なかでも、建て替え工事に入ってしまいましたが「ホテルオークラ東京旧館」は、木材には檜や杉を使用しインテリアに竹や藤、日本らしさ溢れる継ぎ色紙の技法や工芸品、亀甲紋や麻の葉などの紋様を取り入れたまさにジャパニーズ・モダンの集大成とも言える建物で、絶大なる人気を誇っていました。
19世紀に大活躍し戦後日本を大いに盛り上げてくれたジャパニーズ・モダンの巨匠たちの作品をご紹介します。今も入手可能な作品もありますので、参考になさってみてくださいね。
ジャパニーズ・モダンを支えた4人の巨匠たち
長大作 1921年 - 2014年
建築・家具デザイナーとして活躍された長大作さんは、国際文化会館や松本幸四郎さんの邸宅や家具デザインを手掛けられたことでも有名。こちらは代表作のパーシモンチェアとマッシュルームベーステーブルで、国際会館のために作られた家具です。
▷パーシモンチェア
▷マッシュルームベーステーブル
こちらがマッシュルームベーステーブルの由来となった脚部分。きのこを連想させるようなフォルムになっていますね。緩やかなカーブを描いた天板をしっかりと支えています。
畳でもフローリングでも使いやすくインテリアに馴染みやすい低座の椅子です。松本幸四郎さんの邸宅用にデザインされたものだそう。低いのであぐらをかいたり足を伸ばしたり自由な体勢が取りやすくリラックスできます。
▷低座イス S-5016NA-ST
長大作さんはご自身の作られた作品を積極的にリデザインされていました。パーシモンチェアにどことなく和モダンな表情を持つ英国「エレノア・プリチャード」のファブリックで装って。
▷パーシモンチェア 限定モデル
柳宗理 1915年-2011年
柳宗理さんと言えばキッチンツールも有名なインダストリアル・デザイナーでもありますが、有名な代表作はバタフライスツールではないでしょうか。世界各国の有名な美術館にも永久コレクションされるなど、海外からも熱い支持を受けています。
美しい蝶が羽を広げる様子を表現したデザインは、インテリアとして素晴らしいのはもちろん、心の支えにもなってくれそう。
▷バタフライスツール
丸みを帯びたかわいらしいデザインが素敵なエレファントスツール。プラスチック製で軽いため、持ち運びしやすくなっています。アウトドアはもちろんキッズファニチャーとしても人気。
▷エレファントスツール
剣持勇 1912年-1971年
国立京都国際会館や京王プラザホテルなどのインテリアデザインを手掛けたインダストリアル・デザイナー。代表作ラタンチェアはホテルのためにデザインされた家具で、ニューヨーク近代美術館に永久収蔵されています。
一度は飲まれたことがあるはず、ヤクルトやジョアのパッケージデザインを担当されたのも剣持勇さんなんですよ。
▷ラタンチェア
世界各国からお客様がお見えになるホテルのラウンジに、日本らしいインテリアをということで作られたラタンシリーズ。藤素材を巧みに操り革新をもたらし、「新モダニズム」のはじまりとも言われていたようです。
脚部分の独特の曲がりは、座卓上で飲み物をこぼしても畳に流れるのを防ぐ「水返し」の役割もあったのだとか。
▷剣持座卓
渡辺力 1912年-2013年
今でこそよく見かける異素材MIXスタイルが特徴的なスツールです。軽快なナチュラルウッドとスチールの組み合わせで、すっきりシャープなフォルムに。
▷ソリッドスツール
渡辺力さんと言えば数々のパブリッククロック（公共の時計）をデザインされていますが、なかでもレムレスクロックが有名で今も愛用者がたくさん。
人気なのはこちらのリキクロック。木製フレーム部分がタンバリンの枠と同じものなのだそうでグッドデザイン賞にも輝いています。
籐家具ブームを牽引した山川ラタンで作られたトリイスツールのテーブルで、ミラノトリエンナーレという家具の見本市では金賞を受賞された作品です。
ダイニングテーブルとしても使用できる高さのあるあるタイプもありますよ。
▷テーブル QR-40
同じくミラノトリエンナーレ金賞受賞作品のスツール。しっかりと編まれた籐が体にフィットし、やさしくたわみます。これまで籐家具と言えば夏に使用するものと考えられていましたが、オールシーズン使える丈夫な家具としてイメージが変わるきっかけとなった家具です。
▷トリイスツール
時代が変わっても飽きさせない魅力をもったデザイナーズ家具は、機能的で使いやすくいつまでもやさしく寄り添ってくれる家具。身近に置いて楽しみたいですね。
ジャパニーズ・モダンとは、モダンスタイルな建築物やインテリアに日本ならではの伝統工芸や色合い、素材を取り入れたスタイルのこと。戦後の日本デザインの礎ともなったスタイルです。