眺めるだけで心潤う。美しい手仕事・刺繍の世界に親しみませんか
外国には、それぞれの国が持つ刺繍文化があり、それぞれ違った「刺繍」の良さがあります。インドや中国、ハンガリーといった国々の刺繍を見ると、独特な美しさを持った図柄にうっとりするのは間違いなし!日本の刺繍とはひと味違った素晴らしさを感じることができますよ。
<世界の美しい刺繍>を紹介する本
【世界34カ国】世界中のかわいい刺繍が大集合
『世界のかわいい刺繍』
トーンの違うブルーでまとめられたハンガリーのマチョー刺繍。真っ白なブラウスに施した刺繍がとてもきれいですね。丸みを帯びたお花が連なって、とてもキュート。胸元に贅沢にあしらわれた刺繍に心がときめきます。
世界各国の独特な刺繍作品がたっぷりと集められた本書。美しい作品を見られるほか、ブルガリア刺繍、アメリカンクルーエル刺繍、ブータン刺繍、モロッコ刺繍などは、コラムとして知識を得ることもできるようになっています。コラムを読むと、刺繍に対する理解もぐっと深まりますよね。
刺繍好きな人はもちろん、これまであまり刺繍に関心のなかった人も楽しめる1冊。知識と興味が広がりますよ!
【ヨーロッパ】ヨーロッパ各地の伝承の刺繍
『ヨーロッパのかわいい刺繍: イギリス、フランス、北欧、東欧…伝承のデザインと暮らしにまつわる物語』
イギリス、フランス、スウェーデンにハンガリーやポルトガル。ヨーロッパ各地に伝わるさまざまな刺繍を取り上げた1冊です。美しいカラー写真をふんだんに使い、刺繍全体の写真とアップ写真で細部までよく分かります。
鮮明な写真を見ると、生地や刺繍の質感まで伝わってきますよね。簡潔に書かれたそれぞれの刺繍の説明も勉強になります。写真と一緒なので、説明もすっと頭の中に入るんですよね。
東欧や北欧、地域によっても刺繍のスタイルや使い方が異なり、興味深くページをめくっていけますよ。簡単な刺し方でも、カラフルで大胆な図柄になると、お洒落に見えるんですね。
こちらのポルトガルのミーニョ地方の靴。ツヤ感を楽しめるサテンステッチを中心に、様々なステッチを組み合わせて、革に直接刺繍しています。黒い革にカラフルな刺繍糸が映えて、とても素敵。
ドロンワーク、ニードルポイント、マチョー刺繍、カロチャ刺繍など、名前は聞いたことがあるけれど、どういうものかよく分からないという刺繍にもたくさん出会えます。
刺繍の特徴を学べば、毎日の暮らしで見かける刺繍にも一層、心惹かれるものを感じられますよ。
【ハンガリー】カロチャ刺繍、マチョー刺繍などの伝統刺繍
『ハンガリーの刺繍: 地方に伝わる伝統刺繍と図案+布小物アレンジ』
ハンガリーは伝統的な刺繍が盛んな国。地方ごとに、それぞれ受け継がれた刺繍があるんです。比較的有名な、カロチャ刺繍やマチョー刺繍のほかに、全部で12種類のハンガリー刺繍をご紹介。
筆者の刺繍作家である井沢りみさんはハンガリーに3年以上も暮らしたというハンガリー好きな方。井沢さんが訪れたハンガリーの刺繍村での旅行記やブダペストの民芸市の様子なども見ることができます。
素敵な刺繡を実用的なアイテムに仕立てられると、やる気もアップ!可愛い12種類の刺繍をポーチなどの小物類に仕立てる作り方も、詳しく載っているので、初心者さんでも挑戦しやすいんですよ。
刺繍糸の具体的な色番号も図案に掲載。まずは同じ色で作ってみるのが、上達の近道です。
白い布に刺繍するのはもちろん、こうした濃いめの色合いの色の布に刺繍しても映えるのがハンガリー刺繍。
ワンポイントに使ったり、連続模様にしたりと、自分でアレンジしていくのも面白いですね。
【インド】ミラー刺繍
『かわいいミラー刺繍: インドに伝わる伝統の技法をわかりやすくアレンジ』
小さく丸くカットした鏡を刺繍で縫い留めて模様を作るミラー刺繍。インドやパキスタンでよくみられる伝統の刺繍方法です。キラキラと光を反射して、見た目もとても華やか!
ミラー刺繍は、砂漠地方では、ピカッとした反射で自分の存在を知らせる役割も。また、魔よけとして身につけていたともいわれています。
現地でミラー刺繍を学んだ宮内愛姫さんが、ミラー刺繍の基本の縫い方からオリジナル模様の展開方法まで分かりやすく教えてくれる1冊です。
ステッチや、途中で糸を継ぐ方法など内容はとても実用的。ミラー刺繍初心者さんでも安心して取り組めます。
スリッパやペンダント、イヤリングにエプロンなど、土台となるアイテムの例も幅広く、ぱらぱら見ているだけでも、アイデアが溢れてきそうです。
色を変えたり、ミラー以外のボタンや石を包んだり、図案を考えたり。基本を押さえたら、個性あふれる自分だけのミラー刺繍を楽しめるようになりますよ。
刺繍の世界の奥深さ、自由さを味わる、素敵な刺繍本です。
【中央アジア】カザフ刺繍
『中央アジア・遊牧民の手仕事 カザフ刺繍: 伝統の文様と作り方』
日本ではまだあまり知られていないカザフ刺繍を取り上げた1冊です。
モンゴルの西端にいる「カザフ」という遊牧民族。モンゴルとは別の文化や言葉を持った民族で、彼らは独自の文化を静かに発展させてきたといわれています。
住居である天幕の内側にかけるタペストリーとして作られることが多いカザフ刺繍。暖色系の色味と、迫力のあるデザインを多用しています。これは、薄暗い室内を少しでも明るく、美しく華やかにしようと考えられたものなんですね。
すべて図案付きで紹介しているので、初心者さんでも作りたいデザインにすぐに取り組めます。道具も特別なものは必要なく、日本で入手できるものだけで作れるところも嬉しいポイント。
カザフの歴史や民族についての紹介を読めば、カザフ刺繍がより身近なものに。いつか、カザフの人たちが作るカザフ刺繍を見に行きたいと感じますよ。
とても大きなカザフ刺繍のタペストリーにも挑戦したいと思える日がくるかもしれませんね。
【中国】ミャオ族の刺繍
『ミャオ族の刺繍とデザイン』
芸術作品とも言われる、精緻で美しいミャオ刺繍を紹介した1冊です。
中国の貴州省に多くが暮らしている少数民族のミャオ族は、長い歴史を持つ民族のひとつ。長い間、ミャオ族には統一された文字がなく、歌や口承によってさまざまな事柄を伝えてきたといわれています。デザイン性に富み、非常に細かく作られた刺繍は、母から娘へと技術が受け継がれてきたものなんです。
これらの刺繍のひとつひとつの図柄には意味があり、大切な人を守る魔よけとして大切にされてきました。美しく多彩なバリエーションのミャオ刺繍。どんな意味が込められているのかと想像するだけでも、心が躍ります。
ミャオ族の小さな祭りは毎日あるともいわれ、伝統的な行事も非常に多いそう。華やかな刺繍の衣装を着る機会も多かったのでしょうね。
普通に暮らす庶民たちが、大切な人を守るために、ひと針ひと針、想いを込めて刺す刺繍は、自然に対する敬意や祈りを感じさせてくれますよ。
<日本の刺繍作家さん>の作品に親しめる本
刺繍作家・樋口 愉美子さんの刺繍
『2色で楽しむ刺繍生活』
北欧風の植物や動物をモチーフにした図柄を得意とする刺繍作家の樋口由美子さん。さまざまなテーマで刺繍本を出版されている樋口さんですが、本書では2色の糸だけで作る刺繍にフォーカスしています。
たった2色しか使わないのに、図柄が際立つ素敵な配色にびっくり。自分で色の組み合わせを考えてみるのも面白いですね。
同じモチーフを使っても、ひとつだけすこし違った角度で刺繍すると、こんなにも動きをつけることができるんです!
1羽だけ違う色にするアイデアも、刺繍を魅力的に見せる小技のひとつ。ストーリー性を感じます。
たくさんの色を使ったカラフルな刺繍は華やかでいいものですが、2色だけを使う配色は品があって、どんな小物にもすっと馴染んでくれるんです。手持ちのエコバッグやブラウスに小さく刺繍を入れても、素敵ですよ。
atelier de nora主宰・ながたにあいこさんの刺繍
『色や図案の組み合わせで、もっと楽しい! 春夏秋冬。ボタニカル刺繍で彩る服と小物』
刺繍教室「アトリエ ド ノラ(atelier de nora)」を主宰するながたにあいこさんが教えてくれるのは、四季折々の可愛い花の刺繍です。繊細で、可憐な野の花たちが集められています。まるで季節ごとの植物図鑑を見ているよう。
春夏秋冬、季節ごとに18の花が紹介されています。同じ季節の花を集めて、小さなブーケのように刺繍してみるのもいいですね。シンプルな白いTシャツが、世界でひとつだけの特別な洋服に大変身!
ブラウスやエプロン、ストールにバッグ、がま口など毎日の暮らしに寄り添ったアイテムへの刺繍を見ることができて、とても参考になりますよ。
せっかく可愛い刺繍を作るなら、使えるものに仕立てるのが◎。毎日、刺繍を見るたびに、気持ちがほっこり温まります。
刺繍作家・森本繭香さんの刺繍
『野の花と小さな動物の刺繡』
小動物や植物などのリアルな刺繍で定評のある森本繭香さん。写真入りの丁寧な作り方で、初心者さんにも分かりやすく、刺繍の仕方を解説してくれます。
一見、とても難しそうにも見えるリアルな刺繍。まずは作り方の通りに、図案に従って、ひと針ずつ刺していくと、驚くほど美しい刺繍が、案外簡単に完成します。慣れてきたら、オリジナルの色合いも試してみたくなりますね。
この本で刺繍を練習して、自分のペットのオリジナル刺繍を作る方も多いそう。ブローチに仕立てる方法も丁寧に解説されているので、挑戦するのも簡単!自分のペットのブローチを襟元に飾ったら、ペットと一緒にお出かけしたい気分が盛り上がります。
小物仕立てにするのはもちろん、刺繍枠に入れたままの状態で飾るのもお洒落ですよね。
たっぷり糸を使って、綿密に刺していくので、仕上がりはとても立体的。壁掛けにして、自分の作品を間近で見るのもいいものですよ。
刺繍作家・川畑杏奈さんの刺繍
『annasのもじの刺繍』
刺繍教室「Atelier アンナとラパン」を主宰する著者の川畑杏奈さん。annas(アンナス)というレーベル名で活動されている刺繍作家さんです。
本書では、ひらがなや数字、アルファベットなど、文字の刺繍にフォーカス!シンプルで可愛らしい文字がたっぷり収録されています。
第二章で紹介されているのは、文字と物語のコラボ刺繍。とてもユニークな視点ですよね。単体での刺繍ももちろん可愛いけれど、文字が入っていることで、イラストの状態がより分かりやすく、味わい深くなります。
額縁に入れたり、ファブリックパネルとして仕立てたくなる作品に仕上がりますよ。
文字の刺繍は、お稽古バッグのお名前や「ありがとう」、「がんばって」のプチメッセージにもぴったり!
他の人とはちょっぴり違うメッセージ性を持たせることができますよ。
クラフト作家・林 すま子さんの刺繍
『ロココ刺繍』
エンブロイダリーリボンという薄手のリボンを使って作るロココ刺繍を紹介した1冊。糸で刺す刺繍よりも、立体的でニュアンスを感じさせる作品を作ることができます。
19世紀後半にフランスで広まったといわれるロココ刺繍。リボン自体にグラデーションがついているものや、ピコットとよばれる小さな輪がリボンの両端についているものなど、刺繍用リボンは種類も多く、同じ作品でも、リボンの違いで雰囲気が大きく変わります。
ロココ刺繍は、さりげないのに、どこか華やかな雰囲気を纏った刺繍で、セーターやカーディガンなどのボリュームがあるものにもよく合います。
少ないステッチ数でも広い面積を刺せるので、意外と早く仕上がるんですよ。
ロマンチックでクラシカルなデザインと、すっきりとした現代風のオリジナルデザインの図案、あなたはどちらが好みですか?いくつか練習してみると、自分の好みの図案が分かってくるかもしれません。
1枚の花弁もリボンで作ると、ふっくらと広がりを感じさせる仕上がりに。エンブロイダリーリボンでリボンの図柄を刺繍すると、躍動感のある美しい刺繍になります。立体感があり、リボンそのものの質感も楽しめるんですよ。
刺繍作家・suzu(すず)さんの刺繍
『少ない色数でも楽しめる 総柄刺繍』
刺繍作家・suzuさんが少ない色数でも、キュートな刺繍に見える総柄刺繍を教えてくれる1冊です。総柄刺繍とは、統一性のある小さなモチーフを広い面積に散らして刺繍していく刺繍の方法。
同じモチーフでも、向きを変えたり、色を変えたりすることで、広がりのある素敵な作品になるんですよ。
シンプルなエプロンやミニバッグにも総柄刺繍を入れると、手作りのぬくもりを感じる自分だけのアイテムに早変わり。バランスよく刺繍を配置していくのが、センスの見せどころです!
糸の色数が少なくても、ひとつの刺繍が小さくても、繰り返し広く刺していくことで、簡単に豪華な刺繍が仕上がります。
刺繍初心者さんでも、あっという間に大きな面積を仕上げていくことができるので、達成感も楽しめますよ。
刺繍作家・千葉美波子さんの刺繍
『日本のかわいい刺繍図鑑』
「クロヤギシロヤギ」という、刺繍用品・刺繍雑貨の人気通販ショップを運営していることでも知られている、刺繍作家・千葉美波子さんが手掛けた本です。
日本古来から伝わる和の図案を200点以上、意匠の名前、意味も添えて紹介していますよ。
たとえば、冬の章で紹介されているのは、「南天に雪」、「一つ松」、「氷割れ(ひわれ)」など。形も意味も分かるようになると、古来から続く日本の良さを改めて感じることができるようになるかもしれません*
なかには魔よけの目的で施された刺繍も。子供の健やかな成長を願い、そのような意味を持った刺繍も紹介されています。
季節感や意味合いを考えて刺繍を刺すというのは、繊細な日本人らしい心遣いが感じられるもの。ハンカチやポーチに刺す刺繍も心して、選びたくなりますよ。
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おしまいに
ひと針ひと針「刺繍」をするのは、優雅な時間。無心になって刺繍していくと、頭の中もすっきりしてきて、気持ちも整うものですよね。
今回ご紹介した「刺繍」の本は、見ているだけでも楽しくなるものばかり。ぱらぱらめくって、やってみたいなという気持ちになったら、それが「刺繍」にチャレンジするタイミング!ぜひ、挑戦してみてください。美しい「刺繍」はきっとあなたの心を満たしてくれますよ♪
世界34か国、62種類もの刺繍を紹介した本書。地方に伝わる刺繍や、民族衣装の刺繍から、現代の刺繍作家さんが作る刺繍まで幅広く取り上げられています。
すべてカラーページなので、カラフルで美しい刺繍が細部までよく見えて、1ページずつページをめくるだけでもワクワク気分がマックスに!見たことのない配色は、勉強になりますよ。