時には主役が足繁く通う食堂の店主だったり、時には会社の同僚だったり。
たとえ台詞のない場面でも表情や動作ひとつで、見るものの印象に残る――それが、名脇役の仕事。
今回は、そんな花屋の中で名脇役と呼ぶにふさわしい「アルストロメリア」という花のストーリー。名前までは分からないけれど、見れば分かる。そんな“名バイプレーヤー”としてのプロの仕事に今回はスポットライトが当たりました。
名前は知らないけれど、居ないと困る。
日本に入ってきたのは、昭和初期。本格的に輸入が始まったのはバブル景気の頃で、見た目が鮮やかで存在感のある花姿が時代の雰囲気にマッチしたのか、一気に人気を博しました。
花弁の一部に斑点が入った定番品種以外にも、特有の模様が無い「スポットレス」と呼ばれるものなど、実に様々な色や形の品種が存在する、バリエーションに富んだ花です。
こんなエキゾチックな花姿に反して、切花流通金額の統計ではチューリップの約2倍、シャクヤクの約3倍の金額と、いつも10位以内にはランクインするほど広く普及している花なんですよ。
花屋の間で有名な“片桐さんのアルストロメリア”
大きなガラスハウスの中でのびのびと育つアルストロメリア。背が高いものは成人男性の身長をゆうに超えるものもあります。見た目だけでなく品質にも定評のある信州片桐花卉園さんのアルストロメリアは、園主である片桐鏡仁(かたぎり あきひと)さんの名前から “片桐さんのアルストロメリア”と親しみをこめて呼ばれ、花屋の間でもすっかり浸透しているそう。
また、東京のフェアなどにも積極的に出店していて、花業界の同世代の友人も多い片桐さん。
一緒に学んだり新しいことに挑戦したり、同世代や若い世代は、これからもずっと一緒に成長していく仲間。縦の繋がりももちろん大事だけど、そんな横の繋がりを特に大事にされているそうです。
ハッピーな人間がつくる花は、きっと良い花になるに違いありません。花も人間も健やかに育つ、ここ信州花卉園さんのアルストロメリアはとても幸せそうな顔をしています。
『霽れと褻』代表・田中さんに教わる「アルストロメリア」の愛で方
Q:下準備の注意ポイントって?
葉は、花に表情を与えてくれるので、基本的には切り落とさずに残しておくのがべストです。また、アルストロメリアの雄しべの花粉は飾っているうちに花弁についてしまうことがあるので、気になるようであれば、指やピンセットで摘んで取り除きましょう。
まずは、基本の活け方をマスターしよう!
アルストロメリアのすらりとした直線を楽しむ定番の花瓶活けでは、長さに多少の差をつけたものを数本、ざっくりとラフに活けるのがおすすめ。頭に重みがあるので、重心が安定しやすい口の狭い花瓶が◎。すらっとした茎が美しいので、背の高い透明のガラスで長さを活かして。
工夫を加えて、素敵な飾り方いろいろ
飾り方が単調になりがちなアルストロメリアですが、工夫を加えればいろんな楽しみ方ができますよ。異なる種類を数本、長さを揃えてカジュアルブーケ風に。一本ずつ交差させながら活けると形がまとまりやすくなります。
口の広い花瓶に活ける際は、片側に寄せて重ねるようにしても素敵。
Q:他の花との組み合わせ方って?
まっすぐで細かく枝分かれしたアルストロメリアは、他の花を支える花留めとしても活躍します。茎が柔らかくしだれてしまう花もアルストロメリアを添えればしっかりと支えられます。フレッシュな色合いのアルストロメリアは、鮮やかなグリーンとの相性も抜群です。
その背景を知ることで、より特別な存在に。
次回のお花は…
\ 今月の「#霽れと褻」発表! /
ハッシュタグを付けて投稿してくださった方の中から、こちらのコーナーに採用された方には、キナリノモールでも販売中の『霽れと褻ギフトチケット一ヶ月分』をプレゼントします♪
※対象画像は「ハレとケ定期便」で届いたお花や新聞、「霽れと褻DAY」で購入したお花、当日の店頭ディスプレイ写真となります。
こちらは、先月お送りした「クリスマスローズ」。日の出が逆光になって、花脈が透き通りまた違った美しさを見せてくれていますね。新しい一日の始まりに、自然の恵みに感謝できるこんな瞬間がある暮らしとても素敵だと思います。
霽れと褻(ハレとケ)
代々木上原、中目黒、蔵前に店舗を持つex. flower shopが新しく立ち上げたブランド。
毎月、旬のお花が届く「ハレとケ定期便」や大切な方へお花を贈るサービス「ギフトチケット」、SUEKI CERAMICSとのオリジナルの花瓶を販売する。
BOTANIC代表・田中彰さん。1983年、高知市出身。大学卒業後、素材メーカーに勤務。花と植物の魅力に惹かれ、転身。東京・南青山の花屋で修行を経て、株式会社BOTANICを設立。