そんな映画です。
チョコレートドーナツ(2014年公開)
パブで働くルディはゲイの男性で、客としてきたポールと恋に落ちます。ある日ルディの隣の家から爆音が聞こえ、ドアが全開でした。中にはダウン症の少年マルコ。母親は麻薬の使用で逮捕され家に戻らないことがわかり、ルディとポールはマルコを引き取ろうとしますが、ゲイであることを理由に厳しい批判にさらされます。
本当に残念なことに、母親だから必ず愛があるとは限りません。否、愛の定義の違いでしょうか。与えられるべき愛情を誰が埋めるか、それが女性とは限らない。ゲイだとかパブで働いているとかの前に、その人が愛に溢れているかどうか、実は子供自身が一番わかっているのかもしれません。衝撃のラスト、心して見てくださいね。
マダム・イン・ニューヨーク(2012年公開)
夫と2人の子供と仲良く暮らすインド人のお母さん、シャシ。彼女の特技は美味しいお菓子作りで家族のために家事をこなす日々ですが、夫には菓子作りしかできない、子供にはお母さんの英語は変だと言われ、自分の居場所を見失いそうになります。そこでシャシは、親族の結婚式で訪れたニューヨークで英会話を習得する決意をして・・・。
お母さんは家事を担当して当然、それが専業主婦ならばなおさら。それでいてお母さんや主婦という役割をどこか小馬鹿にしているような。シャシの夫や子供のような態度は日本のどこかにもごく普通にありそうな光景です。自分を解き放ちニューヨーク生活を楽しむシャシはとても輝いており、その姿に力強い勇気をもらえます。
光をくれた人(2016年公開)
トムとイザベルは、共に戦争によって心に傷を負った者同士。手紙を通して心通わせ結婚し、静かな孤島で穏やかな暮らしを手に入れます。しかし2度の流産がイザベルを襲い2人は失意の底へ。そんな時、島に一隻の小舟が流れ着きます。泣き声が聞こえ、そこにいたのは女の子の赤ん坊。神様からの贈り物だと考え育てることにします。
生みの親と育ての親という、長い間家族映画で描かれ続けてきた究極の問いがテーマです。と同時に、戦争や大事な人の死といったやり場のない怒りや悲しみも深く描かれています。登場人物それぞれの激情に胸が苦しくなる映画。たった1人の人生の伴侶や愛しい我が子は、闇夜に浮かぶ灯台の光のごとく揺るぎない道標なのかもしれません。
銭湯を営む幸野家の母、双葉。夫の一浩が1年前に失踪し、娘の安澄と2人で暮らしています。ある日双葉はパートの最中に倒れ、がんに侵され余命2ヵ月と診断されます。夫を見つけ出し、一緒にいた小学生の鮎子も入れて4人で暮らすことになった幸野家。双葉は残された時間を娘と家族のために全力で生きるのです。