一年を通して活躍する「綿素材」
肌着やシャツ、カットソーなどの定番素材
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おそらく一番ポピュラーな繊維と言える「綿」。吸湿性と保温性があるので、肌着やシャツ、カットソーなど年間を通してよく着るアイテムに多く使用されている素材でもあります。
保温性の高さが愛される理由の一つ
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綿はワタの種子を包むために発達した繊維を加工した物です。日本で綿が素材として定着したのは江戸時代頃で、それまでは麻が庶民の着物の素材でした。綿は繊維の中に空洞があり、麻より保温性に優れるため栽培が始まると一気に全国に普及したそうです。
綿がシワになりやすいのは繊維の特性から
水分で繊維が膨らむ→脱水がシワの原因
綿に限らず麻などを含めた天然繊維は、洗濯のために水につけると水分を吸収し繊維が膨らんでしまいます。そうすると乾いたときのように整った位置に収まっていた繊維の状態が崩れ、脱水をかけて干すと繊維の変形が個体された状態で固まってしまう事に。これがシワのできる流れです。
熱と水分で繊維を元の状態に近づけるスチームアイロン
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スチームアイロンで服についたシワが取れるのは、熱と水蒸気によって乱れてしまった繊維の状態を元に近づけるためです。ただし、熱々のままでシワの形を作ってしまうと冷めるときに今度はその形に固まってしまうので、アイロンをかけて熱い状態の服はハンガーで吊るすor広げるなど、冷めるまで伸ばしておく必要があります。
シワ+縮みやすいのは繊維の中空構造が原因
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綿の吸水性と保温性は、繊維の中にある中空部分による物ですが、先ほども触れた通り洗濯をするとそこに大量の水分が取り込まれて膨らむ事で繊維の状態が乱れてシワになったり、繊維の目が詰まって縮んでしまう原因にもなります。繊維の持つメリットを作り出す部分が泣き所にもなってしまうわけですね。
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綿のシワ・縮み対策は「しぼりすぎない」事
洗濯ネットに入れて繊維の変形を軽減
綿の繊維は丈夫なので水をくぐる事自体には強いのですが、シワや縮みを軽減させるのには繊維の変形を和らげてあげる必要があります。バスクシャツやオックス素材など厚手の綿素材はシワや縮みが起きやすいので、洗濯する場合は一点ずつ洗濯ネットに入れて他の洗濯物と絡まないようにしましょう。
脱水は軽めに。可能なら「水のし」で干す
早く乾かすために脱水を長くするとシワがきつくなってアイロン掛けが大変になるので、脱水は軽めに。カッターシャツなどは状況が許せばほとんど脱水なしの水が滴る状態で干し、水分の重さで生地を伸ばす「水のし」がおすすめです。
毛羽立ち・退色の原因と対策
綿素材のおしゃれ着は風合いを保つ工夫が必要
綿は、インナーやソックス、タオルなど肌に近かったり汚れと触れたりしやすい用途で使われる事が多いので、しっかり汚れを落とすためにガンガン洗う対象になりがちです。
強めの洗濯でも長持ちする素材ですが、風合いが変わってくる事も。綿素材のおしゃれ着には注意が必要です。
濃い色の物が白っぽくなるのは繊維の表面のささくれが原因
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綿素材の濃い色の服の多くは、何度も洗濯すると白っぽくなってきます。これは「洗濯の摩擦で繊維の表面がささくれて毛羽立ち、光線の加減で白く見える」「しっかり染色された表面の繊維が削れて染まりの浅い内側の繊維が見えるようになった」などいくつかの要因が関わってきますが、共通しているのは「洗濯の摩擦によって繊維が摩耗」するダメージによる物です。
風合いを保ちたいアイテムは「おしゃれ着コース」で洗う
綿素材でもレースなどがついている繊細なアイテムは、おしゃれ着モードや手洗いするよう品質表示で指示されていますが、普段使いの洋服でもおろしてしばらくは通常モードの洗濯コースではなく、中性洗剤を使って「おしゃれ着コース」で洗うとシワが殆どつかず、おろしたての風合いが長持ちします。特に綿素材のワンピースは、おしゃれ着洗いにするとアイロンの手間が省け、着ている間のシワもつきにくいのでおすすめです。
綿素材と化繊の使い分けについて
乾燥が原因の肌荒れさんには「綿素材」がおすすめ
冬場に活躍する発熱素材のインナーは、皮膚の表面の汗と反応として熱を作り出す仕組みですが、発熱するためにどんどん汗を逃してしまうので、乾燥肌の人や肌の機能が弱い子供やお年寄りは避けた方が良い場合も。乾燥肌には綿素材のインナーがおすすめです。
「吸湿性」がデメリットになる場合は化繊と上手に使い分けて
汗かきで冬でも汗が止まらない事が多いような人は、綿素材だといつまでもインナーが汗で濡れたままで逆に体が冷えたり、夏場は不快な着心地になってしまうので、この場合は化学繊維主体の速乾素材が向いています。特にインナーの素材については一概に「天然素材だから優れている」「化学繊維の方が機能が高い」という風に分けられないので、ケースバイケースで使い分けるのがおすすめです。
伸縮性の低い綿素材をカバーする生地の選び方
綿素材は伸縮性はないが型崩れしにくい
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綿は伸縮性が低めです。特にシャツやバンダナに使われている生地のような「織った」布地(布帛 /「ふはく」と呼びます)はほとんど伸縮性がありません。代わりに「型くずれしにくい」というメリットがあります。
ニット(編み物)は構造で伸縮性がプラス
布帛はたくさんの縦糸に横糸を通して織りますが、ニットは一本の糸をループにして絡ませて作られます。わかりやすいのはセーターやカーディガンですが、インナー生地も極細の糸をループに編んだニット地の仲間です。伸縮性があって柔らかい一方、引っ張りに対して戻る力がそれほど強くないので布帛より型崩れが起こりやすい面があります。
「ポリウレタン」を少し加える事で伸縮性の弱さをカバー
デニムなど厚手の布帛なのに伸縮性がある物は、綿に5~10倍の伸縮性がある「ポリウレタン」という化学繊維がプラスされています。ポリウレタンの割合が高い物ほど伸縮性が強くなる傾向があるので、通販する際は品質表示をチェックすると着心地の柔らかさの目安になります。
フィット感重視なら綿主体の「ベア天竺」を選んでみる
お手入れで長持ちする綿素材。風合いを育てる楽しみも。
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綿は耐久性が高く、お手入れすれば長持ちする素材です。何度も水をくぐった後の綿素材のこなれた感じは天然素材ならでは。洗濯のときのひと手間や、体質や好みに合わせたアイテム選びなどをぜひ参考にしてみて下さい。
素敵な写真のご提供ありがとうございました。