『ホットフラッシュ』きちんと向き合えていますか?
不安を和らげるための最初の一歩は、不安の正体を明らかにすること。まずは『ホットフラッシュ』がどんな症状で、どういう対策をしていけばいいのか、ひとつずつ理解を深めていきましょう。
『ホットフラッシュ』とは?
ホットフラッシュの主な原因
更年期を迎えると、女性の身体は卵巣ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が減少し、自律神経が不安定な状態に陥りやすくなります。自律神経は、血管を収縮・拡張させて体温を調節する機能を担っているため、その働きが乱れると快適なはずの気温にも「暑い」と感じ、熱を放出するよう命令が下ります。すると、急激なほてりやのぼせが起こったり、ドッと汗が噴き出してきたりするのです。
頻度や期間には個人差がある
ホットフラッシュの症状は、閉経を迎える前後の年齢にあらわれることが多く、女性の約6〜7割程度が経験すると言われています。通常は閉経後5年ほどで次第に和らぐとされていますが、頻度や期間は人によってそれぞれです。まったく症状がない、またはほんの数度発症するだけというケースもあれば、閉経後10年以上に渡って続くというケースもあります。
『つらさが周囲に理解されにくい』という二重の悩み
更年期に見られる症状全般に言えることですが、そのつらさが周囲に理解されにくいという点が多くの女性の悩みでもあります。特に男性にとってはわかりづらい部分ですし、職場や家族に状態を打ち明けて助力を求めることはなかなか難しいのが実情のよう。つらさを一人で抱えていることそのものが、もうひとつの悩みとなっているのです。
ホットフラッシュによくある症状
ほてり
胸のあたりから頭頂部にかけての上半身に突然強い熱感を生じ、急激に顔がほてったり紅潮したりするのは、ホットフラッシュの代表的な症状です。はっきりしたタイミングは断定できませんが、緊張した時や感情的になった時、強いストレスを感じた時には特に発症しやすいとも言われます。
のぼせ(冷えのぼせ)
首から上は熱いのに手足は冷たいという「冷えのぼせ」もよく見られます。自律神経の乱れにより、上半身の血管は拡張して放熱しようとする一方、末梢の血管は必要以上に収縮するために起こる症状です。もともと冷え症の傾向がある人は血行が滞りがちなため、冷えのぼせになりやすいと言われています。
発汗
上半身の熱感に大量の汗を伴うケースも少なくありません。
薄く滲む程度の発汗で済めばまだ良いのですが、お化粧が落ちるほどの滝のような汗をかく場合は多くの女性にとって本当に厄介です。頭皮や首裏など、通常あまりかかない部分に汗をかくのもホットフラッシュの特徴のひとつと言われます。
動悸・頭痛・腹痛
血管の急激な拡張に伴って脈拍が増加すると、強い動悸を感じます。またその反面、末端の血管収縮による血行不良が悪化し、冷え症気味な人は特に頭痛や腹痛に繋がる場合があります。
自分でもできる、ホットフラッシュのやわらげ方
記録をつけて症状が起こるタイミングを知る
閉経前に症状が現れている場合は、月経の周期とホットフラッシュが発症するタイミングをこまめに記録してみるのがおすすめです。症状が出やすい時期や状況を把握しておくことで、あらかじめ対策をとりやすくなります。
外出時にも対策を準備して心に余裕を
「外出先でホットフラッシュが起こるのでは…」との不安から、仕事や遊びで外へ出かけることに苦痛を感じてはいないでしょうか?過度な不安感はかえってホットフラッシュを引き起こすきっかけになるという説もあります。外出の際は事前の対策として、汗をよく吸うハンドタオルや簡単な着替え、携帯用の冷却剤やデオドラントスプレーなどを用意しておきましょう。
「いざという時にも大丈夫」と思えるお守りのような備えが、心に少し余裕を持たせてくれます。
温度調節しやすい服を選ぶ
服装は、できるだけ首元や脇まわりに余裕のある通気性の良いデザインのもの、汗を吸ってくれる天然素材を使ったものを選びましょう。また、汗をかいたあとには身体が冷えます。脱ぎ着することで簡単に温度調節できる羽織りものを一枚用意しておくと重宝しますよ。
ほてりを取るだけでなく、冷え性の人は温める用意もする
ほてりやのぼせが起こるとつい身体を冷やすことに集中しがちですが、もともと冷え症の傾向がある人は、きちんとあたためることも忘れずに。末端の冷えをそのままにしておくと、血行不良を促進してかえって症状が悪化してしまうこともあります。靴下をはじめとする保温アイテムをこまめに使い、お風呂でしっかりあたたまるなどのケアを心がけて下さい。
体をほぐす簡単な運動を取り入れる
適度な運動で血行を促すことは、更年期にあらわれるさまざまな症状を軽減させてくれます。時間を見つけて凝った身体をしっかり伸ばし、心身ともにリラックスしましょう。ただし、相手と競い合いながら楽しむタイプのスポーツは、かえって気持ちにストレスを与えることもあります。あくまでリフレッシュを目的に、気持ちよく身体を動かすことが大切です。
食生活を見直してみる
塩辛いものやカフェインを摂り過ぎると、血管を収縮させ、血圧が上がってほてりやのぼせを招きやすくなることがあります。普段の食生活に偏りがないか、バランス良く栄養を摂取できているか、改めて見直してみましょう。女性ホルモンと似た働きをする成分「大豆イソフラボン」が摂取できる大豆製品を毎日適度に取り入れるのもおすすめです。
医療機関に相談する
ホットフラッシュを経験した女性のうち、1割程度の人は日常生活に支障をきたすほどの重い症状に悩んでいると言われています。毎日の仕事や家事がつらく、自分自身でもう対処しきれないと思った時は、迷わず医療機関に相談してみましょう。
ホルモン補充療法や漢方薬など、処方された医薬品で症状がグッと改善できる場合もあります。
リラックスできる香りで気分を回復させる
落ち込んだりイライラしたりして心にストレスを感じることがホットフラッシュの引き金になり、ホットフラッシュの症状自体もまたストレスとなる。そんな悪循環に陥ると、身も心も疲弊してしまいます。リフレッシュの方法はいろいろありますが、アロマテラピーは自宅でいつでも実践できる手軽な方法のひとつです。
香りによって効能も違いますので、気分によって使い分けてもいいですね。ただし一般的な効能よりも優先すべきなのは、自分が一番落ち着く香りを選ぶこと。「この香りを嗅ぐと気分が良くなる」と思えるものが見つかったら、サシェなどにして持ち歩くことで外出先でのリラックスにも使えます。
深い森の中を思わせる清涼なヒノキの香りは、動揺した気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと前向きにしてくれます。また、血行促進作用もあるので、むくみや疲労にも効果的です。
シトラス系の爽やかな香りは、疲れや憂鬱を取り払い、心身をシャキッとリフレッシュさせてくれます。また、心に自信を与え、明るい気持ちにさせてくれる効果も期待できます。
鎮静成分を含むラベンダーの香りは、ストレスによる緊張や怒りを和らげます。自律神経のバランスを整え、気分を安定させるセロトニンや、睡眠ホルモンと呼ばれているメラトニンの分泌を促すため、眠りの質を高めるのにも効果的です。
症状と上手く付き合う気持ちの切り替え方
自分の状態を素直に受け止めてみる
ホットフラッシュをはじめとする更年期の症状は、この先あと何年付き合っていけばいいのかというゴールが見えにくいのも厄介なところです。それならば、「今はそういう時期だから仕方ない」と開き直るのも、実は有効な改善法のひとつ。症状が出ることに神経を尖らせるより、いざという時の準備を整えて気楽に過ごしている方が、実際には発症を抑えられると言われています。
家族や親しい人へ正直に打ち明ける
大量に汗をかいたり、顔が紅潮している状態を、できれば周りの人に知られたくないと思うのは当然のことです。でも、ただでさえ症状自体に苦しんでいるのに、周囲にまで気を遣い過ぎていたら身が持ちません。まずは家族や親しい人に自分の状態を打ち明け、つらい時にはどんな風に協力してほしいのかを話してみましょう。少しずつでも周囲の理解を広めることは、結果的には自分だけでなく、同じ症状に苦しむほかの女性たちにとってもきっと助けになっていくはずです。
焦らず、気負わず、自分らしく向き合いましょう
ホットフラッシュは女性にとって一日も早く解放されたい憂鬱な症状ですが、それだけに休息とリフレッシュはとても大切。
心の状態は、必ずどこかで身体の状態と繋がっています。どんなに忙しくても休息日をきちんと決めて、好きなことを思い切り楽しみましょう。デリケートな時期の心や身体と上手に向き合っていくための自分らしい方法を、ぜひ焦らず、ゆっくり、少しずつ見つけてみて下さい。
上半身や顔が急に熱くなり、時には大量の汗をかく『ホットフラッシュ』は、更年期にあらわれやすい代表的な症状のひとつです。噂には聞いていても、いざ自分にもあてはまると気付いたら、思った以上に動揺したり、年齢を感じて落ち込んだりといったこともあるかもしれません。