ヨガ哲学の教えが心をクリアにする
ヨガ哲学を学んでいくと、私達が本来持っている強さや魅力に気付けるので、もっと自分が好きになります。今回は、一緒にヨガ哲学を現実に落とし込んで読み解いていきましょう。
「ヤマ」:してはいけないこと
アヒンサー(暴力をふるってはいけない)
当たり前のことですが、どんなに腹がたっても暴力をふるってはいけません。それは他人に対しても、自分に対してもです。そして物理的にも、精神的にもです。
あのマハトマ・ガンジーが生涯を通して守り抜いた教えです。
誰も傷つけないやさしい言葉を使い、他者に感謝する。休みたい時は休み、自分も傷つけない。嫌な記憶を反芻せずに、自分を褒めて、物事に感謝する。
ふりかえってみてください。日々、タスクを詰め込みすぎていませんか?自分を労わっていますか?
サティヤ(嘘をついてはいけない)
自分のエゴで嘘をついてはいけません。嘘をつくと「嘘をついてしまった...」と良心が揺さぶられて、何だか落ち着かない気分になりませんか?つまり、穏やかな心を保つには嘘をついてはいけないのです。
疲れているのに疲れていないふりをする、苦しいのに平気なふりをする。これも自分の感覚に嘘をついていることになります。疲れているなら正直に休みましょう、苦しいなら正直に伝えましょう。
でも、もし正直であるがために相手を傷つけてしまうような時、アヒンサーを破ってしまうような時は、嘘をついても良いとされています。「これを言ったら、相手が傷ついてしまう...」という時は、とびきり優しい嘘を。
アスティヤ(盗みをしてはいけない)
他人の物や時間、権利などを盗んではいけません。約束の時間に遅刻したり、相手の話を遮ってしまったりすることは、他人の時間を盗んでいることになります。
アスティヤをちゃんと守っていると、いつか欲しいものが目の前に現れるのだとか。逆に盗もうとしている人からは、欲しいものは遠ざかってしまうそうですよ。
ブラフマチャリア(欲に溺れない)
元々は生涯独身で過ごすことが説かれていましたが、現代的に解釈するとパートナーを裏切らないことや、利己的な欲を満たそうしない、ということになります。
心のエネルギーは大事なことにだけ、大切な人にだけ、必要な分だけ使うようにしましょう。率先してブラフマチャリアを行っていくと、自然とより良い人間関係が築き上げられていくのだとか。
アパリグラハ(貪欲にならない)
欲望は次から次へと湧き起こり、尽きることがありません。そして何かを必要以上に所有すると、執着心が芽生え、失うことへの恐れが生まれてしまいます。美味しいものをついつい食べ過ぎてしまっていませんか?ショッピングで買いすぎてませんか?
アパリグラハを実践していると、「ない、ない」という渇望から自由になり、心のバランスが上手くとれるようになります。だからこそバランスが崩れたら、「なぜ自分が今辛いと感じているのか」、「なぜ穏やかな気持ちを保っていられないのか」、原因を突き止められるようになるのです。
「ニヤマ」:すべきこと
シャウチャ(清潔を保つこと)
心と身体、身の回りの空間をきれい保つようにしましょう。散らかった部屋にいるより、片付いている部屋の方が、居心地が良いに決まっています。嫉妬や怒りなどのネガティブな感情にとらわれそうになったら、優しい心を思い出し、嫉妬するのではなく他人を敬い、他人を攻撃するのではなく自己研鑽に励みましょう。
内面から綺麗になろうと務めると、心に余裕が生まれます。息をたくさん吐くと、たっぷり新鮮な空気が吸えるように、心に余裕が出てくるとそこを埋めようと、あなたが待ち望んでいたなにかが流れ込んでくるはず。
サントーシャ(今あるものに満足すること)
「あれが手に入ったら...」「あの人との関係がこうなったら...」と考え始めると人の欲望は尽きることがありません。自分の周りにある物に幸せを求めても、真の幸福は見つからないのです。
「知足=足るを知る」。現状がすでに満たされていることを知り、感謝しましょう。今あるもの、環境、人間関係は何かの理由があって、必然的におきていること。例え苦しくても、実はあなたが何かを学ぶためのステップアップの機会かもしれません。
「無くしてみて初めてそれが、かけがえのないものだったことに気が付く」とはよく言われますが、まさにその通り。「あれが足りない、これも欲しい」ではなく、「あれもある、これもある」と捉え直してみましょう。
「家族にありがとう、自分にありがとう」1日1回、誰かに感謝する習慣をつけるのもいいですね。
タパス(鍛錬すること)
タパスは「苦行」と訳されることが多いですが、「苦行」というとなんだか厳しい修行をイメージしてしまいます。でも、ご安心を。「苦行」とは言ってもアヒンサー(非暴力)に反しない訓練、人生の様々な問題を受け入れる強さを養いましょう、という意味です。
あの仏陀も苦行は意味がない、と自ら体験してから気づいたように、現代では「苦しみを我慢しても仕方がない」と解釈されています。ちょうど金が焼けば焼くほど純度が増すように、人も一生懸命何かに取り組むことで磨かれていくものです。
スヴァディアーヤ(本をよむこと、勉強すること)
元々は「心を調える働きを持つ書物=マントラや経典」を読みましょう、という意味でした。現代的に解釈すると、新たな気づきをくれる本を読み、得た知識を実践して、人として成長していく必要性を説いています。
昔からの解釈どおり、ヨガの本や経典を勉強したいと思ったら?どれが良い、正しいという基準はないので、マントラを唱えたときに調子が良いと思ったなら、マントラを唱える習慣を。ヨーガ・スートラを呼んだ時に調子が良いと思ったなら、本を読む習慣を。自分の体の声を聞きながら、模索していきましょう。
イーシュワラ・プラニダーナ(自然にあらがわないこと)
自然現象や大きな時代の流れ、世間や他者のこと、自分の力ではどうすることも出来ないことってたくさんありますよね。そんな自分では変えられないものを変えようとあらがうのは、辛く苦しいこと。そういう時は全てをありのままに受け入れ、神様を敬いましょう、という教えです。
その方向へ進もうとしてみて
今すぐ全てを常に意識するのは難しくても、その方向へと進むよう心構えをしておくことはできます。ヨガの八支則、気になった方は是非「ヨーガ・スートラ」を読んでみてください。読めば読むほど、心に響いてもっともっと自分が好きになれるはず♪
ヨガの経典「ヨーガ・スートラ」には、“八支則(はっしそく)=ヨガを深めるための8つのステップ”が書かれています。その中に最初に出てくる2つ「ヤマ」「ニヤマ」には、日常生活の指針が説かれており、現代の私達が生きる上でのヒントがたくさん詰まっています。