いつもの食卓が、上品で華やかに。阿部慎太朗さんの器の世界
西洋アンティークのような優美な雰囲気を醸し出す、魅力的な佇まい。
和食器にとどまらず北欧ブランドの食器にも不思議と馴染む、やさしい魅力を放つ器。生み出しているのは、茨城県笠間市を活動拠点とする陶芸家・阿部慎太朗(あべ しんたろう)さんです。
実は、筆者も阿部さんの器が大好きで、毎日、大切に使っている愛用者の一人。心を捉えてやまないその魅力を、ぜひ感じ取ってみてください。
陶芸家・阿部慎太朗さんについて
今では、陶器市でお店を構えれば、整理券の配布、行列必至。それでも、陶器市や個展があればチャンスを求めて遠方から足を運ばれる方も多い、憧れの作品となっています。
100年後、アンティーク食器として流通できるものを目指して――
先述の通り「西洋のアンティーク」の印象を与える阿部さんの器ですが、実は、それは意図的に、緻密な計算のもとで作り上げられたものなんです。
阿部さんは、かつて骨董市を訪れた際に、西洋のアンティークの器が目に留まり、たくさんの時を超えて今なお現役で美しさを増す、その器に魅せられたそう。
「100年後、アンティーク食器として流通できるもの。割れても欠けても食卓にのぼる、働きものの器を作りたい」という想いを信条とし、タタラ成形(彫刻刀で模様を彫り込んだ型に、板状にした粘土を押し付けて成形する方法)というスタイルで、作陶を行っています。
そのため、器の出来栄えは、ほとんどが石膏型で決まるのだそう。模様の美しさ、味わい深い釉薬の濃淡も、彫刻刀による丁寧な手仕事ならではのもの。
阿部慎太朗さんの器の世界を覗いてみよう*
その1. 繊細で品のある、レリーフ模様
「阿部慎太朗さんの器」と言えば、繊細なお花のレリーフ模様が入ったデザインが代表的。リムには、ひと型ひと型、彫刻刀で彫った細かな花の模様が、美しく映えます。
同じ花をモチーフにしていても、異なったデザインが施されているものも多く、見れば見るほどため息の出るような美しさ。手間ひまかけて作られていることが、色濃く感じられます。
その2. 釉薬の表情を生む、シックなニュアンスカラー
阿部慎太朗さんの器の多くは、ややくすんだ色合いの「ペールグレー」と呼ばれる灰色が代表的。光の反射具合などで、微妙に色味が異なって見えるところも、魅力のひとつです。
釉薬のかかり方も、個々で繊細な違いがあるので、同じサイズ・デザインのものでも見比べて、たったひとつのお気に入りを探したくなるんです。
その3. 長く大切に使い続けたくなる、貫入特有の風合い
食卓にお迎えしたい、と思ったあなたへ。人気のタイプをご紹介
使いやすさやデザインごとの特徴にも触れていきますので、お家の食卓でのコーディネートを想像しながら、ぜひお気に入りの一皿を見つけてみてくださいね。
レリーフが映える、まあるい【プレートタイプ】
お洒落で使い勝手がいい、横長の【オーバルタイプ】
思わず集めたくなる、ちいさな【豆皿】
爽やかな色合いが魅力* 絵付けによる『レモン柄』シリーズ
昨年から、彫りではなく、絵付けによる『レモン』シリーズの器が登場しています。白地にレモンの黄色が映えて、初夏の爽やかさを感じさせるデザインです。
柔らかなタッチで描かれたレモン柄は、食卓に並べるだけで、華やかさを演出してくれます。
こちらは、レモン総柄のお皿。パンケーキやアイスクリームなど、デザートを盛り付けるのにもぴったりです。
こちらの八角形のお皿は、フチに細かなドットのレリーフが施された一皿。
料理を盛り付けたときに、周りをぐるりと囲むレモンと葉っぱの絵付けが映えて、食卓がいつもより明るく、爽やかに感じられそう。
レモンは、阿部さんの故郷である香川県の特産品として、昔から身近にあったものなのだそう。様々なところから創作の着想を得て、こうやって素敵な作品に昇華しているのですね。
気品のあるフォルムにうっとり【ボウル・ピッチャーなど】
阿部慎太朗さんの作品には、お皿だけでなく、ボウル・ピッチャーなどもあります。どっしりとした作りながら、繊細に入った模様、光沢感が、いつもの食卓に気品を添えてくれますよ。
コンポートは、ケーキを盛り付けても、ちょっとした果物を置いても、不思議と優雅な雰囲気に。何を載せても絵になります。
ボウルには、こちらのレモン柄もあります。控えめながら可愛らしいデザインは、食卓でも大活躍のこと間違いなし。
積み重ねたときに、フチから覗く素朴なレモン柄が、食器棚でも目を引きます。
食器類だけでなく、花器にも、阿部さんらしさが感じられるデザインが施されています。食器と揃えて食卓に飾ってもいいですね。
こちらの花器も、西洋アンティークのような上品な佇まい。何の花を生けようかと組み合わせを考える時間も、わくわくと心躍ります。
≪ご購入先について≫
たいていは、以下のいずれかの方法でお求めいただけます。
・お取り扱いショップ
・個展
・陶器市
※お取り扱いショップ(通販含む)は、阿部さんの公式ブログ 「しんたろの陶芸記録帖」掲載のお店をご確認ください。
個展
新作の作品をチェックしたい方や、落ち着いた店内でじっくりと作品を見たい方は、不定期で開催の個展がおすすめです。
地方のギャラリーでの開催が多いですが、最近では大型デパートの一角で開催することも。最新のフレッシュな作品を手に取ることができるだけでなく、在廊中であれば、阿部さんと直接お話することもできます。
こちらも、お店によって、整理券配布の場合がありますので、事前に情報をチェックしてから訪れましょう*
・8月3日(土)~25日(日)
企画展
RITMUS(佐賀県佐賀市)
・8月24日(土)~9月1日(日)
個展
zakka 土の記憶(東京都杉並区)
・8月26日(月)~10月10日(木)
催事|わたしのからだになじむもの
蔦屋書店(広島県広島市)
※定休日や作家在廊日等の詳細は、会場店舗の公式サイトでご確認ください。
陶器市
阿部さんのコーナーでも、試作品やアウトレット品を販売することがあるので、レアな作品に出会える可能性も。人気のため、整理券を配布しての販売になることが多いので、早めの来店がオススメです*
阿部慎太朗さんの器で、心が華やぐ食卓を
阿部慎太朗さんの作品には、それ自体の美しさだけでなく、食卓に並べたときの上品な佇まいや、料理をおいしく引き立てる優しい雰囲気があります。
手にしてみれば、ひとつひとつにつくり手のこだわりが感じられ、長く一緒に時間を重ねたい、大切な器になるはず。
ぜひこの機会に、阿部慎太朗さんの器を食卓に迎え入れて、その魅力をじっくり堪能してみてくださいね。
阿部慎太朗さんは、1985年生まれで、香川県ご出身。大学在学中に入った陶芸サークルをきっかけに、陶芸の世界に足を踏み入れます。その後、釉薬の研究にとりわけ関心を持った阿部さんは茨城県工業技術センターに進み、2013年に修了。同年笠間市恒例の陶器市「笠間の陶炎祭」の新人作家によるコーナーに初出店し、瞬く間に評判となります。