自家製シロップや旬の果物、エスプレッソや黒糖きなこ等など…。
「かき氷」は、もはや夏の風物詩ではないかもしれません。年中食べられる店も増え、「かき氷」は立派なスウィーツの一ジャンルとなりました。
全国にはかき氷の名店としてよく知られる店が数々あります。シロップや具材、氷の削り方や盛り方などに工夫を凝らし、それぞれに店の個性を発揮しています。最近では氷の質にもこだわって「天然氷」を用いた店も増えてきました。
全国にはかき氷の名店としてよく知られる店が数々あります。シロップや具材、氷の削り方や盛り方などに工夫を凝らし、それぞれに店の個性を発揮しています。最近では氷の質にもこだわって「天然氷」を用いた店も増えてきました。
天然氷って何?
天然氷、天然氷とよく耳にしますが、一体「天然氷」とはどんな氷なのでしょうか。
出典:www.flickr.com(@ritsuko*)
“天然氷”とは、湧水などの天然水を凍結させた氷ではありません。
“天然氷”とは、山間などの自然環境下に造った池に、湧水などの良質な水を引き込んで、ゆっくりと自然の寒さで凍らせた氷のことです。
一概に自然に凍らせるといっても、“天然氷”として出荷するまでには途方もない手間がかかります。透明で硬く溶けにくい氷の条件は、低温でじっくりと凍らせる必要があり、水を引き込んでから、池一面に張った氷を切り出すまでには、おおよそ2週間から20日程かかります。
自然環境下にある池で凍らせるので、切り出すまでの間には、塵やホコリや落葉などが、氷の表面に舞い落ちます。また天候によって、氷の温度を上げる「雪」も降り積もります。手間がかかるのは、塵や雪を毎日除去する作業です。
さらに、結氷しても気温が上昇すれば、割って捨ててしまい、また一からやり直す必要があります。極寒の頃に、人力で天然氷が十分な厚みになるまで毎日繰り返します。
氷がようやく完成して切り出されると、「氷室」と呼ぶ氷を保管する小屋に運び入れます。人力で運び、おが屑などで氷を覆って保存し、出荷に備えます。
大正時代に600軒弱、昭和初期に100軒以上の氷室がありましたが、今では冷凍冷蔵技術の発達や後継者等の問題から、今では全国にたった5軒しかありません。出荷するまでの大変な作業を考えれば、氷室を存続させるというのは、本当に大変なことなのです。
出典:www.flickr.com(@Norio NAKAYAMA)
つまり、“天然氷”とは、天然水を自然環境下で結氷させた氷であり、蔵元の人々の多大なる労力の結晶。
“天然氷”とは何かを理解したところで、早速「天然氷」を使ったかき氷の名店の数々を紹介しましょう。
東京都内で、サクサク!フワフワ!
椛屋(もみじや)(東京都足立区)
東武スカイツリーライン「梅島駅」から歩いて15分程。下町の静かな住宅街の中に民家を改装した店舗。店の前に設けられたテント内に、テーブルが並べられています。「糀屋」は2013年の「食べログ」ベストスウィーツに選ばれた名店。日光・松月氷室の天然氷を使ったかき氷は、ふんわりとかいてあって綿菓子のような食感。季節ごとに変わるメニューは要チェック。
椛屋
住所:東京都足立区梅田3-19-15 1F
TEL :080-5543-0273
営業時間;11:00~17:30[7~8月]11:00~18:30日曜営業
定休日:火曜日(祝日の場合は翌水曜日)
椛屋
住所:東京都足立区梅田3-19-15 1F
TEL :080-5543-0273
営業時間;11:00~17:30[7~8月]11:00~18:30日曜営業
定休日:火曜日(祝日の場合は翌水曜日)
千駄木 ひみつ堂(東京都江東区谷中)
天然氷のかき氷店として名高い「ひみつ堂」。年中かき氷ファンが集うかき氷の専門店。一番人気は、言わずと知れた“ひみつのいちごミルク”。繁忙期は1時間から最大で5時間も待つほどの人気っぷり(2014年7月後半からは、土日に限り整理券方式)。ここの人気の“ひみつ”は、旬の瑞々しい果物と砂糖のみで作った完全無添加の自家製シロップと天然氷。日光天然氷の蔵元「三ツ星氷室」を使用しています。
ひみつ堂
住所:東京都台東区谷中3-11-18
TEL : 03-3824-4132
営業時間;[7月~9月]9:30~20:00 11:00~20:00 (秋~春は曜日により18時閉店)
定休日:月曜 (10月~4月は月曜・火曜)
少し足を伸ばしてフワッフワ!
埜庵(のあん)(神奈川県藤沢市)
「埜庵」は小田急線「鵠沼海岸駅」から徒歩で3分のかき氷専門店。綿飴のような優しい食感の「埜庵」のかき氷は、日光の天然氷蔵元・三ツ星氷室の天然氷を使用。この店の名を知らしめたのは、何といっても、旬の果物を使った絶品のシロップ。熟達した技で削ったふわっふわで繊細な氷と、衝撃的な美味しさのシロップのマリアージュは、一度味わったら忘れられないほどに魅惑的。夏期は平日でも行列は必至(休日は整理券配布)の人気店。
埜庵
住所:神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-5-11
TEL:0466-33-2500
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:00)氷が無くなり次第終了 日曜営業
定休日:月・火曜日
三日月氷菓店(千葉県柏)
柏駅から歩いて5分程にある人気店「三日月氷菓店」が使うのは、日光・天然氷蔵元「三ツ星氷室」のもの。美々しく薄く削られた氷はあくまでもふんわり、ふわふわ。口の中ですぅっと溶け、氷の自体の甘みをも感じる芸術的なかき氷です。「生いちご」や「生レモン」「生スイカ」など、旬の果物から作られたオリジナルのシロップも上品で、繊細な氷とよく合っています。他にも「宇治金時」「キャラメル」「黒蜜」「みぞれ」などのメニューも人気。
三日月氷菓店
住所:千葉県柏市柏1-5-5 谷澤ビル2F
TEL:04-7162-3404
営業時間:11:00~18:00 日曜営業
定休日:火曜定休。10月~4月までは第2・第4水曜も定休。
阿左美冷蔵 金崎本店(埼玉県・秩父)
“天然氷”は日光が有名ですが、秩父も天然氷の産地。「阿左美冷蔵」は秩父の天然氷の蔵元。その直営店が「阿左美冷蔵 金崎本店」です。秩父鉄道「上長瀞」駅から歩いて3分程にある店舗は、昭和初期建造の風情ある日本家屋。緑豊かな庭にテーブル席が設けられています。外で食べるかき氷の美味しさは格別です。
ふわふわっとした口溶け良いかき氷を求めて、遠方から来る客で連日賑わうよく知られた名店「阿左美冷蔵 金崎本店」。メニューは、桃や苺、メロンや林檎など季節の果物を使った店オリジナルのシロップの他、黒蜜や抹茶あずき、ココアミルクなどがあります。天然氷”との相性を考えた蔵元ならではラインナップです。
阿左美冷蔵 金崎本店
住所:埼玉県秩父郡皆野町金崎27−1
TEL:0494-62-1119
営業時間:10:00~17:00ごろまで
定休日:木曜日(7月、8月は無休)
雪みるく(埼玉県久喜市)
以前は「道の駅」や川越で営業していたこの店は、現在久喜市内の「華野果市場」という半分露天の青果店内で営業しています。この店が使用するのは、日光・天然氷蔵元の松月氷室のもの。ここは天然氷の美味しさもさることながら、たっぷりと豪快に盛られた旬の果物とシロップに特徴があります。メニューは青果店ならではの「生メロンスペシャル」や「生マンゴーミルク」、「はちみつゆず」等。その他に定番のかき氷から、オリジナル「ぷりん」や「ティラミス」といった変化球まで、メニューは実に豊富です。
雪みるく
住所:埼玉県久喜市菖蒲町菖蒲寺田6008
TEL:090-3530-5348
営業時間:10:00~17:00(氷が無くなり次第終了)日曜営業
定休日:月曜日
松月氷室(栃木県日光市)
全国で5軒しかない天然氷の氷室。その内の3軒が日光市内にはあります。「松月氷室」はその一つで、全国的によく知られた天然氷の名店です。
明治27年から氷づくりを始めた、老舗の氷室の直営店「松月氷室」。ふわふわとかかれた氷は口の中ですっと消えてなくなります。この口溶けの良さは、やはり天然氷づくりに携わる店ならでは。
メニューは実に豊富。「特上マンゴ」「生いちご」「桃」といった“厳選こだわり果蜜シロップ”の他、「みぞれ」などの“昔ながらの駄菓子屋のかき氷”、「黒糖みつ」といった“和の味わい”等など全部で20種以上のメニューがあります。日光まで足を伸ばすだけの価値がある名店です。
松月氷室
住所:栃木県日光市今市379
TEL:0288-21-0162
営業時間:11:00~16:20(季節、曜日により短縮営業)日曜営業
定休日:月曜 (振り替え休日の場合翌火曜休業)
CAFE OWL(カフェ アウル)(栃木県日光市)
「松月氷室」と同様、カフェ・アウルも日光市内の氷室「四代目氷室徳次郎」の直営店。自然豊かな、日光霧降高原のチロリン村の中に店舗があります。
「四代目氷室徳次郎」は、「天然氷」を一躍有名にした立役者。全国の催事場などでの季節販売の他、有名店とのコラボなど多角的に「天然氷」の販促活動をされている氷室さんです。口溶け優しいかき氷は、どれもボリュームがあります。メニューは、いちごやブルーベリー、抹茶あずき等で、ミルクを加えたものが人気。この店のシロップは甘すぎず大人でも美味しく頂けると評判です。
CAFE OWL (カフェ アウル)
住所:栃木県日光市所野1535-227 日光霧峰高原チロリン村内
TEL:0288-53-2877
営業時間:10:00~16:00 日曜営業
定休日:火曜日
近畿でひんやりと!
小西本店(滋賀県彦根市)
彦根旧城下町「花しょうぶ通り商店街」にある精肉店ですが、ユニークなことに、日光の天然氷のかき氷が頂けます。関西地方で天然氷を使った店は珍しいので実に貴重な存在。ここで使われている氷は、日光・天然氷蔵元「松月氷室」のもので、松月氷室同様に、ふわっふわなかき氷です。シロップも「松月氷室」から直接取り寄せています。メニューは、とちおとめや白桃、特上マンゴー等など。
住所:滋賀県彦根市河原2丁目3-5
TEL:0749-22-1334
営業時間:かき氷は6~9月の(土)(日)(祝)の13:00〜16:00 売り切れ次第終了
ひこね芹川 / 惣菜・デリ
- 住所
- 彦根市河原2-3-5
- 営業時間
- [月]
定休日
[火]
09:00 - 17:30
[水]
定休日
[木]
09:00 - 17:30
[金]
09:00 - 17:30
[土]
09:00 - 17:30
[日]
09:00 - 17:30
■ 営業時間
[かき氷]
12:30~17:30
※2021年の7月~8月毎週金土日曜がかき氷の営業日となります。
かき氷の営業日は、朝10時から整理券を配布します。
- 定休日
- 月曜日、水曜日
- 平均予算
- ~¥999
祇園NITI(ニチ)(京都府京都市・祇園)
このモダンな空間は、祇園にある「祇園 NITI(にち)」。昼間は町家カフェ、夜は大人が集うBARです。洒落た空間で頂くかき氷は、日光・天然氷蔵元「四代目徳次郎」のもの。かき氷は通年提供されています。
かき氷は“雪のように軽く、口溶けの良い特別な氷の味わい”で、メニューは「淡雪awayuki/天然氷のかき氷+季節の果実」・「淡雪awayuki/天然氷のかき氷+抹茶宇治金時」・「淡雪awayuki/天然氷のかき氷+ミルク金時珈琲添え」「プリン」など。氷の美味しさもさることながら、店の雰囲気、盛り付け等も味わい深い名店です。
おわりに
“天然氷”は手間暇がかかり、冬場に作りますので量産が出来ません。また氷室から取り寄せれば、配送のコストかかり、業務用の氷よりも、仕入れ値は高くなるが一般的です。また、天然水を冷凍機で凍らせた“天然水の純氷”でも、削り方一つで“天然氷”の食感と同様になり、遜色なく十分に美味しく頂けます。
そうした中で、店主があえて“天然氷”を使うのは、話題の氷だからという理由だけではないはずです。
“天然氷”が育つのは、先述したように山間の池です。氷が育つまでには沢山の人の手がかかります。でもこうした手間暇は、古くから日本の“暮らし”にはついてまわる当たり前のことでした。
日本人の暮らしは自然と共にあり、氷を含めて自然から頂く恵みには、「自然との対話」「自然との共存共生」といったことが内包されています。美味しい氷には、清らかな水が必要であり、清水を得るには池周囲の自然環境を絶えず保全しなければなりません。
店主が“天然氷”を採用するのは、そうした背後にあるものを含め、氷のコストを引き受け、かき氷を提供することを通して、間接的に日本人の「文化」と「自然環境」の保全に協力しているのです。
そのような“天然氷”だからこそ、美味しくなるように願いを込めて“天然氷”を店主が優しくかくからこそ、より味わい深いかき氷となるのではと筆者は考えます。
“かき氷”は、年中頂けるスウィーツになりましたが、やっぱり汗をかく時期が一番美味しいはず。
「天然氷」のかき氷。
お気に入りの店に、ぜひ足を運んで美味しく味わって下さい。
“天然氷”の証。