本はあなたの孤独に寄り添ってくれる
PART1:孤独を感じる仕組みから考える。正面から向き合う本
「なぜ居場所がないと感じるのか」から解き明かす本
著者が「孤独」を消すまでの実話ドラマ
■『「孤独」は消せる。』吉藤健太朗(サンマーク出版)
「孤独」は消せる、と言われて、本当に消せるのならどんなにいいかと思う方も多いかもしれません。本書では、孤独から「生きること」への辛さや不安さえ覚えた著者が、そう思うに至るまでが克明に描かれています。著者は中学生で参加した「ロボフェスタ関西2001」で準優勝を成し遂げ、現在までにロボットの開発や研究でさまざまな功績を上げてきた人物。しかし、実は小学校や中学校の時、不登校やひきこもりを経験していました。研究者の冷静な視点から見た孤独がどんなものなのか、どう考えているのかを知ることができます。
孤独って、本当におそろしいものですか?
■『孤独の価値』森博嗣(幻冬舎)
『孤独の価値』は、作家として知られる著者が、担当編集者に「先生の今の隠遁生活についてなにか書いてください」と言われて書き始めたもの。本書が書かれた時点で、著者は都会を離れ、2年ほど電車にも乗っていない状態でした。本書では、そんな孤独にひたる著者による、「孤独だとなぜ寂しく感じるのか」という疑問や「孤独はおそろしいものである」という刷り込みに対する考察に重点が置かれています。孤独そのものの正体に迫るよりは、心の感じ方や考え方を教えてくれる本です。
孤独を「不安で耐えられないもの」と思うあなたに
■『孤独と不安のレッスン』鴻上尚史(大和書房)
本当に心が弱っている時におすすめなのが、『孤独と不安のレッスン』です。本書では、自分ひとりで考えられる状態を「本物の孤独」、ひとりを寂しく思い、すぐ誰かに会いたくなる状態を「ニセモノの孤独」と呼び、解説しています。不安からは誰も逃れることがでませんが、考え方によっては生きるエネルギーに変えることもできるそうです。孤独は悪いものではなく、上手に共存できるもの――そんな気持ちにさせてくれますよ。優しく語り掛けるような文章で書かれているので、読んでいるだけでも心が温かくなります。
「ひとりぼっち」を上手に活用する方法
■『SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』名越康文(夜間飛行)
人は孤独を感じたとき、そこから逃げて誰かと群れたくなりますよね。本書では、なぜ人は群れたがるのかという理由と、「部屋を片付ける」「他人を変えず自分が変わる」といった小さなトピックで「ひとりぼっち」の過ごし方を解説しています。その中で特徴的なのは、一人で過ごす時間の大切さだけでなく、最後には再び群れに戻ることを説いていること。「他の人に振り回されている」「人間関係に疲れた」と感じるあなたにもおすすめです。
PART2:「寂しい」を「楽しい」に変える!孤独を楽しみたくなる本
孤独だからこそ、広い視野が開ける
■『自分の中に孤独を抱け』岡本太郎(青春文庫)
岡本太郎は、大阪万博で「太陽の塔」を作った芸術家。「芸術は爆発だ」「職業は人間」といった言葉で知られるように、既成概念にとらわれない発想で数々の作品を残してきました。本書は、そんな岡本がさまざまなメディアで語ってきた内容を1冊にまとめたもの。人間は自分たちの運命のことを考えたとたんに孤独にならざるをえず、孤独になるのは必然。そして孤独になるからこそ、広い視野が開ける――そんな孤独に対する考えが語られます。読んでいるうちに孤独を前向きにとらえられるようになり、その中で創造力を働かせてみようという気持ちにさせてくれますよ。
イラストレーターによる「孤独のすすめ」
■『孤独をたのしむ本―100のわたしの方法』田村セツコ(興陽館)
一人の時間を楽しみ、味わいたいと考えている方におすすめの本書。イラストレーターとして長く活躍し続けてきた80歳の著者・田村セツコによる、「孤独のすすめ」のお話です。温かみのあるかわいらしいイラストとともに、心にすっと染み込む飾らない言葉で、孤独の楽しみ方がたくさん書かれています。心がじんわりと温かくなり、読みすすめると前向きな気持ちで孤独を楽しみたくなりますよ。
孤独をしっとりと楽しみたい夜に
■『つむじ風食堂の夜』吉田篤弘(筑摩書房)
他人の孤独の楽しみ方を垣間見たい時には、小説を読んでみるのもおすすめです。『つむじ風食堂の夜』は、映画化もされた吉田篤弘による幻想ファンタジー小説。「月舟町」という架空の街を舞台に、どこか懐かしさを感じるつむじ風食堂に訪れる人々の物語を描きます。登場人物はみんな孤独をかかえているのですが、かといって誰かに寄りかかることはありません。静かに思索を巡らせ、それを楽しみながら夜が更けていく。そんな物語です。
一人で小旅行気分を味わいたい時に
■『旅の理不尽 アジア悶絶編』宮田珠己(筑摩書房)
孤独を楽しむ方法の一つとして、一人旅に行くという方も多いのですよね。本を読んで一人旅気分を味わうなら、旅行好きの著者によるこちらの旅行記はいかがでしょうか。本書では、著者がサラリーマン時代に有給休暇を使い果たして旅をしたアジアでの体験が描かれています。著者ならではのユーモアにあふれた脱力系の物語は、つい笑ってしまうこと間違いなし!肩の力を抜いて、アジアの世界を味わってみましょう。読み終えた後は、きっと一人旅に出かけてみたくなりますよ。
寂しい時は美味しさを究めよう!
■『彼女のこんだて帖』角田光代(講談社)
「美味しいもの」や「料理」に興味のある方にとって、一人の時間は「食」を追求する絶好のチャンス。そんな時にぜひ読んでみてほしいのが、角田光代によるレシピつきの連作短編小説集です。主人公は短編ごとに異なっていて、親しい誰かを失ってしまった人ばかり。物語それぞれに必ず美味しい料理とレシピが登場し、主人公を癒してくれます。孤独を感じた時に、自分のためだけに何かをしてもいいという元気をくれるだけでなく、おいしいレシピまで教えてくれる1冊です。
PART3:他人の孤独をのぞき見る。共感と気づきを与えてくれる本
異国で感じる、文化的な孤独
■『なにやってんだろう 私 このままフランスで死にたくない』小畑リアンヌ(文芸社)
日本で日本人に囲まれながら過ごしていても孤独を感じるのに、海外に住んでいたらどれほどなのでしょうか。本書は、26歳でフランスに渡った女性の、異国での生涯を描くエッセイ。著者は現地で夫を見つけ、子供にも恵まれましたが、ことあるごとに文化や考え方の違いを突きつけられてしまいます。フランス人ならではの気質には自由さもあるものの、どこか日本人とは相いれない部分も。人生を振り返りながら、そうした孤独に思いをはせるエッセイです。
人間が人間であるがゆえの孤独
■『百年の孤独』ガブリエル ガルシア=マルケス(新潮社)
『百年の孤独』は、ノーベル賞も受賞したコロンビア作家ガブリエル ガルシア=マルケスの代表作に数えられる文学作品。舞台は架空の村「コマンド」で、ブエンディアという一族が村を作り、栄え、そして滅亡するまでの100年間を描く壮大な物語です。性や死、欲望が絡みあう人間模様と、それが繰り返される一族の運命は、人間が生来孤独な生き物であることを思い出させてくれます。最初は読みにくさを感じるかもしれませんが、ラテンアメリカ文学の傑作の1つなので、ぜひ時間を取ってじっくり読んでみてください。
芥川賞作家の15年間にわたる孤独
■『孤独論: 逃げよ、生きよ』田中慎弥(徳間書店)
本書は、芥川賞受賞時のインタビューで一躍有名になった作家・田中慎弥による孤独論です。高校卒業後は一切の職業につかず、文学作品を読むことに時間を費やしてきたという著者。その後10年かけて執筆した作品でデビューし、6年後に芥川賞を受賞しました。こうした人生の中で培われてきたのは、思考を停止する状態から逃げ、孤独の中に身を投じること。孤高の作家の人生そのものや、孤独への考え方を知ることができます。
しみじみと味わう切ない孤独
■『草の花』福永武彦(新潮社)
『草の花』は、作家・福永武彦による文学作品。物語は、サナトリウムで療養していた主人公が汐見という男と出会うことで始まります。同じ病室で1年足らずの月日を過ごす中で、彼に友情を感じていた主人公でしたが、汐見はノートを残して亡くなってしまいました。そのノートには、2つの恋の物語が書かれていて…。「肉体はいつか滅びると分かっていても、自分の精神が生きている限りは、僕という人格は僕のものだよ」と語る汐見。はかなく切ない孤独な物語の中に、心を揺さぶるものがあります。
暮らしのどこにでもひそむ孤独
■『わたしのいるところ』ジュンパラヒリ(新潮社)
主人公は、イタリア在住の45歳の女性。大学で講師として勤める日常を、「歩道で」「トラットリアで」「自分のなかで」と46のシーンごとに描いています。大きなストーリーがあるわけではなく、彼女が暮らしの中で思ったことや考えたことが丁寧につづられる、エッセイのような、日記のような小説。常にどこかで孤独が顔をのぞかせるのですが、その中でも確かにある癒しや気づきが、孤独は案外いいものだと思わせてくれます。
PART4:一人じゃないことを思い出す。大切な誰かを感じる本
ひとりアラスカに渡り、家族や村を作った男の半生
■『アラスカ物語』新田次郎(新潮社)
本書は、「ジャパニーズモーゼ」とも呼ばれた、フランク安田という日系アメリカ人一世の半生を描き切った伝記小説。実在の人物を徹底的に取材して書かれた、新田次郎による1冊です。フランク安田は宮城県生まれ。15歳で両親を亡くし、外国航路の見習い船員となります。ある時船が寒波に見舞われ、安田は1人氷の上を歩き、救援を求めに行くことに。その先で助けられたのは、現地で暮らすエスキモーたちで…。安田の歩みを丁寧につづりながら、アラスカの自然の美しさ、過酷さ、そして人々の温かさが描かれます。
孤独に立ち向かい、道を切り開く女性たちの物語
■『さようなら、オレンジ』岩城けい(筑摩書房)
主人公のサリマは、オーストラリアの田舎町にやってきたアフリカ難民。暮らし始めてすぐ、夫はどこかへ姿を消してしまいます。たどたどしい英語を使って精肉作業場で働きながら、1人で2人の子どもを育てなければならない状況に陥るサリマ。母語の読み書きもできなかった彼女でしたが、職業訓練学校で英語を学びはじめたことで、日本人女性「ハリネズミ」と出会い転機が訪れます。サリマやハリネズミが自分で道を切り開いていこうとする姿に元気をもらえる小説です。
夫婦なリアルな暮らしを描くエッセイ集
■『いくつもの週末』江國香織(集英社)
本書は、作家・江國香織が、自身の結婚生活をせきららにつづったエッセイ集。著者が一人の女性として夫を見る視線には、私たちにも共感できるところがあったり、そんなふうに思うのか!と気づかせてくれたり。特に結婚したことのある女性には、「そうそう!」と思える部分が多いかもしれません。いいも悪いも、愛も憎しみもごちゃまぜになりながら、それでも同じ屋根の下で、夫婦としての暮らしが続いていきます。
友人と家族のあたたかさを思い出す物語
■『ムーン・パレス』ポール・オースター(新潮社)
主人公は、コロンビア大学の学生。父はおらず、母も幼い時に亡くしており、唯一の血縁は伯父だけでした。ある時その伯父が亡くなったことで、深い絶望と孤独に突き落とされ、自暴自棄になってしまいます。生活費が尽きてアパートを追い出され、ホームレスのような生活を送り、ついに餓死してしまいそうという時、友人が救いの手を差し伸べてくれて…。孤独な主人公がさまざまな人に助けられ、家族の謎を紐解いていく、青春と家族の物語です。
孤独にさいなまれてどうしようもないあなたへ
■『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン(新潮社)
主人公は、物事を考えすぎてしまうハリネズミ。他の動物たちを自宅に招くために手紙を書くのですが、あんなことが起こるのでは?こんなことが起こるのでは?と妄想が勝手に走り出し、なかなか手紙を出すことができせん。さて、ハリネズミは無事に誰かを招待できるのでしょうか…?「考えすぎて何もできない」経験がある方にぜひ読んでほしい、海外小説。大人のために書かれた物語ということですが、児童文学のように読みやすく、疲れた心にも自然と入り込んでくれますよ。
■『「自分の居場所がない」と感じたときに読む本』水島広子(かんき出版)
一人でいる時はもちろん、誰かと同じ場所にいるために自分らしくない姿を演じたり、他人とうまく付き合えず疎外感を感じたり。「自分の居場所がない」という気持ちは、職場や学校、家庭など、どこかで誰もが抱えうるものです。本書では、そんな気持ちを感じる理由を「自分自身を受け入れられていないから」としています。そして、どうしたらそんな気持ちを減らし、自分で居場所を作れるのかというヒントも解説。自分の心の仕組みを知りたい時、解決するにはどう考えたらいいか知りたい時、ぜひ手に取ってみてください。