ファンタジー×軽妙な語り口が絶妙。森見 登美彦の作品世界へ
また、京都を舞台にした作品も多く、小説がきっかけで京都旅にハマってしまうファンもいるほど。非現実的なお話でも実在する京都の土地が出てくると、妄想がぐっと膨らんでしまいます。
今回は、軽妙なファンタジーに浸れる森見登美彦のおすすめ作品を5つご紹介。
明るくドタバタなストーリーが楽しい!おさえておきたい定番作品
1.夜は短し歩けよ乙女
京都の大学生になりたい!ハイカラな青春に浸る一冊
京都の大学に通う「先輩」は、同じサークルにいる後輩の「黒髪の乙女」に心を奪われている。しかし、彼がいくら乙女の行く先を追っても、なかなか二人は巡りあえず……。それどころか周囲の個性的な人々によって、おかしなトラブルに巻き込まれていく。マイペースな乙女とちょっぴり残念な先輩は、無事に出会って恋仲になれるのか。
偽電気ブランの描写には、お酒好きでなくとも「いったいどんな味がするんだろう?」と妄想せずにはいられません。
《もっと作品世界を楽しむためのアドバイス》
電気ブラン
2.四畳半神話大系
もし〇〇だったら…冴えない主人公を応援したくなるパラレルワールドの世界
残念な男子大学生の「もしも」を描いた短編集。最後まで読むと、爽快な気分になれる青春ストーリーです。
バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。できれば1回生に戻ってやり直したい!4畳半・風呂なしアパートに住んでいる大学三回生の「私」が、妄想のキャンパスライフを繰り広げるという、パラレルワールド(並行世界)設定のこれまでない青春SFです。
「夜は短し歩けよ乙女」と同様、こちらも京都が舞台で、ノスタルジックな雰囲気満点。
大学3回生である主人公の「私」は、社交性も乏しく地味な学生生活を送っている。「薔薇色のキャンパスライフ」に憧れるも、悪友「小津」に振り回され、愛しの乙女「明石さん」も振り向いてくれない。
もちろん、学業もイマイチ。そんな彼は「もし入学後にあのサークルに入っていたら、入っていなかったら…」と1回生の自分に想いを馳せて、4つの並行世界を巡る。
実は本作、森見登美彦作品で初めて映像化された作品。2010年に放送されたTVアニメ版は、「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門」で大賞を受賞し、話題になりました。
それもそのはず、監督を務めたのは、実験的なアニメーションで絶大な人気を誇る湯浅政明。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのテーマソングも、作品世界とぴったりです。悪友の小津には振り回される「私」が、とてもとてもユーモラスに描かれていますよ。
動画配信サービスでも視聴可能ですので、まず、こちらを見てみるのもオススメです。
《もっと作品世界を楽しむためのアドバイス》
『四畳半神話大系』と上田誠の戯曲『サマータイムマシン・ブルース』のコラボ作品
そして、この作品は2020年7月に、戯曲「サマータイムマシン・ブルース」と合体した「四畳半タイムマシンブルース」として登場し、新たな展開を見せました。
「四畳半の夏」を切り取った物語は、これまた軽快でワクワクします。
小説家の森見登美彦さんと劇作家の上田誠さんが作り上げた文学の世界に、どっぷりと浸ってみてはいかがでしょう。
3.有頂天家族
風変わりだけど憎めない家族になんだかほっこり。タヌキのおはなし
なんと本作は、狸が主人公。京都に暮らす「狸」「天狗」「人間」の生活をのぞき見ることができる1冊です。
それぞれの人物が巻き起こす大騒動にはハラハラしつつも、個性豊かな狸の家族に心温まります。
主人公で狸の「下鴨矢三郎」は、下鴨家の三男。亡き父の言葉に従い、さまざまな姿に化けて人間界での生活を楽しんでいる。矢三郎には2人の兄と1人の弟がおり、それぞれが個性的な性格。
下鴨家と対立する「夷川家」や天狗の「赤玉先生」、人間である「弁天」との間で巻き起こるトラブルに翻弄される一家の日常を描く。
京都の名所巡りができる1冊として、有頂天家族を手元に置いておくのもアリかもしれませんね♪
2013年にテレビアニメ化。2017年には続編として「有頂天家族2」が放映されました。あわせて見てみても、楽しめますよ◎
唐突にやってくる不自然さが心地よい大人向け作品
4.夜行
怖いけど何度でも読みたくなる!ひとりの女性を巡る短編ミステリー
2017年には、本屋大賞にもノミネートされて話題になった一冊。怪談ともミステリーとも取れる不思議なお話に、気がついたら引き込まれてしまうかも。いつもの森見作品とはちょっとだけ違う、ピリッとした短編集です。
同じ英会話教室に通う男女6人は、ある日鞍馬の火祭を見に出かけた。そこで、仲間の一人「長谷川」という女性が失踪してしまう。誰も彼女の消息をつかめないまま、それから10年後の世界へ。「大橋」が呼びかけて、残りの5人は鞍馬で再会することになったが、どの人物も10年の間に「長谷川」と版画「夜行」に関わっていて……。
各登場人物の視点で、それぞれが体験した奇妙なできごとが語られます。
<夜行で登場する地域>
・尾道(広島県)
・奥飛騨(岐阜県)
・津軽(青森県)
・天竜峡(長野県)
・鞍馬(京都府)
5.宵山万華鏡
奇妙な短編集。和風で幻想的な世界に自分も連れて行かれそう…
祇園祭の宵山を舞台にした短編集。「これぞ森見登美彦さんの世界!」を全部詰め込んだような、奥深い京都でのお話が描かれています。読むたびに発見がありそうな作品です。
祇園祭の京都は、人々も楽しそう。しかし、“とある人”の世界を切り取ってのぞいてみると、そこでは不思議なできごとが……。
《もっと作品世界を楽しむためのアドバイス》
京都の風景を想起させるような音と一緒に、読書してみよう
日常なのに非現実的。森見登美彦の作品に触れてみませんか
あなたもこの機会に「森見ワールド」に踏み込んで、独特な世界を味わってみませんか?ぜひ不思議な感覚を体感してみてくださいね。
まずは、森見登美彦といえばコレ!な1冊。アニメ映画や舞台にもなり、あちこちの書店フェアでよく展開されている人気作品です。
京都を舞台に繰り広げられる淡いラブストーリーは、とっても和風モダンな雰囲気でおしゃれ。