出典:
甘辛たれのみたらし団子。こし餡が詰まった豆大福。しっとりとした薯蕷饅頭。
たっぷり淹れたほうじ茶に、御煎茶。椀に点てたお薄。
出典: 特に、甘党ではなくても。
饅頭やおはぎを頬張り、ほうじ茶を啜る時。
一片の羊羹と茶の苦味が、舌の上で出会う時。
束の間の幸せに身を委ねて、目を細める人は、きっと多いはず。
出典:
旅の目的は、その場所でしか出来ない体験をすること。
特に旅先でしか味わえない逸品と出会うことは、旅の醍醐味です。
出典: せっかく京都を旅するのなら、千年の都が育てた“甘味”の世界にも分け入ってみましょう。
きっと、恍惚にも似た、口福なる一時が味わえるはずです。
とはいっても、京都の甘味は、実にバラエティ豊か。
ガイドブックやネットでは、京都の甘味、スウィーツが色とりどりに取り上げられています。和菓子一つにしても、饅頭や羊羹、煎餅や飴、落雁や豆菓子、季節の上生菓子もあり、種々様々です。羊羹一つ取り上げても、練り・蒸し・水と、異なるタイプがあり、小豆や栗、黒砂糖や抹茶、白味噌等など、風味や味、色や形も多様です。
出典: また伝統的な和菓子もあれば、和洋折衷、モダンな和菓子もあります。
その一方で全国に知られる洋菓子もあり、パフェやパンケーキ、かき氷といった、和洋のジャンルを超越したスウィーツ、カフェや喫茶店のオリジナルスウィーツもあり、京都の甘味は、星の数程あるかもしれません。
出典: 【「虎屋菓寮 京都一条店」の12月の季節の生菓子『玉手箱』。】
京都の“甘味”の世界は、間口が広く、奥も深く、色とりどり。
選択肢が沢山ことは素晴らしいことですが、いざ食すとなると、あれもこれもと目移りするばかりで、ついつい目についたカフェや甘味処でお茶を濁してしまうということもあるかもしれません。
出典: 地元や近郊に住まう方や、訪れる機会が多い方は別として、遠方から京都を訪ねるのであれば、甘味自体で店を選ぶのではなく、“京都ならではの風情”も味わうということを念頭におけば、迷いなく店選びが出来るかも知れません。
出典: もちろん“味”が第一ですが、甘味には“茶”がつきもの。
茶は、甘味を引き立て、口中を清涼にしますが、お茶は“間”も作ります。“間”を楽しむには、店の雰囲気や風情、器や接客がとても大事。とびきりの銘茶でなくても、一服の茶は、旅人を憩わせ、店の風情や気持ち良い接客は、豊かな一時を創造します。
お勧めするのは、地元の方々に愛される和菓子店や甘味処。
持ち帰りの専門店ではなく、“喫茶併設”の名店か地元で愛される甘味処で、“出来たての”の生和菓子や甘味を頂くことです。
出典: 揚げたての天ぷらやにぎり鮨のように、出来たてが一番美味であり、時間の経過と共に食味が落ちていきます。京都には、予約時間に合わせて生菓子を仕立てる店があるように、出来たての味わいを大切にする姿勢が残っている地です。旅行者がその美味しさを味わうのなら、喫茶併設の和菓子店や甘味処に行くのが一番です。
出典: また甘味は、茶の苦味によって引き立てられるもので、茶なくしては甘味の真の味わいが分からず、茶の湯の世界からすれば、和菓子は、茶の味わいをより深めるものとしての供されるものです。
出典: 茶の湯は、大阪・堺の千利休や町衆らによって完成をみましたが、茶の湯の文化を育んだのは、ここ京都。平安期から喫茶の文化があり、茶の文化は甘味を育て、連綿と今に繋いでいます。
府内には、茶の名産地・宇治を抱え、茶葉も淹れ方も他地域とは異なり、洗練されています。出来たての和菓子や甘味を、ぜひ美味しいお茶と共に味わって、甘味の真の力を再確認してみましょう。
有名店であれば何でも美味しいというのは、思考停止に陥ったようで気が引けますが、京都においては、話は別。地元に支持される有名店は、概ね期待を裏切らず、古都の風情や京都ならではの雰囲気と共に、舌も目も満足する甘味が頂けます。
出典: 【「京菓匠 鶴屋吉信本店 お休み処」の抹茶付き『季節の生菓子』】
京の和菓子は、見た目も味わいも、繊細で上品であることが特徴です。
それは、四季のはっきりした自然環境に培われた感性を土台に、古から連綿と続いてきた京都人の飽くなき探究の成果です。
出典: 【祇園花見小路「ぎおん徳屋」の『徳屋の本わらびもち』】
食に限らず、京都の職人は、厳しい舌や目をもつ顧客と絶えず対峙しなければなりません。
顧客といっても、公家方や大名、茶人や寺社に限らず、鋭敏な感性をもつのは、市井の人々も同じ。むしろ市井の人の方が、辛辣かも知れません。
出典:
京都の人々は、それぞれに贔屓の店があり、季節移り変わりや行事に応じて菓子を整えます。時に店を訪れて、贔屓の味を楽しみます。
京都人は、好む店を応援するが、店が裏切れば容赦なく去っていくと、しばしば耳にしますが、京都で長きに亘って商いを続けてきたというのは、期待を裏切らずに一心に作り続けてきた証。地元の人が、長年通い続ける名店へ訪れれば、好みと異なることがあっても、がっかりすることはないはずです。
出典: 過日、京都の人気土産菓子を販売する和菓子店が、丹波大納言小豆の不作により減産体勢を敷き、話題となりました。老舗の英断に感じ入った人も多いかと思いますが、それもそのはずです。
出典: 和菓子を構成する材料は、洋菓子と比較して実にシンプルだからです。
豆類や穀物、葛等の澱粉類や砂糖等が主で、用いる素材と水が、和菓子の味わいの大半を決めてしまいます。“味を守る”ということは、原材料にも絶えず目を光らせなくてはなりません。京都の名店といわれる店では、厳しく吟味された素材と京都の良質な水を用いて、繊細で上品な、独自の味わいに仕立てています。
出典: 素材を変更することは、即、長年顧客が愛してきた味を変えてしまうことを意味し、ややもすれば看板を下ろすことにも繋がってしまうかもしれません。それは、素材の変更を公にするしないの問題でもなければ、食の偽装問題とも異なります。
菓子の形や色合い、器や盛り付け方、店の設えや醸し出される風情も、長きに亘る商いや京都の水で育った人々の感性によって生まれ出るもの。それは、たとえ改装した店であっても、その雰囲気は霧散してしてしまうものではありません。
出典: 【「大極殿本舗 六角店 栖園」の『琥珀流し(11月の柿)』】
歴史と伝統に裏打ちされた美意識は、店の隅々、菓子の一片に至るまで染み込んでいます。また厳しい目と舌をもつ京都の人々に愛された店ならば、たとえ歴史が浅い店であっても大方外れることはないはずです。
出典: 本記事では、風情も味も抜群の甘味が味わえる京都の名店を、店自慢の“逸品”と共に紹介します。案内するのは、京都市内の「喫茶併設の和菓子店」と、地元で愛される「甘味処」です。持ち帰り専門の和菓子店ではなく、旅行者が “その場で美味しく味わえるる” 店を選んでいます。
出典: また、昨今話題のパフェやパンケーキ、かき氷の人気店は、他の記事にゆずり、今記事では、小豆・穀物・澱粉を基本材料とする生和菓子と甘味を供し、老若男女の誰もが満足する店をピックアップしました。素材の良さと“伝統の技”が、ストレートに分かる逸品を取り上げています。
出典: 抹茶パフェやパンケーキ、かき氷も確かに美味しいものです。他所では味わえない京都ならではの逸品もあります。けれども、交通費をかけて来訪する旅行者ならば、古都のしっとりとした雰囲気に浸りながら、奥ゆかしい伝統の甘味を頂くのは、名所観光に匹敵する楽しさを味わえるはずです。
紹介するのは、以下の21店舗です。この中でも選ぶのが難しいのであれば、訪れる観光名所の近くに位置する店に、思い切って飛び込んで見ましょう。古くても新しい発見、旅ならではの醍醐味がきっと味わえるはずです。
出典: [祇園四条駅]1.鍵善良房 四条本店&高台寺店 ★くずきり
[祇園四条駅]2.ぎおん徳屋 ★徳屋の本わらび餅
[祇園四条駅]3.高台寺 洛匠 ★草わらびもち
[祇園四条駅]4.かさぎ屋 ★三色 萩の餅 ★京都ぜんざい
[河原町]5.弥次喜多 ★ぜんざい ★あわしるこ
[烏丸御池駅]6.紫野和久傳 堺町店 ★西湖
[烏丸御池駅]7.大極殿本舗 六角店 栖園 ★琥珀流し ★ぜんざい
[丸太町駅]8.麩嘉 ★麩饅頭
[今出川駅]9.虎屋菓寮 京都一条店 ★あんみつ ★季節の生菓子
[今出川駅]10.京菓匠 鶴屋吉信本店 菓遊茶屋&お休み処 ★京観世 ★季節の生菓子
[出町柳駅]11.茶房いせはん ★特製あんみつ
[出町柳駅]12.下鴨神社休憩処 さるや ★申餅
[出町柳駅]13.加茂みたらし茶屋 ★みたらし団子
[出町柳駅]14.茶寮 宝泉 ★わらび餅 ★ぜんざい
[北大路駅(今宮神社)]15.一文字数輔 16.かざりや ★あぶり餅
[北野白梅町駅(北野天満宮)]17.長五郎餅本舗 北野天満宮境内店 ★長五郎餅
[北野白梅町駅(北野天満宮)]18.粟餅所澤屋 ★粟餅
[伏見駅]19.おせきもち ★おせきもち
[桂駅]20.中村軒 ★麦代餅 ★ぜんざい
[奥嵯峨(鳥居本バス停)]21.平野屋 ★しんこ餅
旅のおわりに
[祇園四条駅]1.鍵善良房 四条本店&高台寺店 ★くずきり
出典: 江戸中期・亨保年間創業の京菓子店「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」。【画像は、風格ある佇まいの「高台寺店」。】
出典: 鍵善の店舗は、東山に本店と高台寺店、他に系列店がありますが、この店の名物「くずきり」をしっとりと頂くのなら、本店か高台寺店を訪れましょう。【画像は、四条本店入口。】
出典: 本店も高台寺店も椅子席ですが、店内はシックで落ち着いた雰囲気。しっとりとした風情の中で、老舗の味が楽しめます。
「鍵善良房」は、京都屈指の京菓子店。本店では、干菓子から上生菓子まで様々な種類の和菓子を販売していますので、土産菓子も気になるのなら、品揃えが素晴らしい「四条本店」へ。本店の混雑が気になるのなら「高台寺店」へ。本店から徒歩で4,5分の「高台寺店」は、清水寺から歩いて12,3分、高台寺から5分程なので、東山散策に便利です。【画像は「四条本店」店内。】
出典: 「鍵善良房」の名物は、「吉野大宇陀」の本葛と、京都の名水で仕立てられた『くずきり』です。くずきりと蜜が、蓋付き二段の塗椀に盛られて供されます。
出典: 氷と共に盛られた『くずきり』は、透明感溢れ、つるりとした口当たり。適度な弾力が楽しく、喉越しが滑らか。
出典: 蜜にくぐらせて頂くと、葛本来の味わいが立ち上がって、得も言われぬ美味しさです。
出典: 寒い季節に訪れるのなら、冬季限定のもち黍を使った『きび餅ぜんざい』がお勧め。汁なしの善哉は、冬に嬉しいどっしりとした甘さが魅力。老舗店ならではの小豆美味しさ、黍の旨味が味わえる逸品です。
出典: 芸妓や舞妓が行き交う「花見小路」は、京都の情趣溢れる人気の名所。紅殻格子に犬矢来が続く街並みは、いつ訪れても心浮き立つ魅力があります。「ぎおん徳屋」は、花見小路に佇む、古くからの甘味処。週末は、行列が長く連なる人気店です。
出典: お茶屋を改装した店内は、小じんまりとしながらもしっとりとした風情。「ぎおん徳屋」の名物は、なんと言っても出来たての『徳屋の本わらびもち』。国産厳選の本わらび粉と和三盆糖を用い、注文を受けてから練り上げる逸品です。
出典: 作りたてのわらび餅は、適度な弾力がありつつも、とろんとして柔らか。ぷるんとした舌触りと和三盆糖の上品な甘味が特筆の逸品です。
出典: 『本わらびもち』は、黒蜜と黄粉をつけて頂きますが、黄な粉は香ばしく、黒蜜は甘さ控え目で、上品で深みのある味わいです。【画像は、梅花型に盛り付けられた「黄な粉」】
出典: 『徳屋の本わらびもち』がイチオシですが、抹茶入りの本くずもちとの“合盛り”もお勧めです。
『お抹茶の本くずもち』は、京都の老舗茶舗「柳桜園」の濃茶と和三盆糖を合わせて仕上げたもので、茶の風味とぷるんとした食感が素晴らしいと評判です。合盛りには、きな粉と黒蜜の他、粒餡と抹茶きな粉も添えられます。
出典: 高台寺門前“ねねの道”に店を構える「洛匠(らくしょう)」は、『草わらびもち』で有名な甘味処。
出典: 高台寺の土産としても名高い『草わらびもち』は、“草”といってもヨモギではなく、京都ならではの抹茶を練り込んでいます。抹茶スウィーツとわらびもちは、現代の京甘味を代表する要素ですが、「洛匠」の“草わらびもち”は、二大要素を閉じ込めた逸品です。
出典: 宇治抹茶の緑は目に鮮やか。京都ならではの上品な味わいです。きな粉も丹波産大豆を使ったもので、フワッとしてきめ細やか。一緒に供されるほうじ茶は、丸久小山園のもの。香ばしい風味は、わらび餅の味わいをより一層引き立てます。
出典: 甘味処らしい佇まいと、気軽に立ち寄れる雰囲気、趣きある庭園もこの店の魅力。東山観光のついでに立ち寄りたい名店です。【画像は、座席から眺められる店内奥の池泉庭園。】
[祇園四条駅]4.かさぎ屋 ★三色 萩の餅 ★京都ぜんざい
出典: 大正3(1914)年創業の清水界隈を代表する甘味処「かさぎ屋」。瓦屋根が続く東山「二寧坂」の石段途中に店があります。風情ある店構えも、メニューも、創業当時のままに、今に伝える甘味処です。
出典: 日本を代表する挿絵画家・竹久夢二がこよなく愛した甘味として有名な店ですが、現在でもその味わいは健在。店の名物は、昔ながらの羽釜でじっくりと炊き上げた大粒の丹波大納言小豆が堪能できる『三色萩の餅』と『京都ぜんざい』。
『三色萩の餅』は、艶々とした“つぶ餡”、しっとりとした“こし餡”、滋味で優しい味わいの“白小豆のこし餡”の三色です。注文を受けてから作るので、いつでも出来たてのおはぎが頂けます。(4月下旬から秋の彼岸頃までは、白小豆が黄な粉になります。)
出典: 丹波大納言小豆を用いた『京都ぜんざい』も、すっきりと汁が澄み、美味。夏は、冷たく冷やした『しるこセーキ』が人気です。小豆たっぷりと入った『京都ぜんざい』には、注文受けてから七輪で焼き上げた餅が入っています。
出典: 河原町「弥次喜多」は、昭和23(1948)年の創業から、地元京都で愛される人気の甘味処。古都の風情と昭和レトロを感じさせる町家を改装したお店です。1階にはテーブル席、2階には卓袱台を並べた座敷席があります。
出典: 「弥次喜多」は、白玉入りの“日本一濃厚な宇治金時”、一年を通してかき氷が味わえる店として有名ですが、お勧めの逸品は、『ぜんざい』と、冬季限定の『あわしるこ』です。丹波大納言小豆を用いた『ぜんざい』は、焼き餅入り。汁が澄んで、程良い甘さ。餅と小豆のバランスが抜群と評判です。【画像奥が『ぜんざい』。手前が『あわしるこ』。】
出典: 冬に京都を訪れるのなら、季節限定の『あわしるこ』が断然お勧め。艶々に仕立てられた“こし餡”は、見た目通りに滑らかな舌触り。
出典: 粒粒とした“粟”はふっくら。雑穀に雑味がなく、風味豊か。こし餡の深みある味わいと相まると天にも上るような心地に。ボリュームもあり、蕩けるような美味しさ。身体も心も温まる逸品です。
出典: 「和久傳」は、明治3(1870)年に、京丹後で旅館から出発した京都を代表する料亭の一つ。
格式高い佇まいの「高台寺和久傳」、カウンター席のある「室町和久傳」、JR京都駅伊勢丹内の「京都和久傳」、蕎麦と料理の「五(いつつ)」、おもたせ専門店舗、オンラインショップ等など、様々に店舗展開しています。【画像は、堺町店】
出典: また、自社の稲田が広がる里山「実の里」や、安野光雅の美術館・工房レストラン・ショップからなる丹後美浜町の「和久傳の森」、自ら手掛ける冊子や、子ども論語塾といった独自の文化活動も行っています。【画像は、堺町店1F。】
出典: 堺町店も、そうした懐深い「和久傳」ならではの店舗の一つ。1階では、和久傳人気の弁当や土産“おもたせ”が販売されていますが、2階の“茶菓席”では、古き良き佇まいの町屋の風情、料亭ならではの洗練された雰囲気を楽しみながら、和久傳ならではの甘味、香り高い宇治茶をゆったりと、リーズナブルに味わえます。
出典: “冬の焼き蟹”で有名な様に、「和久傳」の料理は、旬の食材の味わいを存分に活かしたものです。それは、甘味においても同じこと。素材のもつ特性と旨味を活かした「西湖」は、和久傳を代表する甘味です。【画像は、『西湖』と『水出し煎茶のセット』】
出典: 「西湖(せいこ)」は、笹の葉に包まれた“れんこん菓子”。名の由来は、蓮の花で知られる、中国講習の景勝地「西湖」から。
ブルンとして柔らかな食感と、淡く優しい上品な甘味。そして、なんとも言えない奥深い味わいが身上の冷菓子です。蓮根の澱粉と和三盆糖で作るシンプルな菓子ですが、微妙な手加減を必要とするので、全て手作りです。
京都以外でも、また通販もされていますが、初めて頂くのなら、ここ堺町店でゆったり頂くのがお勧めです。頂くなら、単品もしくは抹茶月の『西湖』セットがお勧めです。
[烏丸御池駅]7.大極殿本舗 六角店 栖園 ★琥珀流し ★ぜんざい
出典: 明治18(1885)年創業の老舗和菓子店「大極殿本舗(だいごくでんほんぽ)」。大丸京都店の東隣の本店は持ち帰り専門ですが、六角店には、甘味処「栖園(せいえん)が併設され、出来たての甘味を味わえます。
出典: 店内は、外観同様、老舗ならではの、重厚で落ち着いた雰囲気。大極殿本舗の代表菓子は、京都で初めて焼かれたという創業以来の『春庭良(かすていら)』。しっとりとして、玉子の風味が感じられると人気ですが、店内には、焼き菓子から季節の生菓子まで、様々な菓子が並んでいます。【画像は、「六角店」店内。】
出典: 菓子売り場に併設された甘味処「栖園」は、坪庭の風情が涼やかで、しっとりとした雰囲気。ゆったりと甘味が頂けます。
出典: 「栖園」では、大極殿本舗の生菓子やぜんざい、わらび餅といった甘味が頂けますが、名物は、何と言っても『琥珀流し』です。【画像は、、7月の『琥珀流し』。蜜は、暑い季節にさっぱりと頂ける“ペパーミント”。】
出典: “琥珀流し”とは、柔らかく仕上げた寒天に、蜜をかけて頂く冷菓です。寒天の様が、まるで宝石の“琥珀(こはく)”のようだとして、名付けられています。『琥珀流し』は、シンプルな甘味ですが、蜜に独自の風味があり、寒天の食感も独特で、みつ豆とは異なる味わいです。【画像は、5月の『琥珀流し(抹茶小豆)』。】
出典: “寒天”の食感は、プルンとして、とろり。この絶妙で独特の柔らかさが、『琥珀流し』ならではの味わいです。そのやわやわとした寒天に蜜が絡まると、得も言われぬ美味しさ。一度食べ始めると、匙をもつ手が止まらなくなります。
出典: 『琥珀流し』の素晴らしさは、目でも舌でも季節が味わえること。桜や梅、葡萄や栗、柿や黒豆等など、蜜(シロップ)が月毎に変わるので、いつ訪れても新鮮。季節を感じながら美味しく頂けます。
【画像は、9月の『琥珀流し(ブドウ)』。】
出典: 春夏秋冬頂ける『琥珀流し』ですが、やはり冷菓の寒天菓子。寒い季節であれば、温かい甘味の“ぜんざい”がお勧めです。大粒の丹波大納言をふくよかに炊き上げた「栖園」のぜんざいは、芸術品のような仕上がりです。
【画像は、焼いた草餅入りの『特製相生ぜんざい』。丹波大納言小豆と丹波大納言白小豆を炊き合わせた珍しいぜんざいです。】
出典: 大粒だけを吟味して炊き上げるという“ぜんざい”は、雑味なく、すっきりと上品。小豆の皮も口に中でホロリと崩れて柔らか。心にも身体にも染み入るような、優しい味わいと評判です。
「栖園」で用いる餅は、滋賀県永源寺の餅米を用いて、店で炊き上げ搗いたもの。歯切れ良く、風味も抜群。小豆の旨味をも引き立てる絶品の餅です。『琥珀流し』と小椀ぜんざいのセットメニューもあるので、来店されるのなら、ぜひ“ぜんざい”も賞味してみましょう。
出典: 京料理に欠かせない食材・生麩。「麩嘉」は、京都府庁前に店を構え、代々禁裏御用(宮内庁御用達)を務めてきた大老舗です。確かな味わいは、今もって健在です。
出典: 舌触りが滑らかな「麩嘉」の生麩のバリエーションは、実に豊かです。店では、粟や胡麻入り等様々な味わいの生麩が購入できますが、人気は何と言っても「麩まんじゅう」です。【画像は、風情ある「麩嘉」の店内。】
出典: 「麩まんじゅう(笹巻き)」は、基本的に事前予約のみの販売。当日の販売分が残っていれば購入でき、店内で頂くことができます。
出典: “生麩”の主な成分は、小麦タンパク(グルテン)。小麦粉に大量の水を用いてタンパク質だけを取り出し、もち粉を加えて蒸し上げたものが“生麩”ですが、洗い出しや練りに技術を要します。『麩まんじゅう』は、生麩でこし餡を包み瑞々しい笹の葉で巻いて饅頭に仕立てたものです。ほんのりと緑色を帯びた生麩には、青海苔が混ぜられています。
出典: 笹の香りがついた生麩は、ツルッとして滑らか。もっちりとした食感です。丹波大納言小豆のこし餡は、上品な甘味で、生麩の滑らかさに寄り添うような口当たりです。生麩とのバランスも素晴らしく、特筆の美味しさ。特に出来たての味わいは、格別です。
★このサイトは錦店のものですが、商品リストが掲載されています。
[今出川駅]9.虎屋菓寮 京都一条店 ★あんみつ ★季節の生菓子
出典: 日本を代表する和菓子店「虎屋」。全国津々浦々、海外にも店舗がありますが、元々は御所御用達の大老舗。
「虎屋京都一条店」は、京都御所の傍ら、烏丸通りに面し、一条通を西に入った閑静な街並みの中に「京都一条店・虎屋菓寮」があります。
出典: 「菓寮」の魅力は、モダンでシックな店内から、緑豊かな日本庭園を眺めながら、甘味をゆったり頂けること。
【画像手前にあるのは、夏涼やかで、冬には氷が張る“水盤”。稲荷社や蔵も建つ庭園は、春夏秋冬、季節折々で変化のある景色が広がります。】
出典: 簾戸(すど)とガラス戸で外部と繋がる室内は、木とスチールで繊細にまとめられ、照明も程よく、落ち着いた空間です。座面が低い椅子に腰掛ければ、天井はより高く、空間はより広々と感じ、ゆったりと寛げます。
当店舗を設計したのは、建築家の内藤廣氏。喫茶席の傍らには、京の文化関係の書籍が並ぶ図書コーナーも設けられ、茶や菓子だけでなく、綜合的に京文化を堪能できるように設計されています。
出典: 店内と庭を繋ぐ半屋外の空間にも、喫茶スペースが設けられています。肌寒い季節でも、ブランケットを貸出し、心地良く過ごせるサービスが提供されています。
出典: また、老舗店ならではの、丁寧で心地良い接客も、魅力の一つ。注文の品が運ばれる前には、ほうじ茶と共に、虎屋の“一口羊羹”が供されます。
出典: 京都の虎屋を訪れるのなら、出来たての味わいが堪能できる『季節の生菓子』や、こし餡や求肥、寒天や豆等の具材が様々に散りばめられた目でも舌でも味わえる『あんみつ』がお勧めです。
【画像は、桜の頃の「あんみつ」。蜜も上品で特筆の美味しさ。黒蜜と白蜜が好みで選べ、好みで白玉が追加出来ます。】
出典: 「季節の生菓子」は、飲み物とセットで。温かい抹茶・煎茶・玉露、冷たい煎茶や抹茶などから好みのものがオーダーできます。
【画像は、8月下旬に登場する季節の生菓子『ささ栗』。練切で栗の実を、そぼろで“いが”を表現した、秋を先取りした季節の上生菓子です。(ささ栗(小栗)は、一般の栽培栗より実の小さな栗のこと。滋味豊かな味わいが特徴で、きんとんや竿物等に用いられます。)】
出典: 「虎屋菓寮 京都一条店」は、老舗の歴史と伝統を、現代に繋げた新しいスタイルの和菓子店。工房も併設されているので、出来たての美味しさが味わえます。御所周辺を観光するのなら、一度は足を運びたい名店です。
【画像の生菓子は、11月後半に登場する『祇園坊』。飴餡を求肥で包み、和三盆糖をまぶした生菓子。白い粉が吹いた、晩秋の“干し柿”を象った、風雅な和菓子です。】
[今出川駅]10.京菓匠 鶴屋吉信本店 菓遊茶屋&お休み処 ★京観世 ★季節の生菓子
出典: 享和3(1803)年創業の老舗和菓子店「鶴屋吉信」。全国各地のデパートに売店をもつ大店ですが、織物の町“西陣”堀川今出川角に本店があります。町家の様式の数寄屋風の建築は、老舗大店らしい風格です。
出典: 初代鶴屋伊兵衛が遺した家訓には、“ヨキモノヲツクル為ニ材料、手間ヒマ惜シマヌ事”という一条が掲げられ、今も大切に菓子作りの姿勢を保ち続けています。「鶴屋吉信」では、『京観世』や『柚餅』、『福ハ内』等、全国に知られる銘菓の数々から、予約注文の上生菓子まで、様々な菓子を扱っています。【画像は、老舗の格式を感じさせる本店1階の菓子部。】
出典: 本店の2階には、“お休み処(茶寮)”と“菓遊茶屋”があります。外光が入り明るい空間のお休み処には、庭石と緑が配された坪庭を囲むように、ゆったりとテーブル席が並んでいます。
出典: お休み処では、ぜんざいや葛切り、アイスクリーム等の甘味が頂けますが、お勧めは「鶴屋吉信」の代表銘菓『京観世』と『季節の生菓子』です。
『京観世』は、古くから良く知られる贈答菓子の一つ。かつてよく口にしたという方でも、様々なジャンルの菓子が出揃う現代においては、意外と口に入る機会は少ないものです。
『京観世』は、選りすぐりの小豆で仕立てた“小倉羹(小倉だけで炊き上げたもの)”を“村雨(堅めに炊いた餡に、米粉や糯米粉を加えてそぼろ状にして蒸し上げたもの)”で巻き上げた棹菓子です。素材の良し悪しと繊細な技術によって生まれる、優雅で奥行きのある味わいは、この銘菓ならではのものです。本店だからこそ、しみじみと味わいたい逸品です。
出典: 喫茶室の一角にある「菓遊茶屋」では、菓子職人がその場で作り上げる季節の生菓子を味わえます。
出典: 熟練の職人が、ヘラや漉し器を器用に扱いながら菓子を仕立てる様を眺める体験は、中々出来ないもの。本店へ行かれるのなら、カウンターに陣取り、出来たての生菓子を待ちつつ、優雅な一時も味わいましょう。
出典: 生菓子は、季節毎に変わります。季節の花や景色を映した生菓子の姿をじっくりと眺めるのも、非日常的で素晴らしい体験です。季節の生菓子は、抹茶とセット。観光地京都の老舗とは思えない程の良心的な価格で味わえます。
出典: 先述したように、和菓子は本来出来たてを味わうもの。ここまで足を運ぶのなら、出来たての典雅な味わいを堪能しましょう。
出典: 出町柳から徒歩5分。「茶房いせはん」は、豆大福で全国に知られる「出町ふたば」の道を挟んで向かい側。行列が絶えない人気店ですが、この店は観光客ばかりで混雑するのではなく、甘味に厳しい地元の人々にも支持される実力店。
今記事で紹介しているような、風情や歴史的雰囲気を感じさせる他店とは趣きが異なりますが、甘味好きなら、一度は足を運びたい名店です。
出典: 小豆は丹波産大納言小豆から大粒のものだけを選別し、抹茶は茶道家元御用達の老舗茶舗「柳桜園」、餅は「出町ふたば」等など、こだわりの厳選素材を用いています。労を惜しまずに作られた甘味は、雑味なく、清廉な味わいと評判です。
「いせはん」で頂くなら、一番人気の『いせはん特製あんみつ』がお勧め。一つ一つ手をかけた具材がバランス良く盛られ、ボリュームも満点。身も心も満足する逸品です。
出典: ふっくらと炊き上げられた「小豆餡」は豆本来の甘味も感じられ、「白玉」は、もっちりとして、程良い弾力あります。
国産本わらび粉から作る「わらび餅」は口当たり柔らかく、柳桜園の抹茶を用いた「抹茶のゼリー」は香り豊か。「寒天」の風味も良く、「豆乳ソフトクリーム」は、コクがあり滑らかです。
出典: 様々な具が、優しくまろやかな黒蜜でまとめられている『特製あんみつ』は、全体が調和しながらも、一つ一つの素材の美味しさもしっかりと伝わります。
栗と苺が出回る頃に訪れるのなら丹波栗の渋皮煮や、苺のアイスクリームがのった『季節のあんみつ』が断然お勧めです。
【画像は、秋のお楽しみ『季節のあんみつ』。】
出典: 「さるや」は、緑多い「下鴨神社」内に佇むお休み処。「あずき処 宝泉堂」が運営する、下鴨神社の新しい名所です。
出典: 「さるや宝泉」の名物菓子は、『申餅(さるもち)』。申餅は、明治初期まで親しまれてきたという下鴨神社の名物を、140年ぶりに復元した餅菓子です。【画像は、ほうじ茶付きの『申餅』。】
出典: 「申餅」は、“葵祭”の申の日に神前に供え、食して無病息災をを願ったという故事に由来する餅菓子です。
小豆の茹で汁で搗いた餅は、薄茜色。“唐棣色(はねずいろ)”ともいわれ、日が昇る頃の一瞬に茜色に染まる空を映したものです。それは、新しい生命が誕生する瞬間を表す色と云われています。申餅を食べることで、身を清め、自然の“気”、元気を頂いて、無事息災を願います。
出典: 「申餅」は、それ自体で美味しい餅菓子。餅はしっとりと柔らかく、中には甘さ控え目に煮上げた丹波産大納言小豆が射込んであります。「宝泉堂」ならではの、上品な味わいです。
出典: ほうじ茶付きの単品の『申餅』の他に、不老長寿の良薬とされてきた黒豆を炒って作られた「まめ豆茶」とのセットもあります。まめ豆茶に入っている黒豆は、飲んだ後に、葵模様の小皿に取り出し、塩を付けて頂きます。香ばしくて美味しいと人気です。
[出町柳駅]13.加茂みたらし茶屋 ★みたらし団子
出典: 下鴨神社参道の傍らに佇む「加茂みたらし茶屋」は、京都屈指の“みたらしだんご”の有名店。
出典: 「みたらし団子」は、下鴨神社の神饌菓子として、葵祭や御手洗(みたらし)祭の際に、氏子の家々で作られたのがその始まり。
串の天辺に一つ、少し間をとって四つ団子が並ぶ形は、後醍醐天皇が、下鴨神社の「御手洗の池」で水を掬った際に、最初に一つの泡が浮き上がり、その後四つの“泡が続いた様”を写したとも、また“厄除けの人形”を表している(火に炙って食すことで“厄除け”とする)とも云われています。
出典: 「加茂みたらし茶屋」のみたらし団子の魅力は、モッチリとした団子の食感と、表面についたパリッと香ばしい焦げ目、そして焦げに滴るタレの三位一体のハーモニーにあります。
団子は、厳選した上新粉のみを用いて手で捏ね上げ、炭火で丁寧に炙られています。タレは、甘味もトロミも強い関東風とは対照的で、甘さ控え目でサラッとして、醤油の風味も上品。黒砂糖を用いながらも、後味がすっきりとしているので、女性でも三串があっという間にお腹におさまります。
持ち帰りも出来ますが、風味が落ちてしまうのは否めないので、焼き立てを店を頂き、なおかつお土産としても持ち帰るのがお勧めです。
[出町柳駅]14.茶寮 宝泉 ★わらび餅 ★ぜんざい
出典: 下鴨神社界隈だけでなく、京都市内で屈指の人気を博している「茶寮宝泉」。先に紹介した「さるや」を運営する「あずき処 宝泉堂」が営む茶寮です。「加茂みたらし茶屋」から歩いて7,8分、下鴨界隈の邸宅が建ち並ぶ一角に店があります。
出典: 伝統に培われた甘味も魅力ですが、「茶寮宝泉」の最大の魅力は、落ち着いた佇まいと、閑寂で風雅な雰囲気の中で、ゆったりと甘味を味わえること。特に素晴らしいのが、季節の移ろいを感じられる庭園です。
出典: 初めて来店するのなら、お勧めは、『茶寮宝泉』ならではの絶品の『わらび餅』。ツルリと滑らかな口当たりと、適度な食感。独特の風味が感じられるのは、上質な本わらび粉をしっかり用いている証です。
出典: 一般に販売される“わらび餅”は、馬鈴薯や蓮根の澱粉に本わらび粉を混ぜたもので作られていることが多く、黒糖や抹茶等を混ぜなければ、仕上がりの色は薄く、風味も余り感じられません。
それに比較して、「宝泉」の『わらび餅』は、本わらび粉だけを用いて作っているため、色味はしっかりと強く、風味も抜群です。他店と比べて、確かに値段が張りますが、原料と手間、サービスを考えれば、決して高いものとは言えず、むしろ良心的かもしれません。
出典: 「茶寮宝泉」は、“あずき処”「宝泉」が営む店。せっかくなら、宝泉ならではの“あずき”が堪能できる『ぜんざい』もお勧め。
出典: 「茶寮宝泉」は、“あずき処”「宝泉」が営む店。せっかくなら、宝泉ならではの“あずき”が堪能できる『丹波産大納言小豆ぜんざい』もお勧めです。
ふっくら炊き上げられた丹波産大納言小豆。すっきりと澄んだ汁。程よく焼かれた餅。「宝泉」の『ぜんざい』は、一椀に入った甘味の小宇宙です。滋味豊かな小豆の味わいと、穀物の甘味や香り、甘味のバランスが程よく、餅、小豆、汁が、三位一体となって調和しています。
『丹波産大納言小豆ぜんざい』の他に、希少な白小豆だけを用いて仕立てる『丹波白小豆ぜんざい』もあり、夏には『冷やしぜんざい』や『氷しるこ』も登場します。甘味好きなら、ぜひ一度は、特選素材で仕立てる宝泉の『ぜんざい』を試してみましょう。
[北大路駅(今宮神社)]15.一文字数輔 16.かざりや ★あぶり餅
出典: 今宮神社は、平安期に疫病を鎮めるために開かれた神社。毎年4月の「やすらい祭り」は、“花鎮めの祭り”とも呼ばれ、京都三大奇祭の一つとして有名です。舞い散る花びらと共に疫病が流行ると信じられ、花の精を慰めて無病息災を祈る、平安期から続く祭りです。
出典: 「一文字屋和輔(一和)」と「かざりや」は、古くから今宮神社参道で、門前名物の“あぶり餅”を供する茶店です。
出典: 両店とも創業は古く、かざりやは、江戸期から、一和にいたっては、平安期まで遡り、創業から1000年以上も当地で商いを続けています。【画像は、「一文字和舗」】
出典: 両店ともに、メニューは、疫病除けのご利益があるという“あぶり餅”のみです。
あぶり餅は、搗きたての餅を小さくちぎり、黄な粉をまぶして、串に刺し、炭火で香ばしく焼き上げから、白味噌ダレをつけて頂く餅菓子です。
【画像は、「かざりや」。】
出典: “あぶり餅”というだけに、炙った時に生じる餅と黄な粉の“おこげ”の風味が、この餅菓子の身上。注文を受けてから、炭火で焦げ目が付くまで丁寧に焼き上げてから、味噌だれをかけて客に供します。
出典: 餅は柔らかく京白味噌を用いた味噌だれは、繊細で上品。焦げた風味と味噌だれ、餅の旨味が渾然一体となった味わいは、“あぶり餅”ならでは。【画像は「一文字和舗」】
出典: “あぶり餅”は両店共に、同じ本数で、価格も同じです。味わいに関しては、「一和」の方が、炙り度が高く、「かざりや」の方が、やや甘味が強めという感想が多々聞かれますが、何れにしても甲乙つけ難く、共に美味しいと評判です。
【画像は「かざりや」】
出典: また、両店共に、店には歴史に培われた雰囲気と風情があり、落ち着いた雰囲気。【画像は「かざりや」】
出典: 店内も共に広く、椅子席も座敷席もあり、多くの人が訪れる店でも、ゆったりと座して名物が頂けます。
【画像は、中庭に面した「かざりや」の座敷席。】
北大路 / 和菓子
- 住所
- 京都市北区紫野今宮町69
- 営業時間
- [月]
10:00 - 17:00
[火]
10:00 - 17:00
[水]
定休日
[木]
10:00 - 17:00
[金]
10:00 - 17:00
[土]
10:00 - 17:00
[日]
10:00 - 17:00
■ 定休日
水曜(※1日、15日、祝日が水曜の場合は営業し、翌日休業)年末など長期休業もあるので要注意
- 定休日
- 水曜日
- 平均予算
- ~¥999 /~¥999
データ提供: [北野白梅町駅(北野天満宮)]17.長五郎餅本舗 北野天満宮境内店 ★長五郎餅
出典: “天神さん”と親しまれる北野天満宮。北野天満宮にゆかりの深い名物が、「長五郎餅」です。
「長五郎餅」の始まりは、今から400年程前。天神さんの縁日で旨いと評判の餅を商っていた翁(河内屋長五郎)が、太閤秀吉が開いた「北野大茶会」にその餅を献上したところ、秀吉公が大層気に入り「以後、長五郎餅と名乗るがよろしい」と云われたのが事の起こりです。
出典: 秀吉が口にした当時の餅菓子は、餅を中にして餡で覆うスタイルが主流でしたが、「長五郎餅」は、餡を餅で包んだ形式で、コペルニクス的な発想の斬新なものでした。
出典: また「長五郎餅」は、そのスタイルだけでなく、味も抜群で、評判になった餅菓子です。餅皮は、羽二重で実に柔らかく、肌理細やかで、上品な味わい。餅菓子といっても、ベタベタとした重さがなく、幾つでもスルスル入ってしまうような、軽やかさがあります。
この秀吉の茶会以降、縁日の時は参道で売るのではなく、境内に出店を許される唯一の店として、その味わいを今に伝えています。
出典: 「長五郎餅本舗 境内店」は、毎月25日の縁日“天神さんの日”、正月1日より4日・2月3日の節分祭・1月より3月25日までの土曜日と日曜日(梅苑のシーズン)のみの出店です。
「長五郎餅本舗」の本店は、北野白梅町駅から徒歩7分程度の場所にあり、本店でも名物が頂けますが、縁日に行くのであれば、風情ある境内店がお勧めです。【画像は「北野天満宮境内店」の店内。】
[北野白梅町駅(北野天満宮)]18.粟餅所澤屋 ★粟餅
出典: 「粟餅所澤屋」は、北野天満宮の門前で、天和2(1682)年から続く老舗茶屋。300年を遥かに超える長きに亘って、当地で“粟餅”を作り続けています。『粟餅』は、北野天満宮の土産菓子として古くから人気。店では、折り詰め粟餅が販売され、ひっきりなし客が訪れます。
出典: かつて“粟餅”は、大八車に臼と杵を積み込み、曲搗きで人を寄せながら、売り歩いたものと伝わりますが、この店では、搗きたての柔らかな粟餅を頂けます。
「澤屋」では、どんなに忙しくても作り置きは一切なし。客の注文を受けてから、餅をちぎって餡や黄な粉をまぶします。店では、小豆餡に包まれた丸い粟餅と、黄な粉をまぶした粟餅が相盛されて供されます。
出典: 出来たての粟餅は、ほのかに温か。プツプツとした食感と口中に広がる粟の風味は、どこか懐かしく優しい味わい。
餅といっても、粟餅は餅と違って食感が軽やかで、お腹にもするりとおさまり、餅のような重さがありません。粟は消化も良いので、お腹がもたれず、またヤワヤワとした食感なので、子どもから高齢者まで美味しく頂けます。
出典: 出来たては、格別の味。毎月25日は天神さんの参拝日なので混雑しますが、それでも負けずに食べたい逸品です。
出典: “おせき餅”は、方除の大社「城南宮」門前の名物。長年鳥羽街道で親しまれてきた素朴な餅菓子です。国道1号線を挟んで「城南宮」西鳥居の向かい側に「おせきもち 本店」があります。
『おせきもち』を販売するのは、名物をそのまま店名にした和菓子店「おせきもち」。
おせき餅の歴史は古く、江戸時代に“せき女”という娘が、鳥羽街道沿いに茶屋を設けて旅人相手に振る舞っていた餅が評判となったのが始まりです。餅の旨さと娘の心根の優しさは、名物に名を残して、今に伝わります。
出典: 『おせきもち』は、餅につぶ餡をのせた餅菓子。この形状jは、編笠の上に餅を並べていたという当時の様子を表したものと云われています。
一見、無造作に作られた素朴な菓子のようでも、つぶ餡は、艶々として、色目も美しい赤紫色で、あっさりして上品な味わい。
「おせきもち」では、丹波産大納言小豆をじっくりと炊き上げてから一週間程寝かせ、熟成させたものを用いています。
寝かせることによって生まれる豊かなコクと深みは、『おせきもち』ならではの味わい。もっちりと弾力のある餅の旨味と相まって、一つ二つとついつい食べ進んでしまう美味しい餅菓子です。
出典: 城南宮参拝の土産菓子として有名で折り詰めで持ち帰る人で賑わいますが、本店では出来たての『おせきもち』が味わえます。
餅は、蓬と白餅が二種類、一人前ニ個、三個、五個とお腹の具合で選べます。
竹田 / 和菓子
- 住所
- 京都市伏見区中島御所ノ内町16
- 営業時間
- [月]
定休日
[火]
定休日
[水]
08:30 - 18:00
[木]
08:30 - 18:00
[金]
08:30 - 18:00
[土]
08:30 - 18:00
[日]
08:30 - 18:00
- 定休日
- 月曜日、火曜日
- 平均予算
- ~¥999
データ提供: 出典: 「中村軒」は、向かいに「桂離宮」の木立を望む、明治16(1883)年創業の老舗和菓子店です。
出典: 店頭では、餅菓子を中心とした手作りの和菓子が並んでいますが、明治後期建築の店の奥には、椅子席や座敷席が設けられ、特製のかき氷やあんみつ、ぜんざい等、季節に合わせた甘味がゆったりと頂けます。【画像、坪庭に面した座敷席。店の2階にも椅子席が設けられいます。】
出典: 「中村軒」の名物は、搗きたての餅につぶ餡を挟み、黄な粉を振りかけた『麦代餅(むぎてもち)』。
「麦手餅」は、元々農作業の合間に食事代わりとして食べていたもので、昔はもっと大ぶりだったそうですが、それでも餅は厚く、つぶ餡もたっぷり入っています。
ボリュームある餅菓子でも、食味はあっさり。『麦代餅』に限らず「中村軒」の菓子は、厳選の国産材料を用いて、丁寧に作られているため、素材の風味が生き、全体的に上品な味わいです。
出典: 搗きたての餅の美味しさも然ることながら、つぶ餡の美味しさも見逃せません。「中村軒」では、薪を焚べる「おくどさん」で炊き上げているため、小豆は、ふっくらです。甘さも、餅とのバランスが良く、秀逸。黄な粉の風味も絶妙です。
出典: 「中村軒」は、『麦代餅』だけでなく、甘味の店としても有名です。特に春夏の季節限定のフレッシュフルーツのかき氷は人気ですが、秋冬の「ぜんざい」も見逃せません。小豆餡、餅が美味しい店だからこそ頼みたい逸品です。
【画像は、栗が出回る時期にしか登場しない『栗ぜんざい』。「中村軒」自慢の大ぶりの餅が二つ入り、ボリュームも満点。】
[奥嵯峨(鳥居本バス停)]21.平野屋 ★しんこ餅
出典: 奥嵯峨鳥居本は、古くは「化野」と呼ばれる葬送の地でしたが、その地名の通り、江戸期に愛宕神社の鳥居前町(門前町)として栄えた町。石畳の街道沿いには、瓦葺きや茅葺の民家が残り風情ある町並みが続いています。
出典: 「平野屋」は、嵯峨鳥居本の愛宕神社の一ノ鳥居の袂にある鮎料理で知られる老舗料理屋。創業から400年もの間、この地で料理店を営んでいます。苔むした茅葺と瓦屋根、店名が染め抜かれた暖簾、赤い緋毛氈が印象的な店です。
出典: 鮎料理を堪能できる有名店ですが、愛宕名物甘味『志んこ』を、店先で頂くことができます。かつて愛宕神社の参詣者で賑わっていた頃は、参道の至る所に『志んこ』を供する茶屋が建ち並んでいましたが、現在『志んこ』を味わえる店は、ここ「平野屋」しかありません。
出典: 「志んこ」とは、米粉(新粉)を用いた団子の一種。
関東では馴染みのない菓子ですが、関西では“しんこ餅”として家庭で良く作られる生菓子。関東言えば、形は異なりますが“すあま”のようなものです。“志んこ”の作り方は、米粉を湯で練って、蒸し、さらに練り上げてから、ニッキや抹茶等で味付けし、手水をつけながらひねって、形を整えて出来上がりです。
素朴な菓子ですが、蒸しや練り上げ方によって、食味がぐっと変わってきますので、家庭で作ることは出来ますが、年季の入った店のものは、味わいが上質。「平野屋」では、熱の入り方がガス火とは異なる、昔ながらのおくどさん(かまど)を使って蒸し上げています。
出典: 捻りの入った団子は、艶々と愛らしく、口当たりが柔らか。添えられた黄な粉には、粒粒とした黒砂糖が混ぜ込まれ、コクのある甘味と黄な粉の風味が、団子自体の旨味を引き立てます。愛宕山参詣の足の疲れがすぅと遠のくような逸品です。
出典: 店構えも店内も、重厚で風情があり、設えも食器も、素朴ながらも上質。江戸期に遡ったような店で頂けば、旅の気分も高まります。
出典: 愛宕山に登らなくても、嵯峨野散策の終点をこの店に定めて、美味しい団子を頂いた後に、帰路に着くのもお勧めです。
【画像は、『ゆずしぐれ』。『志んこ』は、春・夏・秋に出される生菓子です。冬の期間は、柚子の香りと味わいをギュッと閉じ込めた逸品『ゆずしぐれ』が供されます。春の「桜餅」も評判。】
三方を緑深い山々に囲れ、里山の自然と清水、肥沃な大地に恵まれた京都は、四季の移ろいがしっかりと感じられる土地。山桜や新緑、紅葉や雪木立に彩られる山並を背景にして、季節折々に様々な花々が咲き開き、都を彩ります。
出典: 【「虎屋菓寮 京都一条店」の4月の『季節の生菓子(岩根のツツジ)』】
豊かな自然の中で育まれた京都の人々の季節の対する繊細な感性は、衣・食・住の様々な文化に浸透しています。生和菓子には、四季の風情や都人の心情が込められ、季節と共に移ろいます。
正月の花びら餅に、春の桜餅。端午の節句のちまきに、夏越の祓の水無月。観月会の月見団子に、彼岸のおはぎ、秋の栗きんとん等など。さらに上生菓子を含めれば、日々菓子が変わるといっても過言とはなりません。季節を映した京都の和菓子は、形も色合いも洗練され、風雅で、実に愛らしいものです。
出典: 【「茶寮宝泉」の生和菓子・丹波の栗の『栗きんとん』】
かつて、首都圏の商店街や町中には、出来たての和菓子や甘味を味わえる店が、大抵二、三軒はありましたが、今では、そうした店を見つけるのはとても難しくなりました。銘菓はデパ地下に、和菓子はスーパーやコンビニ棚に、みつ豆や汁粉はファミレスのメニュー中で見出すのが、一般的となりました。
出典: 本来、生和菓子や甘味といったものは、保存料を使わず、シンプルな材料を用いて、素材の特性と風味を活かしながら、職人が手間暇惜しまず作り上げるものです。そして、出来たて、作りたてを味わうものです。
京都には、歴史が培った和菓子や甘味が数多あり、出来たてを味わえる店も、地域それぞれで見出すことが出来ます。美味しいものと出会うことは、旅の醍醐味と述べましたが、今記事で紹介した店は、舌の記憶に刻まれ、旅の思い出に残る、名店ばかりです。
出典: 四季折々の景色が広がる千年の都には、季節の風情や景色を写した和菓子、旬の素材を活かした甘味があります。ぜひ記事を参考に、店自慢の逸品を味わって、口福なる一時を過ごして下さい。
【「鍵善良房」の季節の上生菓子】