「コーチング」は問題解決の近道
「コーチング」とは~基礎知識編
「コーチ」という単語は“馬車”に由来し、人を目的地まで運ぶものを意味しました。それが転じて、現在では目標の達成にむけて支援や指導をするという意味合いで使われています。
「コーチング」とは組織や個人が最大限の能力を発揮できるように、対話を重ね解決に導くこと。日本では20年ほど前に、ビジネスの場での人材開発に使われ始めました。
コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことです。
対話を重ね、クライアントに柔軟な思考と行動を促し、ゴールに向けて支援するコーチとクライアントとのパートナーシップを意味します。
コーチングに必要なこと
コーチングの目的は、コーチングを受ける人が自発的に行動したり、気づきを得たりすること。プロフェッショナルでなくても基本のコミュニケーションスキルを知っていれば、日常生活に応用することができます。そのプロセスにおいて必要なのが…
・適切な質問をして相手の答えを引き出すこと
・相手の良いところを伝えること
ただ、「あまり親しくない人とのコミュニケーションはちょっと…」と思う人もいますよね。日常生活でのコーチングは“共感”や“安心感”が大事。必ずしも饒舌なコミュニケーションが必要ではありません。簡単なところからチャレンジしてみましょう。
コーチング“3つの基本”
インタラクティブ(双方向)
オンゴーイング(現在進行形)
テーラーメイド(個別対応)
「ティーチング」との違い
「コーチング」をやってみよう~実践編
case1.パートナーが悩んでいるとき
①話を聴く時間と場所を設定する
→週末の夜や休日の昼間など相手がゆっくり話せる時間帯を選びます。場所は騒がしくない自宅リビングなどがいいでしょう。カフェが落ち着く人の場合は外でもOK。あくまでも相手基準で考えてください。
★ポイント
座る位置は対面ではなく横並びで。相手に威圧感ではなく安心感を与えることが大切です。
②相手の話を聴く姿勢をとる
→たわいもない会話でも相手に興味を示し、しっかり聴いていると伝わることが大切。相手が話している間は、相手の方に体を向けます。嬉しそうに話しているときは自分もにこやかな表情で相槌を打ち、怒りや悲しみを含みながら話しているときは同じく神妙な面持ちで聴きましょう。
★ポイント
会話の内容によっては自分の話をしたくなるかもしれませんが、コーチングでは相手が主役。自分の主張は控えめに。
→仕事の悩みを抱えている人に「仕事はどう?」と漠然とした質問をしても「イマイチ…」という返答にしかなりません。質問はより具体的に。相手が仕事の何について悩んでいるのか、過去の何気ない発言の中にヒントがあったはずです。なければ業務の中身なのか、職場の人間関係なのか、より絞った質問を投げかけてみましょう。
★ポイント
返答が「イマイチ」だったとしても、何がイマイチなのかその中身をさらに質問して分解してあげてください。本人が、何が問題なのかをわかっていない場合や、悩みの種を詳しく話すうちに自分の中で解決策が見えてくることもあります。
質問と返答を繰り返すうちに、相手の発言に肯定的な言葉が出てくるようになれば、成功と思ってもいいかもしれません。パートナーの場合、“理解してもらえている”という安心感が大切。オンゴーイングで、日頃から相手を観察して話に耳を傾けてあげましょう。
case2.子供にやる気を出してもらいたいとき
①子供が話のできる環境を作る
→まず、ゲームをしている最中や、今まさに宿題をしようとしているときに声をかけるのはNG。学校から帰ってきておやつを食べているとき、または休日に子供と2人になったタイミングを見計らって話す環境を作ります。
★ポイント
他の家族がいる場面は避けてください。コーチングを試みても、その他の家族が加わると子供に対して一方的な指導になってしまう恐れがあります。1対1で話を聴くのが基本です。
②双方向の会話を楽しむ
→いきなり宿題に関する質問をしてしまうと、子供は注意されるのかなと身構えてしまいます。まずは仲の良い友達のことやお気に入りのゲームについて聞いてみましょう。
★ポイント
本題に入る前にはインタラクティブで子供との会話を楽しみ、子供に「自分に関心を持ってもらえている」と思わせることが大切です。
→会話が弾んできたところで、ゲームの時間が長いことについてどう思うか質問します。子供が「だって…」などと言ってきても詰問にならないように注意してください。帰宅後の短い時間の中で宿題とゲームをやるにはどうすればよいか、相談するように質問してみましょう。ルールを提案するのも一つの手段ですが、コーチングはあくまで相手に答えを出してもらうのが基本。子供が自分で決めることで自主性や責任感が生まれます。
★ポイント
なかなか自分で考えられない場合は、ヒントを与えてみるのもいいかもしれません。子供が自分で決めて自分で動くことが大切。
ルールを決めた後も常に観察して、宿題を先にできたら「よくできたね」と褒めてあげてくださいね。承認されると続けてやろうとやる気も出てくるはずです。
case3.職場の同僚やママ友といい関係を築きたいとき
①仲良くなりたい相手を観察する
→会ったときに必ず笑顔で挨拶するなど話しやすい雰囲気を作り、だんだんと共通の話題から会話を始めてみましょう。相手が話している最中は間合いや声のトーンに注意し相槌を打ちます。このときに相手の表情をよく観察してみてください。相手が気持ちよく話せていると、「この人は話しやすい」と思ってもらえます。
★ポイント
聞き手になっているときは相手の発言を同じように繰り返すことで相手に安心感を与えることができます。例えば「うちの子風邪ひいちゃって」と言われたら、「風邪ひいちゃったんですか」と繰り返します。
→何気ない会話ができるようになったら、一歩踏み込んだ質問をしてみましょう。その際相手がどんな質問をすれば気持ち良く話してくれるか内容は選んでください。他の人との会話などからプライベートな話も楽しくしているようなら、家庭のことを聞いてみるのもいいかもしれません。
★ポイント
話しかける時間帯や場所は相手に合わせるよう心がけてください。職場なら休憩室かがいいのかトイレがいいのか。PTAなら会合前がいいのか後がいいのか。今までの会話からいつが話せるタイミングなのかを見極めることが大切です。
個人的な質問ができるようになり、お互いの生活環境などが分かってきたら、自然と連絡先の交換へと発展していきます。相手を観察し、共通の話題で共感、相手に合ったタイミングで話を聴くということが大切。
case4.自分自身がもっと成長したいとき
ここでは、「今の自分となりたい自分に差があると感じている」と仮定し、「目標が明確になり行動する」をゴールとします。
①感情の原因を見える化する
→なぜ今もやもやしているのか、その原因を分解して視覚化することが大切。同僚や家族との何気ない会話から、ふと湧き上がってきた感情(うれしい・悲しい・怒り・戸惑い)と、なぜそう思ったかを併記することで自分の克服すべきものが明らかになります。感情が動いたときには原因と共に紙に書きだしてみてください。
★ポイント
ある程度書き溜まってきたら見返してみてください。それぞれに共通の原因があるとすれば、それが心のストッパーになっていると考えられます。
②目標達成の行動計画を立てる
→もやもやの原因が分かったら、それを払拭するための行動計画を立てます。例えば過去に試験に失敗した経験がトラウマとなって一歩踏み出せないのであれば、自信をつける必要があります。自身の失敗体験を人に話して参考にしてもらう。もしくは気になる資格試験にチャレンジしてみるなど、自分に合ったやり方で自信をつける方法を確立しましょう。その際、時期を明確にしてスケジュール立てを行ってください。
★ポイント
目標はすぐにできる簡単なものから最終ゴールまで設定しましょう。例えば「資格試験に合格する」を最終目標に設定したら、まずは資料請求をする、次に学習計画を立てるなど。
→自分で考えた行動計画に沿って実行してみましょう。その期間中、再度もやもやした感情になるときがあれば①の作業に戻り、目標や行動を見直すことも必要です。心の声に耳を傾けながら少しずつでも前に進んでいきましょう。
★ポイント
小さな目標達成ができたら自分自身を褒めてあげてください。逆にできなかったときは自分を責めるのではなく、「まだ時間はある」「次の機会の方が良いかも」など前向きな気持ちで捉えることが大切です。
自分で、不調の原因を突き止め、改善計画を立て実行することができるようになれば、一時的に不調に陥っても自分で現状を変えて望んだゴールに近づくことができるでしょう。
やさしくてわかりやすい「コーチング」おすすめ参考書
マンガでやさしくわかるコーチング
新 コーチングが人を活かす
日本のコーチングの草分けと呼ばれる著者のコーチング入門書。イラストを使った豊富な事例はビジネスだけでなく、日常生活に活かせるものもたくさん詰まっています。全64ものコーチングスキルはきっと役に立ちますよ。これからコーチングを学んでみようかなという初心者にとっては最適な一冊。
子育てコーチングの教科書
コーチングの基本はそのままに、子育てに特化したコーチング入門書です。コーチングが人と人との関わりを変えるためのヒューマンスキルであることを実感させられる一冊です。具体的な育児のエピソードが語られていて、読者からは学びと感動が共存するといった評価も。
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より深く学ぶなら、資格をとるという選択も
現在、コーチの認定証を発行している団体は複数ありますが、代表的な2つを紹介します。
やさしく理解するにはやはりマンガがおすすめ。飲料メーカーに勤める女性を主人公にストーリー仕立てでぐいぐい読み進められます。解説もしっかりしてくれるので楽しみながら学べる一冊。マネージャーとして奮闘する主人公の成長にも注目です。