「子は親の背中を見て育つ」は本当です。その背中、意識しませんか
子どもの性格の形成には、彼らにとって身近な親の態度に大きな影響を受けることが、アメリカの心理学者・サイモンズ(P.M.Symonds)によって明らかにされています。
それでは、親は子供の前で、どのような態度・振る舞いを心がければよいのでしょう―――。これが今回の記事のテーマです。
親であるあなたがわが子の前での「態度・振る舞い」について考えることは、子どものためになることはもちろん、きっとあなた自身の成長の機会につながるはず。
サイモンズが示した「親の養育態度」「理想的親子関係」などのデータを見つめながら、親が子供の前で意識したい「態度・振る舞い」について考えてみましょう。
始めに:親の養育態度は「4タイプに偏りやすい」ことを心に留めて
サイモンズ式分類に見る、親の態度の「バランス」の重要性
親子関係の簡単診断テスト
「かまいすぎ」タイプの場合・・・子どもは「幼稚さをもつ」傾向に
一方で、どこか幼稚さを持ちやすく(精神年齢が低い)、他者に対しての依存心を持ちやすい傾向もあるそうです。
「残忍」タイプの場合・・・子どもは「人の顔色をうかがう」傾向に
また子どもを支配しようとする態度がでやすく、いわゆる“毒親”にも多いケースです。子供は従順で服従的な態度を見せることが多くなります。
「甘やかし」タイプの場合・・・子どもは「反抗的になる」傾向に
そのように育てられた子は、人に従うことができなかったり、乱暴をふるったりと、反抗的になってしまうことも。また、不注意が多い、無責任になりやすいということも挙げられます。
「無関心」タイプの場合・・・子どもは「落ち着かなくなる」傾向に
反社会的な行動で、親の気を引こうとする子供も多く、大人になってから承認欲求が顕著に出る場合もあります。
しかし親にとって、子どもへの「態度・ふるまい」の一つの指針として「サイモンズ式分類」は役立つものなので、心に留めておきましょう。
ようやく本題。親の養育態度の「偏り」をセーブする心がけ 5カ条
① 親は子供の失敗を恐れずに、できるだけ先回りの導きをしない
親はついつい心配して、子供が失敗しないようにと先回りしがちです。でも、実はこの失敗にこそ、次を成功に導く鍵が隠されています。できるだけ黙って見守るスタンスで、手を出しすぎないようにしましょう。
命に関わるようなことはもちろん回避すべきですが、そうではない失敗は子供たちにとって成長のステップのひとつなのです。
明らかに子供が失敗しそうだとしても、親は先回りしてそれを手助けせず、まずは見守ってみましょう。どうにかして、子供が自分から失敗を回避できたら、たっぷり褒めてあげましょう。そして、失敗したとしても、そこから何かを見出したなら、失敗した事実ではなく、新たな発見を褒めてあげましょう。
② 子供に行動させる命令をしない。「よい質問」をして、自ら行動させる
子供にある行動を促したい場合、子供が主体的に考えてアクションができるような「質問」をつくるようにしましょう。
子供はただ何かを「やれ」と言われても反抗しがち。中には従順に従う子供もいますが、これでは自分で考える習慣はまったく身に付きません。「〇〇やってみたら、どうなるかな?」と問いかけることで、子供はその場その場のシチュエーションを考える訓練ができます。
それは、主体的にやる意味などを学んでいくステップへと繋がります。
子供が「わからない」とばかり答えるとしても、親は根気強く、「あるとしたら、どんなことかな?」と問いかけましょう。小さな質問を繰り返していくと、子供も徐々に答えを探す方向性を見出せるようになります。答えに正解はありません。子供が「自分で考えた」という過程を評価してあげましょう。
③ 兄弟姉妹は等しく愛し、ひとりひとりの個性を見る
上の子にはつい、「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と言って我慢させてしまうことは日常の生活の中では往々にしてあることです。子供も自分の立場は分かっています。上の子だから、という理由ではなく、「あなたには〇〇ができるからやってほしい」ということを伝えるようにすると、子供は共感しやすくなります。
兄弟姉妹で比べるのではなく、その子の過去と今を比べ、できるようになったことを見つけ、たっぷり褒めてあげましょう。同じ家庭に育っていても、ひとりひとり違った人間なのだと親がしっかりと認識しておくことが重要です。
子供が複数いる親は、どうしても手がかかる子、そうではない子で、態度に差が出てしまうことがあります。
子どもの感受性は豊かなので、そういう態度を受けた子供は「自分ではない兄弟の方が愛されているのか」と卑屈になったり、気を引こうとする性格になる場合も。
また、子どもがゆくゆく成長するにつれ、「お姉ちゃんだから」「お兄ちゃんだから」などといった理由が、やや屁理屈であったことに気づいたりもするでしょう。そのとき、親の愛情の感じ方も、変わってしまいます。
どの子にもしっかりと関心を向け、あなたのことを愛しているということを伝えることが大切。兄弟それぞれの個性に寄り添って対処を変えていきましょう。
④ 子供が心を許している人の悪口は言わない
子供が心を許している、大好きな人たち――。配偶者や先生、子供の友人、そしてその友人の親などを否定することを言うのは良いことではありません。
そもそも人の悪口を、本人がいないところで好き勝手に言って、本人がいたら言わないといった母のふるまいは、子供にとって良い影響を与えません。
たとえばパパや学校の先生は、尊敬すべき存在です。そうしたシーンに遭遇すると、子供は少なからずショックを受けます。そして、自分を否定されたような気持ちになり、顔色をうかがう性格になってしまうことも。
子供にとって大切な存在となる人の悪口は、子供の前では決して言わないようにしましょう。悪口を言うことは、その人を蔑むだけではなく、自分自身をも貶める行為につながっているのです。子供は大人の振舞いをしっかりと見ています。
⑤ 我が家のルールを、みんなできちんと守る
「〇〇ちゃんの家は、お母さんにあのおしゃれな服を買ってもらってた。どうしてわたしの家はダメなの?なんで買ってくれないの?お母さんは私に意地悪なの?」そのように、他人の家庭が羨ましいと訴える子供は多いものです。
しかし言いなりになって、あれもこれも、買い与えたり、許してしまったり・・という「甘やかし」は良くありません。『うちはうち、よそはよそ』。これを徹底できるかどうかで、その家の子育ての基軸が決まります。
それぞれの家庭には、それぞれの家のルールがあります。それは全員が健全で明るい生活を営んでいくうえで必要だと思われることをそれぞれの家で決めたものです。「守るべきものだから守りなさい!」という押し付けではなく、そのルールの素晴らしさを子どもに理解させ、他の家のルールと比べる必要はないことを伝えておきましょう。
“家のルールを守らせる”ことはもちろんですが、“家のルールを作る”ということも大切なんです。
「食事中はテレビを見ない」「月に1回家族会議をする」といった、我が家のルール作りは、“自分はこの家族の一員である”という自己肯定感が育むことに繋がります。「他の家族が羨ましい」と感じるどころか、誇らしい気持ちが芽生えるはず。親が不在にしているときでも、「見られていなければ何をしてもいい」と思うことなく、きっとルールを守ってくれますよ。
家族の一員として、ルールにのっとった役割を与えて、決められたことは守らなければならないのだと理解することは、社会に出たときにも必ず役立ちます。
自立した大人になるための、よりよい道筋をつけるために
これからの時代、「自分で考え、自分で動く」ことができる人が求められる世の中となります。親は子供のもっとも身近な手本として、人としてあるべき道を示すことができるはずです。子供の経験を尊重し、実り多き人生を歩めるよう、バランスの取れた養育態度で導いてあげたいものですね。
これからはAI全盛の時代がやってきます。今の子供たちが大人になる頃には、多くの仕事が機械によって行われるようになっているはずです。機械にできない仕事ができる人間にするためには、自ら「考える」ことがより重要になってきます。
主体性のある子供に育てるためには、親はバランスの取れた養育態度で接する必要があります。支配しすぎず、服従しすぎず、保護しすぎず、拒否しすぎない。上手に中庸を取りつつ、子供たちが自ら考えて、行動する機会を奪わないことがとても大切です。