日本語の美しさは唯一無二

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小川洋子
小川洋子プロフィール
密やかな結晶|講談社文庫

薬指の標本|新潮社文庫

サイダー工場で薬指を失い、標本製作所で働くことになった「わたし」。そこは、いろいろな人がいろいろな標本を頼みにくる場所。「わたし」は、標本製作者の「弟子丸」からあまりにぴったりな靴をもらう。「わたし」と「弟子丸」の間にあるのは、愛なのか―。淡々と進むストーリーは、求めること、求められることで生きる人間らしい泥臭さと、鮮やかなコントラストになっています。
沈黙博物館|ちくま文庫

老婆に雇われある村にやってきた「僕」は、博物館を建設する技師。亡くなった人々の形見を展示する博物館を建てるため、形見を盗み始める。そんな中、村で殺人事件が起きて「僕」が犯人と疑われてしまい・・・。静かに進むストーリーはサスペンスでありながらどこか神秘的なファンタジーでもあり、人の生きた痕跡、そして自分の形見について否が応でも考えさせられます。
上橋菜穂子
上橋菜穂子プロフィール
精霊の守り人|新潮文庫

腕利きの女用心棒「バルサ」は、川で皇子「チャグム」を助ける。精霊の卵をうちに宿したチャグムは父である皇帝に命を狙われており、バルサはチャグムの母からの依頼でチャグムを守ることに。チャグムを狙うのは皇帝の刺客だけでなく、精霊の卵を狙う魔物もだった。幼なじみの助けも得て、2人は戦いに挑んでいく-。壮大の世界観と、ともに旅をしているかのような感覚に、ページをめくる手が止まりません。
物語ること、生きること|講談社文庫

作家・上橋菜穂子が生まれた背景には、祖母の存在。作家になることを夢見ながらも、手探りのまま20代になって文化人類学を志し、やがて作家になってからは「作家として生きつづける」ことの難しさを感じる日々-。豊かな読書体験から、今を生きる等身大の姿まで上橋氏本人が優しく語った本です。夢を追いかけ、自分らしく生きることの喜びを教えてくます。
鹿の王|角川文庫

「ヴァン」は、元は帝国に立ち向かう戦士団の頭だったが、今は奴隷に落ち岩塩鉱に囚われていた。ある夜不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、噛まれた人が謎の病を発症。ヴァンは生き延び、竈に隠されていた幼子を拾って2人で逃げる。一方で王幡領では移住民だけがかかる病が広がっており・・・。ファンタジーと医療ミステリーが絡み合った緻密なストーリー。予想もしない展開と、生を追う人間の力強さに胸打たれる物語です。
宮沢賢治
宮沢賢治プロフィール
銀河鉄道の夜|新潮文庫

いじめられっ子で孤独な少年「ジョバンニ」は、病気がちな母に変わり朝早くから働く日々。行方不明の父のせいで学校の友達にもからかわれるジョバンニの唯一の味方が、親友の「カンパネラ」。ある日もクラスメイトにからかわれ耐えきれず丘へと走ると、目の前に急に列車が現れ、車内にはカンパネラの姿が・・・。幻想的でほっこりするストーリーながら、友情や生きる喜びを思って胸が苦しくなります。
春と修羅/愛蔵版詩集 第1期|日本図書センター

宮沢賢治の生前に発表された詩集。賢治本人が「心象スケッチ」と表現した通り、文字で絵を描くような独特な表現が特徴です。毎日の生活や過ぎていく季節、そして激しい情動。賢治は熱心な法華信仰者で、修羅という表現からはそうした仏教観念も伝わってきます。
注文の多い料理店|新潮文庫

2人の男性がお腹をすかせて森の中を歩いていると、1軒の西洋料理店「山猫軒」を見つける。喜び勇んで入店するが、「帽子と外套を脱いで・・・」「体にクリームを塗って・・・」とやることがいっぱいでなかなか席までたどり着けず・・・。老若男女に愛される不朽の名作。賢治の生前に発表されたのは、「春と修羅」と「注文の多い料理店」の2作のみです。
谷崎潤一郎
谷崎潤一郎プロフィール
細雪|新潮文庫

大阪の裕福な家庭、蒔岡家の三女の雪子は、多くの縁談話があるもののなかなか結婚できない美人女性。姉2人は婿を迎え、妹は未婚。あるとき、新聞に蒔岡家の恥となるような恋愛話が載ってしまい、雪子はますます行き遅れ、妹の妙子は人形作りに勤しむように。4人姉妹の会話が美しい船場言葉で描かれながら、ゆるやかに季節が過ぎていく少し切ない物語です。
春琴抄|新潮文庫

大阪の薬種商、鵙屋家の娘の春琴は9歳の時に盲目となり、琴や三味線の世界に生きる。そんな春琴を慕うのが奉公人の佐助。わがままで気の強い春琴を思い続ける従順な佐助の愛は、どこまでもマゾヒスティックで、まさに盲目的―。思慕の情が美しく、そして生々しく描かれた作品です。
猫と庄造と二人のおんな|中央文庫

飼い猫のリリーを異常なほど溺愛する庄造と、その猫に嫉妬する品子と福子。猫を追い出そうとしたり、庄造をつなぎとめるために猫を引き取ったり、そこには三者三様の愛のカタチがある。「隷属」とその幸福について考え続けた谷崎が送る、隷属の拒否がもたらす愛憎の世界が、テーマとはうらはらに伸びやかに描かれています。
石牟礼道子
石牟礼道子プロフィール
新装版 苦海浄土 |講談社文庫

1956年に患者発生が報告された水俣病は、工業廃水の中に含まれていたメチル水銀化合物を、魚を介して体内に取り込んだ人が神経系の中毒症を起こした公害。「わたし」と出会った「九平」という少年もまた水俣病で、目が見えず手足の自由が効かない―。多くの水俣病患者に耳を傾けそれを記録した苦海浄土は、重く悲しい内容です。しかし、現地の言葉で綴られる患者の声からは、魂の美しさすら感じます。
はにかみの国|石風社

石牟礼道子が残した詩をまとめた詩集。自身のふるさとや自然界のあらゆるものについて、短くも優しく、そして奥深い言葉で綴られています。美しい日本語は時に意味を調べながら読み進める言葉も登場しますが、何度も何度も読み返してその意味が体に染みてくる感覚を味わいたくなります。水俣の命を見つめてきた石牟礼道子だからこそ描ける、終わりある生命の神秘を詰め込んだ本です。
あやとりの記|福音館書店

3歳の「みっちん」は、この世界の人かちょっとあやしい「神様になりかけている」人々との交流を通し、宇宙の真理に触れていく-。児童文学に分類されているけれど、不思議な世界観の短編集を読んでいるようです。世界の隅っこで生きる人々の姿かたちではなく魂こそが重要であり、そんな普遍的な心理があたたかみのある熊本弁で綴られています。ふわふわとした夢物語ながら、現代社会をじっと見つめたくなる物語。
胸に響く美しき日本語の世界へ





























小さな島に暮らす小説家の「わたし」と、幼い頃から世話をしてくれる「おじいさん」。その島は、記憶やモノがどんどん消えていく島。記憶をなくさない記憶保持者は秘密警察に連行され、かつて「わたし」も母を秘密警察に奪われていた。二度と大切な人を奪われまいと、担当編集者で記憶保持者の「R」を家に匿うことにした「わたし」。こうして3人の奇妙な同居生活が始まり・・・。失うことへの恐怖の奥に見える、儚く美しい人間物語です。