絵画鑑賞の愉しみ方。そろそろ自己解釈をやめて、もう1歩先へ ―
でも、もし他人から「その作品、具体的にはどこが凄いの?」と問われたら―― あなたは答えることができますか?
今回はそんなシーンでも大いに役立つ、“絵画の鑑賞スキル”を養ってくれる美術の教本をご紹介します。
ポイントは、正しい知識と、見方を身につけること
でも、じっくり絵画を紐解いてみると…
✓構図やレイアウトに、黄金比のルールを見出せる
✓描かれているモチーフに、記号として意味や役割が与えられている
といったことなどに気づくことができ、より深く作品の魅力を味わうことができます。
また、作者の特色や時代背景などについて知識を身につけることも大切なことです。
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このようにお伝えすると“ちょっと小難しい”と感じてしまうかもしれませんが、専門知識を持つことで今まで以上に絵画鑑賞が楽しくなりますよ。
『名画の見方』を教えてくれる本
絵を見る技術 名画の構造を読み解く
構図、色、絵の具…いろいろな角度から絵画作品にアプローチ
絵の中に矢印や補助線を入れ、図式化されているので、初心者さんでも説明を視覚的に理解することができますよ。名画が様々な計算の上に成り立っていることがよく分かります。
絵の造形を見るポイントを押さえると、自分の好きな絵の造形も明確に。絵の構造に着目する見方に慣れると、視線の動かし方も変わってきますよ。
武器になる知的教養 西洋美術鑑賞
名画23作品の正しい見方を、東京藝大美術館館長が手ほどき
東京藝大美術館館長の著者が西洋美術に影響を与えたといわれる、代表的な23の作品について、「表現」と「史実」の面から読み解く方法を伝授する1冊。ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」、ムンクの「叫び」、ダリの「記憶の固執」など、多くの人が一度は目にしたことがある有名作品ばかりをピックアップしています。
それぞれの絵に用いられた技法や色彩、モチーフといった、「表現」にかかわるポイントと、その絵が描かれた時代の社会や思想的な背景といった「史実」にかかわるポイントを、2ステップとしてまとめ、解説。23作品について知ることで、ゆるくつながる、史実の流れも掴んでいくことができます。
巻末には、「美術館巡りの基本」も収録!事前に美術展のHPで情報を収集する、すべてを集中して見るのではなく「五点集中」で見る、といった美術館巡りが楽しくなる方法も教えてくれますよ。
知識ゼロからの西洋絵画入門
初心者向けの西洋絵画入門書に。巨匠34人の作品鑑賞のヒントを解説
メディアでもお馴染みの評論家・山田五郎さんが平たい言葉で分かりやすく、西洋絵画について教えてくれる一冊。ルネサンス期からモダンアートまで、34人の巨匠たちの作品と画家本人の人となりを解説しています。
それぞれの作品の時代背景を学んだあと、「図解で楽しむ」ページでは、見るべきポイントをぎゅっと絞ってピックアップ。モチーフやポーズなど、様々な視点から絵を楽しめるようになります。
また、「巨匠の履歴書」としてプロフィールやエピソード、得意なモチーフなどを山田さんらしく、ユニークに表現。ぱっとひと目で分かる履歴書形式なので、画家のことをより身近な存在として感じることができそうです。
名画のすごさが見える西洋絵画の鑑賞事典
西洋美術を代表する68作品の見どころを、作品の背景や作家のエピソードを交えて解説
西洋絵画を代表する68の作品を取り上げ、カラー写真で見どころポイントを紹介する1冊。美術鑑賞のコツを4つに絞り、どうやって絵を見ればいいのか、初心者さんにも直感的に分かるように解説。プロト・ルネサンスから20世紀絵画まで、有名絵画がたっぷり集められているんです。
それぞれの絵について見開きで、「ここがすごい」、「作品の背景」、「どんな画家?」とポイントが簡潔にまとめられています。作品解説の間には、画材の変遷や、画家たちの意外な素顔といったコラムもあり、飽きることなく読み進められますよ。
世界でいちばん素敵な西洋美術の教室
Q&A方式!気になってたけど聞きづらい“あるある”の疑問に答えてくれる
鮮やかな写真と分かりやすい解説で人気のビジュアル図鑑、「世界でいちばん素敵な教室シリーズ」の第10弾で、西洋美術の見方を教えてくれる1冊。
「古代ギリシアの彫刻はなぜ男性のヌードばかりなの?」「天井画はどうやって描かれたの?」というように、シンプルな質問と答えが並ぶという、ユニークなつくりになっています。
フルカラーで掲載図画も多く、解説も短くまとめられているので、初心者さんでもすらすらと読み進められます。素朴な疑問を紐解いていくうちに、西洋美術の背景にある世界観なども頭に入りますよ。
巨匠に教わる絵画の見かた
巨匠が、他の巨匠を語るユニークな解説本
美術史の流れを押さえながら、それぞれの時代に活躍した画家や美術史の基本的な事柄を、エピソードを交えて解説した1冊。
巨匠たちが、他の巨匠たちをどのように思っていたのか、画家たちの言葉で説明しています。巨匠たちの注目ポイントを知ることで、名画の見方が変わります。画家たちの言葉がどこで語られたものなのか、文献情報もついているので、興味を広げていくことも可能。ひとりの画家の代表的な作品をいくつか載せ、作品同士の対比も楽しめるようになっています。
『美術史』について理解が深まる本
チャートで読み解く美術史入門
ナカムラクニオ氏作成のチャートによって、画家の名前、作品、人脈が一目瞭然!
アートディレクターである著者が、チャートとイラストで綴る西洋と日本の美術史解説。画家の人生、人脈、作品の相関関係など、ざっくりと美術史の全体像が見えてくるユニークな1冊です。
チャートを使って、ひと目でつながりを見渡せると、同じ時代の画家の交友関係、ライバル関係など、人間らしい側面を理解することができますよね。
画家や絵画作品だけではなく、彫刻や土偶、古墳、土器などさまざまな美術作品に言及しているところも、他の本とはちょっぴり違うユニークな点。今まで興味のなかった作品にも関心が芽生えるかもしれません。
いちばん親切な 西洋美術史
300点のオールカラーの名作で、美術史の全体像をつかむ
エジプト・メソポタミアからルネサンス、バロック、世紀末美術、そして現代美術へとつながる美術史の全体像を眺められる1冊。300点もの名作の美しいカラー写真と共に、ひとつひとつ丁寧な解説を楽しむことができます。時代に影響を及ぼした聖堂、宮殿といった建物の写真も添えられ、理解がより深まりますよ。
見開きのページでひとつのテーマを解説。全体像をつかみながら、そのジャンルの代表作を鑑賞できます。美術館へ出かける前に、予習としてテーマとなる時代を読んでいくといいですね。
鑑賞のための西洋美術史入門
可愛いイラストで眺めるだけでも楽しい!ギリシャ美術から辿る、現代美術の系譜
ギリシャ美術から現代アートまで、それぞれの時代のポイントを押さえてボリューム満点に紹介した1冊。手描きのイラストや文字を多用し、可愛らしい造りになっています。難しい言葉や専門的な概念は、Q&Aで簡潔に説明。美術史の授業を楽しく受けているような気分になれますよ。
区分けできる時代の間には年表が入り、同時代の画家についても一目で分かるようになっています。重要なポイントには、吹き出しでコメントがあって、分かりやすさも◎。子供でも理解しやすい内容になっています。親子で美術史について、勉強してみてもいいですね。
カラー版日本美術史
「日本美術」はここを見る!古代~20世紀末まで、図版297点をカラーでまとめた完全版
古代から20世紀末までの日本の美術の流れを、297点の図版とともに見ていく解説書です。土器や仏像などもフルカラーで掲載されており、見やすさも抜群。当時の社会情勢や文化についても触れられています。
見開きごとに図版と年表が同時に見られるので、一目で理解でき、まるで教科書のよう。日本の美術が、幅広く発展していった様子がよく分かりますよ。
美術の『専門用語』がわかる本
絵でわかるアートのコトバ
基本的な「美術の言葉」から作品にアプローチする
美術館や画集などのキャプションでよく見かける「美術の言葉」を153種、丁寧に解説。西洋美術、日本美術、建築、色彩などジャンルに分けて説明しています。図解や作品例とともに編集されているので、分かりやすさもばっちり。「美術の言葉」が分かるだけで、作品についての理解がぐんと深まります。
B6判と小さい上、薄めの本なので、美術館に携帯しても◎。作品鑑賞が楽しくなりますよ。
名画の解読の鍵である『シンボル(象徴)』を説く本
名画の謎を解き明かす アトリビュート・シンボル図鑑
作品に込められたメッセージを読み解く
オールカラーの215点の名画とともに、さまざまなアトリビュート、シンボルを解説した1冊。
決められた人物とともに描かれるアトリビュート(持っている物)や、そのモノだけで意味を持つシンボル(象徴)。
薔薇や百合、鳩など、西洋絵画にはよく登場するモチーフにも、実は意味があり、名画にメッセージ性が込められているということが分かりますよ。
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あなたにとっての美術をより身近に
美術に対する知識と、正しい見方を身に着けると絵の理解度はぐっと高まります。今までなんとなく素敵だなと思って見ていた名画も構図や配色、社会的な意味合いなど、ポイントを明確にしてその素晴らしさに改めて気づくことができそうです。
今回ご紹介した本は、どれも眺めているだけでも美しく、気分が高まるものばかり。ぜひ、時間を見つけて本を開き、「絵画鑑賞」をより身近なものにしてみてくださいね。きっと「絵画鑑賞」への関心が高まって、もっともっと楽しくなること、間違いなしです!
美術史研究家の著者が名画をしっかりと「観察」して、その構造を知る方法を指南してくれる1冊。フォーカルポイント(絵画において重要な焦点)、線のバランス、配色、構図などを、ひとつひとつ丁寧に解説。そして、その解説に沿って、実際の絵画を例題に、絵の見方を練習していきます。