秋の心は、ほっこりする小説やエッセイで温めて
- 寒さに負けない体を目指す!ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
ほっこり、心温まる小説・エッセイ11選
思わずクスッと笑顔になれる本
もものかんづめ / さくらももこ / 集英社文庫
チョコレート・アンダーグラウンド / アレックス・シアラー / 求龍堂
選挙で政権を勝ち取った“健全健康党”によって突然チョコレートを禁止された国民...誰がこんな世界を想像できるでしょうか?ありそうでなかったその法律に、主人公のハントリーとスマッジャーが抵抗し、戦っていく物語です。
一度読み進めたら止まらない笑いありの痛快ストーリーに、時間を忘れて物語に没頭できること間違いなし。読み終えた後は、きっとチョコレートが食べたくなるかも...
どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか / みうらじゅん、リリー・フランキー / 扶桑社
世知辛い現代に生きる全ての人に「もっと肩の力を抜いて」と声をかけてくれる本作は、多彩な大人ふたりの真剣でちょっぴり笑える対談集です。彼らの思想からは、どこか包容力すら感じる暖かさが伝わってきます。
全ての章に真意が宿り、とても大切なことが書かれているのに、なぜか大人のような説教じみた雰囲気はゼロ。幾つになっても好きなことをやり通している、子どものような人柄がそうさせるのでしょうか。「なんだか最近先細りになっているな」と感じたら、この1冊で新しい価値観を見つけてみてください。
不安が飛んでいく...心に自由を与えてくれる本
人生の旅をゆく / よしもとばなな / 幻冬舎文庫
自分の人生を旅のように生きること、他の生命を大切にすること、人を愛すること...そんな著者の想いがギュッと詰まったエッセイです。ばななさんのエッセイ集の中では、最高傑作の名著とも言われています。
忙しない日常の中に自由を見出せなくなった時に開いてみれば、がんじがらめになった思考や体にフワッとヒントを与えてくれるはず。「人生を旅のように」と伝える爽やかで優しい文章は、なんの隔たりもなく胸に染み込みますよ。
舞台 / 西加奈子 / 講談社文庫
いつも人目を気にして生きてきたことで本来の自分を見失った主人公の葉太が、旅行先のニューヨークにて盗難に遭うところから物語は始まります。突然の無一文、携帯もない、英語もままならない葉太は、なりふり構わず死に物狂いでニューヨークの街を徘徊し、徐々に自分を取り戻していくのです。
『人間失格 / 太宰治』をオマージュして書かれた本作は、主人公の自己防衛からなる言動の数々が魅力のひとつ。中にはこの思想に共感する人もいるでしょう。読み進めながら自分と対峙し、そっと心に寄り添いたくなる1冊です。
ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 / 村上春樹 / 文春文庫
ラオスだけでなく、ボストン、アイスランド、ギリシア、熊本などの旅を記した紀行文集です。それぞれの各地で触れた自然や街や人々の様子がみずみずしく描かれています。
本書に「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」という1文があるように、旅をする人にしか出会えない風景、感情、出来事。旅先だからこそ出会える稀有な経験の数々。読み終えた後は、世界各国の情景が胸に広がり、不安や心配事も優しく包まれるような気分になれますよ。
身近な幸せを再確認できる本
とるにたらないものもの / 江國香織 / 集英社文庫
日常で使用する何気ない『モノ』にも、自分だけの記憶や想いが潜んでいると思うと、なんだか愛おしく感じませんか?本作は、石鹸、フレンチトースト、書斎の匂い、輪ゴム、茹で卵...とるに足らないけれど、暮らしの中で欠かせない『モノ』への愛おしさを綴った短編エッセイです。
江國香織さん特有のユーモアセンスと読み手にも温度が伝わる有形無形の『モノ』への愛着。見慣れた『モノ』からささやかに送られるメッセージと、それらに囲まれて生きる安堵感が蘇るはず。
サーカスナイト / よしもとばなな / 幻冬舎
暖かで自然が息吹くバリの環境と人々の関わりが、心苦しい過去を背負った主人公さやかの傷を癒していく物語です。バリ島の豊かな自然と神秘的な空気感が、文面からキラキラと伝わってきます。
主人公がそうであるように、読み進めるうちに自分の心の傷や不安がスッと癒されているのを感じるはず。何気ない日常や人との関わりが、最も心を大丈夫にする近道なのだと再確認できる作品です。
ツナグ / 辻村深月 / 新潮社
死者と現実世界での再会を叶えてくれる「使者(ツナグ)」を通じて、境遇の異なる4人の人物が亡くなった大切な人に会っていくというストーリー。死者を目の前にすることで決意するこれからの人生、それぞれの心情の変化に多くの学びがあります。
本作は一見ゴースト作品にも思える設定ですが、読み終えた後はなぜか心が温まる不思議な作品です。スラスラと読みやすいのに心震える奥深い描写や心理背景に、何度読んでも引きつけられてしまうかもしれません。
ダークな気持ちを吹き飛ばす!背中を押してくれる本
本日は、お日柄もよく / 原田マハ / 徳間文庫
ずっと想いを馳せていた幼なじみの結婚式に出席した主人公の二ノ宮こと葉。失恋の傷も癒えないままに披露宴を眺めていたその矢先!伝説のスピーチライター久遠久美のスピーチに心を奪われてしまうのです。言葉の魅力に取り憑かれたこと葉は、すぐに彼女に弟子入りすることを決めます。
困難と共に成長していく主人公と、その中で出会う心動かすスピーチの数々に注目です。ハートフルでエネルギー溢れるストーリは、きっと明日への活力につながりますよ。
蜂蜜と遠雷 / 奥田陸 / 幻冬舎
舞台は、世界的にもトップクラスのピアニストが集まるコンクール。境遇が全く異なるピアニスト達は、芸術世界において評価が審査員によって下されることの葛藤、教育格差によって起こる才能を活かしきれない現実...さまざまな困難を乗り越えながら、ただ上を目指し奮闘します。
複雑で繊細な気持ちを抱えて演奏に挑むピアニスト達の姿に相まって、文面から音が聴こえるような読書体験は、まさに新感覚と言えるでしょう。
みんな大好き《ちびまるこちゃん》の作者であるさくらももこさんの、原点を覗くことができるエッセイ。漫画が印象に残っている方がほとんどかと思いますが、面白おかしいエッセイでもその才能を遺憾なく発揮しています。
本作では、睡眠学習を実践した話や水虫にかかった話など、笑いなしには読み進めることができないとっておきの赤裸々話がズラリ。さくらももこさんの淡々とした語り口調や着眼点がクセになる1冊です。