あなたの食卓を彩る「うつわ」選び。基本を知って、もっと楽しく
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作ったお料理に合わせてうつわを選ぶのは、とても楽しい時間ですよね。盛りつける量や、雰囲気によって使い分けたり。きっとコレクションしている方も多いのではないでしょうか。
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そんな心ときめく「うつわ」のある暮らしを、よりいっそう楽しく。
今回から3回にわたり、「うつわ」の基礎知識をお届けします。うつわを眺めるのがもっともっと楽しくなりますよ。
▼うつわに親しむ vol.2「名称編」は、こちらから。
例えばあなたがうつわを手に取ったとき、その手に触れている「部分」の名前、言えますか?今回の「うつわに親しむ vol.2」では、うつわの各部分にフォーカスして、役割や名称についてを学んでいきます。食器のお店や陶芸家さんの個展などで、うつわの解説が理解しやすくなるうえ、質問もしやすくなりますよ。毎日食卓でご飯をいただく喜びが、より一層奥深く感じられそうです。
vol.2は、こちらから。
vol.1は釉薬編。うつわの大きな魅力「釉薬」の基礎知識・色見本
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焼き物に欠かせない釉薬(ゆうやく)。うつわの色・風合いを左右するものであり、その釉薬の美しさが、食器を選ぶ際の決定打になることもありますよね。
今回は「釉薬編」として、その奥深い釉薬の世界に親しんでみましょう。
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はじめに、釉薬について前知識を。
釉薬とは、陶磁器の表面に付着させるガラスの被膜のこと。うわぐすりとも呼ばれます。ほとんどの陶磁器は釉薬をかけて、仕上げられているんですよ。
この釉薬をかける作業は、下記のとおり、主に本焼成の前に行われます。
【焼き物づくりの工程】
粘土 → 土練り → 成形 → 半乾燥 → 削り仕上げ → 完全乾燥 → 素焼き → 下絵付け・釉掛け → 本焼成
※そのほか、釉薬をまったくかけないまま焼成する「焼き締め」といった作り方などもあります。
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こちら(画像)が、「釉掛け」の作業。粉状の釉薬の原料を、水に溶いて液状にしたものに、うつわを浸したり塗ったりして、釉を施していきます。
釉薬をかけて本焼きをすると、釉薬が溶け、うつわの表面でガラス質に変化します。
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釉薬と言えばたくさんの色を表現できることで知られていますよね。さらに様々な質感を愉しめることも、釉薬ならではの魅力です。ツヤッとしたガラスのような質感、光沢のないマットな質感などがあります。
釉薬特有の表情・景色(溜まり・流れ・むら・貫入や結晶等)
釉薬の調合や、釉掛けのテクニックによって、釉薬は奥深い表情や景色を見せてくれますよ。
うつわを釉薬に浸した際に、溝などにそって釉薬が流れる跡がついたり、釉薬がたまったり。釉薬に美しいヒビである貫入や、結晶を生じさせることもできます。
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焼き物を焼き上げる途中で、釉薬が下へと垂れていった跡が「釉だれ」です。釉薬の性質によって、流れやすいものとそうではないものがあります。思いもよらない動きをあらわし、うつわの美しさの一端を担っています。
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「貫入」は焼き物の作成途中で入る細かい釉薬のヒビのことで、味わいのある表情を感じさせる仕上がりとなります。
素地と釉薬では、膨張率や収縮率が異なり、熱をくわえたり、冷ましたりする過程でヒビになって固まったものが貫入となります。
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素地や釉薬に含まれる鉄分が焼成時に酸化し、褐色や黒い点となってうつわの表面にあらわれたものが「鉄粉」です。作家さんのうつわにはよく見られるもので、ほくろと呼ばれることも。
鉄粉が散った様子を味としていかしているこちらの作品は、「鉄散」という名を冠しています。
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「石はぜ」とは、焼成時に、素地(粘土)の中にあった小石が、割れたり、はじけたりして、表面に突出したもの。こちらも鉄粉同様に釉薬の表現とは異なりますが、覚えておきたい、やきもので好まれる景色です。
黒とは限らず、茶、白などの色み、ヒビのように見える場合もあります。
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焼き物のベースとして使われている粘土にも、白土、赤土、黒土など・・・それぞれ個性があります。粘土の色や特性によって、釉薬の風合いも変わります。
こちらは、「赤土」の粘土をベースにつくられたうつわ。ところどころ素地が見えるあしらいで、どこかアンティークのような風合いを生んでいます。
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さまざまな色、釉調をあらわすという、見た目的な美しさに大きな役割を果たす釉薬。しかし、うつわを丈夫にするという役割もあるんですよ。ガラス質で全体を覆うことにより、コーティング効果が生まれます。
芸術作品としてではなく、暮らしの道具として使われることが目的だからこそ、耐水性があり、丈夫で長持ちするということも重要ですよね。
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もっともベーシックな釉薬が、透明釉(とうめいゆう)です。
長石と灰などを原料として作られた光沢のある透明な釉薬です。素地や化粧土の色をそのまま表すことができます。
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無色透明なので、白い素地を生かした絵付けの上からかけて、仕上げることもできます。
透明釉に鉄や銅といった着色剤を混ぜることで、さまざまな色釉として使うことも。釉薬としては使いやすいもののひとつです。
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織部釉(おりべゆう)は、深みのあるグリーンと、光沢が特徴的な釉薬です。半透明くらいの色調です。
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長石と草木灰という灰釉をベースに、銅をアレンジするとあらわれます。17世紀に美濃で量産された織部焼に銅緑釉が多く使われたことから、織部釉といわれるようになりました。
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若干茶色を帯びた黄色味を持つ釉薬である、黄瀬戸釉(きせとゆう)。愛知の瀬戸や、岐阜の美濃で焼かれた、淡黄色の陶器です。
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なかでも黄瀬戸釉のうつわで名高いのが、こちらの作品の作り手である、瀬戸本業窯。
江戸時代から続く窯元であり、黄瀬戸は、はね土を原料とした本業土と自然釉から作られます。美濃の伝統の色に、想いを馳せてみてはいかがでしょう。
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鉄を加えた青緑色の釉薬が、青磁釉です。鉄分が少ないと淡く発色します。昔ながらの青磁釉は灰と土石類がベースとなっています。
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ふんわりとやわらかく、静かな雰囲気を演出してくれます。
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こちらはもう少し色の濃い青磁釉のうつわです。
色を濃くするためには、鉄を多く含ませるのではなく、釉を厚くします。鉄を多くすると黒が増えるため、黒釉や飴釉の色味に変化します。
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基礎釉に酸化コバルトを混ぜると、深い海のようなコバルトブルーがあらわれます。基礎釉にどのような金属が混ざっているかで、発色が変わってきます。潤いのあるしっとりとした佇まいが素敵です。
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透明釉に酸化コバルトを調合すると、瑠璃釉に。釉薬の厚みにもよりますが、やや明るめの藍色の雰囲気を纏います。ガラス質なので、宝石のようにきれいですよ。
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こちらはやきものの染付に欠かせない、呉須(ごす)釉。
そのほか青系の釉薬は、ターコイズブルー(トルコ石)風のトルコ釉、海鼠(なまこ)釉など・・・青と一口にいっても、さまざまな種類があります。
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透明釉に鉄かマンガンを加えるとあらわれるのが、褐色の飴釉です。
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素地が白っぽいものの場合は、透明感のある仕上がりになり、色付きのものだと黒っぽく仕上がります。
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黒マット釉は、黒釉にマグネサイトをくわえて作る釉薬です。マット釉は表面に光沢がなく、不透明な釉薬です。
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釉薬に溶け切らないで残ったものが結晶化し、光を乱反射すると不透明に見えます。落ち着きがある雰囲気に仕上がりますね。
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石灰の透明釉にマグネサイトを加えると白マット釉が出来上がります。
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こちらは、白山陶器(磁器)の白マットのカップ。さっぱりとした質感でとてもお洒落な印象を受けます。
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結晶釉は、釉薬の中にある結晶がはっきりと目で見てわかるほど大きくなったものです。
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マット釉も結晶質で不透明になったものですが、こちらは結晶を目視することはできません。結晶釉は模様のひとつとして捉えることができます。
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基礎釉にジルコン(酸化ジルコニウム、ジルコニア)、酸化錫、亜鉛華などを混ぜると、乳濁釉となります。ふんわりとした丸みのあるやわらかな色味が特徴です。
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灰釉(はいゆう 又は かいゆう)とは、草木の灰類を媒溶剤とした釉のこと。窯の燃料である木の灰がかかって生まれる、自然釉です。日本の釉薬の歴史は、このような自然釉から始まったとされています。
こちらは、信楽焼の特色である、暗緑色の灰釉が見事なお茶碗。
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土灰釉(どばいゆう)は、発色させるための金属が含まれないもので、淡い色合いが特徴的です。木の枝や落ち葉などの植物を燃やした灰から作られています。
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柿灰釉は、鉄釉の一種で、茶褐色に仕上がります。益子焼などに多くみられる釉薬で、ほっこりと素朴な雰囲気に仕上がります。
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油滴天目釉は、水中に油が浮いているような、斑点の模様が美しい釉薬です。
焼成時、釉薬の表面に生まれた気泡に鉄分が流れ込み結晶化したもので、同じ模様が作れないことから珍重されています。
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窯変が強くでるように調合されている、窯変釉(ようへんゆう)。
ある程度の色みは意図通りに出せますが、予期できないような、繊細な色、表情が生じやすくなっています。光の角度によって反射したりと、うつわのイメージを覆すような、新たな魅力を感じさせてくれるものが多いです。
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毎日使っているうつわたちも、釉薬に着眼して改めて見てみるとそれぞれの違いに驚きます。食器棚の中をざっと見渡してみると、どんな釉薬が好みなのか分かるかもしれませんね。
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素敵なうつわを見つけたら、釉薬にも注目してみてください。新たな発見があるかもしれません。