豊かな幸せのヒント「ラーゴム」
ラーゴムって?
「ラーゴム」とは「多すぎず少なすぎず、ちょうどよい」という意味で、スウェーデンでは生活において何よりも重んじられている概念なのだそう。心地よくてタイムレス、そして万能ということを追求する考えです。日本にも「知足(足るを知る)」や「中庸」という言葉がありますが、それに似た考え方で物質主義や消費主義とは対局の「ちょうどいい量がいちばん、ほどほどが大事」ということ。
身の丈に合わない衣服や宝飾品を身に着けたり、必要以上の家具や雑貨などに囲まれることで満足感を得るような暮らしは、経済的に過剰な負担がかかるうえ、決して心が満たされることはありません。
「美味しいものをたくさん食べたい!」という欲求を持っている人は多いかもしれませんが、本当にそんな食生活をしていたら、不健康でスタイル的にも残念な体になってしまいますよね。
スウェーデンの人たちは、そのことを十分に理解していて、「ラーゴム」を大切にしています。
それでは、幸福度が高い国として知られるスェーデンの「ラーゴム」を日々の暮らしに取り入れたライフスタイルをご紹介していきましょう。
「ラーゴム」を取り入れたライフスタイル 5つのヒント
1. 一日に一度は、フィーカ(お茶の時間)を楽しむ
一番大事なのは、頑張り過ぎない日々を過ごすこと。「一日中、仕事のことで頭がいっぱい」なんて生活は、体にも心にもよくありません。もちろん、重要で時間的な制約のある仕事を任されているときは、仕事のことしか考えられない日もあるでしょう。
でも、それは特別なケース。それを当たり前だと思って毎日続けていたら、ストレスがたまって、ゆとりのない人になってしまうかもしれません。
スウェーデンに、ラーゴムの概念を形にした「フィーカ」があります。直訳するとお茶をすることなんですが、1人で楽しむコーヒーブレイクと違って、家族や友人・恋人・職場の同僚など身近な人たちとお喋りをしながら楽しくお茶をするのが「フィーカ」。
スウェーデンでは自宅でもカフェでもはたまた公園のベンチでも場所や時間を問わず、1日に何度もフィーカをします。誰かとお喋りをしながら甘いお菓子と飲み物を楽しむことでストレスや緊張が解れ、日常を穏やかな気持ちで過ごせるようになるのだそう。
日本では、一日に何度もお茶をするのは現実的に厳しい人が多いと思いますが、1~2回なら取り入れることができると思いませんか?例えば、夕食の後、家族と一杯のお茶を楽しむ習慣を取り入れ、その日あったことを話したり……、職場だったら1人でランチに出かけても、食後のお茶を会社の休憩室などで同僚たちと楽しむなど、ちょっと行動を変えるだけで取り入れることができますよ。
2. 親しい人を気軽に家に招く
日本でも当然のことではありますが、フィーカを大切な文化としていることからもわかるように、スウェーデン人は家族や友人、隣人との絆をとても大切にします。
スウェーデンでは友人や隣人を招いてのホームパーティがよく開かれますが、ここで重要なポイントになるのが「ラーゴム」。招く側は豪華な食事は用意せず、招かれた側も気張らない手土産を持参します。
日本だと誰かを招くとなると、まず家の片づけをしなきゃとか料理も見栄えがするものをとか、ついつい頑張ってしまいがち。でも「ほどほど」を大切にするスウェーデンではお互いに無理をしないからこそ、日常的に気兼ねなく集まることができるのです。
日本でも、家族や親しい友人同士なら「料理は用意するから、自分が飲みたい物は持ってきて」とか「作りすぎちゃった料理があるから持っていくね」など、声をかけあって集まることができそう。気軽に集まれることができれば、ひんぱんに会えるようになりますよね。
3. 自分にとっての「ちょうどよい」を見つけて実践する
例えば、世界中どこでも子供は甘いお菓子が大好きですが、「好きなだけ食べてもいいよ」なんて言う親はいませんよね。だからと言って厳しすぎるのも考え物。そこでラーゴムです。
スウェーデンには「土曜日のおやつ」という意味の「ローダースグーディス」という言葉があります。つまり、土曜日は1週間に1度のおやつの日。スーパーマーケットのお菓子売り場はどこも子供たちでいっぱいになります。
多すぎず、少なすぎず。甘いお菓子を週に1度に限定することによってちょうどよいバランスが保て、心身ともに健康でいられるのです。
このように、仕事にしろ人間関係にしろ、自分にとっての「ほどほど」「ちょうどいい」基準を設けて、普段から意識するようにすると必要以上のものを欲しがることがいかに無意味か、ということに気づかせてくれ、心にゆとりをもたらしてくれます。
あなたにとっての「ちょうどいい」を見つめてみてください。食欲だけなく、物欲や周りの人に求める期待など、すべてを思い返して「本当に必要なものなのか」「無かったら、とても困ってしまうものなのか」ということを考え、自分が自分のことを理解するところからはじめてみましょう。過剰にストイックになることはありませんので、無理のない範囲で無くても我慢できるものを考えてみてくださいね。
自分にとって本当に必要なものがわかったら、それを大切にして、それ以外のものは「無くても大丈夫」と自分から解き放ってあげましょう。心が軽くなるかもしれませんよ。
4. オープンマインドを心掛ける
一つのことに執着していると実現することが難しくなるラーゴム。ライフスタイルに取り入れるためには、オープンマインドであることが、とても重要です。
けれど、何事にも執着せず自分にも人にも優しく正直に生きることは、かなり難しいこと。
先入観を捨て心を開いて、様々な人の様々な声に耳を傾けてみましょう。ちょっと苦手だったことも、思い込みを忘れて一度だけチャレンジしてみて。その上で、自分にとって不要なことは取り入れなければいいのですから。
オープンマインドでいることによって何かに固執することがなくなると、肩の力もほど良く抜けて日々の生活を穏やかに過ごせるようになるかもしれません。
5. 自然を愛する暮らしをする
スウェーデンの人は冬が厳しく長いからこそ、緑と光が溢れる季節の美しさを知っています。無造作に生える白樺や松の木にハンモックを吊るして、鳥の声、木々のざわめきに耳を澄ます……。そんな自然に寄り添い、あえて何もしない時間をもつことで日常の疲れがリセットされ、新たな活力が湧いてくるのだそう。
仕事をしている日は、フィーカなどを楽しんでも知らず知らずのうちにストレスがたまっているもの。休日には、「緑を眺めながらお茶をする」「草花の手入れをする」など自然に触れる穏やかな時間を過ごすようにしてみてください。人間関係から生じたストレスは、自然の力で癒してもらう、という考え方も素敵だと思いませんか。
いかがでしたか?
人口も政治も社会構造も違うスウェーデンと日本では環境が違うことも多く、ただ真似をすればいいというわけではありませんが、世界幸福度ランキングで常に上位に位置するスウェーデンのライフスタイルを、あなた流にアレンジして取り入れてみてくださいね。
世界的に注目を集めているデンマークの「ヒュッゲ」。ほっとする、安心できる、心地いい、というようなデンマーク人が大切にしている時間の過ごし方や心の持ち方を表す言葉ですが、お隣のスウェーデンにも「ラーゴム(Lagom)」と呼ばれる概念があります。今回は「ヒュッゲ」に続いて、生活の中に取りいれたいスウェーデンの「ラーゴム」についてご紹介します。