ミニマムリッチという考え方を提唱されている横田真由子さんの『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』という本の中から、わたしたちの暮らしを豊かにしてくれるミニマムリッチのヒントをご紹介してきましょう。

ミニマムリッチとは、上質なモノを厳選して、長く丁寧に使っていくという考え方のこと。安いモノを次から次へと手にとり、消費していくのではなく、ひとつのモノとの向き合い方をしっかりと考えていくということです。

身の丈にあった暮らしを実現するためには、自分自身の取捨選択の基軸をきちんと理解しておく必要があります。ミニマムリッチな暮らしに近づくためにはどうしたらよいのでしょうか？

本当に上質なモノというものがどのようなものか判断するためには、まず、一流のモノを知っておく必要があります。手触りや着心地、縫製の仕方など、さまざまな部分に一流の技が隠されていることが分かります。

素晴らしいモノに実際に触れてみることで、見る目が養われていきます。安いから悪いというわけではありません。本物の良さを知って、自分の価値基準に照らし合わせてみるということが大切なのです。

ミニマムリッチは食に関しても言えることです。二千円のお寿司を十回食べるよりも、二万円のお寿司を一回だけ味わう。二万円のお寿司をいただいてみると、お寿司そのものはもちろんのこと、職人さんがどのように食材を扱い、お客様との関係性をどう築いていくのかということを体験することができます。

上質なモノはきちんとメンテナンスをすることで、長く使っていくことができます。日常的にメンテナンスをすると、モノを丁寧に扱うという経験を積み重ねられます。

身に着けるものは、何度も試着をして着心地や履き心地を確かめてから購入しましょう。じっくりと考えて、選び抜いたものにはずっと使い続けたいという想いが芽生えるはずです。

時間を大切にするという心を込めて、時計はとくに丁寧に扱う姿勢を貫きましょう。使い終わったら、布でやさしく拭き、決められた場所に美しく保管します。手入れの行き届いた時計は、その人自身の信頼感を増してくれます。

直接、肌に触れるジュエリーもメンテナンスをきちんと行いましょう。見栄え良く収納することで、チェーンが絡まったり、宝石が傷ついたりすることを防げます。

大人になるとさまざまな立場に立たされます。ほかの人に見られるからではなく、自分自身のために立場にふさわしいモノを持つようにしましょう。そのモノにどんな価値があるのかを理解することで、自信のある立ち居振る舞いをすることができるようになります。

いつもバッグの中には必要なモノだけを入れるようにしましょう。手帳や文具、名刺入れやポーチなど手に馴染むモノを厳選して入れておくことで、その日に遭遇するあらゆるシーンで優雅に振舞うことができます。整理できていないバッグは、自分自身を混乱に陥れます。

家事でも選び抜かれた道具を使うことは大切です。とくに包丁やまな板などは、メンテナンスを行ったモノを使いこなすことで、お料理の腕もあがっていくはずです。

丁寧にチョイスしたカップとソーサーを使って、ゆっくりとコーヒーを淹れる。コーヒー豆やハンドドリップするための道具にもこだわる。些細なことを大切にしていくことで、上質なひとときを手に入れることができます。

一番よく使う場所を清潔にしておくことは信頼感につながります。わたしたちの体の中のパーツで、手はもっとも働き者であり、人の目にもつきやすい部分です。爪を清潔にし、ハンドクリームをこまめに塗ってきちんと手入れすることで、品格を保つことができますね。

人はみんな同じ24時間を生きているのに、なぜか余裕のある人と時間に振り回されている人がいます。持ち物を少なく、身軽にすることで不思議とさまざまなことに余白ができて、余裕が生まれます。