飲みたくなる本
特定のお酒が出てくる本
夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦(角川文庫)
電気ブラン
好奇心が旺盛でとにかくお酒をたらふく飲みたい黒髪の乙女は、たまたまバーで隣り合わせた客から聞いた幻の酒「偽電気ブラン」を求め夜の街を進みます。お酒を飲んでふわふわする気持ちと、物語の不思議な世界観がぴったりリンクして先へ先へと深く誘われていくでしょう。
【あらすじ】「先輩」は、クラブの後輩である「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せています。彼女の姿を追い求め、居場所を探して奔走する先輩。マイペースな乙女と個性溢れる曲者たち。夜の先斗町で、下鴨神社の古本市で、大学の学園祭で……よくよく考えると妙だけど、何だか受け入れられてしまう珍事件に、先輩も読者も巻き込まれていくのです。
センセイの鞄/川上弘美(文春文庫)
熱燗
まぐろ納豆、蓮根のきんぴら、塩らっきょ。塩っ気のあるものをつまみながらちびちびと飲む熱燗が、寒くなった心をゆっくり解していきます。温めたことで増す日本酒の香りも手伝って、良い感じに酔いを楽しめるでしょう。落ち着いて飲みたい大人の読書酒にぴったりです。
缶チューハイを卒業してお気に入りのおちょこと徳利を揃えたくなる、そんな作品です。そこにセンセイがいなくても、一緒に過ごしたことがあるような、懐かしいような気持ちが沸いてくるかもしれません。良いんです。あえて切なさに身を預ける夜も大人には必要ですから。
【あらすじ】37歳の月子は、駅前の居酒屋で学生時代の国語教師と再会。以来、“センセイ”と“ツキコさん”は肴をつつき、盃をかわす仲にになります。歳の離れた男女はゆったりと四季をめぐるうちにやがて切々と慈しみあう想いを抱えて……。どうしようもなく忘れられない恋の物語です。
風のマジム/原田マハ(講談社文庫)
ラム酒
物語に登場する「COR COR (コルコル)」というお酒は、純沖縄産の無添加・無着色の透明なラム酒です。一般的にサトウキビを原料とするラム酒は、カラメルのような甘い香りが特徴。ミントを入れてモヒートにしたり、コーラで割ってラム・コークにしたり、バニラアイスとの相性も抜群なのでぜひ試してみてください♪
青い空、広がるサトウキビ畑を吹き抜ける風……お酒の味の表現から、沖縄の風景を感じます。その場にいなくても爽やかな風が吹き抜ける感覚がして、お酒も進むでしょう。「おばあ」の言葉が胸に届いて、自分も頑張ろうと背中を押されます。
【あらすじ】琉球アイコム沖縄支店総務部の「まじむ」は、純沖縄産のラム酒を造るという夢を追う28歳・契約社員。技術もお金も何もないところから、持ち前の体当たり精神で南大東島という辺鄙な場所に工場を作ります。この島の自然は、人々は、風とともに生きている……実話を基に描いたサクセス・ストーリー!
特定のシチュエーションが出てくる本
探偵はバーにいる/東直己(ハヤカワ文庫)
バー
年齢も職業も、本当はどんな性格なのか分からなくたって関係ない、バーで楽しむ一期一会。初心者にはちょっとハードルが高そうですが、酔いがまわれば意外と馴染めてしまうものです。まずは物語の世界で味見して、その気になってみるのも良いでしょう。
ハードボイルドなアクションシーンにスカッとする、読書酒にぴったりの1冊です。物語は一人称「俺」の語りでどんどん進んでいきます。独特な口調がだんだんクセになり「会ってみたいなぁ」と、彼に惹かれてしまうかも。今度バーに出かけて隣に座った人がラスティ・ネイルを飲んでいたら、ちょっと期待してしまいますね。
【あらすじ】札幌の歓楽街ススキノで便利屋をなりわいにしている「俺」は、いつものようにバーへ向かいます。そこにいたのは同棲している彼女が戻ってこないと困っている大学の後輩。どうせ大したことじゃないだろうと引き受けた相談事が、いつのまにか怪しげな殺人事件に発展して……
Rのつく月には気をつけよう/石持浅海(祥伝社文庫)
自宅
“好き”を共有したい仲間と、誰かの家に集まって自由に飲むお酒は格別です。高くても、安くても、美味しければオールOK。牡蠣を山盛り食べてみたかったり、チキンラーメンを砕いてつまみにしたり……ちょっと変な趣向でも、新たな発見があるかもしれません。
グルメ×ミステリーと聞くと「ワインで毒殺!」のようなものを想像してしまうかもしれませんが、この作品はコミカルでテンポの良い会話と謎解きが気持ち良い1話完結型の短編小説です。話ごとに変わるお酒と肴を真似て、1話ずつ日にちを分けて読み進めても楽しいですね。
【あらすじ】湯浅と長江、熊井の3人は大学時代からの飲み仲間。定番となっている家飲みでは、美味しいお酒と肴は当たり前で、誰かが連れてくるゲストが飲み会にアクセントを加えます。酔いもまわり口が軽くなった頃、ゲストを中心に盛り上がる一見なんてことない話には、実は奇妙な謎が隠されていて……!?
ランチ酒/原田ひ香(祥伝社)
ランチ
休みの日は昼から飲んだってバチは当たらないと思います。ひとりなら一層心の中を盛り上げて、たまには自分とのお喋りを楽しみましょう。 出かけられないならデリバリーもあり◎何を食べようか、何を飲もうか想像がむくむくと膨らみます。
すれ違いのステーキとサングリア、怒りのから揚げ丼とハイボール、懐かしのオムライスと日本酒、別れの予感のアジフライと生ビール……“食べる”ことは分かりやすく“生きる”ことなのかもしれません。はたから見ると幸せそうな人たちも、何かしらを抱えて生きています。みな当事者であり、時に他人の人生と交わる「見守り屋」なんです。
【あらすじ】犬森祥子の職業は「見守り屋」。ペットでも人でも、とにかく頼まれたものを一晩中見守ります。仕事を終えた後の晩酌ならぬ「ランチ酒」が唯一の贅沢である祥子は、孤独を抱えて生きる客に思いを馳せ、離れて暮らす娘の幸せを願いながら最高のランチとお酒に癒されるのです……
大正時代、浅草の老舗酒場で誕生した「電気ブラン」。名前の由来は当時“電気”と名のつくものはハイカラとされていたから、だそうです。アルコール度数が高くピリッとした刺激はあれど、独特の香りと甘みで人々を虜にし続けています。作中では、電気ブランの製法を真似て作った「偽電気ブラン」という架空のお酒が登場します。