懐かしくて新しい。大人が読んでも楽しめるおいしい絵本
1・大きな食べ物にわくわくする絵本
大きなホットケーキにテンションが上がります
ジャムサンドを罠に蜂と戦う迫力の物語
■『ジャイアント・ジャム・サンド』ジョン・ヴァーノン・ロード 作、安西徹雄 訳(アリス館)
暑い夏のある日、ハチの大群が村に飛んできました。その数なんと4百万匹。困った村人が集まって話し合っていると、パン屋のおじさんがジャイアント・ジャム・サンドを罠にしてハチを退治することを提案。賛成した村人は、巨大なパンを焼いて、運んで、ジャムをぬって……。スケールの大きいハチ退治に大人もわくわくするお話です。
ユーモアいっぱいの挿絵とリズムのいい文章も楽しくなります。タイトルからして、すでにとても美味しそう。
子どものころから憧れのカステラ
■『ぐりとぐら』なかがわりえこ 著、おおむらゆりこ 絵(福音館書店)
歌いながら森へ出かけたぐりとぐらは大きな卵を発見しました。朝から晩まで食べてもまだ残るぐらいの大きなカステラを作ろうと決めた2人は大きなお鍋で焼きはじめます。カステラのいい香りに集まってきた動物たちにもおすそ分け。「けちじゃないよ ぐりとぐら」ですからね。
日本のみならず世界各国でも翻訳され、世代を超えて読まれている『ぐりとぐら』。シンプルな挿絵にリズミカルな文章は親しみやすく、クライマックスシーンには大人でも思わずにっこり。
ねずみくんのシチューが美味しそう!
■『もっともっとおおきなおなべ』寮美千子 著、どいかや 絵(フレーベル館)
すっかり秋の色に染まった森で、かごいっぱいにきのこをつんだねずみくん。今日はきのこシチューにしようと作りはじめましたが、何度も味見をするうちにお水を足しすぎてお鍋がいっぱいになってしまいました。お友達に大きなお鍋を借りて作り直しても、具材を追加するからすぐにお鍋はいっぱいに。同じことを繰り返しながら、最後は大きな大きなお鍋にたどり着きます。
やわらかい色使いと可愛らしい動物たちにほっこりする絵本です。子どものころはスルーする場面でも、大人になってから読むと「ねずみくんの気持ち、わかる!」と共感できます。大きな鍋でコトコト煮込んだシチューが食べたくなります!
2・シュールなお茶会の絵本
長く愛されてきたトラとのお茶会
■『おちゃのじかんにきたとら』ジュディス・カー 作、晴海耕平 訳(童話館出版)
ソフィーとお母さんがお茶の準備をしていたら、突然のベル。ソフィーがドアを開けるとトラが立っていました。このトラ、お腹がペコペコなのです。一緒にお茶をすることになりましたが、出されたものは全部ぺろり。それでも飽き足りず、家中のものを食べつくしてしまって…?
1968年に出版されて以来、多くの版を重ね愛され続けてきた絵本です。突然始まるシュールな展開と余韻の残るラスト、トラの食べっぷり、お母さんとソフィーの洋服がレトロポップで可愛らしいなど、長く愛され続けてきた理由がわかります。日常に起こるおかしな事態も平常心で受けれいなければ、と思わせてくれる絵本です。
動物たちの温かい気持ちにほっこり
■『もりのおくのおちゃかいへ』みやこしあきこ(偕成社)
森の向こうに住んでいる祖母の家へ、ケーキを届けに出かけたキッコちゃん。歩いている途中で不思議な館を見つけました。そっと窓からのぞくとおめかしした動物たちがお茶会を開こうとしているところでした。
キッコちゃんに気が付いた動物たちの驚いた顔がユーモラスで可愛らしく、取り分けるケーキがとても美味しそう。モノクロの中に少しだけ色が入った挿絵が不思議な世界を作り出しています。動物たちの優しさに温かい気持ちになる物語です。
世界のお茶に興味津々!
■『おちゃのじかん』土橋とし子(佼成出版社)
世界のお茶やお作法、飲み方などが味のあるイラストで紹介されている絵本。
茶器や茶菓子も詳しく描かれているのでお茶道具に関心のある方にもおすすめです。登場する家族の関西弁にほっこり。家族や友人とおしゃべりしながらゆっくりお茶が飲みたくなりますね。
ノスタルジックでシュールな世界
■『変なお茶会』佐々木マキ(絵本館)
今年もヨコハマのオオイワ氏に届いたお茶会の招待状。差出人は「とらんすばーる,ろまーな」。オオイワ氏は電気自動車で出かけ、ライプールの理髪師・スミラ君は毎年ゾウに乗ってやってくる。さまざまな乗り物で世界各地から集まる人々。月がのぼり、岩山から天然のココアがわくとお茶会のはじまりです。
ノスタルジックさも感じられるイラストと文章にわくわくする一冊。岩山からわく天然のココアも味わってみたくなりますね。三日月がひとつだけ描かれた表紙もおしゃれです。
3・こんなレストランに行ってみたくなる絵本
誰かに料理をふるまう幸せ
■『せかいいちまじめなレストラン』たしろちさと(ほるぷ出版)
お天気の日も雨の日も、毎日同じルーティーンでレストランを営業しているイタメーニョさん。ホールを担当でアヒルのスミス婦人は、いつもピカピカに床を磨いています。イタメーニョさんはとても真面目なコックさんなので、注文が入ってから食材を取りに行きます。すべてがフレッシュでとびきり美味しい料理にお客さんたちはうっとり。
真面目で表情も変えず黙々とお料理するイタメーニョさんですが、お母さんに怒られて家を飛び出してきた男の子が美味しそうに食べる姿を見てニッコリ。自分の作った料理で幸せになってもらえる喜び、おいしいねと言いながら食べられる幸せ。レストランメニューの中に「みわくのフルーツポンチ」というお料理があるのですが、とっても気になります。
みんな大好きポテトチップスの誕生秘話
■『せかいでさいしょのポテトチップス』アン・ルノー 著、フェリシタ・サラ 絵、千葉茂樹 訳(ビーエル出版)
クラムさんのレストランはいつもお客さんでいっぱい。ユーモアがあっていたずら好きなクラムさんの作る料理が、みんな大好きなのです。ある日、自分は「こだわり屋」だというお客がやって来てポテトを注文しました。いつものように美味しいポテト料理を作ってお出しすると、お客は「分厚すぎる」と口をへの字に曲げてお皿を押しのけてしまいました。お料理を突き返されるなんて、クラムさんはビックリ。それから「こだわり屋」のお客とクラムさんの対決がはじまったのでした。
「ポテトチップス」が誕生するまでの、史実をもとに書かれた物語です。絵本の最後にはポテトチップスの由来も載っています。シックな色の挿絵がおしゃれな絵本です。
命をいただきながら生きている
■『いただきますレストラン』ひだのかな代(みらいパブリッシング)
深い深い海の底にあるレストランから、ピンクのイカが出てきて魚たちを誘います。
食物連鎖をユーモラスに描いていますが、命をいただきながら生きていることを、あらためて考えさせられる絵本。挿絵も素晴らしく、ダイナミックに描かれた海の生物たち、藍色の深海の色に見入ってしまいます。
平穏な暮らしの幸せ
■『パンやのくまさん』フィービ・ウォージントン/セルビ・ウォージントン 作、まさきるりこ 訳(福音館書店)
可愛らしいぬいぐるみのようなパン屋のくまさんは、規則正しい生活を送っています。朝早く起きてパンを焼き、ケーキを作り、車にパンを積んで売りに行く。お店を閉めると今日の売り上げを数えて眠りにつきます。
大きな展開もなく、勤勉なくまさんのいつもとかわらない日常が淡々と描かれていますが、何事もなく過ごせる平穏な一日の大切さに気づかされる絵本です。細々と描かれたインテリアや美味しそうなお菓子がとても可愛らしい。
4・可愛いレシピつき絵本
食べることの大切さに気づく
■『シェ・パニースへようこそ~レストランの物語と46レシピ~』アリス・ウォータース 著、アン・アーノルド 絵、坂原幹子 訳(京阪神Lマガジン)
カリフォルニアのオーガニックレストラン「シェ・パニース」。オーナーはスローフードの母と呼ばれるアリス・ウォータース。アリスの娘、ファニーの目線でレストランの舞台裏を描いた物語です。ファニーはママたちが楽しそうにお料理する姿や農園から届く美しい野菜に興味津々。レストランで起こる美味しくて楽しいお話がたくさんつまっています。
素朴で可愛らしいイラストも絵本にぴったり。後半はお話に登場したシンプルで美味しそうなレシピが満載です。食べることが楽しくなる絵本です。
イモリとヤモリが教えます!
■『料理しなんしょ』まるもとただゆき 著、こがしわかおり 絵(偕成社)
ひとりお留守番中のコッペが、イモリとヤモリからお料理のコツを教えてもらうレシピ本。可愛らしくゆるくお料理を教えてくれるので、失敗したって落ち込むことはありません。「だいたいでいい」「ざっくりでいい」「だいじょうぶ」と声をかけてくれますからね。教えてくれるお料理も「パパっと作れたらいいな」と思うものばかり。月に1つずつゆっくり覚えていきましょう。
少しだけレシピをご紹介すると、6月は出汁をとる・お味噌汁、7月はマッシュポテト、8月はラタトゥイユ。ここがポイント!というところはしっかり書いてあるので、ゆるいレシピ本でもきちんと覚えていけます。
絵本のスイーツが再現できる
■『ロビンとルパートのティータイムやさん』やまだうたこ(白泉社)
お菓子を作るのが大好きなロビンと、お茶を入れるのが素晴らしく上手なルパート。2人はティータイム屋さんをはじめることにしました。コンテストで優勝したお祝いに、パパの誕生日にと、ティーパーティーを開くお客様が大勢やって来ます。
実際にティータイム屋で出したお菓子のレシピが、可愛らしいイラストで載っています。ロビンのお菓子を作って自宅でパーティーを開いてみてはいかがでしょう。
深く知りたい、料理道具の歴史
■『300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート』エミリー・ジェンキンス 著、ソフィー・ブラッコール 絵、横山和江 訳(あすなろ書房)
ベリーなどのピューレとクリームを混ぜたとイギリスのデザート「ブラックベリー・フール」。この絵本では、300年前から現代までどのように作られてきたのか紹介しています。最後のページにレシピも載っていますが、ケーキを作る道具の歴史が中心。
冷蔵庫もハンドミキサーもなかった時代、どうやってホイップクリームを作っていたのかとても興味深い絵本です。どの時代でも、ケーキを作ったボウルをぺろりとなめるのは変わりませんね。
5・リアルな挿絵のおいしい絵本
よその晩ご飯が気になります
■『きょうのごはん』加藤休ミ(偕成社)
夕方の商店街。あるノラ猫が、魚を買っているお母さんの後をついていくと、とてもいい匂いがする。ここの家の晩ご飯はサンマの塩焼き。お隣さんはみんなで作ったカレーライス。一匹の猫が匂いにつられて「きょうのごはんはなーに?」と聞きながら晩ご飯をパトロールするお話です。最後は猫も晩ご飯をいただきます。
豪華なメニューではないけれど、いつも食べているおなじみの味が、それはそれは美味しそうに描かれている絵本。家族と食べた夕飯時の匂いがふっとただよってきます。
パンを愛するあなたに捧げます
■『パンのずかん』大森裕子 著、井上好文 監修(白泉社)
小さな可愛らしい絵本ですが、図鑑というだけあって掲載されているパンの数は100種類以上もあります。「まるいパン」「しかくいパン」とわかりやすくまとめられているのも嬉しいところ。どこの国パンなのか国旗でもわかるようになっています。
本編のちょっとした豆知識も楽しいですよ。くまベーカリーという設定なので、後ろのページではたくさんのくまたちがパンを作っている可愛いシーンも。
誰が食べるのか想像するのも楽しい
■『サンドイッチ サンドイッチ』小西英子(福音館書店)
ページをめくると、ふわふわパンや色鮮やかなトマト、レタスやチーズなどが次々と登場します。画面いっぱいに描かれた食材はリアルでみずみずしくてどれも美味しそう。
サンドイッチが出来るまでの工程が描かれているシンプルなストーリーですが、このサンドイッチは誰が食べるのか、どこで食べるのか、と想像をふくらませながら読むとさらに楽しめます。最後のページを見ると、もれなくサンドイッチが食べたくなります。
これぞ、シンプルなごちそう!
■『おにぎり』平山英三(福音館書店)
おにぎりの具はなにが好き?と話題になる(ときには激論にもなる)、日本人のソウルフード・おにぎりの絵本です。絵も言葉も、作り方もシンプル。水とお塩をつけた手に、炊き立てのごはんをのせて「ぎゅっ」。ご飯の真ん中に梅干しをうめて、もう一度「ぎゅっ、ぎゅっ」。手の中でくるっくるっとまわして、海苔を巻く。はい出来上がり。
海苔の香ばしい香りがただよってくるような、繊細な質感の挿絵も素晴らしい。大切な人に握ったおにぎり、大好きな人に握ってもらったおにぎりは、何よりのごちそうですね。
- 寒さに負けない体を目指す!ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
■『そらから ぼふ~ん』高畠那生(くもん出版)
ある日、ものすごい音と共に空から落ちてきたのは巨大なホットケーキ!蜂蜜も滝のようにふってきて体はベトベトに。画面いっぱいに描かれたホットケーキの迫力に思わず笑ってしまいます。
「ぼぼーん!」「とぅん」「どっぷ~ん」という擬音も楽しく、一緒に驚いたり蜂蜜まみれになる犬のジョンも可愛い。いくつになっても大きなホットケーキは憧れですね。