美術館が100倍面白くなる!初心者さんへ贈る「現代アート」の楽しみ方

美術館が100倍面白くなる!初心者さんへ贈る「現代アート」の楽しみ方

「現代アート」と聞いて、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか。「説明を聞いてみるけど難しくて」「見てもよくわからなかった」…そんな印象を持つ方も多いかもしれません。実は、それは多くの人が抱くもの。難しいのは当たり前で、そのために現代アートを避ける必要はないんです。そもそも現代アートはなぜ難しいの?という疑問にお答えしながら、具体的な楽しみ方の一例までご紹介します。2020年09月11日作成

カテゴリ:
アート・カルチャー
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「現代アートってよくわからない…」それでいいんです。

美術館が100倍面白くなる!初心者さんへ贈る「現代アート」の楽しみ方
出典:unsplash.com
何かが脈絡なく組み合わせられたオブジェに、暗い展示室で流れ続ける映像、落書きのような絵画…「とても意味があるようには思えない」「リサイクル?」なんて考えてしまうものばかりの、現代アート。実は、本当に意味がないこともあれば、実際にリサイクルのために作られた可能性もある、いわば「なんでもあり」が現代アートなんです。なんでもありなら、分からないのも当然というもの。しかしその「分からない」「なぜ?」が、現代アートを知るための第一歩――むしろゴールに近いところまで来ている証拠です。

目次

現代アートがわかりにくい3つの理由

①伝えたいことをありのまま表現していない

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作品を見る時、私たちは「この作品は何のために作られたんだろう」「その意味は?」と考えます。肖像画であれば、その人の姿かたちを残し権威を示すため、宗教画であれば聖書のワンシーンを伝えるため、と想像するのは難しくありませんよね。しかし現代アートでは、目で見える範囲のものだけではとても想像することはできません。それが現代アートの難しさの一つになっているのですが、いったいどうしてこれほど複雑になってしまったのでしょうか。
それを知るために、まずは美術の歴史を簡単になぞることから始めましょう。現代アート以前のアートというと、肖像画や宗教画などが思い浮かぶのではないでしょうか。そうしたアートは、王様の姿や聖書のワンシーンを分かりやすく伝えるために、主に王様や教会が画家に依頼して描かれるものでした。「実際に描かれたもの」に対して、「表現したいこと」が一致していたので、人は描かれているものを見るだけで何を示しているかすぐに理解できたのです。
出典:unsplash.com

それを知るために、まずは美術の歴史を簡単になぞることから始めましょう。現代アート以前のアートというと、肖像画や宗教画などが思い浮かぶのではないでしょうか。そうしたアートは、王様の姿や聖書のワンシーンを分かりやすく伝えるために、主に王様や教会が画家に依頼して描かれるものでした。「実際に描かれたもの」に対して、「表現したいこと」が一致していたので、人は描かれているものを見るだけで何を示しているかすぐに理解できたのです。

しかし時代が下るにつれ、「印象派」や「キュビズム」と呼ばれる画家や作品が登場します。彼らは目の前にあるものを写真のようにありのまま描くのではなく、伝統的なルールを無視し、自分で見たものをあくまで主観的に、自分の感情や考えを取り入れて表現しました。自分の感情や考えには、描ける姿かたちもなければ、多くの人が共有しているイメージなどもないので、ありのまま表現することはできません。現代アートもこの流れの先にあるもので、表現したいことがそのまま描かれていないからこそ、分かりにくいんですね。
出典:unsplash.com

しかし時代が下るにつれ、「印象派」や「キュビズム」と呼ばれる画家や作品が登場します。彼らは目の前にあるものを写真のようにありのまま描くのではなく、伝統的なルールを無視し、自分で見たものをあくまで主観的に、自分の感情や考えを取り入れて表現しました。自分の感情や考えには、描ける姿かたちもなければ、多くの人が共有しているイメージなどもないので、ありのまま表現することはできません。現代アートもこの流れの先にあるもので、表現したいことがそのまま描かれていないからこそ、分かりにくいんですね。

②現代アートは、作品のコンセプトを考えるもの

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印象派やキュビズムの後、現代アートにつながる新しい流れが登場します。”現代アートの父”とも呼ばれる、マルセル・デュシャンというアーティストの作品『泉(1917年)』から考えてみましょう。
どんな作品だったかというと、男性用の便器を横向きにし、「R.Mutt」というサインと年数を書いて、『泉』というタイトルを付けただけ、というもの。「それでアートなの?」と思われたかもしれませんが、当時の人も多くがそう思ったに違いありません。『泉』を作品として送られたギャラリーは、出品を許可しませんでした。しかし現在では、デュシャンはこの作品で「そもそも芸術とは何か」という問いを問いかけ、作品を展示するギャラリーという制度に一石を投じたとして高い評価を得ています。
出典:unsplash.com

どんな作品だったかというと、男性用の便器を横向きにし、「R.Mutt」というサインと年数を書いて、『泉』というタイトルを付けただけ、というもの。「それでアートなの?」と思われたかもしれませんが、当時の人も多くがそう思ったに違いありません。『泉』を作品として送られたギャラリーは、出品を許可しませんでした。しかし現在では、デュシャンはこの作品で「そもそも芸術とは何か」という問いを問いかけ、作品を展示するギャラリーという制度に一石を投じたとして高い評価を得ています。

デュシャンは、自分の感情や考えを取り入れて作品を描くことからもう一段階進んで、表現したい自分の感情や考えそのもの、つまりコンセプト自体を作品にしました。これが現代アートと呼ばれているものです。作品の本体は展示されている何かではなく、そこに込められたコンセプトそのものになったので、現代アートでは見る人自身に考えてもらい、コンセプトを理解してもらうことが欠かせません。逆に言えば、作品を見て「分からないなあ」「これは何だろう」と何かを考えた時点で、もうあなたはしっかりと現代アートを鑑賞し始めているんです。
出典:unsplash.com

デュシャンは、自分の感情や考えを取り入れて作品を描くことからもう一段階進んで、表現したい自分の感情や考えそのもの、つまりコンセプト自体を作品にしました。これが現代アートと呼ばれているものです。作品の本体は展示されている何かではなく、そこに込められたコンセプトそのものになったので、現代アートでは見る人自身に考えてもらい、コンセプトを理解してもらうことが欠かせません。逆に言えば、作品を見て「分からないなあ」「これは何だろう」と何かを考えた時点で、もうあなたはしっかりと現代アートを鑑賞し始めているんです。

③これまでにない新しいものがどんどん登場する

コンセプトがあると言われても、現代アートと呼ばれている作品は、コンセプトの込め方も表現の方法もバラバラ。「どうやって読み取るの?」とますます分からなくなってしまいますよね。この統一感のなさも、コンセプトを作品にする現代アートだからこそ生まれるものです。
誰かの意見やアイディアが注目を浴びる時、それはこれまでになかった新しいものであったり、みんななんとなく考えていたけれど、誰も提案したことがなかったものであったりしますよね。コンセプトを作品にする現代アートでも同様で、デュシャンの『泉』のように新しいもの、これまでにないものが話題になります。他の誰かの作品への応答や、社会的な出来事への反発、身近な物事への気づき…新しい出来事が起これば、新しいコンセプトが生まれ、新しい作品が生まれていきます。
出典:unsplash.com

誰かの意見やアイディアが注目を浴びる時、それはこれまでになかった新しいものであったり、みんななんとなく考えていたけれど、誰も提案したことがなかったものであったりしますよね。コンセプトを作品にする現代アートでも同様で、デュシャンの『泉』のように新しいもの、これまでにないものが話題になります。他の誰かの作品への応答や、社会的な出来事への反発、身近な物事への気づき…新しい出来事が起これば、新しいコンセプトが生まれ、新しい作品が生まれていきます。

新しさは、コンセプトだけに求められるものではありません。表現の方法もまた、コンセプトを反映するものとして作品を理解するためのヒントになります。絵画のように筆と絵具で表現するもよし、既製品を利用するもよし、新しく開発された技術を使うもよし。作品によっては音や映像、言葉、さらには空間そのものまで、作品として捉えることができます。
出典:unsplash.com

新しさは、コンセプトだけに求められるものではありません。表現の方法もまた、コンセプトを反映するものとして作品を理解するためのヒントになります。絵画のように筆と絵具で表現するもよし、既製品を利用するもよし、新しく開発された技術を使うもよし。作品によっては音や映像、言葉、さらには空間そのものまで、作品として捉えることができます。

今すぐできる「現代アート」の楽しみ方

①まずは空間から観察スタート!

美術館が100倍面白くなる!初心者さんへ贈る「現代アート」の楽しみ方
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作品が目に入ったら、まずはその作品の大きさや向き、配置などを見てみましょう。どの作品もただ置かれているということはなく、作品の意図が伝わりやすい方向や、アピールしたい部分が自然と目に入る動線などが計算されています。また、野外作品などの場合は、作品の置かれた場所や土地、作品の向こう側に何が見えるのかも大切なポイントです。作品を見る前にその場所の背景や歴史をチェックしておくと、込められたコンセプトに気付けるかもしれません。

②自分から動いてみる

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立体的な現代アートなら、次に作品の周りをゆっくりひと周りしてみましょう。別の方向から見ることで、全く違った形に見えたり、別のものが見えてきたりと、きっと新しい発見があります。また、「対話型」「体験型」と呼ばれるような作品の場合は、見る人が自分からアクションを起こすことで作品自体が変化したり、他の鑑賞者とのコミュニケーションが生まれたりすることも。最初は何も考えずに、とりあえず動いてみることをおすすめします。

③難しい作品は後回しでOK!

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パッと見てよく分からないもの、興味をひかれないものは、仕方がないので通り過ぎてしまいましょう。同じ展覧会の中には、もっと分かりやすいコンセプトの作品や、楽しい気分にさせてくれる作品もきっとあります。足をとめるのは、「もっと見てみたい!」「もっとこの作品を知りたい!」と思った時でいいのです。

④何を感じたか、自分や友人と対話してみる

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現代アートでは、作品を見てあなたが感じたこと、思ったこと、考えたことが大切です。あなたの頭の中に浮かんだイメージや物事を噛みしめながら、作品をじっくり鑑賞してみましょう。作品のコンセプトにたどり着かなかったとしても、これまで感じたことのなかった感情やアイディアが出てくるかもしれませんよ。自分ひとりでは難しいという時は、一緒に美術館を訪れた家族や友人、恋人と話し合ってみるのも楽しみ方の一つです。

⑤アーティストについて調べてみる

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作品を見ても分からない!という時は、その作品を生み出したアーティストの経歴や人となりを知ることもおすすめです。アーティストの多くは、少し昔や現代に生きている人々です。背景を知ることでより身近に感じることができますし、知ってもらうことこそが、コンセプトにつながっている可能性もあります。

⑥解説を聞いてみる

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いろいろな方向から観察して考えてみても分からない時は、パネルに書かれた作品解説や音声ガイドで理解を深めるの立派な方法の一つです。タイミングによってはアーティストの声を直接聞けるギャラリートークや、学芸員による解説を聞きながら作品を鑑賞できるギャラリーツアーに参加できることも。解説と違っていたからといってあなたの感じたことが間違っているわけではなく、考え方の一例を示してくれるので、どうしても理解したいというときはぜひ利用してみてくださいね。

現代アートに触れることは、誰かの考え方やものの見方に触れること

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アーティストの考えやコンセプトが詰め込まれた「現代アート」。他人と100%分かり合うことは難しいように、現代アートも完全に理解するのは難しいものです。しかしその中でも、「こんな考え方があったんだ!」「意識したことなかったけど、確かにそうだな」という驚きや発見を楽しめるのが現代アートの魅力でもあります。ぜひ次に現代アートに出会った時は、少しだけ足を止めて対話してみてくださいね。

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