気候が心身に影響を与えるしくみ
ジメジメとした雨の日は調子がよくない、体がだる重い……。そんな経験はだれしもあるはず。わたしたちの住む地上という環境は、常に気候変動にさらされている状態です。気温が5~7度ほど変化しただけで、自律神経系に変調をきたすことも分かっています。原因も分からずモヤモヤと具合の悪い状態を引きずるよりも、気候の変化が心身に影響を与えるしくみを知り、うまく対応していきませんか。
気候の変化「六気(ろっき)」
東洋医学の考えでは、一年の気候の変化を「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「火」の「六気」に分けます。これらは自然現象であり、本来は害のないものです。しかし、昨今の異常気象にも見られるように、変化が過剰になると、人体に作用して病気を発生させるものになると考えられています。
七つの感情「七情(しちじょう)」
わたしたちの心には七つの感情が存在し、「喜」「怒」「思」「悲」「憂」「恐」「驚」を総称して「七情」といいます。これらの感情は体の内側から自然と生じるものですが、気候の変化と同様、過剰な感情は私たちの体に害をもたらします。考えすぎて胃が痛くなるというのも、典型的なパターンです。
生活習慣の乱れ
偏った食事や食べすぎ飲みすぎ、激務や残業続きで疲労困憊など、他人事でないという方も多いのではないでしょうか。このような生活習慣の乱れは体調不良を起こし、心を病み、さらに生活が乱れるという悪循環を繰り返しかねません。そこに気候の変化が加わるとどうなるか、想像に難くないですよね。
なにごとも度を過ぎると心身に害をもたらす
ここまでお伝えしてきたように、気候も感情も生活習慣も、度を過ぎると心身に害をもたらします。科学技術の発達した現代でも、気候を予測することはできても、コントロールすることは不可能です。わたしたちにできることは、心を安定させ、生活習慣を整えること。それが「養生」なのです。
日常生活でできる「養生」のヒント
気候が変化すると、わたしたちの体はそれに順応しようとエネルギーを消耗します。そのため、体がだる重いといった不調が出てくるのです。エネルギーを無駄に消耗しないためにも、日ごろから生活のリズムを整え、気候の変化による影響をなるべく小さくしていきましょう。日常生活でできる「養生」のヒントをご紹介します。
「養生」の基本
子どものころに教えられた基本的な生活習慣を覚えていますか?ごはんをしっかり食べること、早寝早起きをすること、体を動かすこと。言葉にしてみると「なんだ、そんなことか」と思うかもしれませんが、これが「養生」の基本なのです。人が健康に過ごすために必要な生活習慣ですが、大人になると意外と守れていないことも。基本の生活習慣を、いまいちど心に留めておきましょう。
セルフケアのヒント
規則正しい生活を送っていると、どこかに不調があっても、「昨日寝るのがいつもより遅かった」というように、何が原因か突き止めやすくなります。また、生活のリズムを一定に保つことで、体内時計が正しく機能し、体温調整やホルモンバランスが整います。
心身への影響を最小限にするために
気候の変化はコントロールできませんが、生活習慣は自分の心がけしだいです。睡眠時間や食事内容、生活のリズムなど、自分にとっての最低限のラインを守ることで、気候の変化による心身への影響を最小限にとどめることができます。エネルギーの消耗を防ぐため、活動量を8割程度に抑えるのも一つの方法です。
季節ごとの「食養生」
食品には体を温めたり冷やしたりする性質があり、その性質を利用して体調を整えることを「食養生」といいます。季節が変化するのと同じように、体への影響も季節によって変わり、対応する養生も異なります。「食養生」では、暑い夏には体を冷やす食材、寒い冬には体を温める食材、というように、季節に合わせてバランスよく取り入れることが基本です。
自律神経をくずしやすい春
季節の変わり目として体調をくずしがちな春は、陽気の高まりに心身が対応できず、のぼせたりイライラしたりすることが多くなります。体内に溜まった悪いものを体から排出し、質の良い睡眠や食事をとりましょう。気の巡りをよくする香りのよい野菜や、かんきつ類がおすすめ。セロリやみつば、ミントなどを食生活に取り入れて。
暑さや湿気の影響が大きい夏
日本の蒸し暑い夏は、夏バテや水分のとりすぎによるむくみ症状が出やすい季節です。夏バテには水分・塩分・栄養の適度な補給が大切なのはご存知の通り。夏の弱った胃腸には、トマトやキュウリ、ナスなどの夏野菜と、ショウガやネギなどの薬味と組み合わせて食べるのがおすすめ。むくみには水の巡りをよくする豆類が効果的です。
夏の疲れや食べすぎてしまう秋
涼しくなる秋口は、夏の疲れが出やすい時期。夏の暑さで体力を消耗したり、寝苦しく寝不足が続いたりしたため、エネルギー不足に陥っていることが原因です。胃腸を休め、質の良い睡眠をとりましょう。また、秋は冬に備える季節でもあります。体を温めるショウガやネギ、唐辛子といった薬味や香辛料、大根やタマネギ、シソなどの野菜をとるように心がけて。
乾燥や血行不良になりやすい冬
気温が低くなる冬には、体内の血液の巡りが悪くなり、皮膚に十分な栄養が行き届かず、乾燥や肌荒れの原因に。黒大豆やプルーン、ニラ、タマネギなど、血の巡りをよくする食材ととりましょう。また、冬場は寒さから身を守るためにエネルギーを多く使います。消耗した気を補い、新陳代謝の促進や免疫力を高めるネバネバ食品や海藻類を取り入れるとよいでしょう。
心身ともに健やかな養生ライフを♪
心身に影響をもたらす気候の変化に対応できるように、日ごろから生活習慣や食生活を整えるのが「養生」です。今まで気にも留めなかったという方も、なんとなく気になっていたという方も、心身ともに健やかに過ごせる養生ライフを送ってみませんか?今回ご紹介したセルフケアのヒントをご参考になさってくださいね。
ご紹介したほかにも、養生に役立つレシピが豊富ですので、ぜひご覧になってみてくださいね。
『養生訓』をご存知でしょうか。江戸時代の儒学者、貝原益軒が記した、健康に関する経験や知恵をまとめたものです。節度ある食事や睡眠など、「養生」の大切さを説いています。古くから人々の生活に根付いていた「養生」は、現代のわたしたちの心身の不調を正す手助けとなる知恵です。毎日を健やかにすごすセルフケアのヒントをご紹介します。