スナフキンの言葉は、“シンプルライフ”のヒント
スナフキンは“ミニマリスト”?
ムーミンたちが活躍する童話に登場したスナフキンは、ぶれない姿勢と哲学的な物腰で、私たちに大切なメッセージを伝えてくれます。
ところで、ミニマリストとは?
持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人。自分にとって本当に必要な物だけを持つことでかえって豊かに生きられるという考え方で、大量生産・大量消費の現代社会において、新しく生まれたライフスタイルである。
ムーミン谷の仲間、スナフキンについて
春から夏のあいだムーミン谷で過ごします。全身深い緑色の服をまとい、テントも緑。パイプをくぐらせ、音楽と詩をこよなく愛する旅人です。実は人間ではなく、トロールの仲間。
フィンランドにあったアトリエファウニ製のスナフキン人形(一番左)。
シニカルで孤独を愛するスナフキンは、ムーミン谷の仲間たちの中でも、他に染まらない独特の人生観を持ち、他のムーミンキャラクターの中でもとびぬけて人気があります。
“モノ”に執着しない、スナフキンの生き方
物を所持することで満たされるのではなく、“自分が自分らしくあるために物をもたない”選択をしています。
「なにかを手にいれようと思ったとたんに、めんどうなことがおきるものさ。どこへいくにも、よっこらしょと、そいつをかついでいくんだぜ。ぼくは詩にするだけでいいや。そのほうがずっと気がきいてるからね」
スナフキンにとって、“所有する”とは?
スナフキンの“モノ”に対する考え方が分かる、こんな言葉があります。
宝石のザクロ石がたくさんある谷があると聞いたスニフは、「その石、きみのなの?」とスナフキンにたずねます。目の前に宝石がたくさんあったら、独り占めしたい!という所有欲に駆られてしまいますが、スナフキンの返答は…?
「ザクロ石のことは詩にしたよ(中略)だから、ぼくのものだといえるかな。だけど、きみにやるよ。もうぼくには必要ないからね」
新しいモノを増やすより、身軽さを選ぶ
スナフキンの持ち物は、使い古した洋服と帽子、そしてリュックにはテント、ロウソク、ハーモニカ、釣竿くらいしか入っていません。常に必要最低限です。
ある日、お店で新しいズボンを試着したスナフキンでしたが、結局買いませんでした。その時に発した言葉は……?
「ズボンはあたらしすぎてしっくりこないし、もちものをふやすと身動きがとれなくなるからね」
使い捨てはNO!必要なものは自分で作る
使い捨てや、わざわざ購入することが嫌いなスナフキン。必要なものは自分で生み出し、また必要でないものは最初から使いません。
「その木ぎれで、木のさじをつくるんだよ。」
もちろん、スナフキン用のナプキンはありません。スナフキンは、ナプキンはおことわりなのです。
“家”にも執着しない。縛られることが大嫌い!
春から夏にかけてムーミン谷で過ごすスナフキンですが、他の友人たちのようにムーミンの家に泊まることはありません。いつも背負っている、深い緑色のテントを小川にかかる橋のたもとに張って生活します。
ミニマリストのスナフキンは、「家」に縛られることも非常に嫌います。家自体を憎んでいるふしもあります。だけど、彼のテントにはいろいろな人がめいめい勝手な理由で訪れますが、スナフキンはしぶしぶでありながらもいつも受け入れています。スナフキンのテントは、決して社会と閉ざされていません。
「家ってやつは、どいつもこいつも、気にいらないな。」
oh,all you houses, how I hate you!
水あび小屋まで足をのばして、小さなドアをギーッとひらいてみました。むっと、かびくさいにおいや、海藻のにおいがたちこめていて、すぎさった夏のにおいが鼻につきました。気がめいってくるにおいでした。
「ああ、家ってやつは、どれもおんなじだ」、と、スナフキンは思いました。
“大切なモノ”にも執着はしない
スナフキンが肌身離さず大切にしているハーモニカですが、苦手なフィリフヨンカも興味を抱いていると知ると…
「もうしばらく、かしておいてあげてもいいよ。」と、スナフキンは、口こもりながらいいました。
モノには興味ないけど、心を豊かにする方法を知っている
スナフキンが、テントの中でハーモニカをふいていました。きえいるようにかすかに、夜の底から流れてくるうつくしいしらべでした。
スナフキンは、自分の5つの音色をつかまえに、海べへでかけていきました。(中略)それは、すぐにやってきました。こんなだったらいいなあと思っていたよりも、もっとさわやかで、うつくしい音色でした。
人付き合いは、モノではなく心遣いで
まっさらの鳥の羽をぼうしにさしてでかけていきました。
スナフキン流、“心を自由にする方法”
物事をシンプルに考える
神経質なフィリフヨンカと、小心者なのに見栄っ張りなヘムレンが食後の片づけの分担について口論しています。それを見たスナフキンは、心のなかで思います…。
ミニマルに生活している彼だからこそ、仕事やわずらわしいささいなことに巻き込まれず、身の丈にあった暮らしぶりができるのです。そんな彼にとっては、食器のあとかたづけもとってもエコロジー。
「あとかたづけなんて、わけないじゃないか。小川の中で、おさらをくるくるっとまわして、手をあらって、手をふいた青い葉っぱを1まい、ぽいとすてればいいんだ。なんでもないことだ。」
What is washing-up? Tossing a plate into the stream, rinsing one's paws, throwing away a green leaf, it's nothing at all. What are they talking about?
モノだけじゃなく、“人”にも縛られない
自由を愛し、常に旅をしているスナフキン。旅立ちたくなったら、親友のムーミンに手紙を残すことも忘れてサッとその場を去ってしまいます。スナフキンはモノだけではなく、人に対しても縛られない自由な生き方を好みます。相手からも縛られたくないし、自分も相手を縛ろうとはしません。わずらわしい人間関係とは無縁なのです。
ホムサ「きみは、いつ、いなくなってしまうの。」
スナフキン「さあ、そいつは、ぼくにはわからないな。そのときしだいさ。」
スナフキンに、どんな手紙を書けばいいのか知っているのは、ムーミントロールだけでした。かいつまんでみじかく。約束するだの、こいしいだの、かなしいだの、ということは、いっさい、これっぽっちも書きません。そして、おしまいは、げらげらわらいだすようなことでむすぶんです。
孤独はさみしいことじゃない。一人きりの時間も大切
自由を何よりも欲しているスナフキン。大好きなムーミン一家との付き合いにおいても、常に孤独と自由を求めています。その姿勢はまさにミニマリスト。物よりも自由を欲し、一人きりの時間をとても大切にしています。
「ぼくのさがしているのは、おせっかいされないことさ。」
スナフキンは、朝ははやおきしようと、ねるときから心にきめていました。そうすれば、ほんのひとときでも、ひとりきりでのんびりできるからです。
Snufkin had determined that he would wake up early in order to have an hour or two to himself.
“一人”を知っているからこそ、仲間の大切さも知っている
「こんなときムーミンママがいてくれたら、どんなに助かることか」
スナフキンは、ムーミン一家がこいしくて、たまらなくなりました。ムーミンたちだって、うるさいことはうるさいんです。おしゃべりだってしたがります。どこへいっても、顔があいます。でも、ムーミンたちといっしょのときは、自分ひとりになれるんです。
子どもたちに対しても、シンプルに向き合う
色々あって、たくさんの孤児を一時的に引き取ったスナフキン。ある夜、劇場に出かけることになりました。騒々しい子供たちに、スナフキンは観劇のルールを教えます。シンプルな言葉で子どもたちに、芸術との向き合い方を教えます。余計なことは決して言わない、ミニマリスト、スナフキンの言葉は、すとんと子供たちの心に響きます。
「幕があがったら静かにしていないといけないんだよ。ずっと口をつぐんでるんだ。お芝居が終わったら、おもしろかったですよって意味で拍手をしてあげるんだ。」
理想像を求めずに、そのままの自分を受け入れる
あまり言葉を発しないスナフキンは、周囲の人が勝手な期待を抱いて憧れられることもあります。だけど、スナフキンはいたってマイペース。周りを気にせずに、いつもマイペースに思索と音楽について考えを巡らせています。
“こう思われたい!”とか、“こうなりたい!”という理想像を求めるよりも、自分らしくシンプルに生きることの方がスナフキンにとっては大切なのです。そんなスナフキンだからこそ、仲間たちに尊敬され、頼られているんですね。
ただ、だまってすわっていて、それで、だれよりももの知りなんです。スナフキンのいうことは、なんでもすてきにきこえるし、ほんとうだという気がします。
なぜ、みんなは、スナフキンを尊敬するんだろう、と、ホムサはほんきで考えてみました。(中略)だれのさしずもうけずに、自分のすきなところへいって、とじこもっているからかもしれません。
自由を奪う存在には、断固として立ち向かう
おしゃべりな人やおせっかいな人にブツブツ文句を言うスナフキンですが、一方で彼らをきちんと受け入れもします。一見すると、物事に流されていそうなスナフキンですが、決して許せない物事に対しては、断固として立ち向かうことも。
スナフキンを最も怒らせるもの。それは、「だれかのもの」をことさらアピールしたり、「命令」する立札たち。所有することを嫌い、自由を愛するスナフキンが最も嫌いな物です。時には公園でそんな立札をひっこぬいてしまうことさえもあります。
「立札をぜんぶ引っこ抜いてやる。笑うべからずなんて冗談じゃない。花のにおいをかぐべからずも、ぜったい飛び跳ねるべからずもなし。ふざけるな。」
立ち入り禁止とか、境界とか、閉鎖とか、しめだしとか、ひとりじめをあらわす感じのことばは、なにがなんでも、スナフキンは大きらいなのです。
スナフキンの言葉に触れられる作品たち
スナフキンの名言集
新装版 ムーミン谷の十一月
劇場版ムーミン パペット・アニメーション ~ムーミン谷の夏まつり~
モノを持つことよりも、大切なこと
スナフキンは、モノなどに特別な愛着心や執着心を持つことを嫌い、常に自由を求めて旅をします。彼いわく、「モノにせよ思考にせよ持ち続けると重すぎて複雑になる」そう。本当に大切なのは、自分自身を知っていること。
モノも考え方もシンプルに。極力物を持たず、言葉少なく常に旅を続けるスナフキンの姿勢は、現代生活で忘れがちなメッセージがたくさん込められています。そんなスナフキンから、少しでもシンプルライフの考えが学べたら素敵ですね。
安く大量に購入し、使い捨てをする現代社会の暮らし方は環境への負荷も大きく、問題を多く抱えています。
そんななか、必要最小限のもので豊かに暮らす「ミニマリスト」に共感する人が、若者を中心に増えています。