女心と秋の空――とはよく言ったもので、やれ食欲だ、芸術だ、スポーツだと、まるで移ろう雲のように夏の間に失せていた欲求が一気に溢れ出し何かと慌しい季節です。紅葉や行楽に出かけるのももちろんいいけれど、秋の夜長、天然の香りで癒されるリラックスタイムはいかがでしょう。
今回ご紹介するのは、例えるなら高級石鹸のように気品溢れる香りがする「ベラドンナリリー」というお花。お花を扱うプロでさえも見かける機会の少ない珍しいものだそうで、なんでも一年間で球根から切れる花はたった“一本だけ”という希少なお花なんだそうですよ。
しとやかで上品。イタリア語で「美しい淑女」を意味する花
「リリー」という名称は、通常ユリに関係している場合に付くのですが、実はベラドンナリリーはユリの仲間ではありません。ヒガンバナ科アマリリス属に分類され、その和名を「ホンアマリリス」といいます。
花が咲くまで5年。切れるのは一年間で一本のみという希少性
ベラドンナリリーは、秋に花を咲かせ、受粉し、イチジクのような大きな丸い実をつけます。実がはじけ、種が土に撒かれてから花が咲くまで待つこと約5年…!!球根はじっくりと時間をかけて成長し、ある程度の大きさになってから初めて花を咲かせます。そこまでに5年、そしてそれから“切り花向きの花”を咲かせるほどに成長するまでにまたさらに2、3年というから驚き。しかも、ひとつの球根から切れる花は一年間でたった一本のみと、リスクも伴うので生産している花農家さんもごく僅か、その希少性にも拍車がかかります。
その名も「フェイバリット」。優しいアイボリー色のお気に入り
子どもの頃から変わらずに美しいと感じる花
『霽れと褻』代表・田中さんに教わる「ベラドンナリリー」の愛で方
株式会社BOTANIC代表・田中 彰さん。1983年、高知市出身。神戸大学経済学部卒業後、AGC旭硝子株式会社に勤務。東京・南青山の花屋での修行を経て、BOTANICをスタート。2013年7月、東京・中目黒に花屋「ex. flower shop & laboratory」をオープン。
Q:ベラドンナリリーを美しく飾るコツは?
頭部にボリュームのある花姿を活かすには、背が高めの花瓶を選ぶのが◎。また、花だけでなく茎も美しい花なので、透明の花瓶を選んで茎まで一緒に楽しむのがおすすめです。
同じ花瓶に数本活ける場合は、少し高低さを付けてあげることで、ボリュームが一箇所に片寄らずにより自然な仕上がりになります。
Q:長持ちさせるにはどうしたらいいの?
ユリなどで一般的に行なわれる処理ですが、花粉のついている葯(やく)を取り除く作業が必要です。花は切り花の状態になっても、受粉して子孫を残そうとします。その時、種をつくるために蓄えたエネルギーを消耗してしまい、花の老化を進めてしまうので早い段階で受粉を防ぐために、葯をピンセットやティッシュでそっとつまんで取り除きましょう。
Q:メンテナンスで気をつけることは?
蕾を咲きやすくするために、毎日しっかりと切り戻すことが大切です。茎が太くてしっかりとしているので、ハサミで斜めに切るのが難しい場合は、フラワーナイフやカッターを使います。くれぐれも、刃物の扱いには注意して行いましょう。
開花が進むにつれて茶色く変色した外側の皮はむしり取り、萎れた花がある場合はハサミで切り取ってあげましょう。蕾が咲いたら、また同様に葯を取り除く作業をします。
花屋直伝!ベラドンナリリーの楽しみ方
萎れた花を取り除いていくにつれ、ボリュームが減って寂しいなと感じた時は茎を短く切って丈の低い花瓶に移してみましょう。全体のバランスがとれ、最後の一輪まで美しい状態で楽しめますよ。また、香りがとても良い花なのでリラックスタイムを過ごす部屋に飾ると癒されます。
秋の夜長、天然の香りで癒されて……
来月のお花は、「オンシジウム・シャーリーベイビー」
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霽れと褻(ハレとケ)
中目黒と蔵前に店舗を持つex. flower shopが新しく立ち上げたブランド。
毎月、旬のお花が届く「ハレとケ定期便」や大切な方へお花を贈るサービス「ギフトチケット」、SUEKI CERAMICSとのオリジナルの花瓶を販売する。
左が一般的に呼ばれているアマリリス、右が本来のアマリリス「ベラドンナリリー」です