とはいえ、時間の使い方や電話・メールの仕方に至るまで、人それぞれ基準が違っている「当たり前」という感覚。自分にとっては当たり前でも他人にとっては当たり前じゃないというケースは、たくさんありますよね。
お仕事での「当たり前のことを当たり前に」ってどうすればいい?
ビジネスにおいて「当たり前のことを当たり前に」と言うとき、人によりその真意は様々です。当たり前と言う言葉の裏に隠された真意とはなんでしょうか。少し立ち止まって考えてみましょう。
1. 規範(当たり前のこと)をしっかり(当たり前に)守ること
これは、「約束の時間を守ること」や「身なりを整えること」、「机を整頓すること」など、社会人としての基本的な部分を強調する際に使われます。
2. 与えられた役割(当たり前のこと)を常に(当たり前に)行うこと
この場合は「自分の役割に日々真剣に取り組むこと」、という意味で使われます。自分に与えられた仕事とは言え、慣れてくると初めのころの緊張感が薄れ、単調に感じてしまうこともあるでしょう。
ですが、一人ひとりが役割をしっかり果たすことで全体として大きな成果につながります。小さく思える仕事にも大きな価値があることを強調したい時、またモチベーションを維持したい時にも使われます。
3. 義務(当たり前のこと)を忠実に(当たり前に)遂行すること
例えば、「ある特定の顧客だけに特例を設ける」とか、「フェアでなくてはならない場面において口裏を合わせる」など、他所から持ち込まれるうまい話や誘いに惑わされそうになることがあるかもしれません。
そんな時、目先の利益だけを求めてしまうと判断を誤りかねません。どんな雑音にも惑わされずに「職業倫理に背くことなく職務を遂行せよ」、という意味合いで使われます。
4. 習慣(当たり前のこと)を変えることなく(当たり前に)続けること
これは「今まで続けてきたものを変えることなく続けていく」、という意味で使われます。伝統芸能や伝統工芸など、変わらないことに意味がある分野で率先して使いたい言葉です。
一般企業においては常に変化が求められるため、「変化をおそれて変わらない」という意味では使われるべきではないと言えるでしょう。
5. 使命(当たり前のこと)を共通(当たり前)にすること
この場合は、「企業の理念や情報共有などの行動指針は、社員全員が共にシェアすべき大切なもの」とし、各々が「それに見合った行動をせよ」、という意味で使われます。
同時に、それに反する考えや行動は排除すべきという意図も含まれます。特に悪意のない場合でも実施することを前提として、「当たり前」という言い方が使われます。
英語には訳せないほど多様な「当たり前」という価値観
こうしてみると、ビジネスシーンで使われる「当たり前のことを当たり前に」という言葉には、多くの真意が隠されていることがわかります。それは、英語では簡単に訳すことができないほど含みがありそうです。
職場において「部下に指示が伝わらない」「何を言っても響かない」という思いがあるなら、それはそもそもの「当たり前」という感覚が違っているだけなのかもしれません。
本当に伝えたいことは具体的な言葉で―
「当たり前のことを当たり前に」と言うのは簡単です。けれど、伝えたいことがあるなら「決められたルールはしっかり守る」「自分の担当の仕事に真剣に取り組む」「職業倫理に沿って惑わされることなくフェアに仕事をする」など、具体的な言葉で伝えようとする努力が必要ではないでしょうか。
子どもに伝えたい「当たり前」って何だろう。
「当たり前」が人それぞれ違うことは、ビジネスシーンだけではありません。家庭でも「当たり前」という言葉を使うことって、ありますよね。
子どもに「どうして勉強しなきゃいけないの?」「どうして学校に行くの?」と聞かれた時、「まだ子どもなんだからそれをするのが当たり前でしょ」のように答えてはいないでしょうか。
子どもなりに思うところがあっての質問かもしれません。そんな時、勉強することや学校へ行くことの意味、あるいは勉強といっても様々な分野や手段があることなど、言葉を尽くして説明することが大人の役割ではないでしょうか。
そもそも「当たり前」なんて、無いのかもしれない。
考え方や経験の差によって「当たり前」の感覚が一人ひとり違うのならば、「当たり前」と言う言葉を使って済む場面など、ビジネスシーンはもちろんそれ以外でも無いのかもしれません。
私たちは「言葉を使って伝えること」に、もっと真剣に向き合うべきではないでしょうか。「当たり前」ははじめから無いものとして、相手の心にしっかり伝わる言葉を選んでみませんか?
社会人になり、上司や先輩から「当たり前のことを当たり前にやることが大事」そんな指導をされた経験はありませんか?