探訪 /『 FUSUMA (襖)』が夢を描き切る
Prolog 空間を曖昧に仕切る世界観
部屋同士を仕切る室内建具「襖(ふすま)」は、まさに“可動式の壁” 。軽くて開け閉めが楽な襖は、和の住宅の仕切り戸として長年取り入れられてきました。襖には保温・調湿機能があり、寒さ防止や室内の湿度を調整することができます。通気性に優れ有害物質を吸収してくれるフレキシブルで優れた室内建具なのです。
「襖」の歴史
襖の語源は、平安時代の掛布団だった衾(ふすま)を拡げたような格好に由来するといわれています。
襖は俗に唐紙ともいわれますが、これは中国から渡来した唐紙を上貼して唐紙障子と呼び、やがて唐紙と縮めて用いられるようになったのです。
室町時代になると、無地の布や紙を貼ったものを襖、紋や柄があるものを唐紙と区別して呼んでいたようです。
壮大なキャンバス「襖」の絢爛華麗なる美の世界
美しい襖紙と芸術的とも言える絵画に、その引き手金具が組み合わさり、敷居と鴨居、その全てに職人の技が光る室内建具「襖」の魅力を探っていきましょう。
名古屋城本丸御殿
熊本城本丸御殿
妙心寺 / みょうしんじ(京都市右京区)
大覚寺 / だいかくじ(京都市右京区)
智積院 / ちしゃくいん(京都市東山)
仁和寺御殿 / になじごてん(京都市右京区)
高桐院 意北軒 / こうとういん いほくけん(京都市北区)
島原角屋 / しまばらすみや(京都市下京区)
龍の躍動感と息遣いを感じる雲龍
龍は仏法を守護する存在として禅宗寺院の法堂などの襖絵にしばしば描かれています。また「龍神は水を司る」という思想がありました。日本は木造建築であり火災や地震、雷が多い国です。そのため呪いとして神社仏閣では天井や襖に龍の絵を多く描き、代々大切に受け継がれていきました。
建仁寺 / けんにんじ(京都市東山)
建長寺 / けんちょうじ(神奈川県鎌倉市)
龍野城 / たつのじょう(兵庫県たつの市)
無彩色で描く簡素な美しさに感嘆
大徳寺龍源院 / だいとくじりょうげんいん(京都市北区)
建仁寺 方丈 / けんにんじ ほうじょう(京都市東山区)
龍潭寺 方丈 / りょうたんじ ほうじょう(滋賀県彦根市)
相国寺 方丈 / しょうこくじ ほうじょう(京都市上京区)
見る者の想像力を膨らませるユーモラスな抽象画
伝統を重んじる建物の室内に、画家の内なる目に映る姿そのままを自由に描いた抽象画が、琳派の絵師によって描かれていました。当時としては賛否両論、センセーショナルだったのではないでしょうか・・・そんなことを想像すると楽しいですね。
常照皇寺 / じょうしょうこうじ(京都市右京区)
工夫を凝らした襖の引き手金具
桂離宮 笑意軒 / しょういけん(京都市西京区)
伝統と現代アートの融合
思い切った構図、型にとらわれない自由な描画材と画風で描かれた襖絵には、現代画家たちの個性が活かされ、不思議と伝統的空間の中に調和しています。
青蓮院 華頂殿 / しょうれんいん かちょうでん(京都市東山区)
建仁寺 / けんにんじ(京都市東山区)
「襖絵の美術館」に出かけませんか?
「襖」と言う室内建具に描かれた絵画。素晴らしい芸術的作品が多く残されています。単に絵画として壁を飾るだけではなく、間仕切りになり、取り払えば大広間にもなる。機能的建具として、その芸術性が高く評価されています。「襖絵の美術館」に出かけてみませんか?
健仁寺の「雲龍図」。双璧をなす二頭の龍の姿に圧巻です。