めくるめく本とことばの世界
紙をなでる感触、ページをめくる音……五感をとおして想像力をかき立ててくれる本は、遠く別の世界へと私たちを連れていってくれます。
なにげなく開いた本の言葉に救われたり、人生で迷ったときに正しい方向を示してくれたり。1冊の本とのちいさな出合いが、思いのほか自分にとって大きな存在にふくらむことは往々にしてあること。そんな本を多く持つ人ほど、きっと幸せでしょう。1日のなかに少し本との時間を作るだけで、ずいぶん心が潤う気すらします。
そんな幸福な本の世界を、可愛らしい色や形の雑貨と組み合わせ表現するインスタグラムがあります。
なにげなく開いた本の言葉に救われたり、人生で迷ったときに正しい方向を示してくれたり。1冊の本とのちいさな出合いが、思いのほか自分にとって大きな存在にふくらむことは往々にしてあること。そんな本を多く持つ人ほど、きっと幸せでしょう。1日のなかに少し本との時間を作るだけで、ずいぶん心が潤う気すらします。
そんな幸福な本の世界を、可愛らしい色や形の雑貨と組み合わせ表現するインスタグラムがあります。
デジタルから伝わる紙の本の魅力。chihoさんのインスタ
chihoさんのフィルターをとおして広がる本の世界と、そこによりそう優しい言葉たち。chihoさんのインスタグラムには、可愛らしく、ときに切なく、感情をそっとゆり動かすような投稿が並びます。
chihoさんが本の世界を生きているのか、それとも、本の登場人物や言葉たちがchihoさんのなかに息づいて一緒に物語の続きを生きているのか。どちらにせよ、投稿をみるたびに、気づけばどっぷりとchihoさんの世界に引き込まれてしまっているのです。
下北沢のブックカフェ「RBL CAFE」で本に囲まれながら、chihoさんのインスタグラムと本のことを伺いました。
chihoさんが本の世界を生きているのか、それとも、本の登場人物や言葉たちがchihoさんのなかに息づいて一緒に物語の続きを生きているのか。どちらにせよ、投稿をみるたびに、気づけばどっぷりとchihoさんの世界に引き込まれてしまっているのです。
下北沢のブックカフェ「RBL CAFE」で本に囲まれながら、chihoさんのインスタグラムと本のことを伺いました。
――chihoさんのすごく可愛らしい投稿の数々、夢中で読んでしまいました。本の紹介もすごく丁寧にされていて、本への愛があふれたインスタグラムですね。chihoさんが本好きになったきっかけがあれば教えてください。
本の内容はもちろんですが、紙の本の手触りやデザイン、インクの匂いが好きなんです。本を手にしたら、まずインクの匂いを嗅いじゃいます(笑)。きっかけなんて考えたこともありませんでしたが、本好きはおそらく父の血です。はじめて本を読む楽しさを教えてくれた本は、ポール・ギャリコの「ハリスおばさんパリへ行く」。本の世界に入って、本当にハリスおばさんと一緒にパリにいるようで……くり返しくり返し読んだ一冊です。
本の内容はもちろんですが、紙の本の手触りやデザイン、インクの匂いが好きなんです。本を手にしたら、まずインクの匂いを嗅いじゃいます(笑)。きっかけなんて考えたこともありませんでしたが、本好きはおそらく父の血です。はじめて本を読む楽しさを教えてくれた本は、ポール・ギャリコの「ハリスおばさんパリへ行く」。本の世界に入って、本当にハリスおばさんと一緒にパリにいるようで……くり返しくり返し読んだ一冊です。
本と雑貨と言葉と。自由に広がる本の世界をインスタで
――インスタで本の発信するようになったのは、どんなことがきっかけですか?
最初は、愛用しているファッションアイテムや小さなモノを記録として残そうと、なんとなく始めました。でもよく考えたら私の「大切なもの」はぜんぶ、本だったんです(笑)。本なくして「今の自分」もなかっただろうというくらい、長いこと拾いあつめた”本からの言葉”で、私はできています。 結局のところ私には、本しか発信できるものがなかったんだと思います。
――本と雑貨をレイアウトして撮影する今の形は、どのように生まれたのですか。
私が手元に置いておきたいと思う本のほとんどは、装幀に魅力があるもの。ですが、残念ながら私は、それを素敵にみせる写真の技術を持ち合わせていないので、テキスタイルや雑貨の力を借りてしまえ!のズルい作戦です(笑)。時々、本のデザイン以上にまわりの主張が強すぎて反省したり。本の上まで飾りたててしまったときは(作者から)お叱りを受けないかしらとビクビクしたり。でも基本にあるのは、「この子を可愛く見せたい」と思う親心です。
最初は、愛用しているファッションアイテムや小さなモノを記録として残そうと、なんとなく始めました。でもよく考えたら私の「大切なもの」はぜんぶ、本だったんです(笑)。本なくして「今の自分」もなかっただろうというくらい、長いこと拾いあつめた”本からの言葉”で、私はできています。 結局のところ私には、本しか発信できるものがなかったんだと思います。
――本と雑貨をレイアウトして撮影する今の形は、どのように生まれたのですか。
私が手元に置いておきたいと思う本のほとんどは、装幀に魅力があるもの。ですが、残念ながら私は、それを素敵にみせる写真の技術を持ち合わせていないので、テキスタイルや雑貨の力を借りてしまえ!のズルい作戦です(笑)。時々、本のデザイン以上にまわりの主張が強すぎて反省したり。本の上まで飾りたててしまったときは(作者から)お叱りを受けないかしらとビクビクしたり。でも基本にあるのは、「この子を可愛く見せたい」と思う親心です。
――可愛らしい雑貨を並べてつくられるchihoさんの世界観が、本当に素敵です。どういう風にイメージを固めていくのですか。
たとえば「この人にこういうメッセージを送りたい」という思いで言葉から選んでイメージを決めていくときもあれば、本からセレクトすることもあります。 あとは、友人からいただいた大切な布やパーツがあったら、それにあわせて本や雑貨を選んでいくこともあります。
たとえば「この人にこういうメッセージを送りたい」という思いで言葉から選んでイメージを決めていくときもあれば、本からセレクトすることもあります。 あとは、友人からいただいた大切な布やパーツがあったら、それにあわせて本や雑貨を選んでいくこともあります。
――著者や出版の方から「いいね!」をいただくことも?
はい、もうビックリしてしまって。タグでみつけて来てくださって何気なく「いいね!」されただけかもしれないけど、書いた方と一瞬でも繋がれるって、インスタグラムでないとあり得ないことじゃないですか。「素敵に紹介してくれてありがとう」っていうコメントを頂くこともあって、本当にうれしいです!
はい、もうビックリしてしまって。タグでみつけて来てくださって何気なく「いいね!」されただけかもしれないけど、書いた方と一瞬でも繋がれるって、インスタグラムでないとあり得ないことじゃないですか。「素敵に紹介してくれてありがとう」っていうコメントを頂くこともあって、本当にうれしいです!
寝る時間を削ってでも大切にしたい、本との時間
――フルタイムでのお仕事と家事でお忙しいと思うんですが、1日のどの時間帯を読書に充てられてるんですか?
電車通勤だとその間に読むことも出来ますが、私は徒歩通勤なので、本を読むのは 夜寝る前の1~2時間と休日です。本を読む時間はいつも足りていなくて万年寝不足。 だいたいベッドに腰掛けて読むのですが、そのまま倒れて寝てしまうことも(笑)
――なるほど、睡眠時間を削ってまでも読みたいんですね(笑)。ひと月に何冊くらい本を読まれるんですか。
私のインスタの9割以上は本に関するものなので、投稿の数イコール読んだ冊数と思われるかもしれません。でも実際は、読んですぐに発信しているのは新刊本ぐらいです。あとのほとんどは、伝えたい自分の想いにぴったりくるものや、下向きな自分の気持ちをすくい上げてくれるものを、過去に読んだ本の中からひっぱり出してざっくり読み返したり。月平均20冊ちょっとくらいでしょうか。合間に雑誌も4、5冊(笑) 。雑誌も大好きです。
電車通勤だとその間に読むことも出来ますが、私は徒歩通勤なので、本を読むのは 夜寝る前の1~2時間と休日です。本を読む時間はいつも足りていなくて万年寝不足。 だいたいベッドに腰掛けて読むのですが、そのまま倒れて寝てしまうことも(笑)
――なるほど、睡眠時間を削ってまでも読みたいんですね(笑)。ひと月に何冊くらい本を読まれるんですか。
私のインスタの9割以上は本に関するものなので、投稿の数イコール読んだ冊数と思われるかもしれません。でも実際は、読んですぐに発信しているのは新刊本ぐらいです。あとのほとんどは、伝えたい自分の想いにぴったりくるものや、下向きな自分の気持ちをすくい上げてくれるものを、過去に読んだ本の中からひっぱり出してざっくり読み返したり。月平均20冊ちょっとくらいでしょうか。合間に雑誌も4、5冊(笑) 。雑誌も大好きです。
――本屋さんでついつい手に取るのは、どういったジャンルのものが多いですか?
まず解説を読んで(笑)。 純粋に本の好きな方からは石を投げられそうですが、いわゆるジャケ買い、帯買い、解説買いをすることは多いです。小説・全集・文芸作品なども過去にはたくさん読みましたが、最近は読書時間が取れないこともあって、エッセイとか短編集、詩や絵本が多いですね。写真集も好きです。エッセイにしても、それを読むとその人の生き方が分かる、というような本が好きかもしれないです。そして、やっぱり”言葉”ですかね。ポンと自分のなかに入ってきて「はっ」となる言葉があると、手にとってしまいます。
まず解説を読んで(笑)。 純粋に本の好きな方からは石を投げられそうですが、いわゆるジャケ買い、帯買い、解説買いをすることは多いです。小説・全集・文芸作品なども過去にはたくさん読みましたが、最近は読書時間が取れないこともあって、エッセイとか短編集、詩や絵本が多いですね。写真集も好きです。エッセイにしても、それを読むとその人の生き方が分かる、というような本が好きかもしれないです。そして、やっぱり”言葉”ですかね。ポンと自分のなかに入ってきて「はっ」となる言葉があると、手にとってしまいます。
―― chihoさんのインスタグラムは、本を通してその時々の自分の気持ちや、誰かに贈りたい言葉を見つけて伝えてますよね。雑貨と一緒に世界観をつくって、そこに言葉をそえて……ラッピングするかのように誰かに贈っているようだと思いました。
そう言っていただくとそうかもしれないです。 たとえば息子や友人が落ち込んでいたら、自分が前に救われた本の言葉をポンと投稿してみたり。家族や友人は私がインスタやっていることは知らないので、その人が読んでるわけではないんですけど、「頑張れ!」という陰の応援というか自己満足というか(笑)
そう言っていただくとそうかもしれないです。 たとえば息子や友人が落ち込んでいたら、自分が前に救われた本の言葉をポンと投稿してみたり。家族や友人は私がインスタやっていることは知らないので、その人が読んでるわけではないんですけど、「頑張れ!」という陰の応援というか自己満足というか(笑)
――もっともお気に入りと言える特別な本を教えてください。
谷川俊太郎さんの詩のリズム 、松浦弥太郎さんの小さなヒント 、糸井重里さんのはずむ言葉は、私にはなくてはならない生活必需品ですが、特別な本というと「粒子 ミナペルホネンのものづくり」です。色々あった時期にそばにいてくれて、一緒に過ごした大切な本です。
――これは、chihoさんのインスタのアイコンですね!
アイコンを一度も変えていないんですが、これは、初版限定付録の紙のコースターを写したもので、表紙にもなっている、"soda water"というテキスタイルなんです。ミナの本なのでデザインはもちろん素敵ですが、くりぬきのある外箱も、和綴じのカタチも、紙のざらつきも、ぜんぶぜんぶ好きです。あの頃この本が部屋にいてくれて、現実から少し離れることでバランスをとっていたような気がします。考え込んでしまいそうな時間に、この本を眺めては、ミナの世界観にわくわくして。 その本が本棚にあるから、自分の部屋に帰ろう…大げさだけれど、そんな力をもっていたかも。お守りみたいな力です。
谷川俊太郎さんの詩のリズム 、松浦弥太郎さんの小さなヒント 、糸井重里さんのはずむ言葉は、私にはなくてはならない生活必需品ですが、特別な本というと「粒子 ミナペルホネンのものづくり」です。色々あった時期にそばにいてくれて、一緒に過ごした大切な本です。
――これは、chihoさんのインスタのアイコンですね!
アイコンを一度も変えていないんですが、これは、初版限定付録の紙のコースターを写したもので、表紙にもなっている、"soda water"というテキスタイルなんです。ミナの本なのでデザインはもちろん素敵ですが、くりぬきのある外箱も、和綴じのカタチも、紙のざらつきも、ぜんぶぜんぶ好きです。あの頃この本が部屋にいてくれて、現実から少し離れることでバランスをとっていたような気がします。考え込んでしまいそうな時間に、この本を眺めては、ミナの世界観にわくわくして。 その本が本棚にあるから、自分の部屋に帰ろう…大げさだけれど、そんな力をもっていたかも。お守りみたいな力です。
―― chihoさんにとって、本はどんな存在ですか。
私の行為は「本を読む」というより、「言葉を拾いあつめる」に近いと思っています。 ときに小さな記憶の欠片を思い出すヒントや、目の前のやっかいな色々をとびこえる力をくれる言葉たちは、私の大切な宝物。 本の世界で宝探しをするのが日々のささやかな楽しみです。 また、私にとって、カタチあるものとしての「本」の存在は、それ以上です。 デザインや装幀、紙の手触り、インクのにおい、そこに文字が並んでいる1ページを愛おしく感じたり、ドキドキするくらいまぶしかったり(笑)。本屋さんへ本に会いに行くことが、私の小さな幸せです。
私の行為は「本を読む」というより、「言葉を拾いあつめる」に近いと思っています。 ときに小さな記憶の欠片を思い出すヒントや、目の前のやっかいな色々をとびこえる力をくれる言葉たちは、私の大切な宝物。 本の世界で宝探しをするのが日々のささやかな楽しみです。 また、私にとって、カタチあるものとしての「本」の存在は、それ以上です。 デザインや装幀、紙の手触り、インクのにおい、そこに文字が並んでいる1ページを愛おしく感じたり、ドキドキするくらいまぶしかったり(笑)。本屋さんへ本に会いに行くことが、私の小さな幸せです。
最後に――ズバリ、chihoさんにとってインスタグラムとは?
やっと見つけた自分だけの秘密基地
"ただただ好きなものを持ちこんで、気づけば本だらけになっていました(笑)
本を読んでここへ来て、ため息をつく日もあれば、元気なふりをする日もあります。
面と向かっては言えない言葉をそっとおいてみたり、あの頃のせつない想いを本にのせてみたり。
ここは私にとって心を解放する場所であり、本への思いを再確認する場所です。
今は、本屋さんに行かなくても、本を読まなくても、生きていける時代ですが、私は「本は終わらない」と信じているひとり。
これからも、本と仲良く戯れるイメージで(オトナですけど 笑)、それが本の魅力を伝える小さな声になればいいなと、思っています。"
本を読んでここへ来て、ため息をつく日もあれば、元気なふりをする日もあります。
面と向かっては言えない言葉をそっとおいてみたり、あの頃のせつない想いを本にのせてみたり。
ここは私にとって心を解放する場所であり、本への思いを再確認する場所です。
今は、本屋さんに行かなくても、本を読まなくても、生きていける時代ですが、私は「本は終わらない」と信じているひとり。
これからも、本と仲良く戯れるイメージで(オトナですけど 笑)、それが本の魅力を伝える小さな声になればいいなと、思っています。"
本棚に並ぶお気に入りの本は、開くたびに、なんども自分を救ってくれるもの。そして、そういう大切な言葉のかけらは、私たちの血となり肉となり、確実に私たちの一部になっていきます。
chihoさんのなかにずっと息づいている本や言葉たちが、インスタをとおして生き生きとその世界を広げ、わたしたちに語りかけてくれる。
ときには落ち込んだ誰かのための言葉になり、ささくれだった心を柔らかくする言葉にもなる。
大好きな本の主人公と一緒に生きていけたら、心強い味方ができ気分になれそうです。chihoさんのインスタグラムで、あなたの心に住まわせる本を探してみてはどうでしょう。
chihoさんのなかにずっと息づいている本や言葉たちが、インスタをとおして生き生きとその世界を広げ、わたしたちに語りかけてくれる。
ときには落ち込んだ誰かのための言葉になり、ささくれだった心を柔らかくする言葉にもなる。
大好きな本の主人公と一緒に生きていけたら、心強い味方ができ気分になれそうです。chihoさんのインスタグラムで、あなたの心に住まわせる本を探してみてはどうでしょう。
chihoさんのインスタグラムはこちらから。
■取材協力■
今回取材で場所をお借りしたのは、下北沢から徒歩5分のブックカフェ「RBL CAFE」。壁両面には、クイズ作家さんの貯蔵本がずらり。カフェでの利用はもちろん、イベントでの使用を前提とした設備も整っています。
///// RBL CAFE /////
営業時間:毎週金・土・日・祝 13時~22時
(※臨時休業する場合もあるので、事前にHPで確認を。)
場所:東京都世田谷区代沢5-32-12
営業時間:毎週金・土・日・祝 13時~22時
(※臨時休業する場合もあるので、事前にHPで確認を。)
場所:東京都世田谷区代沢5-32-12
(取材・文/西岡真実)
「chihoさんとってのインスタグラム」を写真で表現していただいたのがこちらの一枚。