自由に平穏に暮らすためのヨーガの哲学
心を調えるヨーガの言葉たち
ヨーガ<yoga>
心<citta(チッタ)>
人の精神作用。気持ち。知・情・意の総称。
心には5つの状態があるといいます。
1, 落ち着きのない状態
2, ぼんやりした状態
3, 散漫な状態
4, 集中した状態
5, 止滅した状態
1,2,3は雑念に左右されている時の状態です。
心は、なにかの対象と結びつくことで、きちんと動くといいます。結ぶ対象に気づき、対象と自分自身を結び合わせる事で、意思が働きはじめます。その働きを心<チッタ>と呼びます。
心を結びつける対象が、そもそもに混乱していたら・・・?自分の心まで混乱してしまいますよね。混乱した人・状況にばかり心を結んでいては、いつしかあなたの心そのものが問題を引き起こしてしまいます。
私たちの心は、外の世界に影響を受けて移り変わっていくもの。心はいつも「快」と「不快」の間を行ったり来たりしています。ヨーガでは、「心の動きを止めること」を教えています。それは、外の世界に対して一喜一憂したり、振り回されて混乱するような心の動きを止めることです。それこそが自分の心を守る術にもなります。
苦悩<duhkha(ドゥッカ)>
苦しみ。悩み。心配。痛み。悲しみ。
インドの哲学において、苦しみには三種類あるといわれているそうです。
1, 個人的な苦悩・・・病気や痛みという肉体的な苦しみと、心配や不安という精神的な苦しみ
2. 社会的な苦悩・・・会いたい人に会えない苦しみと、会いたくない人に会わなければならない苦しみ
3, 天災の苦悩・・・自然災害(地震、台風、火山爆発など)に遭遇する苦しみ
基本的な考え方として、現在の苦しみは避けることのできないものだといいます。人生は思うようにならないことがつきもののように起こるもの。なにかに執着すればするほど、苦悩が生まれます。
未来の苦しみから自由になること。つまり、まだ起こっていないことに対して、あれこれと心配や不安を抱くことから自由になること。そのためには、何事に対しても執着心を捨てることがヒントになるでしょう。
制御<nirodha(ニローダ)>
自分の思うように支配すること。
他者をコントロールしようと考えるのは、ナンセンスです。
制御すべきは、自分の心。自分の心の声に気づけていないがゆえに、人は他者を無意識にコントロールしたいと考えてしまうことがあります。
自分の心が今、どんな状態なのか、気づきの習慣を身につけるようにしましょう。テレビやインターネットの情報から離れて、静かに自身の心と向き合う時間をつくると、よりシンプルにスムーズに、正しい選択をできるようになっていきます。
たとえば、普段テレビやインターネットに費やしている時間をサクッと切り上げて、寝る時間を30分多くとってみましょう。ベッドで横になりながら、自分の心を見つめ直してみたり、今日一日を振り返って心の動きがどんな風だったかを思い返してみるというふうに。その際に、ゆったりと深く呼吸することを意識してみましょう。
呼吸を深くすることで、過敏になった神経がリラックスモードにシフトします。お風呂に入っている時や、電車やバスで移動する時、子どもを寝かしつける時など、日常の中のちょっとしたすきま時間を見つけては、深呼吸と共に内面をそっと見つめる習慣をつけてみてはいかがでしょう。
打ち克つ力<anabhighata(アナビガータ)>
困難を乗り越えること。
困難に直面したときに、乗り越える力を手にしましょう。困難=苦痛と捉えるのではなく、心が動じることなく、越えていく力・精神状態のことを示しています。
越えられない困難は、そもそも与えられないと言われています。私たちには、本来本能として困難を乗り越える力が備わっているのでしょう。
外面的に起こることばかりに意識を集中してしまうと、変化に対し、常に不安がつきまといます。しかし、外面的な状況に対して反応しているのは、心、すなわち内面です。外で起こっていることに対して、反応しているのは、私たちの心でしかありません。
外の世界では、日々いろんなことが起こるでしょう。外界で起こることをコントロールすることは不可能です。しかし、自分の内面ならばいくらでもコントロールすることが可能です。
困難に直面した時、見聞きしたことにとらわれすぎず、こだわらず、束縛されず、自分の内面だけに意識を集中することで、何が起きても振り回されることがなくなります。ただ静かに、解決する方法を思考し、自分が取るべき行動を選択すれば良いのです。
行動することも選択であり、しないこともまた選択です。困難に直面した時、あたふたすることなく、穏やかにあたりまえに選択できることができるように。外の世界に左右されない確固たる自分の内面を確立できたら、本当の意味で自由という風を感じることができるようになるでしょう。
おわりに
自分の内面世界とじっくり向き合うヨーガの考え方。共感できる部分があれば、ぜひ日々の暮らしの中に取り入れてみてはいかがでしょう。ヨーガが導く言葉の灯火は、私たちが進むべき道を明るく照らしてくれるはずです。
風のように自由に、身も心も自立して生きるために。インドで5000年前に生まれたヨーガの哲学を、私たちの暮らしを潤すエッセンスとして取り入れてみませんか。