釜浅商店-良理道具の案内人として-
細い路地を挟んで、お店は2軒に分かれていて、写真手前が庖丁と鉄器の専門店、奥に建つのがその他様々な料理道具のお店で、プロ御用達の本格的な道具が並びます。
ありとあらゆる良理道具が揃うお店
豊富な料理道具を扱うこちらのお店では、お店の外に大きな釜や鉄のフライパン、七輪などが並び、外から店内を見ると、実にたくさんの道具がところ狭しとひしめいているように見えます。
店内に入ると、お客さんの手の届く範囲で、どの角度からでも見やすく商品が陳列されています。大鍋や大きなまな板やせいろ等々、プロ仕様のものも多いですが、一般家庭で使いやすい道具がたくさん並んでいます。
実際に手に取って、形や重さを確かめたりしやすいような心配りを感じさせるディスプレイ。商品札に丁寧に説明書きがされているのもありがたい。
庖丁と鉄器の専門店
庖丁と鉄器の専門店には、ずらりと様々な形の庖丁が並んでいます。もう一方の店舗に比べてゆとりがあり、明るくすっきりとした店内。真ん中に置かれている大きな台は、お客さんが実際に庖丁を手に取ってから選べるように設置されたものです。釜浅商店の真摯な姿勢が伺えます。
こちらでは、庖丁のことを熟知した目利きが常駐し、丁寧に対応してくれます。そこには、お客さんには本当に納得して商品を買ってもらいたいという思いがあるから。腕利きの料理人、料理好きな人、外国人...それぞれ自分にとって究極の1本を求めてやってきます。
2階には「KAMANI」というギャラリスペースがあります。釜浅商店の世界観を表す写真の企画展が多く、落ち着いた空間でゆっくり過ごすことができます。かっぱ橋道具街の雑踏からちょっと離れて、一呼吸置いてみてもいいですね。
美味しい料理へ導く道具
釜浅商店がセレクトし、紹介するのは、日常的に永く愛用したいと思わせる優れた料理道具。特に熟練の職人たちが手間と時間を惜しみなく費やし作る道具は、使っていくと必ずその良さが実感できるような普遍的なかたちを持っています。料理の手際を格段に上げる良理道具。あなたも試してみませんか。
鉄打出しフライパン
山田工業所に製作を依頼し、鉄を数千回叩く独自の製法で、叩き締めることで強度のある鉄のフライパンを実現しました。厚さ2.3㎜とやや厚手のフライパンは、蓄熱、保温性が高く、食材の中までしっかり火が通ります。表面に(細かい)凹凸があるので、油なじみがよく、焦げ付きにくいのもうれしい。毎日どんどん使うことで、使い勝手が増していく優秀な道具です。
買った初めは錆止めの油がついているため、中性洗剤で洗って、いらない野菜などを多めの油で炒めると、金属臭などを取り除けます。
南部鉄鍋
熱の伝わりが柔らかく保温性が高い南部鉄を使った鉄鍋シリーズ。釜浅商店のものは、南部浅鍋、南部どじょう鍋、南部寄せ鍋など、形状も様々に揃います。
元々、うどん用に作られた南部うどん釜。熱伝導に優れているので、煮込みなどに最適です。魚介や野菜を加えて作ったパエリアは、旨みが凝縮されて絶品。各サイズに合わせた釜蓋を使えば、白米もびっくりするほど美味しく炊けます。
直火はもちろんIHコンロ、オーブンなどにも対応している南部鉄器の鍋。鍋料理はもちろん、西洋の料理にも色々応用できて便利。スパイシーな煮込み料理、アヒージョ等々、アイデアは無限に出てきそうです。シンプルで美しいかたちは、作ってそのままテーブルに出しても様になります。それに、アツアツのまま食べるのが醍醐味なお料理はたくさんありますよね。
セイロと合わせて、蒸し器として使うこともできます。こうやって、日々の道具を使い合わせることで、電子レンジなどなくても色んなお料理を楽しむことができます。電化製品に頼るより一見大変そうに思えても、慣れてくるとそんなことはありません。良い道具を最小限持っていれば、使っている内にそれらが本当にいろんな仕事を助けてくれるのに気付きます。そのプロセスを実感することで、良理道具の良さを理解できるのかもしれません。
鉄製の道具のお手入れはとてもシンプルです。使った後は、洗剤を使わず天然素材のたわしで洗い、軽く火を入れてしっかりと乾かすこと。日々料理に使う油が鉄に皮膜を作り馴染んでいくことで、より使いやすくなっていきます。こうやって道具と向き合えば、安易に買い替える必要はなくなりそうです。
姫野作 本手打行平鍋
釜浅商店にはたくさんのアルミ製の鍋が置いてありますが、中でも特にお薦めしたいのが、本手打行平鍋。量販品と明らかに違うのはその厚さ。3mmと厚手の行平鍋は丈夫で、じっくりと均一に熱を伝えてくれます。和食を手際よく作りたかったら、これ一つあるだけで断然違ってきます。
こちらの行平鍋は、大阪八尾市にある鍋工房 姫野工作所で、一つ一つ手で叩いて仕上げています。熟練の職人によるきれいに整った鍋肌の模様が、最高品質の行平鍋の証。ここにも普遍的な良理道具のかたちが見られます。
竹ざる
食材の保管に、水きりに、器に...。生活の中で多様な用途がある竹ざる。大きさ違いで何個かあると本当に重宝しますよね。釜浅商店のものは、素材は純国産、職人による手作りに拘ってセレクトされています。一つ一つ風合いは違いますが、どれも丈夫で使い勝手がよくできています。
庖丁
釜浅商店は、約60種類、1000本を超える多彩な庖丁を揃えています。その中には、作りたてのままの状態で、無名品として置かれている庖丁もあります。実は1本の和庖丁を作るには、何人もの職人の手がかかっていて、誰か一人の職人又はお店の名前を入れてしまうと、その背景が見えなくなってしまう。無名品として置くことは、すばらしい庖丁を作ってくれた職人に本当の意味での敬意を示すために、そしてお客さんに誠意を持って商品を紹介するために、とても大切なことなのです。だから、私たちもブランド名で買うのではなく、自分の目と手で確かめてから、ほんとうに最適だと思ったものを選ぶようにしたいですね。
洋庖丁は産地や鋼材によって分類されます。厚みやバランス、刃の形状や付け方にそれぞれ異なる特徴があります。和庖丁にしても洋庖丁にしても、庖丁のプロじゃないと分からないことがたくさんあります。庖丁について疑問点はもちろん、普段の自分の料理スタイルやイメージなどを伝えると色々とアドバイスをもらえますので、ぜひお店の人に相談してみて下さい。
釜浅商店では銘入れのサービスも行っています。自分だけのオリジナルの庖丁として、より愛着が湧いてきます。
庖丁を研ぐというのはとても大切なこと。研いだ後の切れ味は格段に違います。良い庖丁をずっと長く愛用するためにぜひ定期的なメンテナンスを心がけて下さい。自分ではちょっと難しそうという人には、お店では研ぎ(有料)のサービスもありますので、利用してみるといいですよ。※釜浅商店の庖丁に限ります。
『創業明治41年 釜浅商店の「料理道具」案内』
釜浅商店の店主、熊澤大介さんだからこそ伝えられる、料理道具の選び方や上手な付き合い方がまとまった本、『創業明治41年 釜浅商店の「料理道具」案内』。道具に合わせたレシピやプロのインタビューなども収録され、とっても充実した内容です。これを読めば、お料理するモチベーションが格段に上がります。キッチンのそばに置いて繰り返し読みたくなる、一冊です。
四代目店主で現代表の熊澤大介さんは、伝統を引き継ぎながらも一般の人も入っていきやすいように、2011年に大胆にお店をリニューアルしました。お店のシンボルマークに表れているのは釜のかたち。今でも釜を取扱い、要望があれば、釜のサイズに合わせたかまどのオーダーもされています。歴史ある道具のすばらしさを伝えていく使命感を持ったお店です。