日常で使っている身近なモノ、例えば革製の靴や財布、鞄、金属製の鍋や木製の家具。買ったばかりの頃はきれいでそれはそれで嬉しいものですが、使っているうちにいつの間にか革製の小物なら手や足にしっくりと馴染み、金属製の鍋なら一番美味しいタイミングで料理が仕上げられて、木製の家具はあめ色に深みを増して落ち着いた空間を作ってくれるようになります。それは「モノを育てる」ことによって生まれる、味わいや愛着が感じられるからのように思います。
味わいが深まり、愛着がわいた「モノ」そのものに魅力があるのはもちろんですが、育てていく過程、大切に使っていく中で変わっていく「暮らしかた」や「考え方」にもその魅力があるようです。
ひとつのモノを育てていくなら、同じものをたくさん持つ必要はなくなります。また、大切に扱うので新しいモノに買い換えることも少なくなります。本当にあなたが必要なモノだけを持ちたい意識に変わっていくので、自然と無駄遣いは減っていきます。
身近なモノを大切に育てている過程で、いつの間にか今までと違った暮らし方に気づくようになります。それは丁寧な暮らし方であったり、ゆとりのある暮らし方であったり、それともまた、心豊かな暮らし方であったり。
身近にあるモノを大切に扱うようになるので、ゆったりとしたやさしい所作になってきます。そして、育てていきたいモノだけを持つようになるので、部屋に空間が生まれてきて、愛着のあるモノに囲まれて暮らしていけるので、心が豊かになってきます。このように丁寧で、空間も気持ちもゆとりのある暮らし方に変わっていきます。
大切なものを永く大事に使っていくことで、増えていく思い出があります。ふと、そのモノを見て「あんなことがあったな」「こんなことがあったな」と物思いにふける瞬間も素敵ですね。一つのものを大事にしていくことができると、それだけ愛情深くなり、その人自身の優しさや感性も育っていくような気がします。
出典: お出かけの時に必ず一緒に連れていく靴や鞄。一緒に行った場所のこと、出会った人、素敵な風景など、いろいろな思い出が刻まれていきます。
出典: 毎日のように使うお鍋。使えば使うほど、キズや汚れが目に入るようになりますが、それもあなたの日々の努力の結果のように思えます。
出典: 家具は、あなたと共にすごしていく家族の一員。ですが、どれほど大切に扱ってみても小さな傷や汚れがついてしまいます。もし今、長く使っている家具があるのなら、触れてみてください。傷や汚れをみて、普段思い出すことなんてない和やかな日常が蘇ってくるかもしれません。
永く使うためにはやはりこまめなお手入れが必要になってきます。いつも触れているものだからこそ表情の変化に早く気づいて、ふさわしいお手入れをすること。それが「モノを育てる」ということの基本のように思います。普段からこまめにしておきたいお手入れの方法をジャンル別にまとめてみました。
財布や靴、鞄などの革製品。多くの人がどれかひとつは持っているアイテムだと思います。革製品はとにかく丈夫で使えば使うほど味わいが出てきて、肌にしっくりと馴染むようになってきます。まずは革製品の基本的なお手入れの仕方についてまとめてみました。
出典: 多くの人がひとつは持っている革製品。とにかく丈夫なのと、使えば使うほど味わいが出てきて、肌にしっくりと馴染むようになってくるのが一番の持ち味です。上品な雰囲気と品質の良さが特徴の革製品は、お手入れが大変そうなイメージがありますが、やってみると案外と簡単です。
出典: お手入れに必要なものは、ついた汚れやホコリを取るためのブラシと、革専用のワックスです。また、ワックスを付ける時に使う布と最後に乾拭きする用の布も用意します。
出典: まずはブラシを使って、撫でるようにブラッシングをしていきます。力を入れずに優しくゆっくりとしましょう。縫い目の部分は汚れがたまりやすいので、とくに丁寧にしていきます。
出典: 布にワックスを1円玉ほどつけて、全体にうすくまんべんなく塗っていきます。ワックスはつけすぎるとシミの原因になってしまうので、少量を手早く塗っていきましょう。塗り終わったら、日光の当たらない場所に1時間ほど置いてワックスをなじませます。最後に乾拭きをしながら仕上げます。
出典: 革製品はブラッシング→ワックス→乾拭きの手順でお手入れをしていきます。革のツヤがなくなってきたなって感じた時がお手入れの目安です。
毎日のように使う調理器具。鍋やフライパン、まな板や包丁など、暮らしに欠かせないものばかりです。素材の違いでお手入れの仕方はさまざまですが、毎日使うモノだからこそ、丁寧にお手入れをしていきたいものです。今回は育てるのに向いている素材のモノについてまとめてみました。
出典: まずお鍋から。琺瑯製のモノは表面がガラス質なので落とすなどの衝撃や空焚きも禁物です。それとステンレス製のお鍋もそうなのですが、キズが付きやすいので、金属タワシや研磨剤で磨くということもしない方がいいでしょう。もし焦げ付いた場合はぬるま湯に大さじ1杯の重曹と数滴の植物オイルを入れて沸騰させて浮かすようにしていきます。その後そのまま冷まして、やわらかいスポンジで優しくこすって焦げ付きを取っていきましょう。
出典: フライパンはくっつきにくいテフロン加工などが便利ですが、つかっているうちにコーティングがどうしても剥がれてしまい買い換えるタイミングが多くなってきます。反対に鉄製のフライパンは最初は使いにくいのですが、次第に油がなじんで焦げ付きにくくなってきます。愛着が持てるまで育てていくなら鉄製のフライパンがおすすめです。ポイントは使ったら放置しないで、すぐにタワシなどで洗うこと。また、せっかく馴染んだ油を洗い流さないように中性洗剤は使わないこと。そして、洗った後は再び、油を馴染ませてから収納すること。これらの点を気をつけるだけで鉄のフライパンは長持ちします。
出典: まな板は永く使いたいのならば、木製が一番いいでしょう。調理する前ににおいがつかないように必ず水で濡らしてから使います。使った跡はタワシで木の目に沿ってゴシゴシとこすり洗いをします。そして、ついたタンパク質が固まらないように必ずお水ですすいでから、さらに洗剤で洗います。ここではお湯を使ってもいいのでしっかりとすすいだら乾燥させます。ですが気をつけていても、表面が黒くなることがあります。そんな時は100円ショップなどで販売されている「まな板削り」やサンドペーパーなどでうすく削ってみるのもいいでしょう。
出典: 包丁は使ったらこまめに洗うようにしましょう。また、欠けや洗浄液で錆びの原因になるので食洗機の使用は避けたほうがいいです。包丁といえば一番重要なのが切れ味です。家庭でも研ぐことができる電動シャープナーなどあるので上手に使っていければいいですね。
家具の多くは木材で作られています。そして家具の種類によって布や革、金物など異素材を組み合わせて作られています。とくに天然の素材は温度や湿度、日光などにとてもデリケートなので、素材に合わせてのお手入れが重要になってきます。
出典: 革製のソファは合皮や布に比べて寿命の長く、お手入れ次第で独特の味わい深さが楽しめます。お手入れの方法は財布や鞄などと同じくブラッシングをしてから、レザー専用のワックスを塗って保湿をした方がいいのですが、ソファの場合は年に一度のお手入れで十分です。
出典: 布製のソファは繊維の部分にホコリや食べこぼしなどが入りこむので、軽くたたいて汚れを浮かし、やさしくブラッシングしたのち、掃除機などで吸い取ります。汚れが付いた場合は中性洗剤を溶かした液に浸した布でトントンと叩いて、その後にお湯で濡らした布で拭き取るようにします。
出典: 木製の家具にとって、大敵なのが「カビ」です。食器棚やキャビネットなどは壁にピタッとつけないで、少し隙間をあけて置いたり、適度に風を通すなどした方がいいでしょう。また、水拭きをした後は必ず、乾拭きで仕上げましょう。
家具にとってカビと並んで大敵なのが、直射日光になります。外出の時はカーテンを閉めるようにしたり、布を一枚カバーしておくのもいいでしょう。
先ほどのアイテム別のお手入れ方法を基本に、今度は「モノを育てる」「味を出す」に視点を向けていくつかのポイントを紹介したいと思います。
流行りすたりのないモノ。
シンプルなデザインのモノ。
素材や製法などが上質なモノ。
アフターサービスのしっかりしているお店のモノ。
などを基準に選んでいく方がいいかもしれません。やはり、飽きのこないデザイン、壊れにくい傷みにくい作りであること、気軽に相談できるプロがいることが、「育てながら永く持つ」にはふさわしい条件のように思います。
永く持っていると、こまめにお手入れをしていても、誤って壊してしまったり、塗装が剥がれてたり、縫合がほつれたり、接合部が緩んだりしてきて、自分ではどうしても対応できないダメージが出てきてしまいます。そんな時は買い替えようと思ったり、無理に直そうと思ったりせずに、プロの力を借りてみることも考えましょう。
命のあるペットや植物を育てる時のように、モノであっても心を込めて育てるようにしていきたいものです。ペットや植物なら生きている過程を楽しむことができますが、モノは育てることによってにじみ出る「味わい」が楽しめるようになります。こうやってモノにも愛着がもてるようになります。
大切に育てたモノには持ち主によって異なる風合いが染み込んでいきます。それは最初は同じ製品でも、時間が経つごとに全く違った表情になっていき、オンリーワンの存在に変わっていきます。そしてこのように味のあるモノに育てていく過程で、いつの間にかあなた自身の暮らしや考え方にも味わいが深まっていくように思います。味わいのある人生を送りたいと思っているあなたへ、まずは身近のモノを育ててみませんか?
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素敵な画像にご協力いただいたサイト・ショップ様です。ありがとうございました。ほかにも、魅力的なアイテムに出会えますので、ぜひともサイトを覗いてみてください。
身近にあるモノを大切に扱うようになるので、ゆったりとしたやさしい所作になってきます。そして、育てていきたいモノだけを持つようになるので、部屋に空間が生まれてきて、愛着のあるモノに囲まれて暮らしていけるので、心が豊かになってきます。このように丁寧で、空間も気持ちもゆとりのある暮らし方に変わっていきます。