心のスキルアップって?
柔軟性のある体はケガをしにくく、腰痛や肩こりとも無縁です。心も同様で、凝り固まった考え方にとらわれていると、傷つきやすかったり回復が遅かったりするもの。しなやかに生きるためには、心の柔軟性を高める“スキルアップ”が必要不可欠なのです。
自分を苦しめる考え方をしていませんか
つらい出来事があったとき、○○のせいだと決めつけたり、絶対○○に違いないと思い込んだりしていませんか。物事がうまくいかないときには、このような考え方のパターンが隠れているものです。決めつけや思い込みは、つらい気持ちに拍車をかけることになり、ますます自分を苦しめてしまいます。
“認知の歪み”に気付こう
自分を苦しめる偏った考え方を、“認知の歪み”といいます。思い込みや決めつけ、べき思考や白黒思考など、思い当たることはありませんか。自分の立場からしか物事を見ていなかったり、事実とは異なる根拠のない考え方をしていたり、“認知の歪み”に気付くことが大切です。
□思い込み(いつも、必ず○○だ)
□決めつけ(絶対○○に違いない)
□白黒思考(良いか悪いかのどちらか)
□べき思考(○○すべき、○○ねばならない)
□自己批判(自分が原因だと責める)
□深読み(相手の気持ちを推測して決めつける)
□先読み(悲観的な予測を立てる)
違った視点を持てばラクになれる
そんな“認知の歪み”に気付くには、これからご紹介する「思考バランスシート」を用いるのがおすすめです。紙に書いて客観視することで、思考が整理でき、バランスのよい考え方を手に入れることができます。感情に飲み込まれそうな状態から抜け出せれば、ずいぶんと気持ちもラクになれるはずです。
「思考バランスシート」で客観視する
気持ちが動揺するような出来事があったときは、感情や思考が混乱したり、考え方が極端になったりするものです。そんな状態から抜け出すためには、「思考バランスシート」で自分自身を客観視する必要があります。出来事や思考、感情などに分解して段階的に捉えることで、解決の糸口が見えたり、苦痛が和らいだりするのです。
①出来事・テーマ
気持ちが動揺したときの出来事や、解決したいテーマを書きます。そのときの状況を、なるべく具体的に書くのがポイントです。
いつ、どこで、誰が、何を、どのように、どうしたのか?
自分に問いかけながら書いてみましょう。
②自動思考
自動思考とは、そのときにとっさに浮かんだ考えのことです。気持ちに強く影響した考え、思ったこと、感じたことを書きます。
言い切る形で書くと、問題点が見えやすくなります。
・わたしはいつも○○だ
・絶対○○に違いない
・もっと○○すべきだった
③気分・感情の数値化
次に、そのときの気分や感情を数値化します。今まで感じたことのある最も強い感情を100として、今がどのくらいのレベルなのかを客観視するのです。
ひとつに限らず、複数あってもかまいません。
悔しい・悲しい・不安・腹立たしい・むなしい・恥ずかしい・怖い・憂鬱・落ち着かない
④自動思考の根拠
②の自動思考に至った根拠を書きます。ここでは事実のみを書き、相手の心の内を推測するようなことや、自分の立場から解釈したようなことは書きません。
下記のように事実のみを書き出します。
・○○したとき、××に△△された
・わたしが○○しても、××は△△してくれない
・○○が××できていない
「思考バランスシート」で視点を変える
今のつらい状況が客観視できただけでも、幾分かラクになっているのではないでしょうか。ここからはさらに、心の“スキルアップ”として、視点を変える練習をしていきましょう。順にステップを踏んでいくだけで、おのずと視野が広がっていくのを感じられるはずです。
⑤別の事実を探る
④では②の自動思考を裏付ける根拠を書き出しました。ここでは、それ以外の事実を探っていきます。気になる出来事ばかりに意識が集中していると、他のことが見えなくなっていたり、見落としていたりするからです。
少し難しいかもしれませんが、自分の少し後ろ、あるいは上方から、出来事を俯瞰するようにイメージするといいかもしれません。
さまざまな視点から出来事を俯瞰します。
・5年後の自分ならどう考えるだろうか
・友人が同じことで悩んでいたらどうアドバイスするだろうか
・元気なときだったら違う捉え方ができただろうか
⑥新しい柔軟な考え方
②の自動思考に代わる、新しい柔軟な考え方を手に入れましょう。難しく考えることはありません。ここまで書き出してきた内容を組み合わせるだけでOKです。
下記の式に当てはめてみましょう。
「④自動思考の根拠」+「しかし・そして」+「⑤別の事実」=「⑥新しい柔軟な考え方」
⑦気分・感情の変化
⑥の新しい柔軟な考え方を書き出してみていかがでしょうか?気分や感情が変化しているのを感じているかもしれません。また、新たなプラスの感情が生まれていることもあるでしょう。③と同様に、気分や感情を数値化します。
⑧気づき・今後の課題
ここまで「思考バランスシート」を書き進めてきて、気付きがあったり、今後の課題が見つかったりしたかもしれませんね。忘れないように、最後に書き留めておきましょう。
今の自分にできることは何でしょうか。
・○○を××する
・○○と××について相談する
・○○を××できないか考える
心をスキルアップして、しなやかに生きよう*
しなやかに生きていくためには、バランスのよい考え方ができる、心の“スキルアップ”が欠かせません。そこで役に立つのが「思考バランスシート」です。
ご紹介した手順をご参考に、あなたも柔軟な心を手に入れてくださいね。
つらい気持ちを抱えたままにしていませんか? 誰にも相談できない、どうしようもないと諦めないで、まずは自分の心と向き合うことから始めてみましょう。紙とペンがあればすぐに始められる「思考バランスシート」の手順をご紹介します。