様々なニュースに振り回されていませんか?
目まぐるしく移り変わる情報社会
現代社会は情報ネットワークが高度に発達し、さまざまな事件や事故などのネガティブなニュースもリアルタイムで報道されます。「最近、世の中には良くない出来事ばかり起こっている」と暗い気持ちになったりすることはありませんか?たとえ無意識でも、ネガティブなニュースに常に触れて続けていることは、私たちの心にも少なからぬ影響を及ぼすと言われています。
悲しいニュースを自分の事として捉えてしまうと…
見知らぬ誰かの不幸な出来事を報じるニュースは、その内容が詳細なほど人々の共感や同調を誘います。被害者の人柄や境遇、家族の様子までこまごまと伝えられると、「もし私だったら」「自分の家族が同じ目に遭っていたら」など、つい感情的に受け止めてしまうのもその一例です。
ネガティブなニュースは、人の負の感情を容易く膨らませる力を持っています。他者の苦しみを想像したり思いやる気持ちは尊いものですが、共感が行き過ぎると自分自身が心のバランスを失い、必要以上に落ち込んだり悲観的になったりする原因にもなってしまいます。
刺激的な情報ほど視聴者を獲得できる
インターネットの普及によってニュースメディアが乱立する現代では、それぞれの媒体が視聴者を獲得するための方法を常に模索しています。彼らはどんな報道の仕方をすればユーザーの関心を引けるのかよくわかっていて、より感情に訴えるような刺激的な表現をあえて選ぶのも常套手段です。
ネガティブな気持ちは周りにも伝染する
人間の社会は、お互いの気持ちや考えに対する共感力によって支えられています。楽しげに笑っている相手のそばでは多くの人が自然と笑顔になりますが、一方で怒りや悲しみ、苛立ちといったマイナスの感情が周囲に伝染しやすいのもまた、人の共感する力によるものです。
煙草の副流煙が周囲の人の健康にも害を与えるように、他者から伝染した怒りや苛立ちは、受け止める側にも大きなストレスを与えることがわかっています。実際に自分が関わっているわけでもないのに、ネガティブな話題ほどあっという間に拡散していくのは、人々がそうした二次的なストレスを持て余している証なのかもしれません。
疲れた心が行き着く鈍感さと無関心
理不尽な事件や事故、不安定な社会情勢などの暗いニュースに毎日触れていると、知らず知らずのうちに心身も疲弊します。疲れきった心はやがて感受性が鈍り、世の中で起こっている悲しいニュースに対しても「よくある話」と突き放すなど、考えることをやめてしまう傾向があります。
世間と自分の感性を完全に切り離すと、心は一時的に平穏を取り戻すことができます。しかしそうした鈍感さは、自分の周りにいる人たちへの無関心にも繋がりかねません。「どうせこんなものだ」という諦めの気持ちで世界を見ていると、自分の大切な人が実際に悲しんでいる時にさえ、手を差し伸べることが難しくなってしまいます。
悲しいニュースに意識が向くのは悪いことではない
人は生まれつきネガティブな考え方を持っている
人は喜びなどのポジティブな物事に比べ、危険を感じるネガティブな物事の方により強い意識が向くようにできていると言われます。動物の本能として、危機管理こそが生き残る助けになるからです。悪いニュースばかりが目に留まると次第にうんざりしてしまいますが、その心の働き自体を気に病む必要はありません。
人の苦しみや痛みが分かるからこその繊細さ
悲しいニュースを目にするとひどく落ち込んでしまうという人は、おそらく他人の痛みを感じ取りやすい、感受性の豊かな人です。目の前にいる人なら手を貸すこともできるけれど、大きな災難に巻き込まれた人に対して個人ができることは限られます。きっと、世の中の理不尽さに納得できず、憂鬱を感じてしまうタイプなのでしょう。
他者を思いやる優しい心は、間違いなくその人の長所です。
でももし他者の悲しみに引き摺られ、自分自身の感情のように錯覚してしまうなら、その区別を明確にする手段を探さなくてはなりません。少なくとも、誰かを本当に助け起こすことができるのは一緒にうずくまっている人ではなく、自分の足できちんと立てる人なのです。
自分の心を守るヒント
自分が感じている不安の正体を知る
暗いニュースに気持ちが沈み、いつまでも不安が拭えない時は、その本当の原因が何なのかを改めて考えてみることも解決の方法になります。自分自身が何か悩みを抱えていたり、うまくいかない事柄に苛立ったりしていると、たまたま目にしたネガティブな話題に感化され、いつのまにか自分の憂鬱な気分を膨らませている場合があるからです。
世の中で起こっていることの悪い面と、自分自身が感じているモヤモヤした気持ちは、社会的に繋がっている場合もあれば、全く別の問題を混同している場合もあります。今本当に集中すべき問題は何なのか、一度自分の心をゆっくりと整理してみましょう。
必要のない情報はセーブする
たとえば、過去のつらい経験を思い出させるような事件や事故のニュースを目にすると、心の傷が一瞬で蘇ってしまうことがあります。あえて知りたいと思う時は別ですが、メンタルヘルスに悪影響が出るとわかっているなら、テレビのチャンネルはさっさと変え、ネットからの情報は一時的にシャットアウトしてしまいましょう。
話題にしやすいニュースほど、あらゆる媒体で同じ内容が何度も繰り返されます。概要がわかっているなら、あとは見出しのチェックだけで十分。自分にとってつらいニュースまで深追いする必要はありません。場合によって情報量をコントロールしたり、きっぱりと遠ざけてしまうこともセルフケアのうちなのです。
ニュースは大げさに報道していることを忘れない
先述したように、ニュースメディアは視聴者をより強く引き寄せるため、不安感を煽る手法も取り入れます。関係者の発言の一部分を切り取って印象を誘導してみたり、いかに事態が深刻か、意図的な事例をわざと並べ立てたりすることも珍しくありません。
さまざまなニュースを通して世界に関心を持つのは良い事ですが、時に情報は発信元の信条や意図が反映され、大げさに誇張される場合があることも頭の片隅に入れておきましょう。確実な根拠が示されない限り、話半分くらいの信用度でちょうどいいニュースもたくさんあるのですから。
物事の一面だけで判断せず、違う意見にも触れてみる
ネガティブなニュースが報じられる時、物事の悪い面ばかりが意図的にクローズアップされるケースがあります。それはまるで、目の前には良い事などひとつもないかのような口ぶりです。
しかしどんな事実も必ず両面を持っており、立場や考え方によってはまったく違う解釈ができる場合もあります。ひとつのニュースソースだけを鵜呑みにするのではなく、気になる問題に関してはなるべく多くの意見を読んだり聞いたりしてみましょう。思いもしなかった考え方や、事態を改善するためにすでに動いている人の話を知れば、憂鬱だった気持ちもグッと軽くなるはずです。
今の気持ちを家族や友人と話し合う
悲しいニュースに皆の気持ちが暗く沈んでしまうような時は、一人で抱え込まず、家族や友人と胸の内を話し合ってみましょう。難しい意見交換などを無理に頑張らなくても大丈夫。親しい相手とただお互いの思いを打ち明けるだけで少しスッキリしますし、心を癒す効果的なセラピーになります。
テレビではなくラジオで新しいカルチャーを知る
映像と音声で内容を伝えるテレビは、大量の情報が鮮明なインパクトを与えます。その点、音声のみで内容を伝えるラジオは適度に情報が絞られているのがメリット。想像力を働かせながらニュースを聞いたり、おしゃべりや音楽に耳を傾けるひとときは、ストレスを感じずにさまざまな情報に触れる手段にもなってくれます。
自分にできることをする
環境問題や人道問題、大きな災害などにかかわるニュースに接すると、解決までの道のりの遠さに圧倒され、無力感に囚われることがあります。でもよく考えてみれば、自分ひとりがどれほど落ち込んだところで、そうした問題が今すぐ解決しない事実は変わりません。
どうにもならないとわかっていることに塞ぎ込んでいるくらいなら、自分が今できる小さな行動に取りかかる方が建設的です。寄付やボランティアなど、何かひとつでも自分から参加してみましょう。ただの傍観者ではなくなったという実感は、社会問題に関するニュースにもよりポジティブに向き合うきっかけになるかもしれません。
知識を身に付け、自己肯定感を育てる
ネガティブなニュースに立ち向かう武器のひとつは、自分自身が知識を備えることです。やるせないと感じる悲しい出来事に対して、「なぜそうなったか」「改善するには何が必要か」といった点に全く無知なままでは、メディアの一方的な主張にも簡単に流されてしまいます。でも一歩踏み出して知識を深め、ニュースの背景をある程度理解できれば、自分なりの判断基準も決められるはず。余計な情報に振り回されずに、筋の通った意見を持てるようになります。
ネガティブを越えるポジティブを探そう
分刻みで更新されるさまざまなニュースとは、敏感過ぎず鈍感過ぎない、適度な距離を保ちながら付き合っていければ理想的です。でも、いつでもそんなに冷静でいられる人はそう多くはありませんよね。
ネガティブなニュースに疲れてしまった時は、ポジティブなニュースを自ら積極的に探してみましょう。悪い事ばかりが続くように思えていた世界にも、人々が助け合い、理解し合い、笑い合っている姿は必ずあります。そして、自分の身近にいる親しい人たちと、他愛無いおしゃべりをゆっくり楽しんでみて下さい。ニュースで報じられる現実は時に厳しいですが、心のセルフケアも忘れずに、現代社会の情報の海をうまく渡っていきたいですね。
肌身離さずスマホを持ち歩き、仕事場でパソコンを開き、家に帰ればテレビをつける生活の中では、1日に目にする情報の量は本当に膨大です。自分が望んでもいない話題でさえ、ニュースサイトやSNS等を介して一方的に流れ込んでくる毎日。手元にやってきた情報を落ち着いて整理することさえ容易ではありません。