美術館が“対話”の場所になる。ワンランク上の《アート鑑賞》のすすめ

美術館が“対話”の場所になる。ワンランク上の《アート鑑賞》のすすめ

みなさんは、アート鑑賞にどのようなイメージをお持ちでしょうか。もしも、難しそうだとかアートの知識がないからという理由で美術館を訪れないとしたら、それはもったいないことかもしれません。雑誌やインターネットで見るのも良いけれど、実際に美術館を訪れて本物のアートの素晴らしさに触れてみませんか。お出かけの選択肢に美術館が加われば、世界がぐっと広がりますよね。美術の知識をもって”わかる”必要のない、アート鑑賞を心から楽しむ方法をご紹介します。2019年09月11日作成

カテゴリ:
アート・カルチャー
キーワード
アート絵画美術館マナー大人の休日
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アート鑑賞、こころの底から楽しめていますか

みなさんは、美術館によく行きますか?

いまや美術館は、アートに詳しくない人でも楽しめる、お出かけスポットの定番。美術館の企画も趣向を凝らしたユニークなものが増えてきていて、一人でも、家族・子供と一緒でも、気軽に足を運べる場所ですよね。

だからこそ、改めて意識していただきたいのが、「そのアート鑑賞、心の底から楽しめていますか?」ということ。
出典:unsplash.com

みなさんは、美術館によく行きますか?

いまや美術館は、アートに詳しくない人でも楽しめる、お出かけスポットの定番。美術館の企画も趣向を凝らしたユニークなものが増えてきていて、一人でも、家族・子供と一緒でも、気軽に足を運べる場所ですよね。

だからこそ、改めて意識していただきたいのが、「そのアート鑑賞、心の底から楽しめていますか?」ということ。

解説と作品、見比べてばかり・・?

大人の嗜みとして「アートが分かる人になりたい」と思いますよね。しかし、ときに展覧会では、「何を表現したいのか、全然分からない・・」という印象の作品に遭遇することも。

それも芸術鑑賞の楽しみですが、作品を理解しようと努めるあまり、解説と睨めっこして疲れてしまうことも・・・。
出典:unsplash.com

大人の嗜みとして「アートが分かる人になりたい」と思いますよね。しかし、ときに展覧会では、「何を表現したいのか、全然分からない・・」という印象の作品に遭遇することも。

それも芸術鑑賞の楽しみですが、作品を理解しようと努めるあまり、解説と睨めっこして疲れてしまうことも・・・。

今回は「作品をわかろう」とするのではなく、「作品と対話する」ことで、アートの世界が広がる――。ちょっと視点を変えて楽しむ、ワンランク上の鑑賞方法をご紹介します。

目次

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《はじめに》アート鑑賞の心構え

・「作品を正しく理解しなくちゃ」という気負いを、手放そう

展覧会でよく分からない作品に出会った時、楽しい気持ちは薄れて、解説を必死に読み込みたくなるもの。ですが、「作品を100%理解することは、とても困難なこと」だと認識して、ちょっと肩の力を抜いてみて。

「何を表現している作品なのか」という“正解”を求めるよりも、「この作家は、どんな意図でこの作品をつくろうとしたのかな」をなんとなく感じ取るほうが、有意義であったりしますよ。

作家自身が“正解”を持たずに制作し、“正解”は観客の解釈に委ねる・・という作品だってあるのです。
出典:www.photo-ac.com

展覧会でよく分からない作品に出会った時、楽しい気持ちは薄れて、解説を必死に読み込みたくなるもの。ですが、「作品を100%理解することは、とても困難なこと」だと認識して、ちょっと肩の力を抜いてみて。

「何を表現している作品なのか」という“正解”を求めるよりも、「この作家は、どんな意図でこの作品をつくろうとしたのかな」をなんとなく感じ取るほうが、有意義であったりしますよ。

作家自身が“正解”を持たずに制作し、“正解”は観客の解釈に委ねる・・という作品だってあるのです。

・展覧会へ、まったく知識ゼロでは行かないで

展覧会のチラシなどを見て、行ってみたい!という衝動を持つことは、とても素敵なこと。しかし、展示企画のメインである作家・アーティストについて知識ゼロで行くことは避けましょう。人生の転機とともに、作風の変化が見受けられたりするもの。恋多き芸術家のドラマが浮き彫りとなることも。

展覧会チラシの裏面(または展覧会の公式サイト)だけは、しっかりと読み込むことをおすすめします。
出典:

展覧会のチラシなどを見て、行ってみたい!という衝動を持つことは、とても素敵なこと。しかし、展示企画のメインである作家・アーティストについて知識ゼロで行くことは避けましょう。人生の転機とともに、作風の変化が見受けられたりするもの。恋多き芸術家のドラマが浮き彫りとなることも。

展覧会チラシの裏面(または展覧会の公式サイト)だけは、しっかりと読み込むことをおすすめします。

アート鑑賞がもっと楽しくなる5つの方法

1.まっさきに、タイトル・解説を見ないようにする

「作品を観る」→「タイトル(解説)のプレートを見る」→「作品を観る」の順に。
展示作品を見るとき、無意識のうちに「タイトル(解説)のプレートを見る」→「作品を観る」の順で目を移し、「ふんふん、なるほど」と答え合わせをするように鑑賞する癖がついていませんか。

解説やタイトルなどの先入観があると、そこから抱くイメージと作品が自分の中でつながらなかった場合に「わかりにくい」という印象を受けてしまいます。

その順を、「作品を観る」→「タイトル(解説)のプレートを見る」→「作品を観る」とするようにしましょう。その癖を意識的におさえこむだけでも、だいぶ鑑賞の醍醐味が変わります。
出典:unsplash.com

展示作品を見るとき、無意識のうちに「タイトル(解説)のプレートを見る」→「作品を観る」の順で目を移し、「ふんふん、なるほど」と答え合わせをするように鑑賞する癖がついていませんか。

解説やタイトルなどの先入観があると、そこから抱くイメージと作品が自分の中でつながらなかった場合に「わかりにくい」という印象を受けてしまいます。

その順を、「作品を観る」→「タイトル(解説)のプレートを見る」→「作品を観る」とするようにしましょう。その癖を意識的におさえこむだけでも、だいぶ鑑賞の醍醐味が変わります。

「こういうものですよ」という答えを最初に持ってから見るのではなく、自分で見て感じたそのままの気持ちを大切に鑑賞すると、自由な感想がどんどん出てくるのが感じられるでしょう。直感や感覚といった、自分の純粋な心の声を楽しむことができます。
出典:www.pexels.com

「こういうものですよ」という答えを最初に持ってから見るのではなく、自分で見て感じたそのままの気持ちを大切に鑑賞すると、自由な感想がどんどん出てくるのが感じられるでしょう。直感や感覚といった、自分の純粋な心の声を楽しむことができます。

音声ガイドの場合:「作品を観る」→「音声ガイド(解説)を聞きながら、作品を観る」の順に。
これは、音声ガイドにおいても同じこと。

ガイド番号の付いた作品前に立ったら、まっさきに「音声ガイド(解説)を聞きながら、作品を観る」ことをしたくなるものです。「作品を観る」→「音声ガイド(解説)を聞きながら、作品を観る」としてみましょう。
出典:unsplash.com

これは、音声ガイドにおいても同じこと。

ガイド番号の付いた作品前に立ったら、まっさきに「音声ガイド(解説)を聞きながら、作品を観る」ことをしたくなるものです。「作品を観る」→「音声ガイド(解説)を聞きながら、作品を観る」としてみましょう。

仕事のインスピレーションに繋がるメリット

ちなみに、そのように解説に頼らず作品を鑑賞するようにしていくと、突然ひらめきが生まれることも!

そのように気づきを楽しむことは、自分の創作意欲がかきたてられたり、ビジネスのインスピレーションになったり・・・。実際、ビジネスの成功者のなかには、アート鑑賞が趣味の方が多いというデータがありますよ。
出典:unsplash.com

ちなみに、そのように解説に頼らず作品を鑑賞するようにしていくと、突然ひらめきが生まれることも!

そのように気づきを楽しむことは、自分の創作意欲がかきたてられたり、ビジネスのインスピレーションになったり・・・。実際、ビジネスの成功者のなかには、アート鑑賞が趣味の方が多いというデータがありますよ。

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2.「対話型鑑賞(VTS)」を試してみよう

アートへの造詣が深まるだけでなく、対話を通して感受性も豊かに

今、世界で注目を集めている美術鑑賞メソッド「対話型鑑賞(*)」を実践してみませんか。これは、元ニューヨーク近代美術館教育部部長、フィリップ・ヤノウィンらが開発した美術教育カリキュラム。

実はこの「対話型鑑賞」、美術鑑賞メソッドと言っても、アートについて学び、知識を深めるための鑑賞法ではありません。
*英語では「ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ(Visual Thinking Strategies/通称 VTS)」と表記されます。
とにかく作品を「見る」ことに重きを置き、「これは何だろう?」と考えることを促す、作品の見方や気づきを深めていく鑑賞方法です。

自ら主体的に思考していく力が身につき、観察力、問題解決能力、コミュニケーション能力など、複合的な能力の向上が、アメリカの教育現場で実証されています。近年では日本のアート教育や、東京国立近代美術館といった名だたる美術館のアートツアーに、VTSが組み込まれています。
出典:www.pexels.com

とにかく作品を「見る」ことに重きを置き、「これは何だろう?」と考えることを促す、作品の見方や気づきを深めていく鑑賞方法です。

自ら主体的に思考していく力が身につき、観察力、問題解決能力、コミュニケーション能力など、複合的な能力の向上が、アメリカの教育現場で実証されています。近年では日本のアート教育や、東京国立近代美術館といった名だたる美術館のアートツアーに、VTSが組み込まれています。

対話型鑑賞を実践するための方法――― 「鑑賞対象とする作品の選び方」、「対話型鑑賞の手順」についてご紹介します。

・作品選びについて

「対話型鑑賞」の対象は、子供と一緒に見て語らい合えるような作品が適しています。

・ぱっと見て、内容が発見しやすいもの
・いろんな解釈ができそうなもの

・手順

実は、前述の“タイトル・解説を見ないようにする”というのが「対話型鑑賞」を実践するにあたって大切なこと。そして、おおむね10分くらいかけて、1つの作品をじっくり見ます。色々と考え、感想をもったり、自分なりの解釈をしてみましょう。

初心者さんに向けに、基本的な手順をわかりやすくご紹介します。
出典:unsplash.com

実は、前述の“タイトル・解説を見ないようにする”というのが「対話型鑑賞」を実践するにあたって大切なこと。そして、おおむね10分くらいかけて、1つの作品をじっくり見ます。色々と考え、感想をもったり、自分なりの解釈をしてみましょう。

初心者さんに向けに、基本的な手順をわかりやすくご紹介します。

<はじめに意識してほしいこと>
・どんな印象を受ける?

<対話型鑑賞のポイント>
・何が描いてある?
・何が起こっている?どんなストーリーがある?(自分はどこを見て、そう言っている?)
・他には、何の描写が気になる?
基本はここまで。自分自身に様々な問いを投げかけ、自分なりの解釈で自由に答えてみましょう。
美術館が“対話”の場所になる。ワンランク上の《アート鑑賞》のすすめ
出典:unsplash.com
大切なのは、誰かと一緒に「対話型鑑賞」を実践するなら、相手の声にも耳を傾け、相手の気づきからも対話を展開させていくこと。

また個人的な経験、記憶とリンクさせて、作品との出会いを求めてみる、というのもありですよ。解釈に正解というものはなく、捉え方は何通りもあるのです。

肩の力を抜いて、一緒に訪れた人と考えを交換するのが、「対話型鑑賞」のポイントです。
コンセプト|VTSJ Visual Thinking Strategy Japan by ACOP|京都造形芸術大学
「対話型鑑賞」の考えの参考となる、VTSJ Visual Thinking Strategy Japanの公式ページです。
対話型鑑賞について
こちらの足利市立美術館のページでも、「対話型鑑賞」について分かりやすく解説されています。

こちらの作品で「対話型鑑賞」を実践してみよう

例えば、この絵をみて、どのような作品だと思いますか?どのようなストーリーを思い浮かべますか?

この作品が生まれた実際の背景とはまた違った解釈が、たくさん生まれると思います。


ですが、正解である必要などありません。このように、知識を使わずに鑑賞して自分なりの考えを持つのが「対話型鑑賞」なのです。こんど美術館を訪れた際にはぜひ意識して試してみてください。
出典:

例えば、この絵をみて、どのような作品だと思いますか?どのようなストーリーを思い浮かべますか?

この作品が生まれた実際の背景とはまた違った解釈が、たくさん生まれると思います。


ですが、正解である必要などありません。このように、知識を使わずに鑑賞して自分なりの考えを持つのが「対話型鑑賞」なのです。こんど美術館を訪れた際にはぜひ意識して試してみてください。

画像/アンドリュー・ワイエス(1917-2009年)「クリスティーナの世界」 1948年 ニューヨーク近代美術館蔵

アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」 KIRIN~美の巨人たち~
ゆっくり「クリスティーナの世界」 について考えを巡らしたあとに、こちらのサイトもご覧ください。

3.「あの作品、気になる!」時には順路より、心の声を優先して

美術館にあるたくさんの作品。ひとつひとつをじっくり見て考えを巡らせて・・・という気分の日もあれば、そうすることがちょっと疲れてしまう日もありますよね。

そんな時は「必ず全部の作品をしっかり見なければ」と気負わずに、作品の前をゆっくりと歩いてみましょう。

そして、「あ、これ好き!」と、ふと足を止める作品に出会えたのなら、これこそ、絶好の機会。
出典:www.pexels.com

美術館にあるたくさんの作品。ひとつひとつをじっくり見て考えを巡らせて・・・という気分の日もあれば、そうすることがちょっと疲れてしまう日もありますよね。

そんな時は「必ず全部の作品をしっかり見なければ」と気負わずに、作品の前をゆっくりと歩いてみましょう。

そして、「あ、これ好き!」と、ふと足を止める作品に出会えたのなら、これこそ、絶好の機会。

「これ好き!」という作品は、前知識・先入観が伴っていない、純粋な心で選ばれた作品。

会場をゆっくり歩いて、たくさんの展示の中から「これ好き!」のアンテナが働く作品を複数見つけられたなら・・・それらは、あなたの“好みの傾向”“美意識”が反映されたもの。

あとで自分がどの作品の前で止まったかを振り返ると、自分の好みが客観的にわかって新しい発見になるかもしれません。
出典:unsplash.com

「これ好き!」という作品は、前知識・先入観が伴っていない、純粋な心で選ばれた作品。

会場をゆっくり歩いて、たくさんの展示の中から「これ好き!」のアンテナが働く作品を複数見つけられたなら・・・それらは、あなたの“好みの傾向”“美意識”が反映されたもの。

あとで自分がどの作品の前で止まったかを振り返ると、自分の好みが客観的にわかって新しい発見になるかもしれません。

4.途中でベンチに座り、作品を一歩引いて観てみる

展示室にあるベンチに座って、一息ついたことはありますか?

ベンチって休憩場所だけでなく・・鑑賞ポイントにもなるんですよ。ベンチから複数の作品を俯瞰して鑑賞してみると、また異なる存在感を放つ作品に出会えるもの。また、展示にあわせて会場全体が演出されているので、会場全体を眺めるのも楽しいものですよ。

少し遠くから眺めて「あれいいかも」と思った作品に歩み寄ってじっくり鑑賞したり、作品を鑑賞している人を眺めてみたり。その場の雰囲気にひたってみましょう。
出典:unsplash.com

展示室にあるベンチに座って、一息ついたことはありますか?

ベンチって休憩場所だけでなく・・鑑賞ポイントにもなるんですよ。ベンチから複数の作品を俯瞰して鑑賞してみると、また異なる存在感を放つ作品に出会えるもの。また、展示にあわせて会場全体が演出されているので、会場全体を眺めるのも楽しいものですよ。

少し遠くから眺めて「あれいいかも」と思った作品に歩み寄ってじっくり鑑賞したり、作品を鑑賞している人を眺めてみたり。その場の雰囲気にひたってみましょう。

5.美術館全体を味わう

美術館には、建築が素晴らしかったり庭が素敵だったり、展示だけでなく美術館そのものを楽しめるところがたくさんあります。歴史ある建物や著名な建築家が設計した建物を、中に入って隅々まで見ることができるのも美術館の嬉しい特典です。

視点を変えて、展示よりも「この美術館がみたい」という観点で訪れる美術館を決めると、それまで自分では目を向けなかったような展示に出会うかもしれません。心にも、頭にも、体にも、新しい発見と刺激があるのがアートの素敵なところです。
出典:

美術館には、建築が素晴らしかったり庭が素敵だったり、展示だけでなく美術館そのものを楽しめるところがたくさんあります。歴史ある建物や著名な建築家が設計した建物を、中に入って隅々まで見ることができるのも美術館の嬉しい特典です。

視点を変えて、展示よりも「この美術館がみたい」という観点で訪れる美術館を決めると、それまで自分では目を向けなかったような展示に出会うかもしれません。心にも、頭にも、体にも、新しい発見と刺激があるのがアートの素敵なところです。

画像/建築家・渡辺仁の設計による 原美術館(品川)。もとは実業家・原邦造の私邸。2020年12月に閉館を迎えることが決まっています。

心を軽くして、アート鑑賞に出かけてみよう

今までとは少し違ったアプローチでのアート鑑賞、なんだか楽しみになってきませんか。

日本中・世界中の美術館やギャラリーの展示スケジュールをみたり、SNSなどで行ってみたいと思う美術館を探してみたり。直感で惹かれたところに、ぜひ足を運んでみてください。
出典:unsplash.com

今までとは少し違ったアプローチでのアート鑑賞、なんだか楽しみになってきませんか。

日本中・世界中の美術館やギャラリーの展示スケジュールをみたり、SNSなどで行ってみたいと思う美術館を探してみたり。直感で惹かれたところに、ぜひ足を運んでみてください。

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