お風呂場、洗面台、キッチンなどの水廻りは、いつも同じように掃除を繰り返しているはずなのに、気が付くと白いうろこ状の汚れが溜まり、手触りもざらざら。お掃除をさらに憂鬱なものにしてしまいます。

この汚れの正体は『水垢』。一度こびり付くと簡単な擦り洗いではなかなか落ちません。うっかり放っておいたら固まりがさらに頑固になってもう手に負えない…なんて声も多く聞かれます。この水垢をきちんと取り除くにはどんなコツが必要なのか、じっくり見ていきましょう。

水道水にはカルシウムやマグネシウムといったミネラル成分が含まれていて、水分が蒸発するとそれらのミネラルは水垢として蓄積します。カルシウムやマグネシウムは金属元素の1種。とても固く、一度こびりついてしまうと普通の中性洗剤では落とすことができません。

水垢の多くは、凝固したミネラル分の上に別の汚れや皮脂、石鹸カスなどが重なり、さらに濡れたり乾いたりを繰り返しているうちにますます落ちにくくなってしまいます。水垢が分厚くになる前に、できるだけこまめな掃除で原因となる汚れを取り除いておくことが大切です。

お風呂上がりにはなるべく壁やドアの水分は拭っておくという人も、小物まですべて拭き上げるとなるとキリがないですよね。特に湯桶の持ち手部分や椅子の脚など、普段の掃除が行き届きにくい箇所にはどうしても汚れが残りやすいため、1ヶ月に一度程度の定期的な水垢退治が必要となります。

洗面台の場合は、洗面ボウルや蛇口のほか、コップ、歯ブラシ立てなども要注意ポイントです。洗面ボウルから鏡に飛び散った雫をそのまま拭き忘れていると、水垢として残ってしまうこともよくあります。

洗面台やキッチン、お風呂場などの蛇口まわりは、隙間の掃除がしにくい分、頑固な水垢が溜まりやすい場所の筆頭です。普段はあまり目に留めていなくても、いざ掃除しようとすると小さなブラシなどで根気強く磨く必要があります。

洗い物や料理で毎日使うシンクは、カルキ汚れが悩みの種。
台所仕事の終わりになるべく拭き上げるよう頑張っていても、少し油断するとせっかくの綺麗なシンクが白くくすんできてしまいます。

ポットやコップ類も、ふと気付くとなんだかうっすらと曇っていたりしませんか？お気に入りのグラスなどは、やっぱりいつでもすっきりと輝かせていたいものです。

窓ガラスの場合、内側と外側では水垢の性質が異なることがあります。内側の水垢のほとんどは、窓拭きに使った水道水のミネラル分が固まったものなので性質はアルカリ性。外側の汚れは雨水によるものが多く、雨水は酸性であるため、水垢も酸性となります。アルカリ性の水垢には酸性洗剤、酸性の水垢にはアルカリ性洗剤が効果的なので、それぞれ使い分けるようにしましょう。

加湿器にも水道水を使うことが多いため、内部のフィルターやトレイに水垢がこびりつくことがあります。2週間に1回程度水洗いしたら柔らかい布で拭き、しっかり乾燥させましょう。
また、月に1回はフィルターやトレイ、タンクをクエン酸等で浸け置き洗いすると清潔に使い続けることができます。

観賞用の魚などを飼うための水槽や鉢を長年設置していると、やはり水垢が付着することも。水槽の場合、ガラス製なのかアクリル製なのかによって掃除の仕方も変わります。ガラスなら擦り洗いもできますが、アクリルの場合は傷が付いてしまうため、クエン酸やセスキ炭酸ソーダを使うのがおすすめです。

クレンザーには研磨効果があるため、擦り洗いすることで水垢を物理的に削り落とすことができます。ただし、傷が付きやすい面の水垢を落としたい時は、研磨材の粒子が細かいタイプ（研磨材20％のものなど）を選んでみて下さい。

メラミンフォームと呼ばれる特別な材質でできたメラミンスポンジは、水垢落としでも大活躍してくれます。硬く細い網目状の樹脂が汚れに絡んで剥がし取る仕組みで、洗剤が必要ないので二度拭きも不要。とても便利ですが、やはり柔らかいプラスチックなど傷付きやすい素材には使用を控えるのが無難です。

金属や鏡などにこびりついた頑固なうろこ汚れを落とすなら、人工のダイヤモンドの研磨材をスポンジに貼り付けたクリーナーが威力を発揮してくれます。水で濡らしながら、円を描くようにして少しずつ汚れを削るのがコツ。ただし、曇り止めコーティングやフィルム加工された素材には使えませんので、その点だけ注意しておきましょう。

炭酸カルシウムが原因の水垢はアルカリ性であるため、反対の性質を持つ酸性のクエン酸や酢などと化合させると比較的簡単に落とすことができます。ちなみにお風呂場に溜まりやすい「湯垢」は、水道水の中のマグネシウムに石鹸カスや皮脂汚れなどの成分が化合したもの。こちらは酸性の性質を持っているため、除去にはアルカリ性や中性の洗剤が効果的です。

水垢掃除には最適なクエン酸ですが、使用にあたっては注意点もあります。まず、大理石には使えません。大理石は炭酸カルシウムが主成分であるため、酸性のクエン酸を使うと分解されて艶が消えてしまいます。また、鉄製品に使用すると錆の原因になります。そして、塩素系漂白剤と一緒に使うと有毒ガスが発生するため、絶対に併用してはいけません。

ステンレスやガラスの水垢落としには研磨剤も使えますが、しつこい頑固汚れにはまずクエン酸溶液をスプレーし、汚れが柔らかくなったところをさらにメラミンスポンジ等で研磨すると効果覿面です。クエン酸水をおうちで作る時は、水200mlに小さじ1のクエン酸パウダーを溶かすのがおよその目安です。

傷が付きやすく研磨ができないプラスチックの水垢取りには、クエン酸やお酢を使うのがおすすめ。でもクエン酸をわざわざ購入したくなかったり、お酢の匂いが気になる方は、レモンでも代用可能です。レモンの皮で直接水垢を擦ってもいいですし、果汁をそのまま使うのはもちろん、皮を15分ほど煮込むと便利なレモン水が出来ますよ。

出来上がったレモン水は冷ましてからスプレーボトルに入れ、クエン酸水溶液と同じように使えばOK。レモンならではの香りも爽やかで、お掃除しながら気分までリフレッシュできちゃいますね。

ナチュラルクリーニングの定番であるクエン酸と重曹は、同時に使うこともできます。重曹にクエン酸を加えると勢いよく発泡し、二酸化炭素が発生。この泡が、汚れに入り込んで浮き上がらせてくれるのです。研磨したくない陶器やタイルなどの水垢や、排水口のヌメリ取りにも威力を発揮してくれます。

水垢は車のあちこちにも付着します。フロントガラスやライトに付いたものなら、カーシャンプーはもちろん、クエン酸やメラミンスポンジを使ってもOK。でもエンブレムなどに使われるクロームメッキパーツは意外にデリケートなので、コーティングを傷つけないよう、専用のクリーナーや研磨剤で洗車するのがおすすめです。

カビ取りなどに使われる強力な塩素系漂白剤はとても便利なアイテムですが、酸性であるクエン酸やお酢、除菌用アルコールなどと混ざると化学反応が起き、有毒な塩素ガスを発生させます。特に、トイレやお風呂場などの密室では少しの量でも大変危険です。「水垢掃除はカビやヌメリ取りの掃除とは一緒にしない」というルールを必ず守るようにしましょう。

水垢はすべて、水分が溜まったり乾いたりを繰り返す場所で発生します。キッチンや浴室など毎日水に濡れる場所では、使い終わった後なるべく水分を拭っておくようにしましょう。手に負えなくなる前にこまめなお手入れを心がけておく方が、長い目で見た時にはお掃除の負担もかなり軽減できます。

頑張って水垢を落とし、キッチンや浴室を綺麗に磨き上げたあとは、コーティング剤で汚れの付着を予防するという方法もあります。ガラスやステンレスなどコーティング可能な素材なら、製品によって数週間から2ヶ月程度は水を弾き、水垢や汚れが付きにくい状態をキープできます。

日頃から気にはなっていたけれど、すっかり放置して半ば諦めていた頑固な水垢も、適切な方法で磨いてみると思った以上に綺麗になって驚くことがあります。すっきり気持ちのいい水回りを目指して、まずは手近な一カ所をピカピカに磨き上げることから始めてみませんか？