いま改めて、食の本質に向き合ってみませんか
ちょっとここで、料理をする思考を原点回帰させるような機会を。今回は、食の本質や料理の面白さと向き合えるような本をご紹介したいと思います。
心に新鮮な気づきを与えてくれるような、食にまつわる本をセレクトしました。筆者も実際に読んで感動した本ばかりなので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「季節が寄り添う食の豊かさ」に気づかせてくれる本
『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』著者:飯島奈美
『あなたのために - いのちを支えるスープ』著者:辰巳芳子
日本を代表する料理研究家である辰巳芳子さん。料理研究家の草分け的存在、辰巳浜子さんを母に持つことでも知られています。
こちらの「あなたのために - いのちを支えるスープ」は、辰巳芳子さんが病床のお父様の為に作り続けていたスープのレシピです。
またそれだけでなく、人は離乳食に始まり、やがて老いによって食べられなくなった時にはスープでいのちを支えることができる…といった、指南書的な役割も。
『消えないレセピ 娘へ継ぐ味と心』著者:野村紘子
料理研究家の野村紘子さんは、キナリノ読者の皆さんもご存じの方が多いことでしょう。神宮前の大人気レストラン「eatrip」を運営されている野村友里さんのお母様。本書では、紘子さんから友里さんへと継ぎたいという想いのもとで、月ごとに旬の食材で作る四季折々のレシピを紹介しています。
睦月、如月、弥生…毎月、毎月その季節を感じながら旬のものをいただくことの、作る喜び、食べる喜びも体感できる一冊。たとえば6月なら・・旬の枝豆をエビとザーサイをお豆腐と合わせた冷たい一皿や、湯むきした冷やしトマト、豚ロースを梅肉で蒸した料理などが登場しますよ。
月のレシピと並行して、山椒の身の塩茹で、タケノコご飯の作り方、簡単に作れるらっきょう、おはぎなど、“季節の手仕事”についても美しい写真を織り交ぜて丁寧に解説。その他、器の選び方、盛り付けなど、参考にしたい情報が詰まっています。
この本を読んだあと、すぐに八百屋さんや魚屋さんに足を運んでみてください。旬を感じながら献立を考えたりと、「旬の食」をいただくことの喜びを実感できるはず。日本の四季を存分に感じながら生きられることに、きっと感謝したくなります。
『97歳梅干し名人 人生のいい塩梅』著者:藤巻あつこ
キナリノ読者のみなさんの中にも6月に青梅が出始めるとワクワクして、梅干しは自分で漬ける、“梅仕事”をするという方も多いのではないでしょうか。最近改めて「梅」や「梅干し」の効能が見直されてきており、梅干しこそ我々日本人の生活の知恵の塊ということができるでしょう。
そんな“梅仕事”の指南書といえば、梅干し名人である藤巻あつこさんが丁寧に教えてくれるこちらの本。昔から伝わる健康食「梅」を見直し、そして、自分たちの暮らしのあり方も見直すことができるような、梅干しのバイブル。
ちなみにお料理の味の加減や、物事の運びなどに「いい塩梅」という言葉が使われますが、この言葉も梅からきているもの。この本を読んで、梅干しってすごい!と再発見してみてくださいね。
「料理の面白さ」を再認識させてくれるオススメ本
『ケンタロウの洋食 ムズカシイことぬき! 』著者:ケンタロウ
料理初心者さんにおすすめしたいのが、料理研究家・ケンタロウさんの、洋食編&和食編から成る“ムズカシイことぬき! ”シリーズ。
お料理することに対して、「そうそう、そういう感じでいいんだよね」と、不思議と安心した気持ちで料理に向き合えるような、まさに料理の面白さを教えてくれるレシピ本。
まず、写真が素晴らしい!作り方の工程の写真は真上から撮影されてものになっているので、目で見てとってもわかりやすいのがポイント。「よし!作ってみよう」と気軽に思えます。
気になる紹介レシピはというと・・・こちらの洋食編では、王道のハンバーグをはじめ、クリームシチュー、コロッケなどが、むずかしいことぬきで作れるコツが詰まっています。そのほかフライパンで作る骨付きもも肉のソテーや海老とミニトマトのバター炒め、そして野菜のサイドディッシュなどなど・・・目次のページを見ているだけでお腹が空いてきちゃいますよ。
本当にむずかしいことぬきの内容で、ベテランの方でも初心に戻る手立てにもなる、オススメの一冊です。
『ごちそうさまが、ききたくて。―家族の好きないつものごはん140選』著者:栗原 はるみ
「献立作りに迷うことが多いな」という方は、こちらの本に頼ってみてはいかがでしょう。料理研究家、栗原はるみさんが何度も試作してたどり着いた、素敵で使えるレシピ集。
例えば、「きんぴら」。きんぴらと聞いたら“ゴボウとニンジン”を想像することと思いますが、この本では、「大根・レンコン・ピーマンのきんぴら」をはじめ、「牛ゴボウのきんぴら」や、素材の切り方を変えた「ささがききんぴら」なども登場。マンネリ化しがちな献立を盛り返すアイデアがたくさん!
『cook』著者:坂口恭平
躁鬱病であることを公表している、坂口恭平さん。小説、絵画、自殺防止のための「いのっちの電話」など多岐にわたる創造的な活動で注目を集めている方です。
そんな坂口さんの「cook」は、料理が心に与えてくれる良い効果を見詰めることができる料理本。料理のきっかけは、精神科医からの「手首から先を動かせ」という一言だったそう。やや実験的にうつ状態から抜け出すための、30日間の料理日記が綴られます。
『レシピを見ないで作れるようになりましょう』著者:有元葉子
人気料理研究家、有元葉子さんのベストセラー「レシピを見ないで作れるようになりましょう」。タイトルのとおり、具体的なレシピの説明書きはありません。それなのに、自然と料理の応用力がつきますよ。たとえば大根一本があったなら、しっかり出汁を含ませた大根を煮る、など、文章で料理の術をわかりやすく説いています。
役立つ調理法や技が詰まっていて、「この食材はこんな感じでやれば良いんだ」と、料理の自信に繋がるような便利な情報が詰まっていますよ。
なかには「その調理法があったか!」と、感覚が研ぎ澄まされるような新鮮な気づきを与える一品も。
有元さんの料理は、基本的に素材を生かし、シンプルで飽きのこないものが多いので、どのレシピ本も読みごたえがありますよ。
食にまつわる道具・調味料の魅力を再発見できる本
『おいしいごはんのためならば』著者:平松洋子
フードジャーナリストを職業とする、食の楽しみ方のプロである平松洋子さん。
タイトルのとおり、平松さんが「おいしいごはんのために手に入れたい」という想いを抱くような、食に関するものを紹介するエッセイ集です。
あなたの食のバイブルになるような、とっておきの一冊を見つけて
手にとってみたい本はありましたか。筆者の感覚も交えながら、これはぜひキナリノ読者のみなさんに読んでほしいな、と感じる本をセレクトしました。
機会がありましたらぜひ手に取って読んでみてくださいね。日本の四季による旬の食材の魅力、食のありがたみなどを改めて見つめ直す、素敵な発見を与えてくれることでしょう*
昭和の名脇役と評され、エッセイストとしても活躍されていた沢村貞子さん(1908-1996年)。なんと26年半の間、毎日献立日記として残していたメモのような日記を、本という形でお披露目したのが、こちらの「沢村貞子の献立」。フードスタイリストとして活躍する飯島奈美さんが、その献立メモを“レシピ”に纏めてくださいました。
実はこちら、NHKの「365日の献立日記」という番組を書籍化したもの。こちらの番組では映像でレシピを楽しめますので、チェックしてみるのもおすすめです。この番組の料理、フードスタイリングを手掛けているのも、もちろん飯島奈美さんです。