アート鑑賞、こころの底から楽しめていますか
解説と作品、見比べてばかり・・?
大人の嗜みとして「アートが分かる人になりたい」と思いますよね。しかし、ときに展覧会では、「何を表現したいのか、全然分からない・・」という印象の作品に遭遇することも。
それも芸術鑑賞の楽しみですが、作品を理解しようと努めるあまり、解説と睨めっこして疲れてしまうことも・・・。
《はじめに》アート鑑賞の心構え
・「作品を正しく理解しなくちゃ」という気負いを、手放そう
展覧会でよく分からない作品に出会った時、楽しい気持ちは薄れて、解説を必死に読み込みたくなるもの。ですが、「作品を100%理解することは、とても困難なこと」だと認識して、ちょっと肩の力を抜いてみて。
「何を表現している作品なのか」という“正解”を求めるよりも、「この作家は、どんな意図でこの作品をつくろうとしたのかな」をなんとなく感じ取るほうが、有意義であったりしますよ。
作家自身が“正解”を持たずに制作し、“正解”は観客の解釈に委ねる・・という作品だってあるのです。
・展覧会へ、まったく知識ゼロでは行かないで
アート鑑賞がもっと楽しくなる5つの方法
1.まっさきに、タイトル・解説を見ないようにする
展示作品を見るとき、無意識のうちに「タイトル(解説)のプレートを見る」→「作品を観る」の順で目を移し、「ふんふん、なるほど」と答え合わせをするように鑑賞する癖がついていませんか。
解説やタイトルなどの先入観があると、そこから抱くイメージと作品が自分の中でつながらなかった場合に「わかりにくい」という印象を受けてしまいます。
その順を、「作品を観る」→「タイトル(解説)のプレートを見る」→「作品を観る」とするようにしましょう。その癖を意識的におさえこむだけでも、だいぶ鑑賞の醍醐味が変わります。
「こういうものですよ」という答えを最初に持ってから見るのではなく、自分で見て感じたそのままの気持ちを大切に鑑賞すると、自由な感想がどんどん出てくるのが感じられるでしょう。直感や感覚といった、自分の純粋な心の声を楽しむことができます。
これは、音声ガイドにおいても同じこと。
ガイド番号の付いた作品前に立ったら、まっさきに「音声ガイド(解説)を聞きながら、作品を観る」ことをしたくなるものです。「作品を観る」→「音声ガイド(解説)を聞きながら、作品を観る」としてみましょう。
仕事のインスピレーションに繋がるメリット
ちなみに、そのように解説に頼らず作品を鑑賞するようにしていくと、突然ひらめきが生まれることも!
そのように気づきを楽しむことは、自分の創作意欲がかきたてられたり、ビジネスのインスピレーションになったり・・・。実際、ビジネスの成功者のなかには、アート鑑賞が趣味の方が多いというデータがありますよ。
2.「対話型鑑賞(VTS)」を試してみよう
アートへの造詣が深まるだけでなく、対話を通して感受性も豊かに
実はこの「対話型鑑賞」、美術鑑賞メソッドと言っても、アートについて学び、知識を深めるための鑑賞法ではありません。
とにかく作品を「見る」ことに重きを置き、「これは何だろう?」と考えることを促す、作品の見方や気づきを深めていく鑑賞方法です。
自ら主体的に思考していく力が身につき、観察力、問題解決能力、コミュニケーション能力など、複合的な能力の向上が、アメリカの教育現場で実証されています。近年では日本のアート教育や、東京国立近代美術館といった名だたる美術館のアートツアーに、VTSが組み込まれています。
・作品選びについて
・ぱっと見て、内容が発見しやすいもの
・いろんな解釈ができそうなもの
・手順
実は、前述の“タイトル・解説を見ないようにする”というのが「対話型鑑賞」を実践するにあたって大切なこと。そして、おおむね10分くらいかけて、1つの作品をじっくり見ます。色々と考え、感想をもったり、自分なりの解釈をしてみましょう。
初心者さんに向けに、基本的な手順をわかりやすくご紹介します。
・どんな印象を受ける?
<対話型鑑賞のポイント>
・何が描いてある?
・何が起こっている?どんなストーリーがある?(自分はどこを見て、そう言っている?)
・他には、何の描写が気になる?
また個人的な経験、記憶とリンクさせて、作品との出会いを求めてみる、というのもありですよ。解釈に正解というものはなく、捉え方は何通りもあるのです。
肩の力を抜いて、一緒に訪れた人と考えを交換するのが、「対話型鑑賞」のポイントです。
こちらの作品で「対話型鑑賞」を実践してみよう
3.「あの作品、気になる!」時には順路より、心の声を優先して
美術館にあるたくさんの作品。ひとつひとつをじっくり見て考えを巡らせて・・・という気分の日もあれば、そうすることがちょっと疲れてしまう日もありますよね。
そんな時は「必ず全部の作品をしっかり見なければ」と気負わずに、作品の前をゆっくりと歩いてみましょう。
そして、「あ、これ好き!」と、ふと足を止める作品に出会えたのなら、これこそ、絶好の機会。
「これ好き!」という作品は、前知識・先入観が伴っていない、純粋な心で選ばれた作品。
会場をゆっくり歩いて、たくさんの展示の中から「これ好き!」のアンテナが働く作品を複数見つけられたなら・・・それらは、あなたの“好みの傾向”“美意識”が反映されたもの。
あとで自分がどの作品の前で止まったかを振り返ると、自分の好みが客観的にわかって新しい発見になるかもしれません。
4.途中でベンチに座り、作品を一歩引いて観てみる
展示室にあるベンチに座って、一息ついたことはありますか?
ベンチって休憩場所だけでなく・・鑑賞ポイントにもなるんですよ。ベンチから複数の作品を俯瞰して鑑賞してみると、また異なる存在感を放つ作品に出会えるもの。また、展示にあわせて会場全体が演出されているので、会場全体を眺めるのも楽しいものですよ。
少し遠くから眺めて「あれいいかも」と思った作品に歩み寄ってじっくり鑑賞したり、作品を鑑賞している人を眺めてみたり。その場の雰囲気にひたってみましょう。
5.美術館全体を味わう
心を軽くして、アート鑑賞に出かけてみよう
今までとは少し違ったアプローチでのアート鑑賞、なんだか楽しみになってきませんか。
日本中・世界中の美術館やギャラリーの展示スケジュールをみたり、SNSなどで行ってみたいと思う美術館を探してみたり。直感で惹かれたところに、ぜひ足を運んでみてください。
みなさんは、美術館によく行きますか?
いまや美術館は、アートに詳しくない人でも楽しめる、お出かけスポットの定番。美術館の企画も趣向を凝らしたユニークなものが増えてきていて、一人でも、家族・子供と一緒でも、気軽に足を運べる場所ですよね。
だからこそ、改めて意識していただきたいのが、「そのアート鑑賞、心の底から楽しめていますか?」ということ。