不思議な力をくれる「エッセイ」の魅力
だれの世界をめくってみる?「ほのぼのエッセイ」12選
猫は、うれしかったことしか覚えていない|石黒由紀子
九十歳。何がめでたい|佐藤愛子
大正12年生まれの著者にとって、よくわからないスマホや音のない自転車、子供や犬の騒音に怒る人など、世の中の多彩な事象に憤り、嘆く著者の姿を描いたもの。
些末なことを気にする人の多さを歯切れよく綴ったことで、共感の輪がSNSでも広がりを見せ、老若を問わず人気となった話題のエッセイです。読み終わるころには、心のモヤモヤもスッキリとするはず。
きれいなシワの作り方~淑女の思春期病|村田沙耶香
30歳を過ぎたころから訪れる“心の揺れや体の変化”に、戸惑いながらも向き合う日々。「大人の思春期病」をテーマとした、芥川賞作家・村田沙耶香の赤裸々エッセイです。
雑誌ananで連載後、多くの大人女子が支持した年齢を重ねるごとに増えるさまざまな葛藤は、自分だけではないと心のモヤモヤが吹き飛びます。
海苔と卵と朝めし|向田邦子
直木賞受賞作家・向田邦子。美味しいもの好きで、食べ物にまつわるエッセイに定評のある著者は、作家ではなく板前になりたかったほどの食いしん坊。
幼いころの食卓の情景から、病気が治ったら食べたいもののリストなどが書かれ、昭和を感じる懐かしさや温かさが、心を和ませる作品です。読み進めていくうちに、きっと自分の思い出の料理が思い浮かぶはず。
「山奥ニート」やってます|石井あらた
引きこもりになり、大学を中退してからネットを通じて知り合ったニート仲間と和歌山県の山奥へ移住。限界集落で月18000円の生活費で暮らす5年間のこれまでを記録したエッセイ本。
「なるべく働かず、面倒くさい人間関係から離れて生きていく」を実現させ、本当の豊かさや自由の意味を考えさせられる一冊。本当に森の中にいるかのような描写が多く、実話ならではのエピソードも面白く、田舎暮らしや移住を疑似体験できます。
阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし|阿佐ヶ谷姉妹
姉妹のように顔が似ているという理由でコンビを結成し、バラエティで活躍中の芸人・阿佐ヶ谷姉妹。40代独身、芸人の同居生活を描いた暮らしのエッセイには、クスッと笑えるちょっとした小競り合いが満載。
身近な生活感漂う描写が面白く、不思議な家族愛を感じるほのぼの系エッセイを代表する人気作です。平凡だけれど、幸せな気分になれる穏やかな内容に癒されます。
気になる部分|岸本佐知子
現代アメリカ小説の名翻訳家であり、雑誌で繰り広げられる独特のエッセイが注目を集めた岸本佐知子。ネガティブでありながら、ユーモアがさく裂する文章で綴られる思い出の数々。
恐怖と屈辱の幼稚園時代、会ったこともないのになぜだか鮮明に記憶に刻まれた作家など、細やかな部分まで描かれた想いや妄想は、著者の繊細さが垣間見れます。センスを感じる言葉の使い方など、クセになる文章にハマる方が続出中の作品です。
干し芋の丸かじり|東海林さだお
漫画家でエッセイストの東海林さだお人気の丸かじりシリーズ第44弾。いつも常備しているほど、干し芋のファンだという著者が干し芋の魅力を語りつくします。
流行っては消え、消えては流行るスイーツブームの中で、よくぞ干し芋は生きのびたと称賛する東海林ワールド。読み終えるころには、干し芋を買いにお店に走っているはず。
クラスメイトの女子、全員好きでした|爪切男
「おまえは、女の子と恋はできないだろう」小学生のとき、父親に言われた忘れられない言葉。そして、見事予言が的中してしまう思春期。しかしそれは決して辛い日々ではなく、クラスの女の子全員が素敵だと思え、今でも鮮明によみがえる一人ひとりへの熱い気持ち。
40代独身・爪切男が贈る、時を越えたラブレターとも言える一冊。愛しくも笑えるエピソードが心を癒してくれます。
縁もゆかりもあったのだ|こだま
第34回講談社エッセイ賞受賞の著者こだまによる紀行エッセイ。網走、夕張、京都など旅先にとどまらず、病院や移動中のタクシーなど“自分と縁のあった場所”にまつわる全20篇。
刑務所上がりのおじさんに声をかけられた話。2ヶ月「メロン断ち」をして夕張へ行った夫婦の話。そんなユニークなエピソードが満載で、笑いあり涙ありの展開は読み応えも◎
わたしのマトカ|片桐はいり
舞台、映画、テレビと幅広く活躍している俳優・片桐はいり。映画「かもめ食堂」の撮影で訪れたフィンランドでの出来事を収めた旅にまつわる名エッセイ。
質の高い映画を見ているかのような豊かな描写と表現力で、読む人の心を惹きつける一冊。まるで一緒に旅をしているかのような気持ちになれ、ユーモア溢れる文章に自然と笑みがこぼれます。
いつも旅のなか|角田光代
直木賞、川端康成文学賞など、数々の受賞歴を持つ作家・角田光代の、明日にでも旅に出たくなるエピソード満載な傑作エッセイ集。
仕事も名前も年齢も、なんにも持っていない自分に会いにゆこうと、世界中をまわった旅先での出来事を臨場感たっぷりにユーモアを交えて綴っています。それぞれの国ごとに暮らす人々の様子や空気までもが伝わってきて、まるでその場にいるかのような気分。おうちで旅気分に浸れます。
「猫は、好きをおさえない」「猫は、今を嚙みしめる」「猫は、当たり前に忘れる」といったマイペースで自由気ままな猫との暮らし。
6歳のオス猫・コウハイとの日常エピソードを絵本作家・ミロコマチコの可愛いイラストとともに掲載。著者が受け取った、猫から学ぶ“生き方のヒント”が詰まっていて、猫の魅力を再確認できる心が和む一冊です。