よいコーヒーとは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、そして恋のように甘い
(シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール)
タレーランのこの言葉は、コーヒー好きにもはや知らない人はいないといわれます。美食家であり、フランス革命期から大政治家として活躍したタレーランがエスプレッソを好んで飲んでいたことから発言されました。かのナポレオン公も認めた男、タレーランが心奪われたコーヒーの魅力を探っていきましょう。
コーヒーの起源は言い伝えレベルになってしまうほどはるか昔のことです。長い歴史の中で、多くの人に愛され飲み継がれてきました。その分、コーヒーの愉しみ方も幅広いものとなりました。
アラビアのモカ(現イエメン)の守護聖人シーク・スシャデリの弟子シーク・オマールは、オウサブの山中で素晴しい羽根をもった小鳥が小枝にとまり陽気にさえずるのを見つけました。その鳴き声があまりに美しかったので、思わず手をのばすと、木の枝々には花と果実があるだけでした。空腹だったオマールはこの果実を摘み取って洞窟に持ち帰り、スープを作ってみようと思いました。その果実からは素晴しく香りのよい飲み物ができ、飲んで見ると元気が出たような気がしました。それがコーヒーだったのです。 …他エチオピアのヤギ飼いカルディのコーヒー発見物語(コーヒー起源伝説)
焙煎とは、コーヒーの原料「生豆」にムラなく熱と圧力を加えていく作業のことです。焙煎することで、コーヒー独特の酸味・苦味、香ばしい風味を引き出せます。また、熱と圧力の加え方ひとつで完成したコーヒーの風味もガラリと変化するので、同じ味を出す難しい奥深い工程です。
短い焙煎時間で豆全体をムラなく仕上げなくてはならないため、高度な技術が必要です。苦味は抑えられ、酸味がかなりきいた仕上がりになります。
アメリカンなど、お店や市販品で広く使用される焙煎の度合いです。苦味、酸味、香りなど、豆本来の味が引き出されるのが特徴なので、まずはブラックコーヒーで豆の味わいを感じてみてください。
出典: エスプレッソでよく使われます。バランスが良く、コクのある苦味が出てくるのがシティロースト。芳ばしい香りを引き出すフルシティロースト。どちらも、自宅やお店でよく使われる焙煎方法です。
アイスコーヒーでよく使用されます。酸味はほとんど感じられないので、フレンチローストはウィンナーコーヒーやカフェオレなど、アレンジにも使われます。
「同じコーヒーを入れたはずなのに…」と驚くほど、豆の挽き方でコーヒーの味わいは大きく変わります。豆の挽きが細かすぎると苦味や渋味が強く出て、逆に粗いとお湯の通りが早いために旨味やコクを出しきれません。挽き方は5段階あります。コーヒーを淹れる器具や飲み方によって、挽き方を選ぶといいでしょう。
白砂糖のような粒の大きさ。苦味が非常に強いのが特徴です。エスプレッソやターキッシュコーヒー(トルココーヒー)に適しています。
白砂糖とグラニュー糖の間くらいの大きさ。市販で売ってるコーヒーよりやや小さめ。苦味とコクをしっかり出せるので、水だしコーヒーに使われます。
一般的によく使われる挽き方です。大きさはグラニュー糖ほど。万人受けのある味を出すことができる、苦味と酸味のバランスがいい挽き方。クセが強すぎず飲みやすいです。
出典: グラニュー糖とザラメの中間くらいの大きさ。雑味が出づらいのでスッキリした味わいです。酸味も感じやすい。こちらも一般的によく使われる挽き方です。
粒のサイズはザラメほど。苦味が少なく酸味が強めで、さっぱりとした味。アウトドアでよく使用されるパーコレーターで淹れる場合には、この挽き方が適しています。
コーヒー豆は「豆」ではなくて、植物であるコーヒーノキの種子です。赤道直下のコーヒーベルト地帯で栽培され、その地域や品種によって味に特徴があります。コーヒーの品種は約2000種類以上。どう選べばいいか迷ってしまいますよね。まずはブレンドコーヒーやポピュラーな品種から試すのがおすすめです。
ブレンドコーヒーは、複数の種類の豆を配合してバランスの良い味わいを出しているコーヒーです。飲みやすく、かつ飲食店でも味を安定させやすい特徴があります。
酸味と酸味をかけ合わせても、酸味がただ強いコーヒーが出来上がってしまいます。たとえば、「酸味と苦味」「苦味と甘み」など、それぞれの特徴を上手に組み合わせることが大事。ベースになるコーヒー豆を30~50%に決めて、コクの強さや後味の余韻の長さを他のコーヒー豆で色をつける方法が基本的な配合です。
もちろん5種類以上混ぜること自体はできますが、たくさん混ぜても味がまとまらず美味しいコーヒーになるとは言い難いです。3、4種類までにとどめるほうがバランスのよいブレンドコーヒーに仕上がります。また、焙煎具合も近いものの組み合わせを選ぶといいでしょう。
すっきりした酸味【代表的な豆】キリマンジャロ、モカ
酸味ときくと嫌に思う方もいるかもしれませんが、キリっとした飲み口やスッキリした後味になる要素です。すっきりした酸味は、キリマンジャロやモカなどの豆で味わうことができます。キリマンジャロは、パンチ強めの奥深い味で強い酸味が特徴です。モカは酸味だけではなく程よい甘さやコクを感じられる、ブレンドのベースにもなります。
焙煎の工程でいわゆる焦げによって付属される苦味成分。コーヒーならではのこの苦味は、深煎りすればするほど個性がどんどん失われていくといいます。マンデリンは、深煎りにしても風味を損なわないコーヒー豆です。後味にハーブやシナモンを感じる独特の風味があって特徴的です。
コクというのは、コーヒーの旨味や口に残る余韻のようなものといわれます。深いコクを感じられる代表的な豆は、ジャワコーヒーです。見た目が濃いので強烈な味わいと思われがちですが、酸味が少なくまろやかな味わいで深いコクを感じられます。
クセが少なくバランスがいい【代表的な豆】コロンビア、ブルーマウンテン
コーヒーの味を決める5大要素すべてがバランスのとれた絶妙なコーヒーと評されるコーヒーもあります。代表的なのは、その3%の高級豆「エメラルドマウンテン」とされるコロンビアは、エスプレッソにしても柔らかい味わいで飲みやすいです。柔らかい口当たりが日本人に好評のブルーマウンテンは、香り豊かでブレンドコーヒーの香り付けに使われています。
紙や金属、布を使用してコーヒーを濾す抽出方法。ペーパードリップが一般的ですが、環境にやさしいメタルドリップやトロっとした質感で抽出できるネルドリップも人気があります。
ペーパーフィルターで濾過してコーヒーを抽出します。コーヒーオイルは紙に吸収されてしまうので、すっきりとした飲み口です。
繊維が紙よりも粗いのでコーヒーオイルも抽出されます。舌触り滑らかな味わいです。布製なので濾過のスピードが早く、コーヒー豆の挽き方は粗挽きのほうが合うでしょう。
出典: ペーパードリップでは濾紙で味わうことができないコーヒーの油分を味わうことができます。また、金属のフィルターは半永久的に使用でき、ゴミが少なくて済むので環境にもやさしい淹れ方です。コーヒー豆は、中挽きで深煎りのものが合います。
豆を直接お湯で浸し数分間つけ置きした後、プランジャーを使って濾す方法。紅茶でも使われる器具です。コーヒーの油分がそのまま濾過されずに抽出されるので、味わいが濃厚になります。抽出器具は次の3点が代表的です。
出典: 紅茶を淹れる抽出器具としてなじみ深いフレンチプレス。もともとはヨーロッパでコーヒーを淹れるために作られたといわれます。金属製の粗いメッシュで濾すので、コーヒーの油分や小さな粒子なども入ってしまうので少し濁った出来上がりです。その油分こそが香りや風味の元となるので、スペシャルティコーヒーを淹れる手法としても代表的。コーヒー豆の特性がそのまま抽出されます。
出典: 密閉して圧力をかけるアメリカンプレスはより濃厚なコーヒーを抽出できます。抽出時間はフレンチプレスより短く、エアロプレスよりやや長い程度。プランジャーの先にコーヒーを入れる部分がついていて、圧力と金属の超微細なフィルターによって簡単に抽出できます。
注射器のような形状で、空気の圧力で押し出す淹れ方です。抽出の仕方による味のブレが少なく安定したおいしさで淹れられること、お湯を入れて1分ほどで出来上がる簡単さに人気があります。
フラスコ内の気圧の変化を利用して抽出する方法です。高温状態で作られるので、香り高いコーヒーに仕上がります。雰囲気がありインテリアとしても映えますが、メンテナンスや掃除には手間がかかるのはやや難点ですね。
水でじっくりと時間をかけて淹れるので、苦味やえぐみが出づらいまろやかな味わいが特徴です。手軽なパックで販売されていたり、専用ポットに入れて抽出したりします。アイスコーヒーと混同されやすいですが、濃く抽出したコーヒーを氷で冷やして作るのがアイスコーヒー。飲み方を総称してアイスコーヒーと呼びます。
コーヒーメーカーも種類が豊富で、全自動タイプもあれば、ドリップタイプ、カプセルタイプ、エスプレッソマシーンなどさまざまです。忙しい日常にスイッチひとつでコーヒーを淹れられること、いつでも均一で安定した味を愉しめることは最大のメリットですね。
コーヒーが苦手な方も一緒に愉しめる「アレンジレシピ」
いつもとは違うテイストで愉しみたい方、実は苦くてそのままでは飲めないという方も◎。アイスコーヒー、ホットコーヒー、アルコールとアレンジはさまざま。ここでは美味しくコーヒーを愉しめるアレンジレシピをご紹介します。
出典: コーヒーをゼリー状にし、デザートのようなドリンクにすることも。甘酒も入っていて健康にもよく、カロリー抑え目で満腹感も得られます。
出典: 抽出して冷やしたコーヒーとアイスクリーム、バナナをミキサーにかけて作るシェイクです。アイスコーヒーは、氷を入れておいた容器に入れて一気に冷やすと、風味が生きたままシェイクにできます。
出典: コーヒーと牛乳は1:1。温めた牛乳をフォーマーでふわふわにさせて、トースターで炙ったマシュマロをのせます。マシュマロがトロっと溶けて優しい味わいです。
出典: コーヒーが苦手な方にも飲みやすいホットドリンクアレンジ。後からショウガの風味とはちみつの甘みを感じます。冷え性にお悩みの方にもおすすめの飲み方ですよ。
出典: アイリッシュウィスキーを使用した大人のコーヒードリンク。クリームがまろやかに包んでくれるように感じる一杯です。きれいな2層がおしゃれで大人な雰囲気を演出してくれますね。
出典: アルコール×かき氷という斬新な取り合わせの大人のデザートドリンク。ウォッカとコーヒーリキュールで作られていますが、ブランデーやラム酒に代えても合います。混ぜるフルーツもお好みのものに代えてアレンジの幅が広がりそうですね。
いかがでしたか?焙煎、挽き方、淹れ方…調べれば調べるほど、コーヒーは奥が深いもの。こだわりの1杯を探すには、まずはフィーリングでいいので好きな豆を買うこと。お店でも豆は挽いてもらえるので少しずつ道具をそろえていって自分好みのコーヒーの味を見つけていってくださいね。豊かな生活の第一歩に、まずは、美味しいコーヒーに出会うことから始めてみましょう。
ブレンドコーヒーは、複数の種類の豆を配合してバランスの良い味わいを出しているコーヒーです。飲みやすく、かつ飲食店でも味を安定させやすい特徴があります。