使うだけじゃない。伝統美が宿る「花の絵皿」を、目で見て味わう。
出典: スタイリッシュでまっさらな無地の器もいいけれど、絵付けの器も素敵ですよね。中でも「花柄」のお皿は、⾷卓をぱっと華やかにしてくれるアイテム。お花ならではの可憐な品のよさを備えているので、ティータイムのスイーツや、⾷後のフルーツなど、リラックスしたいシーンにもぴったり♪
さて、そのような花柄の絵皿、どのような「絵付けの技法」で描かれているのか、ご存知でしょうか?
出典: 実は、作家さんが手がけた絵皿であっても、すべて筆で描かれたものとは限りません。和紙を使ったり、スタンプを使ったり…。様々な種類の「絵付けの技法」が用いられているのです。
今回は代表的な「絵付けの技法」を取り上げながら、それを施してつくられた、素敵な「花柄の絵皿」をご紹介します。味わい深い色の濃淡や、細かな模様など――。美しさの理由を知れば、きっと絵皿を使う愉しみが倍増するはずです。
【絵付け.1】シンプルで、絵画的な描写も。藍色が魅せる「染付」
出典: 「染付(そめつけ)」とは、青色の顔料「呉須(ごす)」で絵付けをした焼きもののことです。このように筆を用いて描くことだけでなく、皿表面に図案を転写したり、呉須を吹きかけたり…。表現方法は様々です。
素焼きした素地に描き終えたら、この上に透明な釉薬をかけて本焼きします。すると呉須は、 藍色を帯びた、深みのある色味に変わります。
フリーハンドで描かれる、躍動感のあるお花なら・・・
出典: 400年以上の歴史を持ち、庶民のための器として長く愛されている波佐見焼。こちらは有限会社マルヒロが展開する波佐見焼ブランド・BAR BARの「いろは」シリーズ、菊紋のお皿です。BAR BARは昨年まで「馬場商店」という名で展開されていました。
「いろは」シリーズのお皿は、職人さんが筆をもち、フリーハンドで絵をのせています。器を囲むように描かれた、シンプルながらも大胆な菊紋が特徴的。茶色の縁取りが、さらに引き締まった印象をつくり、自ずと中心に何かをのせたくなりますね。
出典:www.instagram.com(@cotogoto.jp) ビタミンカラーのフルーツタルトも、美しいコントラストで映えますね。落ち着いた呉須の藍色は、毎日のあらゆる食卓風景を引き立ててくれます。
出典: 石川県を拠点に活動している陶芸作家、樋山真弓さんは、地元・九谷の粘土と絵具を使って、成形、絵付け、焼成までを手仕事で一貫して行っていらっしゃいます。九谷焼の伝統と、女性らしい感性によって生み出される器は、落ち着いた上品さと、かわいらしさを兼ね備えた一枚です。
出典: 樋山さんが描く菊の文様は、やわらかな筆の跡、濃淡が美しく表現されており、まるで、つるりとした白磁をキャンパスにした絵画のよう。どこかほっとするような温かさがあり、光が差し込む朝の食卓にもぴったりです。
出典: 石川県能美で開窯以降40年以上にわたり、暮らしの器を作り続けている「九谷青窯(くたにせいよう)」。その陶工である小林巧征さんの「綿花」シリーズは、まさしくふわふわとした綿花の描写が特徴的。呉須のグラデーションによって、生き生きと表現されています。
出典: グラデーションをきれいに生み出すために、ひとつのカップに入った呉須の上澄み、中盤、底の、それぞれの濃淡を利用しているそう。絵画的であり、まさに職人技ですね。
出典: 藍色で、主張しすぎない美しさ。それゆえ、食後のちょっとしたフルーツも、上品に演出してくれます。
【絵付け.2】庶民に親しまれてきた、絵柄を転写する「印判」
出典: 「印判(いんばん)」は、紙に描かれた絵柄(転写紙)を、陶器に刷りこんで転写するという、絵付けの技法です。絵皿の大量生産を可能にするものとして、明治以降に行われるようになりました。転写紙を使うとはいえ、刷りこむのは手作業。線の滲みやゆがみなど、独特の風合いがありますよ。
素焼きした素地に転写し終えたら、この上に釉薬をかけて本焼きします。
出典: 日本の伝統文様が表現された小皿のシリーズです。不老長寿の貴い花として大事にされる菊の花、繁栄や長寿の願いが込められた「蛸唐草文」など…。バランスよくデザインされた繊細な文様が、美しく映えますね。
出典: 大胆に花びらを描いたり、ストライプと組み合わせたり…。華やかで、かつ洗練された品のよさが感じられて、自然と明るい気持ちになれますね。赤と白のおめでたい配色で、ハレの日にも使いたくなる、特別感のあるお皿です。
kata kata(カタカタ) / 印判手(たんぽぽ)
出典: 東京や浜松で制作活動されている松永武さん、高井知恵さんご夫婦による型染めユニット「kata kata(カタカタ)」。日常の風景から、オリジナルデザインの染布を制作しているお二人が、「印判」の技法を用いて手がけた食器シリーズです。
イラストチックな図案で、お子さんも気に入ってくれそうです♪
出典: こちらのシリーズでは、「印判」の手法のひとつとして、「銅版転写」を用いています。
「銅版転写」は、転写紙を作る際に“版画”を用いる方法。銅板に、鉄筆で手彫りし、模様を刻みます。そのようにして作った銅版に、呉須などの顔料をのせて和紙に刷ることで、転写紙をつくります。その紙を素焼きの器に貼り付け、水をつけた筆などで叩くことで、模様を写し取る…という手法です。
デザインの中に一点一点に生まれる個体差が愛しい作品です。
出典:www.instagram.com(@cotogoto.jp) 春を感じるタンポポの絵柄で、ぽかぽか陽気の食卓に並べたい一皿ですね。重なったタンポポの中にちらりと見えるてんとう虫にもほっこり。
Burleigh(バーレイ) /CALICO(キャリコ) プレート
出典: 繊細に描かれた花柄が上品で美しいのは、イギリスの伝統的な陶器メーカー、Burleigh(バーレイ)社が製作するプレートです。バーレイ社は160年以上もの間、熟練した職人たちの技術と素晴らしいデザインを受け継ぎ、今も一つ一つ昔のまま手作りで陶器を作り続けています。
実は、バーレイ社も、伝統的な大量生産の技法として、「銅版転写」を用いた絵付けを行っています。
出典: こちらの、深い藍色と白のコントラストが美しい「キャリコ」は、バーレイ社人気のデザイン。氷のうえに落ちたプルナス(桜の一種)が描かれた、春の始まりを感じさせてくれるあたたかな柄です。洋皿らしいゆるやかなリムのラインもまた、クラシカルな雰囲気で素敵。テーブルをやさしく華やげてくれる一皿です。
【絵付け.3】顔料が染みた和紙による、やさしい風合い「和紙染め」
「和紙染め」とは、素焼きした素地に、表現したい形に型抜きした和紙をのせ、その上から顔料を染み込ませるという、伝統的な絵付け技法。薄く希釈した呉須を和紙に滲ませるのが一般的ですが、色絵を施したりと、表現方法は様々です。
Pebble Ceramic Design Studio・石原亮太さん / 「プランツ」シリーズ
出典: 陶磁器作家・石原亮太さんのブランド「Pebble Ceramic Design Studio」。400年もの歴史のある焼き物の町、長崎県の波佐見を拠点に活動されています。
出典: 「和紙染め」ならではの風合いにご注目。切り取った和紙のなかで、呉須の濃淡がいきいきとした表情をみせています。
たくさんの工程のうち、いくつかを、型屋さんや素地屋さん、窯屋さんに協力してもらうことによって、生まれた一皿。色んな方の手作業、想いが凝縮されているのも魅力のひとつです。
出典: ちなみに石原亮太さんは、ベンガラという鉄を含んだ成分で絵付けしたという、鉄絵の「フラワー」シリーズも作っておられます。模様の彫りの上に表現される、鉄錆のような飴色が美しい一皿です。
【絵付け.4】小さな柄の配列がかわいい「スタンプ」
出典:www.flickr.com(@Ministry of Foreign Affairs of the Republic of Poland) 「スタンプ」と言うと、押し型で模様をつけるのかな?と思うかもしれませんが、そうではありません。
ご紹介するのは、海綿やスポンジを細かく切ったスタンプに顔料をしみこませ、ポンッポンッと押して絵付けする技法です。元々はドイツ人が考案したと言われています。
これは、ポーランド南西部の街、ボレスワヴィエツという町で作られる陶器「ポーリッシュポタリー」に欠かせない絵付け技法。「ポーリッシュポタリー」はこのスタンプと手描きを組み合わせた装飾性で、世界的に高い評価を得ています。
ポーリッシュポタリー Zaklady(ザクワディ)/ プレート
出典: 東欧生まれの陶器ですが、主に欧米で人気があることから、「ポーリッシュポタリー」という英語で親しまれてきたんだそう。スタンプを使った製造方法は、今や、なんと約700年以上の歴史を誇ります。
こちらは、ポーリッシュポタリーで最も歴史深く、大規模な製造元、Zaklady(ザクワディ社)のプレート。ぱっと目に入る印象が東欧の少女のような可愛らしさ。また、レトロな雰囲気を演出してくれますね。
出典: 小さなお花がもてなすお花畑が素敵ですね。ハンドメイドなので、1枚1枚少しずつ表情が異なります♪おもてなしの食卓にもぴったりで、何枚も揃えたくなるシリーズです。
出典: いかがでしたでしょうか。じっくりと絵皿に注目してみると、そのデザインや製造方法によって、新たな表情を発見できます。ぜひお気に入りの一枚を見つけて、リラックスタイムやおやつのひと時を楽しんでくださいね。
※本記事では、「色絵(いろえ)」は省いております(釉薬をかけて本焼きを終えた素地に絵付けして彩る、上絵の技法)。九谷焼に多くみられる技法なので、あわせてチェックしてみてくださいね。
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スタイリッシュでまっさらな無地の器もいいけれど、絵付けの器も素敵ですよね。中でも「花柄」のお皿は、⾷卓をぱっと華やかにしてくれるアイテム。お花ならではの可憐な品のよさを備えているので、ティータイムのスイーツや、⾷後のフルーツなど、リラックスしたいシーンにもぴったり♪
さて、そのような花柄の絵皿、どのような「絵付けの技法」で描かれているのか、ご存知でしょうか?