モダンなデザインなのに温かみがある…加藤さんのカワイイ漆器
これまでは、どうしても工芸品のイメージが強かった漆器。
ここ数年、豊かな暮らしをめざす人々の間で、身近で便利で有能な道具として少しずつ見直され、注目を集めています。
そのなかでも、モダンなデザインと温かな風合いが調和された作品で独特の世界観を放っている塗師・加藤那美子さん。目の前にすると思わず掌(たなごころ)で包んでみたくなる加藤さんの漆器を、ご本人のお話を交えながらご紹介します。
ここ数年、豊かな暮らしをめざす人々の間で、身近で便利で有能な道具として少しずつ見直され、注目を集めています。
そのなかでも、モダンなデザインと温かな風合いが調和された作品で独特の世界観を放っている塗師・加藤那美子さん。目の前にすると思わず掌(たなごころ)で包んでみたくなる加藤さんの漆器を、ご本人のお話を交えながらご紹介します。
作品づくりの源泉は意外なところから…
出典:www.instagram.com(@urushigekijo)
モダンアートのように大きな水玉や大胆な市松模様が描かれた椀やお皿に弁当箱、リンゴやリボンの絵付けが施されたお箸など、これまでの概念とはまるで異なるデザインの漆器たち。それなのに、なぜか懐かしくて、温かくて……実に日本的な佇まいに心ひかれてしまいます。
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▲モダンな印象のまる重はお菓子などを入れる器としてだけでなく、小物入れとして使っても素敵
── 作品づくりに生かすインスピレーションの源やテーマは、どこから得ているのですか?
「参考にすると言うか、ライバル視してリスペクトしているのは100円ショップ、しまむら、外国の雑貨、郷土玩具、縄文土器などですね」
!! なんと意外なご回答……。
「100円ショップなどに行くと『この価格でこのクオリティのものが!』と、いろいろ買いたくなるからすごい。私が作る箸や椀は、価格から考えたら『そういった商品の何十倍もの価値を生み出さなきゃ』という気持ちになります。縄文時代のものを見ると『作るための道具が現代より不便だっただろうに、こんなにしっかり作れているのだから自分ももう少し頑張ろう』と思えてくるんですよね」
「参考にすると言うか、ライバル視してリスペクトしているのは100円ショップ、しまむら、外国の雑貨、郷土玩具、縄文土器などですね」
!! なんと意外なご回答……。
「100円ショップなどに行くと『この価格でこのクオリティのものが!』と、いろいろ買いたくなるからすごい。私が作る箸や椀は、価格から考えたら『そういった商品の何十倍もの価値を生み出さなきゃ』という気持ちになります。縄文時代のものを見ると『作るための道具が現代より不便だっただろうに、こんなにしっかり作れているのだから自分ももう少し頑張ろう』と思えてくるんですよね」
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▲リンゴや車が描かれたお箸
「もともと和柄が好きですし、蒔絵を勉強していましたから、模様もそんなに奇抜なものはないと思いますよ」
── 漆器の絵柄にリンゴやリボンなどを用いるのは大胆な発想だと思うのですが……。
「21世紀の今を生きる自分が可愛いと思うものにしているだけなんです。昔の人も、その時代その時代の好きなものを模様にしていたと思うので」
たしかに、そういうお話を聞いてから作品を見てみると、器たちから感じる“温かみ”は、そういったことからも醸し出されているのかもしれません。
── 漆器の絵柄にリンゴやリボンなどを用いるのは大胆な発想だと思うのですが……。
「21世紀の今を生きる自分が可愛いと思うものにしているだけなんです。昔の人も、その時代その時代の好きなものを模様にしていたと思うので」
たしかに、そういうお話を聞いてから作品を見てみると、器たちから感じる“温かみ”は、そういったことからも醸し出されているのかもしれません。
▲作業場での加藤さん
埼玉県で生まれ、高校を卒業後、石川県へ移住し漆芸の勉強をした加藤さん。
漆に興味を持ったのは、小学5年生のときだったそう。
「社会科の授業で“輪島塗”を知ったことがきっかけです。たまたま担任の先生が伝統工芸にとても興味をもっていた方だったので『こういう仕事は本当に素晴らしい!』と刷り込まれ、職人さんになりたいと思いました(笑)」
漆に興味を持ったのは、小学5年生のときだったそう。
「社会科の授業で“輪島塗”を知ったことがきっかけです。たまたま担任の先生が伝統工芸にとても興味をもっていた方だったので『こういう仕事は本当に素晴らしい!』と刷り込まれ、職人さんになりたいと思いました(笑)」
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▲布着せしたお椀の段差を埋める惣身という下地を塗っている様子
加藤さんの肩書きは「塗師・漆作家」。
── あえて「漆芸家」と名乗らないのはなぜですか。
「漆には興味を持ちましたが、芸術的な作品を見て「すごいな」と思っても、それを欲しいとか自分もこういうものを作りたい、とはならなかったんです。なので漆芸作品と言われるようなものを丹精込めて作れなくて」
そう語る加藤さんですが、実は、塗師と名乗るのも少し抵抗があるそう。
── あえて「漆芸家」と名乗らないのはなぜですか。
「漆には興味を持ちましたが、芸術的な作品を見て「すごいな」と思っても、それを欲しいとか自分もこういうものを作りたい、とはならなかったんです。なので漆芸作品と言われるようなものを丹精込めて作れなくて」
そう語る加藤さんですが、実は、塗師と名乗るのも少し抵抗があるそう。
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▲塗りの工程が終わったまる重と豆皿
「仕事の主な作業は漆を塗ることなので塗師といってもいいかな、と思って使っているのですが……私は絵もつけるし『自分の好き勝手に漆をやる人』ってことで、一般的に分かりやすい表現にすると『漆作家』なのだと思います。『作家なんて誰でもなれる』と職人さんからバカにされる事もあるので以前は使いたくなかったんですけど、今は『自分のやれるだけのことをやる漆作家です』と言えるようになりました」
▲子供椀に描いている絵付き名入れ
そんな加藤さんの作風に大きな影響を与えたのが、2004年の出産。今では中学生になるお嬢さんの誕生でした。
「作るものの材料を、子供と自分が不安なく使えるものがいいと思って選ぶようになりました。私の作品は、伝統工芸の産地のものでもなくブランドが全くないので、その分、材料や工程を大切に考えています。漆は防水性のある塗料や接着剤になる便利な樹液で、歴史も古くて知ると面白い。そういう部分を目一杯楽しもうとすると、心を込めて仕事に取りくむ漆掻きさんや木地屋さんにたどり着きます。信頼できる人たちと仕事ができて本当に幸せです」
「作るものの材料を、子供と自分が不安なく使えるものがいいと思って選ぶようになりました。私の作品は、伝統工芸の産地のものでもなくブランドが全くないので、その分、材料や工程を大切に考えています。漆は防水性のある塗料や接着剤になる便利な樹液で、歴史も古くて知ると面白い。そういう部分を目一杯楽しもうとすると、心を込めて仕事に取りくむ漆掻きさんや木地屋さんにたどり着きます。信頼できる人たちと仕事ができて本当に幸せです」
▲車が描かれた子供椀
子育てしながらの制作は、作風にも大きな変化をもたらしました。
「当時は『どうしたらもっとご飯食べてくれるんだろう』と必死でしたね。そういう気持ちで子供椀を作ったのが作家としての始まりです。自分の中の思い込みを色々壊してくれたので、逆に気楽に創作に向かえるようになれました。『好きならダサくても全然いい、スタイリッシュとか正直どうでもいい』という気持ちになれたんです」
「当時は『どうしたらもっとご飯食べてくれるんだろう』と必死でしたね。そういう気持ちで子供椀を作ったのが作家としての始まりです。自分の中の思い込みを色々壊してくれたので、逆に気楽に創作に向かえるようになれました。『好きならダサくても全然いい、スタイリッシュとか正直どうでもいい』という気持ちになれたんです」
出典:www.instagram.com(@urushigekijo)
▲昨年開催されたENCOUNTER Madu Aoyamaでの展示販売で出展した作品
そして現在、作品をつくるときに一番大切にしているのは──
「道具として日々の使用に耐えられるように作ること。自分が欲しいと思うものを作るので、だいたい日用品になります」
「道具として日々の使用に耐えられるように作ること。自分が欲しいと思うものを作るので、だいたい日用品になります」
▲加藤さん宅の食卓では漆の器にプチトマトを
そう語る加藤さんの漆器は、思わず目をうばわれる魅力的なデザインでありながら、肩肘を張らない温かな「道具」として人々の暮らしに寄り添っています。
▲赤いベンガラの大皿は、盛った素材の色を美しく見せてくれるスグレモノ
気難しいと思われがちな漆器ですが、実際に使ってみると軽くて丈夫で、とても使いやすい道具だということに気づくはず。
加藤さんの作品は、東京をはじめ各地で展示や販売が行われていますので、ぜひ会いに行ってみてくださいね。きっと手にとって温かみを感じてみたくなるはずですよ。
加藤さんの作品は、東京をはじめ各地で展示や販売が行われていますので、ぜひ会いに行ってみてくださいね。きっと手にとって温かみを感じてみたくなるはずですよ。
加藤さんの作品に出会える展示会など
出典:www.instagram.com(@urushigekijo)
●2018年展示スケジュール
3月7日~31日 銀座三越7階リミックススタイル 子供椀と箸を出品販売(東京都中央区銀座)
※無くなり次第終了
5月初旬(GWごろ) SALON(石川県七尾市)
7月7日~16日 ギャラリーやなせ(京都府京都市北区)
11月17日~30日 ENCOUNTER Madu Aoyama (東京都港区南青山)/予定
※このほか、常設の取扱い店など詳しい情報は、記事の最後に記載している加藤さんのHPまたは各店舗へお問合せください。
3月7日~31日 銀座三越7階リミックススタイル 子供椀と箸を出品販売(東京都中央区銀座)
※無くなり次第終了
5月初旬(GWごろ) SALON(石川県七尾市)
7月7日~16日 ギャラリーやなせ(京都府京都市北区)
11月17日~30日 ENCOUNTER Madu Aoyama (東京都港区南青山)/予定
※このほか、常設の取扱い店など詳しい情報は、記事の最後に記載している加藤さんのHPまたは各店舗へお問合せください。
【漆器を長持ちさせるコツ】~ 加藤さんが伝授してくれました!
出典:www.instagram.com(@urushigekijo)
▲漆作家・赤木明登さんの小皿に組み合わせた加藤さん作の菓子切り
●自分の手にやって嫌なことはしない
漆は元々植物ですから、金属や石で擦れば傷つくし、急激な温度変化も好みません。冷蔵庫から出していきなり熱湯に入れると、中の木が割れる可能性があります。
●長時間、水に浸けない
細かい傷から漆を塗った塗膜の中に水がしみ込むと傷が大きくなっていきます。洗った後、きちんと水滴を拭くようにすると塗膜がきれいに保てますよ。
●拭くときはやさしく
私が作るものは漆と砥の粉で表面をザラザラにしているものがありますが、あまり強く拭いてるとだんだんツルツルになってしまいます。絵付けされているものや、金箔などが施されているものも同様です。
漆の道具に対する、ちょっとした思いやりで長持ちしてくれるようになりますよ。ぜひ参考にしてみてくださいね。
漆は元々植物ですから、金属や石で擦れば傷つくし、急激な温度変化も好みません。冷蔵庫から出していきなり熱湯に入れると、中の木が割れる可能性があります。
●長時間、水に浸けない
細かい傷から漆を塗った塗膜の中に水がしみ込むと傷が大きくなっていきます。洗った後、きちんと水滴を拭くようにすると塗膜がきれいに保てますよ。
●拭くときはやさしく
私が作るものは漆と砥の粉で表面をザラザラにしているものがありますが、あまり強く拭いてるとだんだんツルツルになってしまいます。絵付けされているものや、金箔などが施されているものも同様です。
漆の道具に対する、ちょっとした思いやりで長持ちしてくれるようになりますよ。ぜひ参考にしてみてくださいね。
問い合わせ ☎03-3535-9615
▲七宝紋が大胆に描かれたお椀