SF小説って難しい?
SF小説の選び方
SFと一言にいっても、扱うテーマは、宇宙、科学技術、近未来など多岐にわたります。そのため内容をよく知らないまま読みはじめると、「思っていたのと違う!」なんてことも。あなたがSFと聞いてイメージするものに近いテーマを選ぶと、楽しく読み進めることができるはず♪
まずはここから…「ショートショート&短編集」
ボッコちゃん
星 新一 / 新潮文庫
日本のSF作家の第一人者、星新一のショートショート集。作者みずからが選んだ50作品が一冊にまとめられています。
表題作の主人公ボッコちゃんは、バーで働く人気の美人店員。ボッコちゃん目当てに、男性客が絶えません。しかし、彼女には大きな秘密があって…。
くすっと笑えて、ちょっぴりブラック。けれど読み終わったあとには、じっくり考えたくなってしまう。そんな作品を50本集めたショートショート集です。どれも数ページで完結するお話ばかりで、すきま時間にさくさく読めますよ。やさしい文章なので、お子さんと一緒に読んでも◎
わたしたちが光の速さで進めないなら
キム・チョヨプ(訳 カン・バンファ、ユン・ジヨン)/ 早川書房
廃止される予定の宇宙ステーションで、船をひたすら待つ一人の老婆。彼女は家族がいる星へ帰る船を、一人待ち続けているのだという…。表題作『わたしたちが光の速さで進めないなら』を含む、SF短篇7作。
コールドスリープや異星人とのファーストコンタクトなど、古典的なSFテーマを現代風にアレンジしたSF小説です。「生きる」ことや「愛する」ことの大切さを思い出させてくれる、温かくてちょっぴり切ないストーリー。SF好きの人にはもちろん、SFははじめてという人にもおすすめです!
「宇宙」をテーマにしたSF小説
火星の人
アンディ・ウィアー(訳 小野田 和子)/ ハヤカワ文庫SF
火星でのミッション中に砂嵐に巻き込まれ、不運にも一人、火星に取り残されたマーク・ワトニー。彼は絶体絶命ともいえる状況の中で、限られた食料や物資をもとに決死のサバイバルをはじめます。次の探査隊が来るのは4年後、果たして彼はたった一人で生き抜くことができるのでしょうか?
映画『オデッセイ』の原作で、火星を舞台にしたサバイバルSF小説です。過酷な状況にもかかわらず、いつでも前向きに物事を考える主人公に勇気をもらえます。彼のユーモラスなキャラクターが立ち、ラストまで楽しく読み通せる一冊に。
ソラリス
スタニスワフ・レム(訳 沼野 充義)/ ハヤカワ文庫SF
意思を持った海に表面を覆われているという、惑星「ソラリス」。その謎を解き明かすため、心理学者のケルヴィンが宇宙ステーションに派遣されます。そこで彼が見たのは変わり果てたかつての仲間たちでした。彼らに一体何が……そしてケルヴィンもまた「海の意思」に囚われていきます。
人間以外の理性とのコンタクトをテーマにしたSF小説です。惑星ソラリスのある世界がしっかりつくり込まれ、読むほどにその世界に引き込まれていきます。もし、思ってもいないようなカタチの未知の知性と遭遇したら…と考えずにはいられません。
「近未来」をテーマにしたSF小説
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック(訳 浅倉 久志)/ ハヤカワ文庫 SF
第三次大戦後、地球は放射能灰に汚染され、人類の多くは植民惑星に移住しました。主人公リック・デッカードは地球に残された数少ない人類の一人。賞金稼ぎとして、人間になりすましているアンドロイドを排除しています。あるとき火星から地球へ8人のアンドロイドが逃亡してきて、リックは彼らを追うことに。
映画『ブレードランナー』の原作でもある小説。近未来的の地球が舞台で、高い知能をもつアンドロイドや空飛ぶ車が登場します。この作品のテーマは、アンドロイドと人間の違いはどこにあるのか?ということ。人間らしさとは、という哲学的なテーマにも繋がり、読みごたえも十分。テンポよく展開がすすみ、ラストまで目が離せません!
一九八四年
ジョージ・オーウェル(訳 高橋 和久)/ 早川書房
舞台はビッグ・ブラザー率いる党が支配する、独裁的な監視社会。真理省に勤めるウィンストン・スミスの仕事は、歴史の改竄をしていくことです。屈従を強いる体制に不満を抱いていたウィンストンは、あるときジュリアという美しい女性と恋に落ちます。やがて彼は反政府地下活動に惹かれるようになり…。
1949年に発表された本作は、悪夢のような架空の社会を描いた不朽のSF小説。自由な発言や行動だけでなく、思考までもが厳しく制限されている社会は、読んでいるだけでも息が詰まるよう。しっかりつくり込まれた設定で世界観がイメージしやすく、SF初心者の人にも入り込みやすい作品です。
SF小説にも短編・長編があるので、ストーリーの長さから選ぶのも一つの方法です。まとまった読書時間がとれない人でも、短編ならすきま時間に気軽に読めますよ。
ふだんから本を読む人や、読み応えのある本を好む人は、長編がおすすめです。読めば読むほど作品の世界に引き込まれ、濃密な読書体験ができます。