切り花を長持ちさせましょう
せっかく買い求めた花なのに、つぼみが開く前にグッタリ…
美しく活けたのに、あっという間にシナシナに…
切り花が咲ききる前に枯れてしまうことほど、寂しく切ないことはありません。通常、切り花の寿命は、春秋なら1週間~10日、夏なら4~5日、冬なら10日~2週間程もつはずです。
でも、切り花をそんな長い間楽しんだことがない! という人はきっと少なくはず。花を長持ちさせるコツや技は数々ありますが、花の「水揚げ」と「水切り」についてきちんと理解していないと、せっかくの技やコツも役に立ちません。
今記事では、活け花の基本となる「水切り」と、その他の「水揚げ」の方法を幾つか紹介します。ぜひ参考にして、切り花を長持ちさせましょう。
- 寒さに負けない体を目指す!ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
花が弱るのは、“水不足”が原因
切り花を長持ちさせるには、“水分”を植物から失わせないことが基本。
切り花がきちんと水分を吸い上げることが出来ず、花首が下を向いたり、グッタリしてしまった状態のことを、“水が下がった”といいます。この状態を解消してあげることが、切り花の寿命を伸ばす一番のポイントになります。
「水揚げ」して“水不足”解消
切り口をきちんと広げ整えてあげれば、水を十分に吸い上げることができ、水分を葉や花に送り届けることができます。例え萎れかけても、再び生き生きと復活してきます。
切り花に水を再び吸わせてあげることを、一般に「水揚げ(水上げ)」といいます。
「水揚げ」の基本は「水切り」にあり
「水切り」する上で押さえないければならない要点は、1.水中で切る、2.スパッと切る、3.斜めに切る、こと。
1.水中で切る
◇第一は、切り口から“空気の侵入を防ぐ”ためです。
切り口から空気が入ると導管内で気泡となり、水の移動が止まってしまうことがあるからです。せっかく「水揚げ」のために切り口を整えても、気泡が入ってしまっては意味がありません。
◇もう一つの理由は、“切り口の乾燥を防ぐ”ためです。
乾けば入り口の状態が悪くなり「水揚げ」する力が減んじてしまいます。
※もし水中で切ることが不可能な場合は、切ったら直ちに水につけましょう。
2.スパッと切る
◆「水切り」する時は、切れ味の良いハサミで、スッパリと切りましょう。切れ味の悪いハサミを用いると導管が潰れて、花材が上手く水を吸い上げることができません。
花ばさみは、刃こぼれしやすいものです。
フラワーアレンジメントでは、茎や枝、針金等など様々なものを切ります。同じ鋏を使って全てを切ると、あっという間に刃こぼれしてしまいます。
針金や太い枝を切る時は専用のはさみを使いましょう。
3.斜めに切る
水中で、こちらの写真のように、斜めにスパッと切り落としましょう。
より長持ちさせるには、毎日「水切り」すること
水中に浸かっている茎は、時間の経過とともに傷んで腐敗していきます。毎日水切りして切り口を綺麗に整えてあげましょう。(新しく切り直すことを「切り戻し」といいます)
もし先端部がすでに傷んだり変色したりしているのなら〈痛んでいる部分+3~5㎝程度〉を切ります。
その後は、毎日、先端部を1、2cm程度切り落とします。
もし痛みや腐敗が生じていたのなら〈痛んでいる部分+1、2cm程度〉切ります。
※水に浸かっている部分は、腐らなくても“ぬめり”が生じています。切り落とす前に“ぬめり”を洗い落としてあげましょう。
「水切り」以外の「水揚げ」の方法
参考までに、ぐったりした花を簡単に綺麗に復活させる方法と、あじさいを上手に水揚げする方法を紹介します。(詳細についてはリンク先へ)。
グッタリした花をシャッキリ!「深水」法
バラなどの花首をグッタリさせてしまった経験がある人はきっと多いはず。
「水切り」しないで簡単にシャッキリと復活させる方法があります。この方法は、先述してきた「水切り」では元気にならない時に、ぜひ試して貰いたい方法です。
「深水(しんすい)」という「水揚げ」法の一つですが、水を深く張って水圧を高めて水を上げる方法です。
グッタリしてしまった花材。諦める前に、ぜひこの「深水」法を試してみて下さい。
用意するのは、新聞紙とバケツ。
新聞紙で花首が下がったお花を巻いていきます。
注意する点は、花首を真っ直ぐに整えてから巻くこと。
そして茎の下が新聞紙から出るようにすること。
新聞紙の端からクルクルと巻いていきます。この時、花首が真っ直ぐに固定されるように、ギュッギュッと新聞紙を巻きつけるようにします。
巻きつけたら、半分以上水を張ったバケツに、新聞紙で巻いた花を浸けます。浸けたら、水から出ている新聞紙に霧吹きをして湿り気を与えます。
そのまま、半日から1日放置します。
時間が経ったら、新聞紙を優しく外します。
花がきちんと水を揚げて、シャッキリと復活します。
茎の先端を焼いて「水揚げ」する方法 「焼き揚げ」
切り口から2~5cm程度の部分を、炭化するまで火で焼き、新聞紙に包んだまま直ちに水を張ったバケツに入れ、花がシャッキリするまで浸けておきます。
※この処置をするときは、必ず花や葉に熱が伝わらないように、焼く根本以外の分は必ず濡らした新聞紙などできちんと巻いて保護しましょう。
「あじさいを上手に水揚げする方法」が、以下のリンク先で紹介されています。
参考にしてみましょう。
湯を使って「水揚げ」する方法 「湯揚げ」
植物によっては、「湯揚げ」という「水揚げ」の方法をとった方が良い場合があります。以下のサイトと動画を参考にしてみましょう。
水を吸い上げる力が弱い花 や、
茎を切ると白い液が出て、導管をふさいでしまう花 に有効です。
例: ダリア スカビオサ アスチルベ われもこう
細咲きのケイトウ ブプレウルム アルケミラ ストック
ブルースター ユーフォルビア はつゆきそう など…
*湯につけた部分は早く傷み、腐ってしまうので、やらなくていい花(切るだけで水があがる花)にはやらない方がいいです。
おわりにかえて ―「水換え」と環境―
水不足状態を解消してあげることが、切り花を長く保つために大切なことです。
その他に重要なのは、花瓶の中の水を清潔に保つこと。
バイ菌が繁殖すると、水が腐り茎の傷みが早まります。きちんと気を配って“水換え(花瓶の水の交換)”をしてあげましょう。
水をかえ、その都度花器もよく洗いましょう。
「水換え」する時は、茎のヌメリを洗い落とす他、花瓶の内部も綺麗に洗ってあげると、水を綺麗に保つことが出来ます。
先述した通り、長持ちさせるコツは、毎日「水切り」してあげること。もし無理なら、せめて“水換え”時に“水切り”してあげましょう。
冷暖房機の送風が直接花材にあたったり、高温多湿の場所に置かれてる等、花瓶の置く場所が悪ければ、花材は弱ったり枯れたりします。
植物も私たち同様の生物。私たちに人間とって快適な場所はおおよそ、植物にとっても快適な環境です。飾りたい場所が、植物にとって快適かどうかを考えることも、長持ちさせるために大切なことです。
縁あってあなたの傍らに来た花です。ぜひ大切に扱って、綺麗に花を咲かせてあげましょう。
通常の植物は、根から水分を吸い上げますが、切り花は、切り口から上部に向かって水を吸い上げます。