深く知って選びたい!日本の有名な焼き物
日本の各地では、その土地の歴史や風土を引き継いだ多種多様な焼き物が作られています。伝統的工芸品に指定されている陶磁器だけでも30種類以上あり、こだわってうつわ選びをする時は困ってしまうほど。しかしだからこそ、知れば知るほど奥深く、面白さや愛おしさも増していきます。有名な焼き物の種類や歴史を知って、自分の好みや暮らしに合うものを探してみましょう。
焼き物の種類とそれぞれの特徴は?
焼き物は原料や焼き方の違いによって、大きく「陶器」「磁器」「炻器」「土器」の4つに分類されています。まずはそれぞれの特徴を確認しておきましょう!
陶器(とうき)
主な原料は「陶土」と呼ばれる粘土。素地は土の色味で、柔らかくザラザラとした質感が特徴。厚い作りのものが多く、保温性が高い。
磁器(じき)
主な原料は「陶石」という石を砕いたもの。素地は白く、硬めでツルツルと滑らかな質感が特徴。薄い作りのものは光を通すことも。
炻器(せっき)
主な原料は鉄分の多い陶土など。釉薬をかけずに焼かれることが多く、陶器と磁器の中間のような性質を持つ。
土器(どき/かわらけ)
陶磁器の源流といえる焼き物。主な原料は粘土。釉薬をかけずに低い温度で焼き上げられるため、もろくて壊れやすい。現在は植木鉢などに使われることが多い。
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これらの中でも食器としてよく作られているのは「陶器」と「磁器」。焼き物全般を指して「陶磁器」と呼ばれることもありますね。ただ大きく分けると同じ分類でも、産地によって器の質感や絵柄の特徴が異なり、さまざまな風合いを楽しめるところが焼き物の魅力です。
ここからは、日本の有名な焼き物の種類と産地、歴史をご紹介していきます。
これらの中でも食器としてよく作られているのは「陶器」と「磁器」。焼き物全般を指して「陶磁器」と呼ばれることもありますね。ただ大きく分けると同じ分類でも、産地によって器の質感や絵柄の特徴が異なり、さまざまな風合いを楽しめるところが焼き物の魅力です。
ここからは、日本の有名な焼き物の種類と産地、歴史をご紹介していきます。
①瀬戸焼(せとやき)|愛知県
シーンに合わせて選べる多様なうつわ
愛知県瀬戸市では、古墳時代には焼き物が作られていたと伝えられています。「日本六古窯(にほんろっこよう)」の一つにも数えられる代表的な産地で、焼き物のことを「せともの」と呼ぶこともあるように、その名は古くから各地で知られていました。日本六古窯の中で唯一、施釉陶器が作られてきたほか、焼き物の産地としてはめずらしく陶器と磁器どちらも産出するなど、多様な焼き物を作っています。
瀬戸焼では古くから釉薬が使われてきたため、最も伝統的な「灰釉」や、茶色~黒色まで幅広い色味が出る「鉄釉」など現在でも多様な釉薬があり、その見た目はさまざま。他のお皿と反発することなく食卓になじんでくれるうつわが、きっと見つかります。
②美濃焼(みのやき)|岐阜県
特徴がないからこそ、どこにでもなじむ
美濃焼が作られる岐阜県の東濃地方は、食器類の生産量の約6割を占める、日本有数の焼き物の産地。その始まりは瀬戸焼と同様古墳時代にさかのぼるという説と、瀬戸焼の陶工が美濃に移り住み、焼き物を作り始めた時からという説があります。多様な釉薬を開発してきたのが特徴で、新しい焼き物を次々と生み出してきました。
黄褐色に発色する「黄瀬戸」、鉄釉で漆黒とも呼べる黒を引き出す「瀬戸黒」、自然に生まれる表情が豊かな白釉の「志野」、鮮やかな緑色に発色する「織部」の4つが代表的。しかし美濃焼は、その多様さから“特徴がないのが特徴”といわれることも。釉薬の美しさを活かしたもの、素材本来の肌ざわりを全面に打ち出したものなどがあり、一人用のお茶碗から特別な日に役立つ大皿まで、自分らしいうつわを探すのにはぴったりです。
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まだある!美濃焼のうつわ
③波佐見焼(はさみやき)|長崎県
日常使いのためのうつわ
波佐見焼は、長崎県波佐見町で作られる陶磁器。16世紀末に焼き物づくりが始まったと考えられており、最初は施釉陶器を作っていました。そのうち良質な陶土が発見され、磁器づくりがメインになっていったため、現在でも陶器と磁器がどちらも作られています。古くから大衆向けの日常使いのうつわを多く生産していたことで知られ、たくさん作って気軽に買ってもらえるよう、簡略化された勢いのある絵柄が描かれています。
真っ白な白磁に、藍色で絵付けされたものが代表的ですが、中には白磁を活かした真っ白なものも。デザインはシンプルかつ飽きのこない、時代に左右されにくいものばかりです。お茶碗から箸置きまで、日常使いのうつわを波佐見焼でそろえれば調和のとれた印象で、お客様のおもてなしにもおすすめ。ワンポイントで混ぜてみても、違和感なく溶け込んでくれます。
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④有田焼(ありたやき)|佐賀県
鮮やかで繊細な絵柄が白地に映える
有田焼は、佐賀県有田町周辺で作られる磁器。17世紀初頭、朝鮮の陶工が有田で磁器の原料となる良質な陶石を見つけ、日本で最初に白磁を焼いたことから始まりました。海外への輸出が伊万里港から行われたため、海外では「伊万里」の名前でも知られています。
有田焼は磁器のため、薄くて頑丈で普段使いにもぴったりです。滑らかな肌ざわりに、透き通るような白い地が特徴的で、鮮やかな絵付けが施されることもあり、食事やおやつの時間のメインとしても存在感を放ってくれます。ふんだんに色を使い、繊細に描かれる絵は、現在では伝統的な和のものから洋風のものまでさまざま。和洋どちらの料理にも合わせることができます。
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まだある!有田焼のうつわ
⑤やちむん|沖縄県
南国のあたたかみを感じる絵柄
やちむん、とは沖縄の言葉で「焼き物」のこと。沖縄が琉球王国だった14~16世紀ころには、すでに交易を行っていた中国や東南アジアから陶磁器が伝わっていました。17世紀初頭、薩摩からやってきた陶工が焼き物づくりを伝えたことから、本格的なやちむんづくりが行われ始めたと考えられています。
やちむんは沖縄の赤土をメインに使い、手に持つと重みや厚みが感じられます。表面には温暖な気候や豊かな自然を反映するように、南国風の大胆な絵が施されるのが特徴。唐草や魚が描かれる伝統的な絵柄だけでなく、モダンで鮮やかなデザインのものもあり、現代の食卓にもぴったり。存在感が強いため、特に大胆な絵柄のもの、たくさんの色が使われているものは、食卓のワンポイントとして取り入れるのがおすすめです。
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まだある!やちむんのうつわ
⑥小鹿田焼(おんたやき)|大分県
リズミカルな模様が美しい
江戸時代中期から、300年の歴史を一子相伝で守り続けてきた小鹿田焼。福岡県小石原村の小石原焼の兄弟窯で、当時の技術を引き継ぎつつ、現在でも大分県日田市の山間にある小さな集落で作り続けられています。
特徴的なのは、「飛びカンナ」や「刷毛目」と呼ばれる技法による、素朴ながらリズミカルな模様。職人がひとつひとつカンナや刷毛で描いており、それぞれ異なる表情がかわいらしく感じられます。この模様は一見かなり印象的に思われますが、料理を盛り付けて食卓に持っていくと、不思議なことに悪目立ちせずなじみます。小皿なら他のうつわと合わせても味わい深いですし、大皿ならメイン料理を引き立ててくれます。
⑦益子焼(ましこやき)|栃木県
ぽってりフォルムと土らしい肌ざわり
益子焼は、江戸時代末期に栃木県益子町で作られ始めた陶器。益子町で産出する陶土には砂気と鉄分がふんだんに含まれており、粘り気が少なく、耐火性も弱いという特徴があります。割れないようできるだけ厚手に作るため、焼き上がるとどっしり重みがあり、フォルムもぽってりとしたものに。また細かな細工も難しいので、土の肌ざわりを活かした素朴なうつわになります。
現在では多様な釉薬が開発され色合いも鮮やかになっていますが、特徴的な重みとフォルムは健在。集めたくなるかわいらしさで、小さなうつわを少しずつそろえても統一感がありますし、大きなお皿は益子焼の素朴な素材感を楽しむのにぴったりです。
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⑧信楽焼(しがらきやき)|滋賀県
アンティークのようなマットな質感
狸の置物で知られる、滋賀県信楽町の信楽焼。日本六古窯の一つにも数えられる、歴史ある焼き物の産地です。13世紀ころには焼き物づくりが始まっていたとされ、粘土のある良質な陶土が産出したことから、甕や壺など大型の焼き物が作られました。
釉薬をかけずに高温で焼き上げることで生まれる赤褐色の肌色や、窯の中で灰がかかってできる自然薬などが特徴です。最近では釉薬がかけられたモダンなものも多く作られていますが、いずれにしても共通しているのは土のあたたかみが感じられること。独特の質感や肌ざわりを楽しみたいうつわです。
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⑨九谷焼(くたにやき)|石川県
白磁に浮かび上がる貫入が魅力
九谷焼は、17世紀ころから作られ始めた石川県南部の陶磁器。藍青色の下絵に加え、赤・緑・黄・紫・紺青の「九谷五彩」と呼ばれる上絵を施すなど、彩り豊かな絵付けが特徴的です。作り手によって描かれる絵のテイストが異なり、好みの職人さんを探す楽しみもあります。
釉薬の性質により、器によっては「貫入」が入ることがあります。貫入とは、釉薬と中の素地の収縮率の違いにより、釉薬部分にヒビが入り、そこに水分などが入り込んで網目状の模様になること。特に九谷焼の場合は、白地に貫入の模様がよりくっきりと浮かび上がり、うつわの魅力の一つになります。一枚一枚絶妙に異なる色合いや形とともに、時間が経つごとに増えたり色が深まったりする貫入を味わえます。
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⑩萬古焼(ばんこやき)|三重県
使うほどに深まる肌ざわり
萬古焼は、江戸時代中期から三重県四日市市で続く焼き物。土鍋や急須などで知られ、特に土鍋は国内のシェアの8割を占めるといわれています。ペタライトという鉱物を混ぜた独自の陶土を開発したことで、直火などの高温にも耐えられる焼き物が誕生。調理用はもちろん、そのまま食卓にも出せる多様なうつわを生み出してきました。
耐熱性のため、魚焼きグリルやオーブンで調理してそのまま食卓に出せるのが魅力。ゆっくり熱を伝えるため素材の美味しさを引き出してくれ、蓄熱性のおかげで料理もいつまでもほかほかです。焼くたびに少しずつ変わっていく肌ざわりも楽しみの一つですね。
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まだある!萬古焼のうつわ
好みや暮らしになじむうつわを見つけよう
今回ご紹介した以外にも、日本では地域によってさまざまな焼き物が作られています。その土地の陶土や風土、作り手を反映したうつわは、二つとして同じものがない、かけがえのないもの。実用的な観点からだけでなく、自分や家族の生まれ故郷、旅行で訪れて気に入った土地、歴史を知って好きになった窯元など、作られる場所に焦点を当ててみるのもおすすめです。ぜひ種類ごとの特徴や魅力をおさえて、お気に入りのうつわを見つけてくださいね。
白磁にコバルトブルー(呉須)の染付が施されたプレートとライスボウル。“てん”と“せん”の柄をそろえて使っても、組み合わせてもすてきです。和食によく似合う雰囲気ながら渋くならず、食卓がかわいらしい雰囲気になりますよ。