先人の知恵を活かす、昔ながらの涼みかた
現代の夏は、猛暑・酷暑という言葉が生まれるほど、気温が高くなっています。
熱中症を防ぐため、冷房器具を使って室温を調整して体調管理をすることが大切です。
けれど、冷房の風に長時間当たることが苦手な方は、頼り過ぎてしまうとかえって体調をくずしてしまうこともありますよね。
熱中症を防ぐため、冷房器具を使って室温を調整して体調管理をすることが大切です。
けれど、冷房の風に長時間当たることが苦手な方は、頼り過ぎてしまうとかえって体調をくずしてしまうこともありますよね。
はるか昔の人たちは、どのように涼んでいたのでしょうか。
その「涼」のとりかたには、エアコンなどの冷房器具がなかった時代だからこそ、先人たちの知恵が活かされています。
目や耳から「涼」を感じることで、風情を感じる心地良い時間が生まれます。
夏をより快適に過ごす知恵を、そのルーツを知りながら上手に取り入れていきましょう。
その「涼」のとりかたには、エアコンなどの冷房器具がなかった時代だからこそ、先人たちの知恵が活かされています。
目や耳から「涼」を感じることで、風情を感じる心地良い時間が生まれます。
夏をより快適に過ごす知恵を、そのルーツを知りながら上手に取り入れていきましょう。
昔の日本の涼み方
打ち水
ルーツ
戦国から安土桃山時代を経て成立した「茶の湯(茶道)」での礼儀作法のひとつとして「打ち水」が行われていました。
その後、江戸時代になって一般の人々へも浸透していきます。
その目的は夏の暑さを和らげて"涼"をとったり、土埃をおさえることのほかに、お客様を招く時に玄関先や道に水を撒くことでお清めの意味もあったといわれています。
その後、江戸時代になって一般の人々へも浸透していきます。
その目的は夏の暑さを和らげて"涼"をとったり、土埃をおさえることのほかに、お客様を招く時に玄関先や道に水を撒くことでお清めの意味もあったといわれています。
効果的な方法
最も効果的な時間帯なのは、朝と夕方。昼間は避けた方がいいといわれています。
その理由は、昼間は気温が高すぎるため打ち水をしてもすぐに蒸発してしまうため。その蒸発した水分により湿度が一気に上がり、不快感が増すことも。
そのため時間帯を選び、一度ではなく数回に分けて少量を行うのがベストです。
その理由は、昼間は気温が高すぎるため打ち水をしてもすぐに蒸発してしまうため。その蒸発した水分により湿度が一気に上がり、不快感が増すことも。
そのため時間帯を選び、一度ではなく数回に分けて少量を行うのがベストです。
現代での活用法 ~ベランダに残り水を使って~
打ち水でより効果があるのは、土や芝生ではなくアスファルトの道路など。打ち水をすることで、水が蒸発する際に周囲の温度を下げることができ、濡れた地面を通る風も冷やされて涼やかに。
マンションなどの集合住宅で難しい場合は、ベランダに水を巻けば、室内に入ってくる熱気を和らげることができます。お風呂の残り水を使用するなど、水の二次利用を意識すればエコにも繋がり理想的ですね。
マンションなどの集合住宅で難しい場合は、ベランダに水を巻けば、室内に入ってくる熱気を和らげることができます。お風呂の残り水を使用するなど、水の二次利用を意識すればエコにも繋がり理想的ですね。
簾(すだれ)・葦簀(よしず)
素材と使い方の違い
すだれは竹を細く割ったもの、よしずは葦で作られています。すだれとよしずは遮光(太陽の光を遮る)という目的で使われます。
すだれやよしずの歴史
すだれは、万葉集にも出てくる古い歴史のあるもの。その目的も現代と同じく日よけや部屋の間仕切り。よしずは、起源が定かではありませんが、江戸時代には原料の葦を使った屋根や天井の建物が作られていたようです。
効果的な使用方法
どちらも部屋に日差しが差し込まないように、遮る効果があります。また窓との間に空気の層を作り室内へ直接熱が伝わらないようにカットすることも◎ さらに竹や葦の間を通り風が流れて涼しく感じるので、夏には欠かせない必需品です。
現代での使用方法
天然の素材だけではなく、最近は樹脂製の軽いものや小さめのすだれやよしずも販売されています。窓からの日差しを遮るため断熱効果があり、エアコン代の節約にも。
また現代では部屋の間仕切りとしての活用も注目されています。天井から吊るしたすだれの間仕切りなら、必要に応じて開閉できるのでエアコンの風を直接当てない空間を作ることも可能です。
また現代では部屋の間仕切りとしての活用も注目されています。天井から吊るしたすだれの間仕切りなら、必要に応じて開閉できるのでエアコンの風を直接当てない空間を作ることも可能です。
い草
い草を使った快適アイテム
い草の香りが漂うだけで、どこか懐かしい気持ちになります。ところがい草の生産はとても手がかかるため、最近では外国産が増加する傾向も。ござやラグ、座布団にスリッパなど今の私たちの暮らしにも使えるアイテムがたくさん販売されています。
快適な理由
い草は吸湿性・放湿性に優れているので、さらっとして快適な使用感を味わえます。またい草の香り成分は、フィトン、バニリンなど。これらにはリラックスできる効果が期待でき、森林浴と同じ効果があるといわれています。おうちにいながら、自然の中を散歩する気分を味わえることになりますね。
現代での活用方法 ~クッションやラグで楽しむ~
マンションなどの集合住宅では、フローリングのおうちが増えています。畳を敷いた和室がないという現代でも、フローリングに置くだけで使用できる置き畳やラグなど、い草を使って"涼"を味わう方法はたくさんあります。ぜひい草を積極的に活用して、森林浴気分を味わいましょう。
うちわ
うちわの歴史
中国から渡来したうちわが現代のような形になったのは室町時代。それまでは威厳を正すために位の高い人が顔を隠すために使っていましたが、扇ぐことで暑さをしのいだり、火を起こすための送風を目的に使われるようになりました。
うちわだから感じられる"涼"
ハンディファンなどの便利なアイテムがたくさんある現代ですが、ゆったりと自分のペースで調節できるうちわだからこそ、刺激的な涼しさではなく体に優しい"涼"を感じることが可能に。
現代での活用方法
うちわは、現代では様々なデザインが販売されています。またそのサイズも小さめの幅17cm程度のものから、バッグに入れやすい柄の部分がない丸い形だけのものなど豊富です。扇ぐ時の周りのスペースや持ち歩く際のバッグとの相性を考えながら上手に使ってみてください。
風鈴
風鈴の歴史
仏教とともに中国から伝来した風鈴は「風鐸(ふうたく)」と呼ばれていました。はじめは青銅製で、風向きや音の鳴り方などで物事の吉凶を占うためのものだったようです。その後、平安時代になって魔除けとして貴族が使用するようになり、江戸時代にガラスで作られた現代の風鈴が流行したと伝えられています。
現代での活用方法
風鈴を飾ったからといって、温度が下がるなどの体感の涼しさを感じるわけではありません。
けれど、風鈴の音を耳にするだけで、風情や趣のある音色に風が通り抜ける心地よさを感じることができます。常に風が出ているエアコンの近くではなく、窓辺に飾って風を感じるような使い方がおすすめです。
けれど、風鈴の音を耳にするだけで、風情や趣のある音色に風が通り抜ける心地よさを感じることができます。常に風が出ているエアコンの近くではなく、窓辺に飾って風を感じるような使い方がおすすめです。
食で得られる"涼"
エアコンがなかった時代は、食で"涼"をとっていた日本人。そこで現代の私たちもおいしくて涼やかな気持ちを感じられる食に注目してみましょう。
ところてん
歴史
ところてんは、精進料理の伝来とともに約1500年ほど前に中国から日本に伝えられたといわれています。その後江戸時代になると"ところてん売り"が町を売り歩くようになりました。
冷蔵庫のなかった時代は、つめたくてさっぱりと食べられるところてんで"涼"を感じていたのかもしれません。
冷蔵庫のなかった時代は、つめたくてさっぱりと食べられるところてんで"涼"を感じていたのかもしれません。
現代の楽しみ方
現代ではアイスに冷たい飲み物など、夏に"涼"を感じられるスイーツもたくさんあります。でも夏バテして食欲がない時はところてんのようなさっぱりしたものこそ食べたくなります。そんなお酢を使った食べ物は食欲を刺激してくれる効果もあるので、夏バテにもぴったりな食べ物です。
夏の和菓子
夏の和菓子の特徴
江戸時代になると、現代でも楽しまれているたくさんの和菓子が登場します。夏といえばやっぱり水ようかんにわらび餅、麩まんじゅう。見た目が涼やかで、口にするのがもったいない芸術品のような和菓子がたくさんあります。
さらにもうひとつ、夏の和菓子の特徴はその水分の多さ。他の和菓子と比べるとかなり水分は高めです。夏にはより涼やかな気持ちになることができます。
さらにもうひとつ、夏の和菓子の特徴はその水分の多さ。他の和菓子と比べるとかなり水分は高めです。夏にはより涼やかな気持ちになることができます。
現代の楽しみ方
有名な老舗の和菓子をお取り寄せして味わうのも素敵ですが、せっかくなら作ってみませんか。自分好みに作ることができれば、いつもとは違う贅沢な味わい方ができますよ。
(レシピ)抹茶寒天と水ようかん
(レシピ)うま味きな粉のわらび餅
風情を楽しみながら涼しい夏を
エアコンはつけてすぐに冷気を感じることができ、快適な暮らしに欠かせないものです。でも日本で暮らしているからこそ楽しめる夏の風情や昔から愛用されている日本の伝統的なモノに再注目することで、いつもとは違う夏を過ごせるかもしれません。
今年はぜひゆっくりと心地よい"涼"を感じるような夏の過ごし方をしてみませんか。
今年はぜひゆっくりと心地よい"涼"を感じるような夏の過ごし方をしてみませんか。