不安や悩みでつらいとき
生きていれば、不安や焦りなどの悩みはつきものですよね。そんなどうしようもなくつらい気持ちのとき、今からご紹介する「禅語」を思い出してみてください。ざわざわとしていた心が、すうーっと静まってくるのを感じるはずです。
一切唯心造(いっさいゆいしんぞう)
この禅語は、不安や心配ごとを生み出すのは心そのものであることを説いています。まだ見ぬ未来や、過ぎ去った過去を心がさまよっているとき、不安や心配ごとが生まれるのです。「今ここ」にどっしりと腰を据えていれば、むやみに不安を作り出すこともありません。
無縄自縛(むじょうじばく)
自分を縛り付けているのは自分自身である、という言葉です。世間の「当たり前」や「ふつう」という考え方に縛られて、身動きできなくなっていませんか。それらは思い込みにすぎず、人生の自由をも奪ってしまいます。ふとした瞬間に、「これは本当に望んでいること?」と自らに問いかけてみましょう。
喜捨(きしゃ)
何かに対するこだわりや、失いたくない、手放したくないといった執着心は、ときに自分自身を苦しめる原因にもります。神社やお寺でお賽銭を投げ入れることを「喜捨する」といいますが、執着心やわだかまりも同じように手放すのです。そうすることで、自分を苦しめていた執着心からふわりと解き放たれます。
あたたかな気持ちになりたいとき
慌ただしい社会生活のなかで、体も心もすり減らす毎日……。ネットやSNSで、トゲのある言葉に傷つくこともあるかもしれません。そんなとき、「禅語」を心の片隅に置いておきましょう。冷たくなった心に、ポッとあたたかな明かりが灯るはずです。
愛語(あいご)
丁寧で美しい言葉を使っていますか? 受け取る相手を思いやった優しい言葉づかいは、人間関係をあたたかなものにします。使い方ひとつで凶器にもなりうるのが、言葉です。身近な人であっても、顔も知らない相手であっても、変わらず「愛語」で接したいものですね。
薫習(くんしゅう)
防虫剤代わりに使っていたお香の香りが、衣替えの服に移ることになぞらえ、わたしたちの心もまた同じようにお互い影響し合うことを説いたもの。人から好かれ、慕われるような美しい心をもつ人の近くに身を置けば、自然とあなたの心も美しく変わっていきます。
共生(ともいき)
自分はひとりぼっちだと思うことも、時にはあるかもしれません。そんなときは「共生」という言葉を思い出してみます。お互いの存在がそれぞれを支え合っている、という意味です。一緒にいることが全てではありません。家族や友人、ペットなど大切な存在と、心ではいつもつながっているのです。
喫茶去(きっさこ)
相手が誰であっても、「まあお茶でもどうぞ」とおもてなしする心を指す言葉です。身分や相手との関係性などにかかわらず、見知らぬ人にも先入観をもつことなく、迎え入れること。何が起こるか分からない現代では、実際には難しいかもしれません。大切なのは、その心のもちよう、ありようなのです。
生き方に迷ったとき
人生では決断を迫られることもあります。これでよかったのかと後悔したり、あるいは何の変化もない毎日にうんざりしたりすることもあるでしょう。生き方に迷ったとき、覚悟を決めたいとき、前へ進みたいとき。「禅語」があなたの背中をそっと押してくれるかもしれません。
安閑無事(あんかんぶじ)
毎日同じことの繰り返しで、楽しいことがない。淡々とすぎていく日常に、不満を抱くこともあるかもしれません。「安閑無事」という言葉は、何も心配することなく、穏やかに暮らせることの尊さに気付かせてくれます。昨日と同じように安らかな日が来ることへの感謝の気持ちを持てば、変わらぬ毎日に幸せを感じることができるでしょう。
歳月不待人(さいげつひとをまたず)
人生は限りあるもので、過ぎ去った時間を取り戻すことはできません。「歳月不待人」は、今しかできないことをする、それが後悔しない生き方であることを示唆しています。今、自分にとって大切なことは何でしょうか。優先順位を見極め、今しかできないことに全力を尽くすことが大切です。
両亡(りょうぼう)
何かを決断するとき、選択を迫られたとき。物事に白黒つける二者択一の考え方は、ときに息苦しさや執着を生むことになります。どちらでもない曖昧さ、どちらとも決めつけない生き方を教えてくれるのが、「両亡」という禅語です。どちらでもいいと思える心の余裕をもつ、その大切さを教えてくれています。
禅のことばが助けになる
つらい気持ちにそっと寄り添う、「禅のことば」をご紹介しました。ここでご紹介したほかにも、慈悲深い「禅語」は数多あります。今を一生懸命生きているからこそ、悩んだり迷ったりするものです。そんなわたしたちの道しるべとなる「禅のことば」に、時おり親しんでみてくださいね。
落ち込んだり、くじけたり、人生で迷ったときの道しるべになるのが「禅語」です。不安や悩みがあるとき、心が冷え切ってしまったとき、あるいは生き方に迷ったとき。「禅のことば」に親しんで、心をラクにしてみませんか。